【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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何度確認しても、毎回一個は誤字があるの本当にどうにかしたい。


学校を知らない私と夢希ちゃん

 

「……?誰ですか?」

 

 中庭で陽向と遊んでいたら、初めて見る人がやってきた。

 私よりちょっと小さくて、真っ白でふわふわした髪をしてて、何だかワンちゃんみたいで可愛い。あとで触らせてくれないかな……

 顔はお人形みたいに綺麗で、深い青の目がちょっと怖い。何だか吸い込まれそう。あと、すごい無表情。見たことないくらい無表情。

 

「はじめまして」

 

 問いかけたら、すごい無表情のまま挨拶してくれた。ぜ、全然表情変わってない……実は人形だったりしないよね……?

 指を見てみるけど、玉とかはないから、多分人……?

 

「あ、夢希ちゃんじゃないっすか!お久しぶりっす」

「犬束さんは久しぶり」

 

 陽向の友達……なのかな?ということは人……だよね?同い年くらいなのかな?

 えっと、なんて呼べばいいだろう?年上の人だし……

 

「……夢希ちゃんさん?」

「夢希ちゃんでいいよ。敬語もいらない。美月ちゃん。でいいかな?」

「いいよ。夢希ちゃん」

 

 無表情のままだけど、声はとっても優しかった。ちょっと怖くなくなった。それに、陽向みたいに話しかけて大丈夫そうで良かった。

 この人が、白石さんが言ってた人だ。私に、教えてくれる人。

 

「…………ねぇ、夢希ちゃん、陽向」

「うん、何?」

「なんすか?」

 

 陽向にも一緒に、質問する。

 

「中学校ってどんなところ?」

 

 私――玉ノ井美月は、学校というものに通ったことがない。私は、()()()()()()()()()()だから。魔法が感情のままに発動してしまって危ないからと、行かせてもらえなかった。でも、中学校からは学校に通えることになった。

 私みたいに、産まれた時から冒険者な子供は、パパとママ、特にママが冒険者だと時々産まれてくるんだって。私以外にもちょっとだけいるって言われた。

 今、目の前にいる夢希ちゃんがその人だって、白石さんから教えてもらった。夢希ちゃんも、私と同じように中学校から学校に通ってるんだって。

 私の質問に、陽向がニコニコと少しだけしゃがんで視線を合わせて答えてくれる。

 

「楽しいっすよ!小学校に比べると授業難しいし、補習とかもあるっすけど……でも、その分色んなことが出来るようになるっす!部活とか委員会とか!」

 

 ………?なんだろうそれ。全部分からない。ほしゅう、ぶかつ、いいんかい……?いや、聞いたことはある。パパとママと言ってたから。でも、分からない。

 陽向の言葉がよく分からなくて固まっていたら、夢希ちゃんが静かに話してくれた。

 

「ここの会議室と同じくらいの大きさの部屋に、君と同い年の子がたくさんいて、爆発音があんまりしないところ」

 

 なんとなく、想像がついた。私と同い年の子がたくさん。そこはちょっと分からないけど、少しだけ想像が出来た。

 

「静かなところ?」

「ううん、代わりに人の声がうるさいんだ」

「どのくらい?」

「テンションの上がった『魔女の大鍋(コルドロン)』の人たちくらい」

「……それはうるさいね」

 

 ここの人たちは、普段は静かに机に向かっていることが多いのに、ある時突然大きな声で騒ぐ。びっくりするし、うるさい。

 あの人達がたくさんいるところを想像して、笑みが溢れる。うるさいって言っちゃったけど、賑やかの方が良かったかな……?

 

「あっ、オッケーっす。とりあえず行ってくるっす。じゃあ、夢希ちゃん、美月ちゃん。また今度っす!」

「ぁ、うん。またね陽向」

「またね」

 

 考えている間に、夢希ちゃんと何やら話していた陽向が何処かに行ってしまった。夢希ちゃんと2人っきりで上手に話せるかな……?

 その時、遠くから爆発音がして、またやってる……なんて呆れていたら、夢希ちゃんもそう思ってたみたい。無表情だけど、目が呆れてる。

 なんだかおかしくて、笑ってしまった。親近感がわいてきて、今ならお話しできそうな気がする。

 そう思っていたら、夢希ちゃんから話しかけてきてくれた。

 

「美月ちゃん」

「うん、何?」

「さっきの魔法、教えてくれないかな?」

「教え、る……?」

 

 夢希ちゃんの言葉にびっくりしてしまう。普通の魔法のスキルならともかく、ユニークスキルの魔法なんて、教えるも何もないんじゃ……?

 

「私のスキルだとね、ユニークスキルでも使えるんだ。とっても綺麗だったから、私も使ってみたくて……あ、嫌だったら断ってくれていいからね」

 

 夢希ちゃんがそわそわと視線を動かしながらお願いしてくる。なんだか可愛い。それにしても、すごいスキルだなぁ……

 嫌だったらっていうけど、一緒にシャボン玉を飛ばせたら、きっと楽しいよね。

 

「うん、いいよ」

「本当?やった!」

 

 目を輝かせてはしゃいでる夢希ちゃんを見てると、なんだか妹ができたみたい。小さくてかわいいし。

 そのあと、夢希ちゃんにシャボン玉を作るところを見せたり、割らないようにするにはどうしたらいいかなんかを教えてあげたら、本当にできるようになっちゃった。すごい。

 

「威力は残念だけどね」

「ぺちって感じだもんね」

 

 夢希ちゃんのシャボン玉は、爆発してもぺちって感じの音しかしない。大きくしたら、やっとパンッって感じ。でも、綺麗なシャボン玉になった。だから、二人で中庭を埋め尽くすくらいの量を飛ばして遊ぶことにした。

 

「とっても綺麗だね」

「うん!」

 

 中庭いっぱいに浮かぶ水色のシャボン玉。太陽の光でキラキラして本当に綺麗。夢希ちゃんが魔法で椅子を作ってくれたのでそこに座る。夢希ちゃんと並んで座って、一緒にシャボン玉を眺めてニコニコしちゃう。

 夢希ちゃんは魔法の使い方が上手だ。私が初めて使った時は、まっすぐ飛ばすことすら大変だった。ちゃんと制御していないと風に流されちゃうんだ。あとで教えてもらおうかな……

 少し無言の時間が続いて。私はまた不安が出て来た。学校に行くのは楽しみだけど、不安だってある。特に友達とか……ひとりぼっちになっちゃったらどうしよう? 

 

「……私、友達出来るかな?」

「それは美月ちゃん次第かな。他のみんなは、小学校の時からの友達とかもいるから……」

 

 夢希ちゃんの言葉は、きっと体験してきたものだからなのか、重みみたいなのがあった。確かに、みんなは小学校に通ってるんだもんね。

 

「夢希ちゃんは出来たの?」

「出来たけど、私から動かなかったから半年以上いなかったよ」

 

 当たり前みたいに言う夢希ちゃんを見て、なんだか不安になる。友達がいない……とか?いや、そんなわけないよね?

 

「何人?」

「2人」

「……少ないね?」

 

 友達百人〜なんて歌もあるくらいだから、たくさん出来るものだと思ってたんだけどな……いやでも、2人だけは絶対に少ないと思うな。

 私の言葉に夢希ちゃんは苦笑した。

 

「……確かにね。でも、大事な友達が少しいれば大丈夫だよ。みんなと仲良くしなくちゃいけないわけじゃないから」

 

 夢希ちゃんの言葉は、結構衝撃だった。

 パパとママは、クラスのみんなとは仲良くしなさいって言ってたから。私も、想像はついてなかったけど、小さな部屋の中で、仲が悪いのは良くないと思ってたから。

 

「……そうなの?」

「そうだよ。喧嘩しなければ大丈夫。私もクラスに苦手な人いるし」

 

 グイグイ来るような人とかね。なんて夢希ちゃんはボヤいていた。グイグイ来るような人……『魔女の大鍋(コルドロン)』の人達みんなそうだよね。確かに私もちょっと苦手だな……

 

「……そういう人とはどうしたらいいの?」

「特に何も。うーんそうだな……たまに話すけど、ほとんど話したことない人。くらいの距離感で大丈夫」

「そうなんだ……」

 

 なんだか、夢希ちゃんの話を聞いていると、パパやママの話と全然違う気がする。ママがとっても話し上手だからなのかな……?陽向に似てる感じがするし。パパは静かだけど、話すのが上手なんだよね。私もそうなりたいな。

 私は何となくだけど夢希ちゃんに似てる気がするから、全然違うって思うのかもしれない。

 

「もし、グイグイ来られたら?」

「その時は嵐が過ぎ去るまで耐える。相槌はうつけど、こっちからは話さない。話せないの方が正確だけどね……無視するわけにもいかないから……」

 

 夢希ちゃんの目がどんどん死んでいく。そ、そんなに怖い人……あ、小川さんみたいな人かな。確かにあんな人に来られたら、耐えるしかないかも。私もどうにか出来ると思えないし……

 魔法について教えてくれる誠一さんからは、無視して逃げていいとは言われてるから、話の途中ですみませんって言って逃げてる。話し始めると止まらないんだもん。

 夢希ちゃんが一度大きく首を横に振ったあと、私の方を向きなおした。

 

「美月ちゃんは、勉強は大丈夫そう?」

「大丈夫だけど……大変?」

「ある程度はね。難しくなるし、覚えるものも多いから。でも、分からなかったらご両親や、『魔女の大鍋(コルドロン)』の人たちに聞けばいいよ。私でも大丈夫」

 

 私は学校に通ってないけど、ちゃんと勉強はしてる。パパがたくさん褒めてくれるから、すごく楽しい。大変な時もあるけど、とっても楽しい。学校の勉強だけじゃなくて、他の勉強も色々させてもらってる。私の知らない世界がたくさんあるんだって知れるのは、本当に楽しい。これをママに言ったら『冒険者の素質がある』って言ってくれた。

 

「夢希ちゃんは、どうして冒険者になったの?」

「……やりたいことがあったから」

「やりたいこと?」

「そう冒険者になってやりたいこと。美月ちゃんは何かあるの?」

 

 なんだかはぐらかされたような気がする……

 私は生まれた時から冒険者だけど、だからって仕事としての冒険者にならなくちゃいけないわけじゃない。でも、ママのカッコいいところをたくさん知ってるから、私もそうなりたいなって思ってる。私の夢だと思う。

 

「……ママみたいになりたいの」

「お母さん?」

「うん。あのね、とっても優しくて、かっこいいの」

「そっか……それはとってもいい夢だね」

 

 夢希ちゃんが微笑みながらそう言ってくれた。笑った顔すっごく可愛い!いつもそうしてればいいのに。

 あ、元の無表情に戻っちゃった。可愛かったのに。そうだ、ちゃんと聞こう。

 

「それで、夢希ちゃんはなにがやりたかったの?」

 

 あ、すごい微妙な顔した。表情変わってないのにわかるの、なんだか不思議だな……

 

「……モンスターを食べたかった」

「……え?」

「モンスターを食べたかったんだ。誰もやっていないし、何より面白そうだし。実際、美味しいモンスターは本当に美味しいんだよね」

「えぇ……?」

 

 夢希ちゃんが目をそらしながら話してくれた内容に困惑しちゃった。モンスターを食べたいって……何?それと、美味しいモンスターは美味しいってどういう……?

 でも、ちょっと気になるなぁ……私の知らない世界だもん。それに、美味しいモンスターもいるみたいだし。

 

「私も食べてみたい」

「ぁぅゑ?」

 

 なんかすごい変な声でたね、夢希ちゃん。そんなに驚くかな?

 

「モ、モンスターだよ?」

「うん、でも美味しいんでしょ?」

「それはそうなんだけどね……お魚とお肉だったらどっちが好き?」

「お魚」

「わかった。今度持ってくるね」

「本当?やった」

 

 やった、モンスターを食べられる!どんな味なのかな?お魚って言ってたし、お刺身とかお寿司で食べられるのかな?

 なんて色々楽しみに考えていたら、夢希ちゃんがまた微笑みながら私を見ていた。やっぱり笑ってる顔可愛いなぁ。でもやっぱりすぐに無表情に戻っちゃうね。

 

「そうだ、連絡先交換……できる?」

 

 スマホを取り出す途中で夢希ちゃんが固まった。変な体勢で面白いな。

 

「うん、スマホ持ってるよ」

「じゃあしようか」

 

 夢希ちゃんと連絡先を交換する。とっても面白いお姉ちゃんみたいなお友達ができてうれしいな。

 交換した連絡先をにまにまと眺めていたら、陽向と一緒に綺麗なお姉さんがやってきて、その人とも交換した。彩音さんって言って、夢希ちゃんとパーティ組んでるんだって。

 夢希ちゃんと交換したことを言ったら、自分よりも早く交換するなんてずるいっす!!って陽向が怒ってたのが面白かった。陽向よりも先に交換したこと、しばらく陽向に自慢しよ。

 

 

 

 




次回は配信の予定です。
多分
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