【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する 作:もけねこ
昨日の朝から、突然のUA爆増していて、な、何が起きた……!?となっています。見てくださってありがとうございます。
追記:UA15万達成!ありがとうございます!
作戦を聞き終わった私たちは、それを成功させるべく動き出した。私の役目はさっきまでとほぼ変わらないけど、砲撃が地上組に行かないようにしたいところだ。ヒーラーがいるとはいえ、直撃したら即死する可能性だってあるんだから。
砲撃を空中に誘導するべく飛翔する。ショートソードを構えて、わざと右目に向かって突っ込んでいったら、トロルの注意が私に向き、右手で顔を覆う。指の隙間からこちらを見ているけど、さっき左目潰されたんだから、そうするよね。想定通りだ。
「《ファイアスロワー》」
ついでに炎でさらに煽る。左手を振り回してくるし、砲撃も飛んでくるけど、右手がなくなってる分回避もしやすい。ヒーラーがいるから、細かい怪我について気にするつもりがないし、ガンガン行こう。
攻撃手段は前と変わらないが、今の私はずっとショートソードを構えているし、隙を見ては右目に突撃するように動いている。トロルが右手を顔から離せなくなっていて、その分の攻撃手段が減ったため、足元の冒険者たちがどんどんとダメージを与えていく。
"みんな頑張れー!”
"いけいけー”
"ユキちゃんにヘイト向きすぎで草”
そうやって有利を維持しながら、先ほどの作戦会議を思い出す。
『で、具体的にどうすんのさ』
『トロルを壁際に追い込み、僕が脚を潰し、彼女に強化魔法を集中して彼女のユニークスキルを放つ』
そういって、小糸さんが彩音さんを指し示した。彩音さんは緊張しているのか、少しだけ顔が青い。
『……アヤネさんの?』
『ああ、彼女のユニークスキルは純粋な物理攻撃だ。だが、一発勝負でね。万全を期したい』
『なんで一発勝負?』
鬼灯の疑問に、彩音さんが少し言い淀んでから答えた。
『……このスキル、魔力を使い切っちゃうんだ』
『……そりゃ一発勝負だわ……』
全魔力消費の物理攻撃系ユニークスキルとは……物語の主人公みたいなスキルだ。とはいえ、本当に一発勝負になるね、それは。
魔力が尽きたあとってすぐに回復する手段がほぼない。魔力を回復させるマナポーションはあるにはあるけど、簡単に用意出来るような値段のものじゃない。何より、使い切ったときってほとんどの場合気絶するから、そもそも飲めない。
『あと、なんで壁際に追い込んでから?』
『頭を確実に潰したい。脚を潰したとき、仰向けに倒れられたら、頭を狙えない。前や左右なら頭が見えるが、あちらに倒れられると見えない。その可能性を潰すためだ』
『おん。なるほどな……』
一発勝負である以上、確実に頭を潰して倒したいってことか。確かにそうなると向こう側に頭がいっちゃうと難しいか。起き上がるまでに頭に辿り着くというのも、難しい可能性あるしね。サイズがサイズだし。
小糸さんが私を見ながら説明を続ける。
『それと……脚を潰すにあたって僅かでいいから隙が欲しい。これは物前さんにお願いしたいんだけど、出来るかい?』
え、私に?
『ユキにはキツくねぇか?魔法職だぞ?』
鬼灯が代弁してくれた。そうなんだよね。魔法届かないし……
『脚への攻撃以外で隙を作れるのは、空中から攻撃を仕掛けられる彼女以外にはいない。それこそ、先ほど目を潰したようにね』
確かに、私がどうにかするしかないのか。そもそも脚を攻撃して隙を作れるなら、わざわざ隙をつくる必要性がないもんな。そのまま潰しちゃえばいいし。
とはいえさっきみたいに目を潰すのは厳しいだろう。警戒しないわけないしな。となると、残された手段は……
『……分かりました。ただ、一瞬だけしか止められないと思います』
『感謝する。それで決めてみせよう』
小糸さんが穏やかな笑みを浮かべ、その隣で彩音さんも決意を示す。
『私も、やってみせるから』
『頼むぞー!』
『お願いね』
鬼灯が彩音さんの背中をバンバン叩き、私も軽く叩く。ちょっと痛そうだけど、緊張は抜けたかな。
『では、作戦を開始する』
小糸さんの宣言で、私たちは動き出した。
頭の中の回想を終えて、現実に回帰する。
私の役目は、囮役に徹することと、最後に少しの隙を作ることだ。そのために、少しでいいから頭、というか目への警戒心を下げておきたい。
でも、攻撃をやめると右手が自由になって他の冒険者に向く可能性があるので、加減が難しい。
多くの冒険者とともにトロルをじわじわと追い込んでいく途中、突然とんでもない事が起きた。援軍の一人が魔法の発動に時間をかけているなと思ったら、発動した魔法が凄まじかった。
「《クリエイト・ゴーレム》!!」
そこら中の岩がくっつきあって、トロルとほぼ同サイズの岩の巨人が出来上がる。あんな魔法あるんだ……あとで教えてくれないかな。ユニークスキルっぽいから、かなり弱体化するだろうけど、何かと便利そうだしねあれ。
10メートル近い岩の巨人がトロルに突撃する。トロルの胴体を掴んでそのまま壁に向かって進み続ける。
トロルは両手でゴーレムを抑えつつ口から砲撃を連射しているけど、壁に向かってどんどん押し込まれている。
"うおおおおおお!!”
"すげぇ!!”
"大怪獣バトルだ!!”
ゴーレムは、しばらくトロルを押し込み続けたのち、予定していたほど押し込む前に崩れていく。術者の魔法使いの悲鳴が上がった。
「魔力が吸われて持ちません!」
確かに魔法である以上そうなるか。途中から砲撃を耐えられず、どんどんと崩れていくゴーレムがちょっと物悲しいけどしょうがない。崩しきって雄叫びを上げるトロルに横槍を入れさせてもらおう。
ゴーレムに気を取られている間に作っておいた、岩の杭を射出する。胸に勢いよくぶちかました結果、たたらを踏んだトロルが背中を壁にぶつけた。ここまで追い込めればいいだろう。
「押し込んだぞ!」
「脚を潰す!進め!」
私の存在を思い出したトロルが右手で再び顔を覆う。警戒心緩まないなこいつ。ゴーレムが押し込んでいる間、少し下がっていた冒険者たちが再びトロルに向かっていく。
それを潰すべく、トロルが魔力を纏わせて左手を振り下ろしたけど、現れた障壁に
「《ファランクス》!進めぇ!」
そのまま脚に取り付くと、攻撃を再開。踏みつぶされないように気を付けつつ、少しずつダメージを蓄積させていく。トロルの脚もすでに傷だらけなんだけど、中々潰せない。
「ガアアアアアァァァァァアア!」
そんな状況に苛立ったトロルは振り上げた脚に魔力を集中させて、地面を思いっ切り踏みしめた。凄まじい威力に地面が揺れ、冒険者たちが足を取られる。傷口から噴き出した血や砕けた地面なんかが、物理的な散弾と化して冒険者たちを襲う。かなりの数の冒険者が吹き飛ばされ、戦線が崩れてしまった。
"うわぁぁぁ!!”
"ヤバイヤバイ!”
"間に合えー!”
そこに追撃で砲撃をしようとしたので、右目に向かって突撃。それでも砲撃を優先したので、口の前に《魔力障壁》を展開する。砲撃が直撃し、障壁が砕けたがかなり威力は軽減できた。
砲撃が当たりこそしたけれど、死亡者は無し。即死さえしなければなんとかなるだろう。ヒーラーもいるんだし。そして、実際なんとかなった。
「《恩寵の光》」
後ろで待機していたヒーラーが奇跡を発動し、吹き飛ばされた冒険者たちを白い光が包み込んだと思ったら、怪我が治っていた。あまりの光景に、トロルも固まったもんね。私もだけど。
"うわぁお……”
"えぇ……”
"お前ら喜べや!!”
"いや、凄すぎて先に引いちゃう……”
"それな”
……ちょっと人材豊富すぎじゃない?しかも、今いる面々って小糸さんと一緒に遠征でレベリングをしていたメンバーだそうなので、これトップ層じゃないんだよね……?凄まじいな……
そして、再びトロルを確実に削っていく中、鬼灯から合図が来た。
「ユキー!やれ!」
トロルの右目に目掛けて再度の突撃。振り抜かれる左手と口からの砲撃を交わし、右目の正面へ。
魔法の攻撃は届かない。武器も右手で防がれる。ならどうするか。
作戦会議のとき、脳裏に思い浮かんでいたのは、この前の『
『ちゃんとモンスター相手にも通用する』
あの時読んだ設計図の名称の案に乗っていた名前をそのまま呟く。
「
"ギャァァァ!!”
"目がー!!”
"何も見えねぇ……”
右目に向けた杖から、とんでもない光が放たれ、トロルの目を焼く。トロルが悲鳴を上げてふらついた。
その瞬間、小糸さんが脚目掛けて突撃していった。剣が青い光を纏っている。右脚までたどり着くと、そのまま剣を振り抜く。とんでもない音とともに、右脚の足首が切り裂かれた。
悲鳴を上げたトロルが崩れ落ち、壁を背もたれに座るような形になった。よし、あとは……
「《乾坤――」
彩音さんの方を振り向く。金色に輝くハルバードを右手に持って、槍投げの構えだった。
「――一擲》!」
右手から放たれたらしいハルバードは、金色のビームみたいになって視界の外に一瞬で消えた。
直後、轟音と衝撃波が後ろからやってきて、姿勢の制御も出来ずに吹っ飛んだ。
錐揉み回転する羽目になって、どっちが地面かも分からず、これやばいかもと思ったら、鬼灯がキャッチしてくれた。助かった……
「大丈夫かー?」
「目は回ったけど平気……」
とりあえず、お姫様抱っこは恥ずかしいから降ろしてほしい。降ろしてもらったあと、トロルの方を見て……固まってしまった。
頭、というか胸の辺りから上が全部吹き飛んでしまっていて、壁にも巨大なクレーターが出来ていた。本当に一撃必殺である。
"やっと視界が帰ってきた……おぉ……”
"すっげ……”
"吹き飛んでんじゃんwww”
"とんでもねぇwww”
「おぉ……すごい」
「ボクもこういうスキル欲しかったなぁ……かっけぇし」
「分かる」
鬼灯のボヤきに頷く。わかるよ。必殺技!って感じのスキルかっこいいよね。本当にさ。今のスキルに不満があるわけではないんだけど……こう、ね?
彩音さんの方を振り向くと、やはりというかなんというか、気絶してしまったようで他の人に介抱されていた。ハイタッチとかは出来そうにないね。
イレギュラーの特殊個体トロル討伐は終わった。討伐隊に重症者なし。死亡者なし。という完全勝利と言っていい内容だった。
が、のちの調査で、下層、中層での死亡者が多数であることが確認された。手放しでは喜べないね。
イレギュラーの討伐依頼の報酬については、私たちのパーティと『
とはいえ、それなりの額が手元に来たので、半分くらいはパーティの貯金にしてもらうために彩音さんに渡すつもりだ。残りはとりあえず貯金かな。使っちゃいそうだし……
トロルから落ちたドロップアイテムは彩音さんに渡されることに。代わりに死体は『
でも、特殊個体のドロップアイテムなんて一点ものだから、とんでもない値段になりそうなんだけど、本当に釣り合い取れてるのかな……?
ちなみに、ドロップアイテムは、鱗のついた皮と青くてデカい骨である。どっちもトロルのドロップアイテムに、ちょっと変化がついたものだったね。
ともかく、色々大変だったけど、とりあえず倒せてよかったよ。しばらく休憩したいけど……
話は討伐直後に戻って。
トロルの死体を横目に、討伐隊が様々な処理をする傍ら、私は壁に刺さった彩音さんのハルバードを見ていた。あの高さだし、私じゃないと多分取れないな。
「ホオズキ、武器取ってくるね」
「おん。いってら」
鬼灯に一声かけてから、壁に突き刺さったハルバードを取るために浮遊魔法でそこまで飛んでいく。
深々と突き刺さってなくてよかった。これならすぐに抜けそう。にしても、なんだか
ちょっと首を傾げつつ、右手で柄を握って引っ張った瞬間。
パキッ……
「……え?」
"え”
"あ”
"あー!”
私の右手には、手元から少し先でへし折れてしまったハルバードの持ち手が。手元と壁に刺さったハルバードを何度か交互に見やって、真っ青になる。
こ、壊しちゃった……!!
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