【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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配信に興味のない私とお見舞い

 

「な、なんで鬼灯ちゃんが……?まさか怪我したの!?」

 

 鬼灯の入院を聞いて、彩音さんがすごく慌てている。確かに、今のタイミングであいつが入院してるとなると、その可能性を考えるだろうけど……

 

「いや、特にそういうわけではないんだけど……」

「まぁ、会えばわかるさ……」

 

 思わず、小糸さんと一緒に彩音さんから目をそらしてしまった。

 いや、その、まあうん……会えばわかるよ……

 

「……なんで二人とも目を逸らすの?ねえなんで?」

 

 彩音さんの疑問には申し訳ないが答えられなかった。

 

 

 童部鬼灯の表札がかかった部屋の扉をノックすると、中から声がする。

 

「どうぞー」

 

 扉を開けて部屋に入る。ベッドの上に座っている、ジャージ姿の鬼灯が目に入る。

 話は聞いてたから、あんまり心配してなかったけど、元気そうだね。

 

「おー、夢希。彩音さんと淳平までいんじゃん」

 

 私の後ろから入った彩音さんが私を追い抜いて鬼灯の側まで足早に近付いていく。私と小糸さんは、なんで入院してるのか知っているから、ゆっくりついていく。

 

「ホントに鬼灯ちゃんだ……大丈夫?」

「おん。ヘーキヘーキ。そっちこそ大丈夫なん?」

「私はただの魔力切れだし……鬼灯ちゃんこそどうしたの?」

「飲み会中にめっちゃくちゃ腹痛くなって、トイレ行ったけどどうにもならんから救急車呼んでーの今」

「え!?大丈夫なの!?」

 

 彩音さんがびっくりしてちょっと大きな声をあげた。病院なのは分かってるからか、ちょっと声が小さいのが面白いな……

 

「んな大した事ないってば」

「いやでも、お腹痛くて救急車呼んだんでしょ!?大丈夫なの!?」

「大丈夫大丈夫。ちなみに、腹痛の原因は唐揚げの食いすぎね」

 

 鬼灯の返答に、彩音さんの時が止まった。

 事の経緯としては、昨夜お疲れ様会ということで討伐隊メンバーでご飯に行っていた。彩音さんがいないのに、何故?と思うかもしれないが、『白の騎士団(ホワイトナイツ)』では何かあったあとは、今いるメンバーでお疲れ様会をするのだそうだ。

 その後、怪我やらで欠席していた人も含めての本番の打ち上げをやるのが定番なんだとか。だから、後日彩音さんも含めて打ち上げをしたいと言っていたから、あとで話しておかないとね。

 そして、その途中で鬼灯がお腹が痛いとトイレに行ったあと、帰ってこないどころか救急車で運ばれて行ったんだから、あのあとの雰囲気がちょっとヤバかったんだよね……

 ただ、今日の朝、原因を聞いたあとは全員が鬼灯に酒を奢らせると一致団結していた。そんなところでクランの絆を見せないで欲しかった。

 原因は唐揚げを用意した私だと言ったのだが、鬼灯に無理矢理食べさせたわけではなく、自分の意志で食べた結果なのだから全責任は鬼灯にあるとのことだった。

 なお、この状況を鬼灯はまだ知らない。頑張ってくれ鬼灯。

 

「…………えぇ……?」

「僕も聞いたときは困惑したよ……」

「私も心配したのがバカみたいだったよ……」

 

 再起動した彩音さんの困惑100%の声に、小糸さんと私の呆れた声が重なる。いやもう、本当に呆れたよ……なんだ唐揚げの食べ過ぎって……確かに、食べすぎてもお腹痛くなるだけだし!とは言ってたけど、まさか入院することになるとは思わないよ。本人も思ってなかっただろうけども。

 そんな声に晒された鬼灯はというと、ちょっとバツが悪そうにしていた。

 

「なんか小麦粉食べ過ぎたのが悪かったみたいでさぁ……」

「なんだそれなら――」

「腸につまっちったんだよねぇ……」

「それ大丈夫なの!?」

「昨日の時点で手術とか終わって奇跡で回復してもらった。傷すらねぇもん。ほら」

 

 着ていた服をはだけさせてお腹を見せる鬼灯から、すごい勢いで小糸さんが顔を背けた。色んなところで苦労してそうだな小糸さん……

 鬼灯は、体質上小麦粉を分解出来ないらしく、お腹の中でくっついてしまってそれが腸で詰まってしまったのだという。そのため、多少ならともかく大量に取るのは厳禁。とのことだが、本人は食べられるものが増えたと喜んでいた。

 なんでも、某チェーン店のフライドチキンを食べてみたかったんだとか。あとで奢ってあげようと思う。

 

「結果、今はただの検査入院だから、暇でしゃあねぇんだよなぁ……身体動かせないし、刀振れないし……酒は飲めるけど、つまみがないのがつらい」

 

 完全に不貞腐れてるな鬼灯……いや、まあわかるけどさ。かなり暇そうだし。身体動かせないのがキツイタイプだしね。

 まあでも、そういうことならこれ選んで正解だったかな。収納魔法から箱を取り出して鬼灯に渡す。

 

「……一応、お見舞い持ってきたよ」

「おん?おーサンキュー……あのさぁ夢希……?」

「うん?」

「なんで魚肉ソーセージ……?しかもなんか詰め合わせだし」

 

 鬼灯がなんだか物言いたげな表情で私を見ている。そう、私が選んだのは、魚肉ソーセージの詰め合わせセット、お値段1980円である。デパートで見かけてちょうどいいかなって思ったのだ。  

 ちなみに、なんで魚肉ソーセージなのかというと。

 

「お見舞いっていうと基本的に消え物だけど、鬼灯は定番の果物食べられないじゃん?」

「おん」

「で、お酒は私買えないし」

「おん。そこはしゃーない」

「そして、お肉は基本的に火を通さないと食べられないなって」

「おん。確かにそうだな」

「となると、魚肉ソーセージかなって」

「…………まぁ、なんかお高いやつっぽいし、ありがたくもらっておくわ……」

 

 なんか返答まですごい間があったけど、そんなに変かな魚肉ソーセージ。美味しいのに。それに、魚だったら、何でもいけるのが分かったって言ってたから持ってきたのにな……

 それに、蓋を開けて中身を見てみなよ。面白いよ?

 

「……色んなやつ入ってるから楽しめると思う」

「楽しめるったって、魚肉ソーセージだろ?そんなに色々……うわマジで色々あんじゃん。こっちはアジ、これはホタテで、こっちにはノドグロ……え、サメまであんの?すげぇなこれ……」

「でしょ?」

 

 鬼灯が次々と中のソーセージを取り出しては驚いている。いや、本当にすごいんだってそれ。本当に色々入ってるんだから。

 

「おん。サンキュー!」

 

 私にお礼を言うやいなや、収納魔法から日本酒を取り出した辺り、本当にこいつはさぁ……まぁ、本当に元気そうで良かったよ。

 笑顔で日本酒を片手に、ホタテの魚肉ソーセージをかじり始める辺り、完全に治ってはいるみたいだし、これなら問題なさそう。

 

「まったく、彼女は本当に……いや、らしいとは思うが」

「ね、安心したけどさ……」

 

 後ろで彩音さんと小糸さんが呆れつつも安心が混じったような声色で話している。

 

「で、夢希と彩音さんは分かるけど、淳平はなんでいんの?」

「ひどくないかい?」

「だってお前、今朝来たじゃん。今もまた来る理由がないじゃん」

 

 え、そうなのか。というか、今朝の時点で来てたってことは、彩音さんの病室に行く前に寄ってたのかな?

 

「確かに話があるから来たのは事実だが……」

「マジ……?」

「連絡が一つ、悪い話が一つ、良い話が一つあるが、どれから聞きたい?」

 

 小糸さんが指を立てながら話していく。

 おお、映画みたいな言い回しだ。結構かっこよくていってみたいよね。そのセリフ。

 

「……連絡から」

「連絡に関しては物前さん、美空にも関係があるので、二人も聞いてほしい」

「はい」

「うん、何?」

 

 私たちにも関係があること……?

 

「このあと、ギルドで今回の件の表彰式がある。その後メディアのインタビューがあるんだ」

「そうなんですか?」

「そうなの?」

 

 思わず彩音さんを顔を見合わせてしまった。表彰式があるのは分からなくはない。前にもやったことあるし。といっても、適当に賞状もらって終わりである。あとでお金が振り込まれる感じ。でも、インタビューってなんだろう?

 

「ああ。そこで、美空にはインタビューに参加してほしいんだ」

「え!?」

「君がパーティリーダーだろう?」

「そういうことね……私、インタビュー初めてなんだけど大丈夫かなぁ……?」

 

 不安そうにしている彩音さんに小糸さんが話を続ける。

 

「僕がちゃんとフォローするから安心してほしい。それに、いい方は悪いが……()()()()()()()()()

「え……」

「失言狙いの記者なんかもいるからね」

「うわ……」

「いるんですね、そういうの……」

「週刊誌としてはネタになるんだろうさ。理解できないが」

 

 眉を顰める小糸さんに心底同意する。本当に理解できない。

 そこで、蚊帳の外になっていた鬼灯が声を上げた。

 

「で、そこにボクは何の関係があるのさ」

「口裏合わせだ」

「あぁん?なんで?」

「二人は今回の件でその有能さを示しすぎてしまった」

 

 え、何か悪いだろうか……?というか、示しすぎたってなんだ……?

 

「君たちは無所属だ。間違いなくクランの勧誘が凄まじいことになる」

 

 あー……確かにそうだろうけど、そんなに大変なことだろうか……?

 

「それって悪いことなの……?」

「美空の家に三桁を超える勧誘の連絡が来てもいいなら構わないが……」

「え”!?」

「……そんなに来ます……?」

 

 驚きすぎて変な声を上げている彩音さんとともに驚く。いや、流石にそんなに来ないでしょ。

 

「間違いなく来るだろうね」

「来るだろうなぁ……ダメ元で適当に送るところとか絶対いるから。ボクにも来るくらいだぜ?」

「そうなんだ……」

 

 『白の騎士団(ホワイトナイツ)』に所属してる鬼灯に対してまで、勧誘送るようなクランなんてあるのか……確かにそういうダメ元で適当に送るようなクランから大量に来たら嫌だな……私に直接被害が出なさそう。というのもなおさら嫌だ。

 

「そこで、口裏合わせだ」

 

 小糸さんが話した口裏というのは、結構大胆な話だった。

 まず、今回の件の私たち二人の功績をすべて『白の騎士団(ホワイトナイツ)』のものにしてしまい、私たちは鬼灯の指示で避難誘導に当たり、その後トロルに討伐隊を誘導しただけ。ということにする。

 鬼灯とともに初動対応していたのは『白の騎士団(ホワイトナイツ)』のメンバーであることにしてしまう。彩音さんの最後の一撃もだ。これに加えて、インタビューに私を出さずに彩音さんだけで対応することで、さらに私を隠す。

 それでも、情報通のクランは見抜くだろうが、それでも、報道だけみて勧誘に走るようなクランはいなくなるだろう。ということだった。

 

「ゼロにはできないんですね」

「それは不可能だ。間違いなくそういったクランは『白の騎士団(僕たち)』の中にそういった芸当ができるメンバーがいないことを知っている。流石にそれはどうにかできるものじゃない」

「……もしかして、さっき勧誘してきたのって……」

「二人ともうちの新人だよと言ってしまえば、勧誘されることはないだろう。でも、それが加入理由になるのはよくない」

「そーそー、ウチに喧嘩売る奴はまずいないしねぇ……」

 

 なるほど……確かにそうしたほうが、私たちの利益が大きいし……多分この話の部分も込みのドロップアイテム譲渡かな。ひどい言い方をすれば()()()()というわけだ。他にバレたら、その真意はともかく、無所属のパーティから大規模クランが功績をぶんどったことになる。

 私たちの功績が大っぴらにならないとしても、嬉しい限りだけどね。私としては今のところクランに入る気ないし。それに、名声何て物は、あると便利な時もあるけど、同時に面倒がたくさんあるというのを、両親を見ているから知っているし。

 

「私は別にいいけど、夢希ちゃんはどう?」

「私もかまいません。むしろありがとうございます」

「わかった。そのように進めさせてもらう。討伐隊にはすでに通達済みだ。童部も頼むよ」

「オッケー」

 

 根回し完璧だな小糸さん……流石未来の幹部……

 にしても、クランからの勧誘か。うーん、これからも気にしていくのは面倒くさいな……いっそどこかに所属してしまおうか?

 そんな考え事をしていたら、鬼灯が小糸さんに絡んでいった。

 

「でー?いいことってなんぞ?」

「ああ、今回の件の打ち上げが君のお気に入りの居酒屋でやることに決まった」

「マジ!?やったぜ!」

「二人もぜひ参加してほしい」

「え、いいの?」

「もちろん」

「今回の件の打ち上げだし、全員いないとな!」

「そっか……楽しみだね、夢希ちゃん」

「うん」

「で、悪い方はなんだよ?」

 

 鬼灯がちょっとワクワクしながら聞いているけど、多分その内容は……

 

「打ち上げの支払いは、全額君持ちだ童部」 

「…………いや、は?え?」

 

 無慈悲な小糸さんからの宣告に、鬼灯が完全にパニックになっている。いや、そりゃそうだろうけどさ。

 

「え、なんでそんなことになってるの……?」

「昨日の飲み会の途中で救急車で運ばれたからね、その後の雰囲気が凄まじいことになってね……」

「ああ……」

「で、原因が原因だろう?全会一致でそう決まった」

「嘘だろ……?」

 

 彩音さんも最初はフォローしようとしたみたいだけど、状況聞いて思わず黙ってしまったみたいだ。

 鬼灯は鬼灯で信じられないという表情ってこんな感じです。って教科書に乗せられそうな表情してる。

 

「今回の件の報酬がきれいさっぱりなくなるのは間違いないだろうが、まあ反省することだ」

「いや、何をだよ!?」

「自分の身体を大切にしろということさ。君の体質のことは皆知っている。それで君が苦労しているということも、不満があるということもだ」

「だったらさぁ――」

「だが、仲間が救急車で運ばれて平然としていられる冒険者はいない。大抵の怪我も病気も治せるのが冒険者なのだから、なおさらね」

「う……」

「大体、かなりの人数がすでに来たんじゃないのか?ご両親も含めて」

「……それは……うん……」

 

 目をそらして肯定する鬼灯を見ていると、明日は我が身の可能性があるなとちょっと背筋が寒くなった。間違いなく愛依も凉もめちゃくちゃ心配するだろう。

 それに、腹壊すだけだしヘーキヘーキ!と言っていた鬼灯は確かに、周りに心配されるということを考えていなかったんだろうな。いつものことだし!みたいな。わたしもちょっと心当たりがあるし、気を付けていかないとね。冒険をやめる気がないからなおさら。私も考えて食べないとね……それに、私の場合、被害者が私だけじゃないしな。

 

「童部、君は君が思っている以上に、周りから心配されているということを知ってくれ。君がどれだけ強かろうともね」

 

 小糸さんのその言葉は真摯な願いに近かったと思う。

 その言葉を受けてしばらく固まっていた鬼灯は、やがて窓の外に視線をそらした。

 

「……わかったよ。これからはもうちょい考えて動く」

「ああ、頼むよ」

 

 そのあと、私たちは病室を後にして、ギルドに向かった。

 




前回から政治の話ばっかりで頭おかしなるで……
次回は、表彰式とインタビューを飛ばして、翌日の学校に続きます。
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