【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する 作:もけねこ
「アヤネさん……あとは、頼むね……」
「ごめん……!任せた……」
もう、私も鬼灯も限界なんだ……あとは彩音さんだけが頼りなんだ……!
私と鬼灯の言葉を聞いた彩音さんは、呆れたように言い放つ。
「なんかそれっぽく言ってるけど、お腹いっぱいなだけでしょ」
「うん」
「ちょっと食いすぎたわ」
「ホオズキちゃん、おかわりちょうだい」
「あいよー」
彩音さんが鬼灯にグラスを差し出すと、ライムサワーの追加を作りはじめた。私は……いや、もういいや。飲み物も辛いくらいだし……
"草”
"息ぴったりなんだよなぁw”
"やっぱり、この2人姉妹では?w”
"アヤネさんもよく食うねぇ…”
「にしても、作り過ぎちゃったな……」
ちょっと唐揚げ作りすぎたよね。というか、唐揚げ以外にちょこちょこ作ったのがマズかった。あと、肉肉しいアヒージョが地味にお腹に来た。
「そうなるだろうなとは思ってた。マジで」
「私も」
「えぇ……?」
なんか2人から冷たい視線が来たんだけど、酷くない!?美味しいって食べてくれてたのに!
いや、作り過ぎたのは私のせいなんだけども。
"信頼されてるんだなぁ()”
"ユキちゃんは割と読みやすい所あるし…”
"やろうとすることがおかしいだけで、割と経過は普通なんよな”
もう本当にお腹いっぱいだから、しばらく動きたくない……彩音さんが食べてくれているけれど、それまでの間に腹ごなしついでに雑談することにした。
「そういやさ、ユキは成人したらドローン買うの?」
「特には考えてないけど……どうしようかな」
「配信続けるなら買ってもいいんじゃない?」
「うーん……金銭的に余裕ができて、買おうかなって思ったら買おうかな」
装備整えたり、遠征費にしたり、結構使いたい出費あるからね。あ、ここでいう装備はキャンプ用品のことね。テーブルがもうちょっと大きいの欲しいし、頑丈さも欲しい。他にも椅子とか諸々。そうなると後回しだよね、そういうのは。
「絶対買わないだろこれ」
「買わなそうだね」
2人にも言われてしまうけど、実際買わない気がするな……うん。買わない気がする。なんていうか、買うよりも他のものに使いたくなりそう。
"ですよねー”
"まぁ、このスタイルに慣れちゃったしなぁw”
"リスナー側としては見てみたいけどなー”
"顔見たいだけやろお前。俺も見たいけど”
「顔ってそんなに気になるもの?」
リスナーさんたちのコメントで見るに、そういうのが需要あるのかな?いや、確かにイケメンや美人は話題にもなるし、顔って大事か。
とはいえ、顔を出してまでどうこうする気は私にはないし。配信者ではあるけど、別段配信を目的にしてないからね。
「顔というか、表情が気になるってのはあるんじゃない?」
「あー……モザイクあると分かんねぇもんなぁ……」
"リアクションが分かるんよねー”
"色々食ってるから、そこ見てみたい”
"ユキちゃんの無表情っぷりを知りたい”
"わかる”
反応が様々あるけど、なるほど食べてるところを見たり、その時の表情が見たいのね。確かに、美味しそうに食べてる人見るの、私も好きだしその気持ちはちょっと分かるかも。
ただ、その私の無表情っぷりをみたい勢力は何なの?
「ユキはマジで表情変わんないからなぁ……昔はそうでもなかったけど」
「いつの話……?」
「マジで昔。出会った頃」
「4、5歳じゃん!」
鬼灯の思い出話に思わず声が大きくなっちゃった。本当に昔の話じゃないかそれ……感情の制御が不十分で、魔法が変に発動して大変だった頃の話だよそれ。
横で彩音さんがなんというか、若干怪しい表情をしている。どうした……?
「昔のユキちゃんとホオズキちゃんかぁ……」
なんか遠い目をしている。妄想でもしてるのかな……?鬼灯と顔を見合わせて……うん。結論は出た。
「ぶっちゃけ、今と大して変わらんと思う」
「性格とかはほぼ変わってないよ」
付き合い方は多少変わった面はあるけど、真面目にこの辺は変わってないと言っていい。強いて言うなら私が無表情になったのと、鬼灯が堂に入った鬼っぷりになったくらいだ。
「それはそれでつまらないじゃん」
彩音さん、つまらないって何……?
「つまらないってなんぞ……?そういうアヤネさんはどうなのさ」
「私は……大人しめの文学少女って感じだったよ」
「おん、マジ?」
「そうなの?」
"なんか、意外……でもないな”
"冒険譚好きって言ってたしな”
"今ではこんなに社交的に……”
"文学少女=コミュ障じゃねぇだろ。俺等じゃねぇんだぞ”
"やめろ”
なんでリスナーさんたちは定期的に自分たちで殴り合ってるの?あと、自虐やめなって……
「冒険譚読むのが好きだから、よく読んでたんだよね。外で遊ぶよりも部屋で遊ぶのが好きだったの」
「へー……」
「2人は何してた?」
昔の私たちが何をしていたか……といっても基本的に冒険者になりたかったから訓練してた記憶が多いな。
「ホオズキは木刀振り回してたよね」
「おん。ユキだってそうじゃん」
「まぁうん」
「そんな頃から武器の練習……私は冒険者学校入ってからだしなぁ……」
彩音さんが遠い目をしてしまった。飲み会でなんかあったようだし、思うところがあるのかもしれないけど、一般人の家庭に生まれた人と、バリバリの冒険者の家庭に生まれた人は流石に色々と違うからなぁ……
プロ野球選手の息子さんが野球に対してアドバンテージがあるようなものだし。
「冒険者学校って、どんなことすんの?学校なんだし、勉強もすんでしょ?」
鬼灯が別の話題を始める。私もこういうところは見習う必要があるなぁ……
「……えっとね、勉強もするし、武器や魔法の練習もするし、ダンジョンにも潜るよ」
「すごく忙しそう」
いろんなこと詰め込んでて本当に忙しそうだし、その内容なら、なおさら行かなくてよかった気がする。今更過ぎる内容しかなさそうだし。
そう思っていたら、横からツッコミが入った。
「君がそれ言うの?」
「ユキちゃんもほぼ一緒じゃない?」
「うん。でも、見ての通りだよ」
見ての通り、自由に冒険させてもらってるから忙しいって感じじゃないんだよね。
"見ての通り草”
"まぁ、忙しそうではないなw”
"めっちゃダンジョン潜ってるもんなw”
「……あれ?そういえば、ホオズキって勉強ってどうなってるの?」
「おん?あぁ、高卒認定試験っていうの取った。だから学歴上は高卒」
「え、そんなのあるの?」
「あるんですよこれが」
え、そんなのあるんだ。いや、というか、同い年なのにもう高卒扱いなのか鬼灯。なんか負けた気分なんだけど……!
うーん、それがあるなら、高校行かなくても……いや、そしたら愛依や凉とここまで仲良くなれてないし、それは嫌だな。行って良かったと思う。
"てことは、ホオズキちゃん学校通ってないんか”
"クラン入ってるだけってこと?”
"普通に高校生のイメージだったわ”
「ホオズキちゃん、学校行ってないんだ……」
まぁ、私と同い年だしね。学校行ってるイメージあるよね。
「流石に、高校に酒持ち込み出来ねぇじゃん?」
「誰かが間違って飲んだら大問題だもんね……」
「色んなところから怒られそうだよね……」
"そっか、そこがあったわ”
"確かに持ち込めんわな…”
"高校生に酒。絶対にろくなことにならねぇ…”
それに、自分で飲むんじゃなくて、イタズラで誰かに飲ませるとか起きたら大問題だしね。そこにあることがリスクの塊になってしまう。それに、持ち込んだのが悪いって話になっちゃいそうだし、そしたら全面的に鬼灯の責任になっちゃうしね……
「そんなリスクは抱えたくないので学校には行ってませんよと。で、話戻すけど、冒険者学校ってどんなん?」
「ざっくり言うと、勉強が進むペースが早くて、その分冒険者としての知識とか技術とかに割く時間があって、放課後にダンジョンで実習って感じかな」
「部活とかねぇの?」
「私の学校はなかったよ」
部活ないんだ……まぁ、確かにそもそも冒険者って普通のスポーツ出来ないもんね。身体能力違いすぎるから。冒険者は冒険者でスポーツやってる人もいるけどね。
「時間割りも普通なの?」
「あ、時間割りはね。90分1回って感じで、午前午後2時限ずつなんだ。その後にダンジョン実習で大体2時間半くらい」
「……1日が長くね?」
「長いね……」
"こうして聞くと専門学校っぽい感じか?”
"まぁ、専門学校っちゃ、専門学校だろ”
"結構キツそう……”
"午前午後どんな感じなん?”
「午前中と午後の最初は座学の勉強、その後は訓練で身体動かしてからダンジョンって感じ」
「そう聞くと普通な感じがすんねぇ」
「確かに」
そうやって聞くと、ちょっと時間割りが特殊なだけの普通の学校みたいだ。とはいえ、その時間で勉強するのってかなり大変そうだと思うなそれ……だから、ペースが早いって言ってたのか。
「部活の代わりにダンジョン潜ってる高校生みたいな感じだと思うよ。多分。でも、夏休みは休みって感じじゃなかったなぁ……」
「そうなの?」
「大体、遠くのダンジョンに潜りに行くんだよね。遠征の練習って」
「なるほどなー、確かに連休じゃないと厳しいか」
え、すごくない?遠征の練習までするんだ。かなりしっかり冒険者としての勉強が出来るじゃん……え、私が見たあの冒険者学校のパンフレット、大分怪しいところのやつだった……?配信者向けっぽい感じだったし、もしかしてこう、詐欺的なやつだった……?本当に行かなくて良かった。
"そこまでやるんだ…”
"しっかりやるんだなぁ…”
"道理でアヤネさんがユキちゃんに困惑するわけだ…”
「アヤネさんじゃなくても困惑するから」
「うん、多分大体の人は困惑すると思う……」
「酷くない?」
なんか前もこんなやり取りした気がするな……まぁでも確かに変なことやってる自覚はあるから、そこはしょうがないか。
その辺の話をしていたら、彩音さんが唐揚げを食べ終えた。私たちも腹ごなしが出来たので、片付けをして帰ることにした。
「いやぁ、マジで食ったし飲んだわー……本当にダンジョン内だよなここ」
「最近、ホントにダンジョン内なのか分からなくなるんだよね……」
「どう見てもダンジョンでしょ」
2人とも何を言ってるんだ……?どう考えてもダンジョンだよ。そしたら、2人から同時に呆れ果てた声が返ってきた。
「「誰のせいだと思ってるの?」」
"お前のせいだよ!!”
"どう考えてもユキちゃんのせいなんだよなぁ…”
"自覚ないんか???”
"何故自覚がないのかwww”
リスナーさんたちにまで原因呼ばわりされている。酷くな……ん?
「地面揺れた?」
「揺れたな。それも、地震じゃない。歩いてる感じだ」
「……!」
鬼灯の雰囲気が一気に切り替わる。完全に戦闘モードだ。私も切り替える。これはマズイ気がする。彩音さんも武器に手を伸ばした。
私達がいるのは品川ダンジョンの上層だ。上層に地面が揺れるほどの衝撃を起こすモンスターは存在していない。
つまり、最悪の場合、今ここに下層のモンスターがいるということになる。完全なイレギュラーだ。
《魔力探知》で探ってみると……あれ?反応が返ってこない。どういうことだ……?ある範囲で全く反応がない。
「ユキ、どうした?」
「《魔力探知》がうまくいかない」
「え!?」
「マジか……とりあえず行くか。ユキはボクの後ろ、彩音さんは一番後ろに。ヒーラーだからね。それと、ギルドに連絡入れてくれる?」
「わ、分かった!」
"え、イレギュラー?”
"ヤバない?大丈夫か!?”
"ホオズキちゃん頼りになるな…”
3人並んで歩き出す。後ろで彩音さんがイレギュラー発生の連絡をギルドにしている。私はずっと《魔力探知》をし続けているんだけど、やっぱり、とある地点だけ反応が返ってこないというか、探知できない。そこだけぽっかりと穴が空いてるような……
足音が近づいてきて、私たちの前に現れたのは……
「いや、トロルは洒落にならねぇなぁ……」
「……ホオズキ、こいつが探知出来ない。おかしい」
「ってことは変異種なのかよこいつ……確かに肌の色とか質感おかしいしな」
トロルだった。それも、恐らく
次回、バトル描写頑張ります