【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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配信に興味のない私とスパインポルポ解体新書⑵

 

 煽り続ける鬼灯に対して、流石にムカついた私は、とりあえず捕まえて、ほっぺた辺りを好き放題すると決めた。柔らかそうなほっぺたをこね回してやる……!

 《身体強化》を発動して全身を強化し、《魔力放出》で推進力をさらに生み出して突っ込む。

 完全に不意打ちだったのに、当然のように避けられた。ちっ……

 

「あっぶな!なんだよとつぜ、ん……」

「ほっぺたこね回してやる……!」

「いやキレすぎだろ!?」

 

 鬼灯が悲鳴を上げるけど、君のせいだからね……!

 脇目もふらずに逃走を開始する鬼灯を全力を追いかける。

 

 "ブチギレてて草”

 "今何やった???”

 "速すぎて映像ブレッブレだったわw”

 "仕返し内容可愛いw”

 

 八王子ダンジョンの1層を、縦横無尽に駆け回る。こっちは鬼灯よりもレベルも上だし、《身体強化(ストレングス)》の熟練度も上、《魔力放出》による加速まで使ってるのに、捕まえられない。

 あっちも《身体強化》は使ってるけど、それにしたってだよ。私がこういう動き苦手なのもあるんだろうけど!

 私が得意なのはあくまでも空中での浮遊魔法による移動だから、こう狭いところでちょこまかするのは苦手なのだ。

 

「……ちょこまか逃げるなぁ!」

「そういうの逆ギレっていうんだぞー!」

「無知を指摘されたことじゃなくて、その後の君の行動に対してキレてるからこれは逆ギレじゃない!」

「…………ごもっとも!でも捕まりたくないから逃げるぜ!」

 

 言い合いしながら鬼ごっこを続ける。本当に、鬼の身体っていうのは身体能力跳ね上がりすぎじゃないか?

 何より直線から、曲がるまでのロスが少なすぎる。こっちはちょっとロスが出るのに、あっちは当たり前のように走っていける。途中モンスターが出てくるけど、すれ違いざまに蹴り飛ばして倒していく。スパインポルポも《魔力障壁》で覆った蹴りで倒す。

 あとで研究するけど、今は鬼灯だ! 

 

 "じゃれ合い……だよね?”

 "じゃれ合いレベル100”

 "すでに何やってんのかマジで分からんけど、何してんの???”

 "超高速移動VS超高速移動の鬼ごっこなのはなんとなくわかる”

 "何もこんなことで本気出さんでも…”

 

 移動の果てについに、渓谷まで出てしまったが、それでも逃げる。そのまま渓谷に向けて飛び出したので、浮遊魔法で追いかけ……いや、今空中に飛び出したけど、あいつはどうするつも……り?

 あいつ、空中を蹴って方向転換しなかったか!?

 

「よっ、ほい!」

 

 鬼灯は、渓谷内で空中を蹴って方向転換し、その後モンスターや空中を何度か蹴って再び1層に戻っていく。追いかけ続けるものの、正直さっきのイラつきはどっかにいっている。

  

 "今空中蹴りませんでした???”

 "空中で方向転換すんの意味わからんwwwなんで???”

 "ホオズキちゃんがもはやマンガのキャラに…”

 

「……というかさ」

「おん?」

 

 鬼ごっこを続けながら、さっきから気になってしょうがないことを聞く。

 

「さっきの空中蹴って方向転換したのは何……?」

「あ、これ?クランの人から教えてもらったら出来た」

「……えぇ?」

 

 教えてって……いや、出来る人他にもいるんだ……

 というか、本当にどういう原理なんだろう?体外の魔力も感じなかったから、魔法じゃないだろうし……私が同じことをやろうとした場合、《魔力障壁》を一瞬だけ足元に展開する感じになるだろうか。

 

 "教えてもらったら出来た!?”

 "流石大手のクラン…人材が素晴らしい(白目)”

 "ユキちゃんの周りには変人しかおらんのか…?”

 "類友ってやつでしょ”

 "彩音さんを変人呼ばわりとな!?”

 "モンスターを自分から食いに来た人だぞ”

 "そうだったわ”

 "常識人がいねぇ!”

 

「で、いつまでやんのこれ」

「……なんかもういいや」

 

 苛立ちもなんかさっきの空中移動に対する驚きで上書きされちゃったし、終わりでいいか。

 基本的に、私たちのじゃれ合いの終わりはこんなものである。どっちかが飽きて終わり。もしくは、何か別の要因、例えばイレギュラーとか、他のパーティに出会っちゃったとか。

 足を止めて周りを見る。ちょうどいい感じにスパインポルポがいた。

 

「おん。お、なんかいい感じにタコもいるから本題入るか」

「そうだね。お願い」

「任せろ」

 

 "唐突に終わって草”

 "普段からこんなんなんやろなぁ…”

 "多分そうなんだろうな…”

 "なるほど、これが仲良しじゃない(自己認識)ですか…”

 "こんなんむしろ仲いいだろこれw”

 

 鬼灯に頭をちょん切ってもらい、デデンと目の前に、置かれるスパインポルポの死体。とりあえず、こいつをハサミで切り開くのだが、この体勢だとやりにくい。

  

「で、こっからどうすんの?」

「一カ所切ってくれない?こんな感じに」

「こんな感じ?」

「そうそう」

 

 口の部分を切ってもらい、輪っかじゃなくする。そして、浮遊魔法で持ち上げる。

 

「で、こうする」

「……新手の暖簾か?かなり攻撃的だけど」

 

 "暖簾はやばいだろwww”

 "攻撃的な暖簾草”

 "開けたら死ぬやんw”

 

「さぁ、トゲ切って」

「おん…………もしかして、ボクをカッターか何かと思ってる?」

「ありがとう……あとは皮をハサミで切れば多分いけるはず……」

 

 表面のトゲを、切り払ってもらって、私はハサミを手に取る。とりあえず、ハリセンボンを捌くのと同じ要領で、トゲの生えている皮の部分と身の部分を切り分けていけば、丸々食べられるはずだ。

 鬼灯が何か言っている気がするけれど、別に大したことじゃないだろう。大事なことなら大声出すだろうし。

 よし、切るぞ……!大きいから時間もかかるだろうし、急がないとね。

 

「ダメだこれ聞いてねー……」

 

 "完全にタコにしか意識がいってないw”

 "ホオズキちゃんに対してかなり雑だよねユキちゃんwww”

 "そして、画面外から聞こえる水音”

 "絶対呑んでるゾ”

 

「うーん……ハサミが小さすぎて厳しい…………でもなんとかなりそう……」

 

 ブツブツと独り言が勝手に口から漏れ落ちる。いやこれ本当に、ハサミのサイズが小さくてつらい。全体終わるのにどれくらいかかるか……

 とはいえ、本当にトゲが生えているところと身の部分はハサミで分断できる事は分かったので、黙々とやっていく以外に道はない。

 

「……なーんかアレだ。スルメ作ってるみたいだなこの絵面」

 

 "タコの干物かー”

 "ツマミにはいいよな、干物”

 "めっちゃ美味いみたいだし、干物にしても美味そう”

 "どうせなら作っちゃいなよ”

 

「確かに。作るか!」

 

 後ろから鬼灯の大きな声がしたので振り返る。

 鬼灯は、地面に胡座をかいて座り、スマホ片手に酒を飲んでいた。リスナーさんたちと話しているみたいだ。

 

「何の話?」

「干物作りたいねって話」

「……これの?」

「これの」

 

 スパインポルポの干物か……タコの干物ってあんまりみたいけど、美味しいのだろうか?イカの干物はよく見るし食べるけどね。スパインポルポ自体はかなり美味しいし、干物にしても美味しいだろう。

 だが、問題点が一つ。

 

「…………干す場所がなぁ……」

 

 結構なサイズがあるので、干す場所がない。あと時間も。流石にダンジョン内で干すには時間の問題があるし、家の外とかでは干せないし……

 

「まー、うちの中庭辺りで干すわ」

「……できたら分けてね」

「おん」

 

 "協力してくれるのか…?”

 "あのクランもそんなことしてくれるんだ…”

 "もっとこう……ね”

 "キッチリしてるイメージあったわ”

 "『魔女の大鍋(コルドロン)』なら分かるんだけどな”

 

「酒飲み軍団なんだから、ツマミの作成には全力出してくれるよ。前回の時点で超好評だったし」

 

 お刺身でも美味しいもんなぁコレ。アヒージョにしてもよし、そのまま食べてもよし。正直食材としてはとてもいいモンスターだと思う。危険度も低いし。

 さて、続きを頑張ろう。正直、鬼灯に脚に切り込みを入れてもらってべりべりっと剥す方が楽な気はしてきている。でも、せめて一本やり切ってからじゃないと、流石に……ね。

 流石にそれくらいしてからじゃないと、鬼灯にめちゃくちゃ弄られそうだし!

 というわけで、再びタコに向かってハサミをチョキチョキチョキチョキ……

 

「うーん……ツマミ欲しいな……あ、アレ美味そうじゃね?」

 

 "アレ?”

 "アレってなんだ?”

 "ナチュラルにモンスターをツマミにしようとしてて草”

 "そういやそうだわwww”

 

「よし、これで……えーと、とりあえず茹でるか……ユキー、鍋借りるぞー」

「……えーと、ここからこうやって……」

 

 吸盤付近までついたのだが、ここからが難しそうだ。というか、この前は皮ごと食べてたのか……?いや、というか、多分この辺は切らなくてよさそうなんだけど、つながっちゃってるから切らざるを得ないというか……いや、どうにか短縮できないかこれ。うーん、どうしたものか……

 

「……聞いてないけど、言ったから、ヨシ」

 

 "ヨシ!”

 "ヨシ!じゃないが”

 "俺たちが証人になるぜ!”

 "で、結局何を取ってきたんだ…?”

 

「というわけでー……メッサークラブ君。茹でられてくれ。多分カニ味でしょ君。見た目的に」

 

 "メッサークラブか…確かにカニだがw”

 "多分カニ味やろは草”

 "画面外から何かが水に落ちた音がw”

 "全部画面外なのマジで草”

 

「うわ、吸盤まで取れちゃった……うぐぐ、うまく行かない……」

 

 くそっ、皮をはがしていたら、吸盤がぽろっといってしまった。この前食べた限りでは、ここの部分はこりこりとした食感が美味しい部位だったのに……!どうにか吸盤だけ取れないものか。

 

 "ユキちゃんは未だにタコと格闘中だし”

 "自由過ぎるだろこの2人”

 "これは幼馴染の風格”

 "好き勝手やってて草”

 

「……ふむ、こんなもんでいいか……あ、どうやって取り出そう?やべー、考えてなかったー……ヘイ、リスナー?」

 

 "トングとかないん…?”

 "気合いでいけ!”

 "気合い草”

 "火傷するわアホw”

 

「なるほど、気合い!は最終手段としてー……あ、さっき切り落としたハサミ使うか。いや、ハサミってか、カマか……これで挟んでとーお?いい感じじゃない?食欲そそらない色してるけど……脚へし折って中身をっと……お、匂いは美味そう」

 

 "メッサークラブって何色なん?”

 "青”

 "めっちゃ鮮やかな青だぞあいつ”

 "そりゃそそられないわなw”

 

「いただきまーす……うーん……カニカマだこれ。すげー濃厚なカニカマだこれ……いやでもこう、なんか違う感がすごいぞこれ……いや、美味いんだけどな……なんか、違うな……酒には合うからいいけど」

 

 "すげぇ納得してない声してて草”

 "カニ食ってカニカマの味したらそらね”

 "ツマミになるなら正義!”

 "ホオズキちゃん的にはきっとそう”

 

 なんとか脚を一本やり切ったところでなんだか背後からいい匂いがしてきた。

 何事だろうと思って振り返ったら、鬼灯が勝手に鍋を使い、多分メッサークラブを茹でてて食べていた。

 

「…………鬼灯」

「おん?」

 

 カニの脚を片手に酒を飲んでいる鬼灯に若干の頭痛を覚えながら、質問をしていくことにした。

 

「それは何……?あと、何で鍋勝手に使ってるの?」

「これは茹でたメッサークラブ。鍋は使用許可取ろうとしたら無視されたから勝手に使った」

 

 返答に対しても呆れるものの、まあ普段から別にそんな気にしたことないし。使用許可に関しては、スパインポルポに集中していたから聞こえなかったんだろう。鬼灯は、冗談を話すとき以外は嘘はつかない。

 どうせ後でスパインポルポを茹でるんだから、お湯を沸かしてくれているのはありがたい限りだよ。でも、とりあえず。

 

「……脚一本ちょうだい」

「はいよー」

 

 "食べ物に負けたかー”

 "食べ物は……強い!”

 "カニだしな”

 "味はカニカマらしいけどな”

 

 鬼灯から脚を一本もらって自分で折る。こういうときに、冒険者の肉体の利便性を実感するんだよね。力が強いって正義。

 いい匂いのしている脚に大きくかぶりつく。ん、これは……

 

「カニカマだ……」

「絶妙に納得いかねー味するよなこれ」

「うん。なんか絶妙に違う味する……美味しいけど」

「な、美味いんだけどな……」

 

 "ユキちゃんからしても納得いかないのねw”

 "そりゃそうだよwww”

 "超うまいカニカマ食ってみてー”

 "だんだんリスナーにもモンスター食おうとするやつが増えて来たな”

 

 一本食べきった後、再びスパインポルポに向き直る。ハサミを持ちたくないな……

 

「ホオズキ、このくらいの深さでこう……切ってくれない?」

「…………ハサミでやるんじゃなかったのかよ?」

 

 ニヤニヤしながら鬼灯が聞いてくる。もうそれにどうこう言う気力もないんだよ……

 

「1本やるだけでこんなにかかると思わなかったんだよ……」

「まー……それはしゃーねー、な!」

 

 刀を取ってすぱすぱと表面を切っていく。切り込みいれてもらったんだから、これであとはもう強行突破だ。力は正義なのだ……!

 

「よし、あとはそっち持って引っ張って。私はこっちから引っ張るから」

「引っぺがす感じ?」

「そうそう」

 

 二人で両側をもって引っ張るというか、引っぺがす。べりべりっと一気にはがせた。いや、最初からこうしてればよかった……!崩れ落ちそうになったが、何とかこらえる。

 

「おー!結構気持ちよくいったな!」

「そうだね。うーん……ちょっと身が崩れちゃったな……」

「冷凍してからやった方が良さげか?」

「多分」

「おん……で、これどうすんの?茹でる?」

「そうだね、お湯も湧いてるし。その間に次を取ってくるよ」

「りょーかいー……え、君が?」

 

 鬼灯の驚く声を無視して、次のスパインポルポを取りに行く。普通にショートソードで頭切るだけだからね。

 さっさと頭をちょん切って、戻ってくる。

 

「で、次もボクが切る、と」

「頼むよ……」

「いや別にいいんだけどさ。こっちから頼んだし」

 

 持ってきたものをサクッと切ってもらって、《フリーズコフィン》で冷凍する。

 

「……えいっ」

「おりゃっ!お、剥がしやすいぞ!」

 

 一気にはがしやすいし、さっきと違って身も一切損なわれていない。吸盤も取れていないし。

 達成感と敗北感を味わっていたら、鬼灯が突然不思議なことを言い出した。

 

「じゃー、味見しようぜ」

「味見?」

「先に凍らせたら美味いのかどうか」

「あぁ……確かに。場合によっては茹でてから凍らせて剥がさないといけないか……」

「そゆこと。じゃ、調理よろしくー」

「うん。任せて」

 

 冷凍したものをそのまま鍋に放り込む。茹で終わるまでにさらに二体ほど回収してきた。

 茹で終わって取り出して、ちょっと贅沢にぶつ切りにする。

 

「というわけで、いただきまーす」

「いただきます」

「…………」

「…………」

 

 二人でしばらく咀嚼したあと、顔を見合わせる。

 

「「やめようかこれ」」

 

 "ダメだったかー……”

 "息ぴったりやん”

 "やっぱり仲いいよね?”

 

 解凍せずに茹でたのが悪いのかもしれないが、なんかべっちゃべちゃというかもっちゃもちゃというか……水分が多くてうまみが薄い。その上噛み切りにくいとかいう、本来の良さを全部潰してしまった感じになったのである。

 よって、こいつは茹でてから凍らせ、そのあとに皮をはがすのが正解のはず!

 

「こっちの方が簡単に行くね……」

「茹でてから凍らせると、はがすのも簡単なんだな……」

 

 "するするっといったな…”

 "あっさりいけたなぁ”

 "最初のユキちゃんの苦労とはいったい……”

 

 ちょっと最初の苦労を思い返して、憂鬱な気分になっていると、鬼灯がわき腹を突っついてきた。

 

「なー、最初の苦労って……」

「やめて……」

「なー!最初の苦労ってさー!」

「やめろぉ!」

 

 鬼灯につかみかかる。ひょいとよけられたので、再び追いかける。

 今度は小部屋の中で収めるけれど、やっぱりこいつは腹立つ……!絶対にほっぺたもみくちゃにしてやる!

 

 "仲いいなー…”

 "楽しそうで良き”

 "ずっとわちゃわちゃしてるやんw”

 "こうみてると、確かにユキちゃんが妹っぽいなw”

 "やはりユキちゃんは末っ子”

 "アヤネさん居ないからホオズキちゃんがやりたい放題で草”

 "長女のアヤネさーん、復帰はよー!”

 

 

 

 




思うままに書いたら、鬼灯がやりたい放題になったので、やはり彩音さんは必要
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