【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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配信に興味のない私とその後の話

 

「大変申し訳ございません!」

 

 トロル討伐の翌日、私は病院の一室で彩音さんに土下座をしていた。

 

「……見慣れたくないんだけど、見慣れてる気がするよこの光景……」

「妙に動作が慣れているね……」

 

 頭の上から降り注ぐ彩音さんと小糸さんのあきれたような声が、ちょっと胸に来るが、もうこれはやるしかないのである。

 今私がいるのは、彩音さんが一晩入院することになった病室である。魔力切れとはいえ、戦場にいた以上検査は必要、かつ倒れてたんだからということでの措置だ。もうすでに退院許可は降りているので、今から退院するところである。

 そして、私が彩音さんに土下座している理由というのは……

 

「それで、どうしたの夢希ちゃん」

「その……これ……」

 

 収納魔法にしまっていた、彩音さんのハルバードを取り出す。ポッキリと折れてしまったやつだ。しかも、あのあとさらに2回ほど折った。壁から引き抜こうとしてこれである。

 

「わ、ポッキリ折れてる!?……どうなってこうなったの?」

「壁から抜こうとしたら……」

「……え、それだけ?」

「うん……」

 

 床に正座したまま彩音さんに説明するが、本当に、壁から抜こうとしただけなのである。とはいえ、壊したのは事実なわけで……かなりの値段もするだろうし、今回の報酬は彩音さんに渡す予定だ。武器がないと冒険なんて出来やしないのだから。

 その時、横から小糸さんが口を挟んだ。

 

「それについて”も"話をしたくて、僕もついてきたんだ」

「小糸くんなにか分かるの?」

「ウチのクランに同じようなことになる人がいてね」

「……武器を折るんですか?」

「いや、そっちではなく」

 

 思わず自嘲気味に言ったら、小糸さんに苦笑されてしまった。でも、じゃあなんだっていうんだ!!

 

「ユニークスキルのデメリットで、()()()()()()()人がいてね。その人がスキルを使ったあと、同じような状態になるんだ」

「え、スキルのデメリット?」

「ああ。本当に、ちょっと触るだけで崩れるように壊れるくらいの状態になるんだ。まさしくこんな感じにね」

 

 小糸さんが、ハルバードの持ち手を握ると、そのままボロボロと崩れ落ちる。おおう、さらにボロボロに……

 

「うわ、そんな感じにボロボロいくんだ……確かにこれは、夢希ちゃんのせいじゃなさそう」

「本当……?」

「本当だよ。だって見てよこれ。指で潰せるもん」

 

 彩音さんが指先で斧の部分をすり潰してしまった。うわなんだこれ……いやでもそうなるとおかしくないか?

 

「じゃあ、彩音さんのユニークスキルのデメリットって……」

「武器の破壊ってことになるよね……?」

「それなんだが、もう一度調べてみたらどうだい?新しい武器を作ってもらう間に」

「一度調べたんですよね?なのに何故……?」

 

 もう一度ってことは、調べたんだと思うんだけど、なんで分かってないんだろう?と疑問に思った。

 なんというか、すでにわかっててもおかしくないと思うんだけどな。

 

「すごい威力の投げ槍になるのは事実だし、魔力使い切っちゃうのもいつもだったし……それに、試し撃ちは木槍だったから、あれだけの威力が出るなら壊れるのなんて当たり前。みたいなところがあって……」

「何より、実戦で使った場合は武器の回収が出来なかった。魔力切れになる以上、最後の手段だったし、何より撤退戦にしか使わなかった」

「あー……」

 

 彩音さんと小糸さんの説明を聞いて、納得してしまった。確かにそれは分からないかもしれない。それに、調べてはいるんだなこれ……

 つまり、魔力の込めすぎ、なのかな?魔力切れの原因って……いや、もしかしたら、魔力全消費+武器破壊なんてとんでもないことになっている可能性もあるから、やっぱり調べた方がいいかもしれない。

 小糸さんが話を変えるためか、軽く咳払いをした。

 

「……僕が来た本題としては、トロルの討伐に関してなんだ」

「あ、どうなったの?」

「あの一撃で討伐は完了した。2人の取り分はここに」

 

 ペラっと紙を彩音さんに。私は先に見せてもらったけど、結構びっくりした。

 紙を見ていた彩音さんがギョッとしたような声を上げる。

 

「えっと……え"!?こんなに!?」

「あのトロルは正式に深層相当の特殊個体と認定された。そうともなると、報酬も相応のものになるさ」

「うわぁ……あと、ドロップアイテムなんてもらっていいの?そっちの取り分足りなくない……?」

「こちらは死体を貰った。それに、()()こちらの方がいいんだ」

「なんでです?」

 

 正直、ここが一番の謎だった。とはいえ、今はって言ったし、何かあるんだろうな……

 小糸さんはなんてことはないように説明を続けた。

 

「端的に言うと、遠征が失敗してね」

「え!?」

 

 遠征失敗!?サラッと言う話じゃないよそれは!お母さんのことを思い出して固まってしまった私を置き去りにして、説明が続く。

 

「今回、『白の騎士団(ホワイトナイツ)』は厳島ダンジョンを踏破するつもりで挑んだ。最悪の場合、25階層まであることを見越して資源を用意したのだが、()()()()()()()

「え、そんなに深いの?」

「ああ。さらに、25階層からさらに手強いモンスターが出てね。多くの資源を失いながら撤退。人的被害こそ無かったものの、大赤字になってしまってクラン全体で金策に駆け回っている状態なんだ」

 

 人的被害なしということで、ホッとした。変な汗が出ている。深呼吸してちょっと落ち着こう。

 

「でも、ドロップアイテムの方が高くない?それに、死体なんて売れないんじゃ……?」

 

 彩音さんの指摘は私も思ったことだ。どう考えてもそっちのほうが安いし、ドロップアイテムの方が高値がつく。

 その質問に、小糸さんは首を横に振った。

 

「深層相当の特殊個体のドロップアイテムを売却するのは、ほぼ不可能だ。もし売れたとしても、どれだけ時間がかかるか……」

「……どうしてですか?」

「単純に、希少価値が高すぎる。完全なる一点物だからね。『世界一大きな魔導鉱晶』みたいなものさ」

 

 あ、あぁ……あれかぁ……小糸さんの説明である事件を思い出す。

 10年ほど前に、アフリカで『世界一大きな魔導鉱晶』が発見された。サイズとしては、私くらいのサイズであり、当時かなり話題になったのだが……

 そのサイズ故、あまりにも希少価値が高くなりすぎて、買い手が現れるまで5年もかかったのである。

 確かに、今回のドロップアイテムもそんな感じかもしれない。革の方は、革になっても魔力吸収効果残ってたしな……骨の方はどうだか分からないけど、きっと何かあるだろう。

 

「だが、死体なら買い手があるんだ」

「え、そんなところあるの?」

「『魔女の大鍋(コルドロン)』さ。すでに金額まで話が来ている…………100億だそうだ……」

「「…………」」

「流石に金額が高過ぎると、幹部陣が交渉中だよ。まさか売る側が値切ることになるとは思わなかったが……」

 

 疲れたような小糸さんを横目に、彩音さんと顔を見合わせてしまう。なんかもう全てがおかしい。でも、それを、『魔女の大鍋』だからの一言がすべて解決する辺りが何とも言えない。

 それに、値切るのもよくわかる。だってこれで彼らに貸しを作ってみなよ。あとで何で請求されるか分かったものじゃない。

 

「そんなわけで平時ならともかく、今はドロップアイテムを手に入れたところでどうにもならないのさ。それと、2人に()()()()()()()()()そうだ」

「私たちに、ですか?」

「クランへの勧誘がしやすくなる。とのことだ。だから、聞いておきたいんだが、『白の騎士団(ホワイトナイツ)』に入るつもりはあるかい?」

 

 小糸さんが微笑みながら問いかけてくるが……いやそれ先に言うべきじゃなくない?伝えるべきではないと思うんだけどな、さっきの情報。

 とはいえ、その情報がなくても答えは決まっているんだけども。

 

「申し訳ありませんが、入るつもりはありません」

「夢希ちゃんが入らないなら私も」

「分かった。上にも伝えておこう」

 

 もっと食い下がられるかと思ったら、あっさりと小糸さんが話を切り上げた。なんか怪しいような……聞いてみるか。

 

「……いいですか?そんなにあっさり」

「そもそも、僕はこの話を聞いたとき童部に相談したんだ。彼女の方が詳しいからね。そうしたら、鼻で笑っていたよ彼女は。その時点で望み薄なのは分かっていた。それに、しつこく誘って悪感情を抱かれたらそれこそ……だろう?」

 

 鬼灯……いやまああいつなら、私が入らないのは分かってるだろうしなぁ……『白の騎士団(ホワイトナイツ)』がいいクランなのは間違いないが、私の冒険を続けるにあたっては障害になりかねない。

 それに、小糸さんの言う通り、しつこく勧誘されたら流石に嫌な気持ちにもなる。

 

「……小糸くんは大丈夫なの?」

「そもそも、僕が窓口に選ばれたのは、美空の元パーティメンバーであること、物前さんの幼馴染である童部のパーティリーダーであることの2点からだ。その僕でダメなら無理だと、上も判断するさ」

 

 なるほど、確かに『白の騎士団(ホワイトナイツ)』の中で、勧誘という活動を卒なくこなせてかつ、最も私たちに近い人が小糸さんなのか。

 

「まぁ、そんな裏があるとはいえだ。希少なドロップアイテムであることに違いはない。そこで、だ」

「?」

「美空、武器を作ったらどうだろう?今回のドロップアイテムで」

「え、このドロップアイテムで……?」

 

 小糸さんの案に彩音さんが固まった。いい案ではあるんじゃないかな?

 特殊な効果が付いているドロップアイテムで、それを元に武器を作ると特殊な能力が付いた武器になる。分かりやすいものだと、深層にいるファイアドラゴンのドロップアイテムを使って作った炎の出る剣。とかである。

 それらはユニーク武器と言われていて、冒険者の憧れみたいなところがある。

 今回のドロップアイテムも、特殊な効果が付いているので、ユニーク武器が作れるだろう。どういう能力になるかは分からないけども。

 

「ユニーク武器持ちになれるね、彩音さん」

「いやいやいや!そ、そんなの持てないよ!ユニーク武器なんてそんなすごいもの!夢希ちゃんの方が適任だって!」

 

 彩音さんが悲鳴を上げるのもちょっと分かるんだけど、私に今回のドロップアイテムで作った装備品はちょっとなぁ……魔力吸収する装備品とか、魔法職には邪魔でしかないし……

 

「だが、事実として美空の武器がなくなってしまったのは間違いないし、何時までも手元に置いておくわけにもいかないだろう?」

「私が使うとなると、魔力吸収されちゃってむしろ邪魔だし、彩音さんが使うべきだと思う」

「…………まぁ、それもそうだけど……でも私が、ユニーク武器なんて……」

 

 中々煮えきらない彩音さんに対して、小糸さんがすっと近づき、何やら耳打ちを始めた。絶妙に聞こえないんだけど、なんだろう?

 

「……美空、言い方は悪いが、それくらいの装備がないと彼女に付いていくのは厳しいんじゃないか?」

「う……」

「レベルや技術が一朝一夕で身につくわけじゃない以上、そういったものでの底上げは必須だと思うが」

「……そうだね。ありがとう……でも、ちょっと考えさせて」

「ああ、最終的に決めるのは美空だ」

 

 うん?何やら話が付いたみたいだけど……何を話してたんだろうか?

 

「さて、ここで話すことも終わったし、美空も一緒に行こうか」

 

 私の横くらいまで戻ってきた小糸さんが話を進める。

 気になるけど、まぁいいか。あとで彩音さんに聞けば。

 床から立ち上がって、その話に乗る。そもそも、今日病院に来た理由はもう一つある。

 

「そうですね。じゃあ、一緒に行こう彩音さん」

「え?どこに?」

()()()()()()()

「……え!?」




難産。利益がどうこうの話になると頭がおかしくなりそうだ……!
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