【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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配信に興味のない私と勧誘

 

 表彰式なんかが終わった翌日。私は学校に来ていた。事後処理の関係で昨日は流石に休ませてもらったけど、流石に今日も休むのはね。理由も特にないし。

 

「おはよう」

「おはよう、物前さん、大丈夫だったの?」

「お、物前おはよう。無事かー?」

「うん。見ての通り無事だよ」

 

 朝、教室に入って挨拶をすると、クラスメイトが寄ってきた。彼らは思い思いに声を掛けてくれる。そのほぼ全部が心配の声だった。

 やっぱり、周りに心配かけてるよなぁ……昨日の鬼灯と小糸さんの話で思い当たるというか、引っかかる部分があったので、ちょっと敏感になってるかもしれない。

 とはいえ、冒険者である以上どうにもならないもんなぁ……なんてちょっとモヤモヤしながら席に着く。開き直れるほど私は割り切れないのが問題な気がするなこれは。

 教室を見渡すと、凉はいるけど愛依がいなかった。愛依と凉は基本的に一緒に来ているから、凉がいるのに愛依がいないってことは今日は愛依はお休みみたいだ。

 

「おはよー、夢希」

「おはよう。凉」

「…………」

「?どうかした?」

 

 凉に挨拶したら、なんだかこちらをじっと見つめられた。凉がじっと見ているときは、なんというか……猫みたいだなって思う。見た目というか、性格のせいかな。なおさら猫っぽいんだよね……

 

「んー……まぁ、後でいいかなー」

「……?分かった」

 

 なんだろう?ちょっと怖いぞ……?まぁ、いいや。後でって言ってたし、とりあえず置いておいて授業受けよ。

 

 

 時は進んでお昼休み。 

 いつものように凉と2人で食べる。愛依がいないときはこうなる。のんびりと食べていると、凉が話し始めた。

 

「夢希さー」

「うん」

「何か悩んでる?」

「…………まぁ、うん」

「やっぱりかー」

 

 うんうん。と頷きながら凉が唐揚げ弁当をパクパクしている。

 何だろうな。やっぱり分かりやすいのかな私。表情筋は死んでるんだけどな……

 

「んでー?何悩んでんのさ?」

「まぁ……クランどうしようかなって」

「クランねー。前は入る気ないって言ってなかったー?」

「そうだったんだけど、一昨日のアレでちょっと状況が……」

「えー?勧誘がたくさん来るとかそういう感じ?」

「うん。そうなるだろうねって話」

「うわー……大変そうだねー」

 

 他人事みたいに言いやがって……!実際他人事だけどね。まあ、ちょっとした愚痴みたいなものだし、別にいいんだけど。聞いてくれるだけでも結構楽になるものだよね。

 そして、凉が首をかしげながら、私に質問してきた。

 

「あれー?夢希の両親ってクラン入ってなかったんだよね?」

「うん」

「強かったんでしょ?なんでー?」

「……その」

「うん?」

 

 凉と愛依には、私の両親についても話しているから、その辺のことは分かっている。とはいえ、確かに私の両親はクランに入っていなかった。あの二人はずっと二人だけで冒険者をやっていた。おしどり夫婦で有名でもあるしね。

 とはいえ、なんでクランに入らなかったかについてはちょっとアレな話なんだよね。なので、声を潜めて凉に伝える。

 

「お母さんが全部ぶっ飛ばしたから……」

「……えー?」

 

 凉が嘘だろ?って言いたげな顔をした。私も嘘だと思いたかったよ。

 

「私に勝ったら入ってやるって言って、全部ぶっ飛ばした」

「そっかー。相変わらず夢希のお母さんはぶっ飛んでるねー……会ってみたかったなー……」

 

 お母さんの話は真面目にとるだけ無駄だとわかっているからか、けらけらと笑いながら流してくれる。そして、しみじみとした凉の一言に、私も同じように思う。

 

「私も、二人を紹介したかったよ」

「愛依は絶対猫被るねー」

「ふふ、だろうね」

 

 きっと、お母さんも二人を気に入ってくれるだろう。面白いからね。

 とりあえず、お母さんの話は今はいいから、軌道修正しよう。 

 

「まぁ、それでどうしようかなって」

「どうも何も、どっか入ればいいんじゃないのー?」

「凉も言ってたじゃん。活動内容が合わないと厳しいって」

「……モンスター食べてるのが問題になっちゃうって話ー?」

「それもあるけど、幹部候補扱いとかになると時間がね……」

「確かに、役職持ちって忙しいんだよねー……メンバー集めたり、問題仲裁したりー」

 

 なんか、経験者みたいなこと言い出したな……とはいえ、ゲームとかでもそういうのはあるみたいだし、その経験かな。凉だしな。

 どこに入るにしたって、クランに対する依頼とか、クラン内での仕事なんかは絶対にある。だけど、なるべくそれらが少ないところに行きたいなっていうのが私の考えである。

 正直、かなりわがままを言っている自覚はあるので、多少の妥協は必要だとは思う。そこまでして入る必要はないのかもしれないが、何よりも、これからもずっと勧誘され続けるのは勘弁してほしいのである。

 お母さん式撃退術はやりたくないし。できる可能性はあるけど、やりたくない。絶対に。

 

「とりあえずさー」

「ん?」

「彩音さんともよく相談しなねー?」

「……そうする」

 

 確かにその通りだ。彩音さんにも相談しないとダメだな。二人でやってるんだから。

 とりあえず、その話をする機会をセッティングするためにスマホを取り出したら、彩音さんからメッセージが。放課後に家まで来てほしい。か……なんだろうな。すごーく嫌な予感がするな……

 

「どしたの?顔色悪いよー?」

「…………」

「あー……頑張れー……」

 

 スマホの画面を見せたら、凉から可哀想な物を見る目で見られた。絶対にクラン関係だよねこれ。何があったんだろ?怖いなぁ……

 

 

 放課後、彩音さんの家について部屋に入れてもらうと、リビングに段ボールが二箱置いてあった。

 

「夢希ちゃん、どうしようこれ……」

「うわぁ……」

 

 中身は全部紙である。いやこれすごいな……全部勧誘の書類かぁ……中身を取り出してみて、二人して遠い目をするしか無かった。

 中身確認しようって言って、上から取り出すのめんどくさいからひっくり返そう!と半ばやけくそになってひっくり返したら、床が埋まったんだもん。いやこれ本当にどうしよう……?というか、冒険者は力強いからってここまで紙詰めなくてもよくない?

 現実逃避に二人でお茶飲んで一服することにした。

 

「これ、本当にどうしよう……?」

「とりあえず1個ずつ調べよっか」

「……全部?」

「全部。もしかしたら、条件良さそうな所あるかもしれないじゃない?」

「あー……確かに。それはそうかも」

 

 確かに。軽く見ただけでも知らないクランの名前とかもあるし、ホームページとかはスマホで調べられるから、それでさっさと見てしまおう。中身まで見てると埒が明かなそうなので、封筒の名前だけ見て検索をかけ、ざっくりと考える奴と断る奴に分けていく。

 断るクランとしては、まず彩音さんが一番強いとかいうクランは論外である。もうこれは新興クランとかいう領域じゃない。入るくらいなら作ったほうがマシな可能性すらあるくらいだ。

 次に、探索系じゃないところも除外。なんでか生産系のクランからもお誘いが来てたんだけど、これは多分ドロップアイテム目当てだね。一点物だし。

 最後に、評価が悪いところ。これは単純に、問題行動してる人が多くいるとかそういうところ。ガラが悪い人が集まってるクランなんかも中にはあるんだよね。力こそ正義みたいな。冒険者的には間違ってないかもしれないけど、ちょっと嫌だ。

 そんな感じで分けていくと、結構量が減った。いやまぁ、半分くらいになっただけなんだけどさ……嘘でしょ、こんなにあるの……?

 

「うーん、まだこんなにあるんだ……」

「……夢希ちゃん、これ……」

「うん?………え、なんで……?」

 

 彩音さんから渡された封筒には、煙を出してる大鍋の封蝋。『魔女の大鍋(コルドロン)』からである。いや、なんで……?

 いや、来ること自体はおかしくはないといえばない。あれだけ普段から出入りしてるんだし。だけど、そもそも私に連絡入れればよくない?わさわざ封筒で送ってくる必要ある?しかも彩音さん宛てに。

 中身を取り出して、読んでみる。丁寧な文章で書いてある内容を要約していくと……

 

「えっと……どちらかというと彩音さん宛だね」

「え、私!?魔法職のクランでしょ!?」

 

 彩音さんの驚きはまさしくその通りなんだけどね。『魔女の大鍋(コルドロン)』は魔法職専門のクランだ。魔法の開発研究が中心だから、近接職がいてもやることがないんだよね……

 

「えーと……新設する部門に来てほしいってこと……?」

 

 ということらしい。『魔女の大鍋(コルドロン)』で新しく部署を作るにあたって、近接職を取り込みたいみたいなのである。でも、魔法職専門のクランっていう印象が強すぎて入ってくれる人がいない。だから、知り合いに声をかけたって感じなのかな……とは思ってる。

 なお、性格とかそういうのはもう言うまでもないことだから割愛する。

 と、そこで私のスマホに着信があった。一言断って確認すると白石さんからだった。勧誘のことだろうか?見たことをどうにか察知したとか……?だとしたら怖いし、出来そうなのがなお怖い。廊下に移動してから電話に出る。

 

「もしもし?」

『やあ、夢希。今大丈夫かい?少し仕事の話があるんだ』

「大丈夫だよ。解析?」

 

 仕事か。ちょっと楽しみかもしれない。

 大体この仕事っていうのは、ユニークスキルになっている魔法の解析の手伝いなので、私としては新しい魔法を知ることが出来てとても楽しいのである。

 

『いや、解析ではないんだ』

「そうなの?」

『一言で言うと……子守りだね』

「…………鬼灯に頼んだら……?」

 

 子守りって……絶対に鬼灯の方が適任だと思うよ。少なくとも私みたいな無表情人間に頼むことではないと思う。怖がられるでしょ……

 続く返答を聞いて、行くことにしたけど。

 

『いや、夢希の方が適任なんだ。君と同じような境遇の子でね。学校について教えてあげてくれないかい?』

「……わかった。明日でいい?」

『すまないね。頼むよ』

 

 明日の放課後に寄るとして……あ、そうだ。あの書類について聞いておこう。

 

「あとさ、勧誘の書類来たんだけど、なんで?」

『うん?私は知らないなそれに関しては……だがまぁ、候補ではあるんだろう?』

「それはそうだけど……」

 

 確かに、候補ではあった。間違いなく今の活動についてとやかく言われることはないと断言できる場所だから。彩音さんに会うかどうかがかなり微妙な気がするだけで。

 

『明日、彩音さんも一緒に来るといい。話だけでも聞いたらどうだい?』

「……分かった。聞いてみる」

『ああ。じゃあ、また明日。頼むよ』

「うん。また明日ね」

 

 リビングに戻り、他の書類とにらめっこしていた彩音さんに声を掛ける。

 

「彩音さん、明日って時間空いてる?」

「空いてるけど、どうしたの?」

「明日『魔女の大鍋(コルドロン)』に行く用事が出来たから、一緒に話だけでも聞きに行かない?」

「ホント?一回聞けにいたらうれしいなって思ってたから、ちょうどいいよ」

 

 よし、彩音さんの同意も得たし、明日行こう。白石さんにメッセージを飛ばしておく。説明会じゃないけど、何か必要かもしれないからね。

 その後帰って来た返信は、特に用意はいらないってことだったので、そのまま行こうと思う。

 それに、私は私で考えておかないとなぁ……学校について、か…… 




人生初のぎっくり腰になりました。マジで動けなくて笑っちゃったんですが、その笑いで激痛が走るとかいう地獄。

皆さんも、重いものを持ち上げる時は、膝で持ち上げるようにしてくださいね。腰で持ち上げるとイキます。
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