【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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配信に興味のない私と援軍到着

 

 開かれた戦端は、トロルの突進に始まった。砲撃が来るかと思ったけど、2回も防がれたからか巨体を生かした戦いをするつもりらしい。

 魔法が効かない以上、ショートソードの方が良いだろうと鞘から引き抜く。浮遊魔法で顔の横をすれ違いざまに耳に一太刀入れてみる。一応切れるな。切れるかどうかの確認がしたかっただけなので、とりあえずは合格。

 ただ、すれ違った瞬間に一瞬だけ浮遊魔法の制御が崩れた。想像以上に周囲から魔力を吸い上げる力が強いぞあれ。

 地上を駆け抜けた鬼灯はというと、すれ違いざまに足に一太刀入れたらしいが、反応が芳しくない。

 

「くっそ、ウロコで滑る!ちゃんと踏み込まないと厳しいなこれ」

 

 皮膚と違ってウロコだからか、刃物が通りにくいらしい。変なところでも防御力高いな。見た感じ、ウロコに覆われていないのは肘とか膝、あとは顔くらいで、ほぼ全身ウロコまみれだ。

 すれ違ったトロルはというと、途中で反転し、右手でこちらを薙ぎ払う動作に入っていた。勢いそのまま振り抜かれる。私狙いらしいが、そんなの当たってやらないよ。

 ただ、余裕を持ってよけたはいいが、とんでもない風圧で吹き飛ばされそうになった。

 

「うわおぉぉぉぉぉぉ……」

 

 地上では、鬼灯が風圧に負けて転がっていた。刀を地面に刺すとかで耐えられたでしょ絶対に。余裕ありすぎでしょ……

 

 "余裕ありすぎでは???”

 "ほ、ホオズキちゃーん!!”

 "転がってて草”

 

 とりあえず……物理は通る。だから、やるなら地属性魔法なんだけど、その前に他の属性も試しておきたい。注意をひくのも兼ねて、一通り連射する。

 

「《アイスランス》、《サンダーレイ》、《ストーンバレット》」

 

 氷の槍、雷の光線、石の弾丸がトロルに向かっていくが、すべて途中で消えてしまった。地属性魔法でも、そこらの石を使わないとダメっぽいね。魔力で生成すると持たないらしい。

 トロルは、うっとおしそうに私を睨むと、両手を私に向かって振り回してくる。それなりに速いけど、問題ないね。風圧にだけ気をつけておけば大丈……あっぶな!

 腕をかわしている途中で砲撃が。先ほどから口を開けっ放しだから、魔力を集める以外にタメがないなあの砲撃。ちゃんと顔の横を陣取るように飛行して回避する。

 最後に火属性魔法も試してみるかな。念の為ね。

 

「《爆破魔法(エクステンド)》」

 

 顔の目の前で火球を生成し、そのまま発射。消える前に爆発させてみる。目眩ましついでに、ちょっとでも火傷とかしてくれると嬉しいんだけど……!?

 

「ウオオオォォォォアアアア!!!」

 

 "耳がー!!!”

 "鼓膜ないなった”

 "ミュートかな???”

 "お前らな……”

 

 突然のトロルの咆哮にかなり驚いた。何よりうるさいし!そのまま腕を振り回して私を殴ろうとしてくる。ただ、さっきと違ってなんていうか……怖がってる?明確に私を狙っているというよりも、目の前に怖いものがあるから振り払おうとしている。みたいな動き方な気がする。そのせいで大分避けにくい!

 ちょっとずつでいいので、情報をかき集めていく。未知は怖いが、既知になれば対処が出来る。

 

「そっちばっか見てていいのかなっと!」

 

 吹き飛ばされたあと足元に復帰した鬼灯の一撃が足首に直撃した。アキレス腱を切るまではいかなかったらしいが、結構深く切ったのか、ここからでも血が噴き出すのが見えた。

 トロルは悲鳴をあげて足元の鬼灯を踏み潰そうとドスンドスンと足踏みをし始めた。鬼灯が横っ飛びで回避し続けている間、私から注意がそれた。

 

「次はこっちだね」

 

 下を見ている間にやってしまおう。《ガイアウェポン》を発動し、杖の先端に石の杭を生成する。材料は、今足踏みで壊してくれているダンジョンの床だ。

 この前作った柱ほどではないが、長さ2メートルほどの杭を生成。

 

「《ストーンバレット》」

 

 《ストーンバレット》は、あくまでも石の弾丸を飛ばす魔法だけど、弾丸の部分に制約はない。石製であればいい。なので、こんな杭でも飛ばせる。さらに、浮遊魔法も使って加速させる。

 石の杭はとんでもない速度でトロルの左肩に直撃した。刺さらずに砕けてしまったが、かなりの衝撃だったのかトロルがたたらを踏んだ。頭を狙いたかったけど、足踏みでちょっと狙いがズレてしまった。

 当たった部分のウロコが割れ、下の皮膚がある程度露出した。緑色の普通の皮膚……よりはちょっと濃いか?まぁでも普通な感じだ。全身引っ剥がしてしまうのがいいかもしれない。

 

 "いいの入った?”

 "よろめくくらいとはかなりの威力だな…”

 "すげぇ音したぞ”

 

 このあともこんな感じで交互に注意を引きつつ、少しずつ削っていく。しかし、段々私しか狙わなくなってきた。攻撃を避けること自体はそこまで大変じゃないんだけど、私が攻撃できなくなった。こいつに通すにはタメがいるんだけど、その隙がない。

 普段は3つまでなら魔法を使えるけど、タメている間は2つまでしか使えない。浮遊魔法を使いながらタメていて、万が一の時に《魔力障壁》が使えないのはマズイ。

 《ガイアウェポン》で先ほどの杭みたいなサイズを作るにも、これだけ動きながら作るのは厳しい。小さいサイズで同じことをやったけど、焼け石に水だった。

 

 "すげぇ!”

 "自由自在に空中飛び回ってんのかっけぇ!”

 "さっきからこえぇよまじで!”

 

 足元で鬼灯も切り続けているんだけど、なにせサイズがサイズだ。中々深手とはならないらしい。どんどん血が出ている場所が増えているから、それなりにダメージは入ってる……と思いたい。

 だが、その結果として、痛手を負わせてくる私を警戒している。というより……

 

「《ファイアスロワー》」

「ウオオオオォォォオオ!!」

 

 こいつ火がめちゃくちゃ嫌いなんだ。今だってそもそも当てるつもりがなかったから、ダメージなんて欠片もないんだけど、火を見るだけでこっちを本気で殺しに来る。お陰で誘導しやすくて助かるんだけど……本来トロルにそんな特性はない。

 ずっと不思議だったんだ。なんでこのトロルがアンチマジックシェルを食べたのか。それも特性を獲得するほどにまで。

 モンスターにも、飢餓の概念はある。ダンジョン内でもちょっとした食物連鎖はあるし、その結果として強化種が生まれてくることが多い。ならなんでイレギュラー扱いなのかというと、冒険者が間引いているから、本来そこまで成長する前に死ぬからである。

 そして、お腹のすいたトロルが食べるなら、絶対にアンチマジックシェルなんていう小さな貝程度で足りるわけがない。それに、下層にはハイオークというミノタウロスのイノシシ版みたいなやつがいて、そいつはミノタウロスよりもこう……食べ応えがありそうな体格をしているのだ。空腹を満たすために食べるなら、こっちを食べるだろう。

 つまり、このトロルは意図的にわざとアンチマジックシェルだけを狙って食べ続けていた。反応からして、炎魔法で攻撃されて逃げ延びたあと、それを克服するためかな。

 だからなのか、徹底的に私を殺そうとしてくるんだけど、空中に自在に飛び回れる私相手に、腕を振り回すのと口から直線の砲撃だけでは相性が悪い。

 

 

 そんな中、トロルが何を思ったのか、両手を振り上げて頭上で組んだ。魔力を纏わせて威力も上げているようだ。そのまま振り下ろすつもりみたいだけど、私にはそれほど怖く……いや、私じゃなくて、鬼灯狙いか!

 

「ホオズキ!」

「!?」

 

 魔力を纏った両手の握り拳が地面を叩いた。凄まじい轟音とともに、地面が爆砕される。

 

「あっぶねぇ!!サンキューユキ!」

 

 鬼灯は、ギリギリで直撃は避けられたらしい。とはいえ、砕けた地面の破片が当たったのか、身体中に傷が出来て血が流れている。

 トロルはというと、膝をついて両手を振り下ろした体勢のまま、口を開けて砲撃をし始めた。何で突然鬼灯狙いに……!

 

「当たんねーよーだ!ばーかばーか!」

 

 "煽っとる場合かー!!”

 "余裕ありすぎwww”

 "ホオズキちゃん血塗れなんだけど大丈夫なんか……?”

 

 鬼灯が煽りながら逃げ回る。トロルは砲撃を連発しているが、鬼灯を捕らえきれていない。

 とりあえず鬼灯から私に狙いを移すべく、顔の横から《ファイアスロワー》を目の前に伸ばすと、ハエでも払うように腕だけ振るって攻撃してくる。が、顔は鬼灯を捕らえたままだ。

 多分、私を捕らえきれないことに気付いて、先に潰せる方から潰しに行ったな。頭が回るやつだ。

 そして、さっきの煽りがムカついたのか、トロルは両手に魔力を纏わせて地面をバンバン叩き始めた。モグラ叩きみたいだ……

 

「ぎゃあああ!!煽って悪かった!悪かったって!」 

 

 "トロル激おこやん”

 "ヤバイヤバイ!”

 "速攻咎められてて草”

 

 鬼灯が今度は悲鳴を上げながら逃げ回る。その光景を見て何だか力が抜けてしまう。漫才でもしてるの……?

 

「ユキー!なんとかしてくれー!!」

 

 でも、私から完全に意識が鬼灯に向かった。早く助けないと鬼灯がプチッと潰されそうだし、さっさとやろう。ショートソードを再び抜き放ち、トロルの左目に向けて浮遊魔法で突撃する。こちらをみていないから、ガラ空きだ。勢いそのまま左目にぐっさりと突き刺した。

 

 "やったぜ!”

 "グッサリいったー!”

 "ナイス!”

 

 トロルが悲鳴を上げて両手で顔を抑える。その動きに潰されそうになったので、慌てて逃げて鬼灯のそばへ。

 本当は両目とも潰したかったけど、近付くと浮遊魔法の制御がブレるので、念の為片方だけにしておいたが、正解だったかな。

 

「サンキュー!死ぬかと思ったわー……」

「怪我は?」

()()()()()

 

 "もう治った!?”

 "マジで治ってるやん…”

 "ホオズキちゃんも大概おかしいな…”

 

 ほれ。と腕を見せてくる。あぁうん。治ってるね本当に。鬼灯のユニークスキルは、一言で言えば身体が鬼になる。なんだけど、そもそも『鬼』が特殊過ぎていろんな効果が混じっている。

 

「さっきあんだけ食ったからな。大怪我じゃない限りは余裕よ」

 

 肉を食べたら再生するのは知ってたけど、食い溜め出来るんだその能力……

 

「……頼もしいね」

「だろ?」

 

 ドヤ顔してるところ悪いけど、さっきの醜態はなくならないからな?

 そんな鬼灯に呆れてきたら、()()()()人の声と足音がした。

 

「ユキちゃん!ホオズキちゃん!」

「総員戦闘態勢!作戦通りに!」

「了解!」「行くぞ!」

 

 振り返ると、彩音さんとその後ろに小糸さん。さらには、純白の盾と交差した剣の統一されたエンブレムを身に着けた男女入り混じった20人ほどの冒険者。

 

 "援軍キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!”

 "『白の騎士団(ホワイトナイツ)』やんけ!”

 "ガチガチのとこ来てるやん!”

 

「ウオオオオオオオオオオ!!!」

 

 頼りになりそうな援軍を見て少しだけ安心したところで、咆哮が響き渡る。

 トロルが顔から手を離して、こちらを怒りに満ちた目で睨んでいる。あまりにも怒っているのか、潰した左目から魔力が噴き出していて、凄まじい様相だ。

 先ほど、小糸さんの指示を受けた冒険者たちがトロルに向かって突撃していく。トロルも砲撃してくるけど、基本的には回避しつつ、どうしても避けきれないものは何かしらで防いでいる。

 それを横目に小糸さんがこちらに寄ってくる。

 

「アレの情報は映像で見させてもらった。作戦がある」

「おん?どうにかなんの?」

「決まれば倒せる」

「……内容を聞かせてください」

 

 私たちが作戦会議をしている後ろで、彩音さんが緊張した面持ちで武器を握りしめていた。

 




予測変換にキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!があるの笑っちゃった。あるんだ……
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