【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する 作:もけねこ
今晩の献立は、砂ウツボカレーだ。食材の入ったリュックから、玉ねぎ、じゃがいも、ニンジンといった王道の野菜とカレー粉を取り出す。じゃがいもとニンジンの皮を剥いて、少し小さめに切る。煮込む時間が少ないから、それでも火が通るようにしないとね。玉ねぎは8等分にして、さっさと寸胴鍋に投入。油をちょろっと引いて軽く炒める。
"手慣れてるよなー”
"この手際の良さよ”
"ダンジョン内であることを除けば家庭的な光景なんだけどな”
軽く火が通ったところで、ウツボから水が出るだろうから、ちょっと少なめに水を入れて、じゃがいもとニンジンを中へ。砂ウツボをぶつ切りに……待てよ?一旦、軽く焼いたほうが香ばしくなって美味しい気がする。
思いついたら即実行。ナイフを置いて、再び鉄串を取り出してぶすり。寸胴鍋の横のコンロの火で焼いていく。ダンジョン用の魔力式コンロで、二口のものがなかったから自作した。こういう時に便利なんだよねこれ。煮込む横でお米炊けるし。
香ばしい匂いがしてきて、さっき食べた味を思い出してかじりつきたくなるが、我慢我慢。皮に焦げ目をつけ、身を軽く炙る程度にとどめる。火は煮込みながら通せばいい。3切れ分火を通したところで、天啓が降りる。これ、汁物に入れても美味しいんじゃないか…?1切れ持ち帰って、あとで家で作ろう。タッパーを取り出し、放り込む。炙った3枚はぶつ切りにして寸胴鍋に投入!どのくらい煮込めばいいかはちょっと分からないが、とりあえずソードスコルピオの尻尾でショートソードを作る間は煮込んでおく。2時間ほど煮込めば美味しくなるはずだ。経験則的に。
飯盒を取り出し、米をイン。カレーだから、ちょっと多めに炊く。軽く洗ってから、コンロを着火。はじめちょろちょろ、なかぱっぱ。は今回は、守らないので、中火で固定する。調整している余裕はない。ショートソード作らないといけないからね。砂ウツボが美味しすぎて忘れてたわけではない。断じて。
さて、料理が煮込むだけになったので、本来の目的であるショートソードづくりをやってしまおう。冒険者になると、大抵一人ひとつずつユニークスキルが発現する。複数発現する人もいて、その人たちは天才という扱いだ。私は、実は2つ持っているので天才側だ。ふふん。
私が持っている2つのユニークスキルのうち1つ《錬金》は、加工系スキル詰め合わせセットとも言うべきユニークスキルである。素材の濃縮や変換、合成、加工、変形、効果付与、全てを一つのスキルで使えるという、結構便利なスキルに思えるスキルなのだが……効果が全て道具や通常のスキルで代用出来ることで有名だったりする。ユニークスキルは、他のスキルでは再現不可な効果を発動するものが多いので、《錬金》はハズレの中の外れ扱いである。しかし、あくまでも再現するには専門の設備やスキルに対応した道具が必要になってくる。
つまり、
煮込み終わったソードスコルピオの尻尾たちを1個にまとめて、加工しやすい強度の塊に変換する。サイズ的にも丁度いい感じになりそうだ。全長80センチ、刃渡り65センチくらいを想定している。手に持たないので、柄は短めでいいから、刃が長めだ。大鍋から取り出して、ハンマーでこんこん叩く。この時も《錬金》を使って思い通りの形に変えていくから、ハンマーで叩く技量そのものはいらない。大事なのは、
"相変わらず、何が起きてるのかさっぱり分からない加工工程で草はえない”
"適当な感じでハンマーで叩くと、どんどん剣の形になっていく…”
"《魔力の矢》といい、この《錬金》といい、熟練度いくつだよ…”
"というか、ナイフじゃなくてショートソード作ってんのか”
"なんでショトソ?魔法職だしいらんくね?”
"魔法耐性持ちモンスター対策とかで持ってる人いるやん”
"今まで《魔力の矢》ゴリ押しだったし、それで余裕だったのに?”
"この子のことだし、作りたいから作っている。多分これ”
"一番ありそうだわ”
ショートソードが完成した。ハンマーで叩き始めてから10分くらいかな。重心を確かめるために、軽く持って振り回す。いい感じに刃の方に重心がいってる……柄に革か何か巻かないと、滑って危ないなこれ。使うときは手に持たないとはいえ、鞘から出したりしまったりは流石に手でやるつもりだし、その時に滑って自分を切りました。は、流石にバカすぎる。とりあえず満足のいく形にはなったので、再び大鍋に放り込んで、強度を元に戻す。ソードスコルピオの尻尾を濃縮したものだから、斬れ味もかなりのもののはず。使用予定通り、浮遊魔法でも操作感を確認。うんいい感じだ。上がったテンションの赴くままに、ビュンビュン振り回す。このまま、岩で試し斬りしよう。えいっ!
ヒュン…!スッ……
「あれ……?」
”浮遊魔法で操るのかかっけぇ!"
”浪漫過ぎるやろそれw"
”おお!…ってあれ?"
”斬れ味ダメだった感じか?"
"なんていうか、すり抜けた?”
まったく抵抗を感じなかったし、岩をすり抜けた感じだ。どういうこと…?なんか失敗したか、それとも知らない付与効果でもあるのか…?剣に触ってみても、特に変な感じはしない。怖いので刃には触らないが、付与効果とかもないなこれ…とりあえず、(多分)斬った部分を調べてみようと触ったら……
ズズ……ドサッ
「……えぇ……?」
”ふぁーwwwwwww"
”斬れ味やっばwwwwww"
”どんな斬れ味してんだそれwwwww"
”作った本人がドン引きしてんの草"
岩がズレて落ちた。嘘でしょなにこれ。斬れ味良すぎじゃない…!?想定以上で嬉しいと言えば嬉しいけれど、それ以上に引いてしまった。どんな斬れ味してるんだ本当に。いやまて、それより問題は……
「これの鞘作らないといけないの…?」
"そうじゃん鞘作らないとwww”
"鞘ないと危ないなんてもんじゃないしなwww”
"そりゃ呆然としたくもなるわwww”
"この斬れ味の剣の鞘とか何使えばいいんだよ…”
正直、鞘の素材については案がある。というか、ソードスコルピオの尻尾をまた集めてきてそれで鞘を作れば行けるはずだ。同じ素材だし、そもそも強度だって高い素材だから。斬れ味が良過ぎて鞘が切れるなんてことにはならない……と思いたい!思いついた瞬間、浮遊魔法で超高速飛行を開始。最低でも、同じくらいの量を集めて煮込む事を考えると、一刻も速く集めなければ…!
結論から言えば、鞘はなんとかなった。念のためと思って30本集めたソードスコルピオの尻尾を鞘の形に加工して、剣を収めたら、ちゃんと収まった。鞘が切れるなんてこともなかった。ヒヤヒヤしたよ本当……
想定以上の斬れ味になってしまったショートソードに肝を冷やしたが、そろそろいい感じにカレーが煮込めているはずだ。お米も炊けている。半分現実逃避も兼ねて、夕食の時間にしよう。おなかすいたし……皿に盛り付けると結構いい感じだ。ただ、砂ウツボから水が出たのかちょっとスープカレーっぽい感じに。味見した感じは味が薄いとかもないので、とりあえずこのままいただく。福神漬を忘れたが…しょうがないということにしておこう……くそぅ…
「……よし、いただきま「大丈夫ですか!?」……す…?」
「えっ…?」
「えっ…?」
えっ、誰この人…?
"ちょっとさらさら過ぎるか?”
"砂ウツボから水出たっぽいね”
"あー、そのせいか”
"でもうまそー!”
"スープカレーみたいなもんやろ”
"ん?なんか足音聞こえん?”
"あ、確かに。近くに冒険者がおるんかな?”
"こっちに来てない?”
"!?”
コメ欄は気づいてるのに、主人公が気付いてないのは、カレーに意識持ってかれてるせいです。