【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する 作:もけねこ
1日遅れてしまって申し訳ありません。
シンプル寝落ちです。
「よし、食べるぞぉ!」
いい感じに刃が通りそうなくらい溶けたMr.クマを前に、現実逃避するために大声を出す。コメント欄は見ない。絶対に色々言われて、現実に戻される。
なんとなくだけど、彼らの趣味の悪さ?は分かってきたからね……!
"逃げたな…”
"逃げたね”
"まぁ、最終的には逃げられなさそうだけども”
"今はMr.クマのルイぺが美味いのかどうかや!”
さて、今日食べようと思っているルイペは、基本的に薄切りにしないといけないので、うすーくうすーく、と意識しながら切っていく。
「……これくらいならいいのかな……?」
"結構薄く切ったなぁ”
"マジで見た目はサーモンの刺身w”
"カルパッチョよりも薄く切ってるよな?”
"そんな薄く切るもんなんか…”
なんでも厚すぎると舌の上で溶けてくれないため、食感が楽しめないのだとか。目標は、生ハムくらいの薄さ!と思ったのだが、流石に厳しかった。魚と肉だと硬さというか安定感みたいなのが違うね……
皿の上に薄さ数ミリ程度のMr.クマのスライスが並ぶ。流石に全部切っちゃうと厳しいので、今はこれでおしまいにする。食べてみて美味しかったら別の料理を作る予定だ。
にしても……うむ。量が無理があったな……2匹目の方はさっさとしまおう。君まで食べるのは無理だ。
《フリーズコフィン》を重ねがけして周りも氷で覆っておく。これで長持ちする。使わない鍋の中に放り込んで、収納魔法にしまう。結果論だけど、3匹目釣らなくて正解だったかも。多分、持って帰れない。入れる容器がないし、ほっといたら悪くなっちゃうし。
にしても、これ本当に……
「普通に半分凍った刺身って感じなんだけど、これで本当にいいんだよね……?」
"こっちに聞かないで???”
"流石に分からんてwww”
"調べて初めて知ったレベルだぞそれwww”
"とりあえず醤油とかつけたら?”
確かに。醤油は使おう。いやでも、一口目はそのまま食べよう。味がよく分かるように。
「いただきます……」
"実 食 !”
"どうだろ?”
"ふっつうのサーモンの刺身にしか見えねぇなぁ…w”
箸で掴んだ感じ、ちょっとだけお刺身より硬いくらいなんだけど、本当にあってるのか不安になってきたな……とりあえず食べよう。
「んん……不思議な感じ。本当にシャーベットみたいな食感がする。ただ、ちょっとだけ泥臭さが気になるなぁ……」
口の中でシャリシャリと溶けるお刺身って感じ。なんだか面白い。溶けたあともちゃんと噛まないといけないけども。
味としては、普通のサーモンの刺身よりも、ちょっと味が薄い感じ。とでも言うべきか。ただ、その味の薄さが、溶けることによって生じているの可能性はなくはないので、安全性が確認できたら確かめてみよう。
そしてちょっとだけ泥臭い。泥臭いってことは、泥を食べてるんだろうし、水中の藻とか食べてるのかな?こいつらは肉食だと思ってたんだけど、実は違うのかな……?雑食なだけ?
何の肉食べてるのかは、今は考えないようにした方がいい。絶対にろくなものじゃない。
醤油をつけて食べてみると、完全に食感が楽しい刺身である。なんか作り方間違えている気がする。瞬間冷凍はよくないんだろうか……?作り方としては、マイナス20度の冷凍庫に一晩入れる。みたいな感じだったのでこういう風にしたんだけどな。
そして、やはり醤油をつけても泥臭いのが分かる。臭い消しをしないと、手放しに美味しいとは言いにくいね。
独り言のつもりだったんだけど、リスナーさんたちが反応してくれた。
"泥臭いのか…”
"生の食材の臭い消しって何使えばええんや?”
"臭い消しならにんにくが安定では?”
"いや、刺身には生姜じゃねぇの?”
"それだ!”
リスナーさんたちから色々聞けるのは本当にありがたいな……私も考えれば思いついただろうけど、さっさと答えが出るのは嬉しい。頼りすぎるのもよくないと思うけど、すごく楽だし……
今回に関しては、泥臭いと言っただけでこの感じだし。ありがたい限りだよ。
「にんにくと生姜……あった」
収納魔法から調理料入れを取り出して、中からにんにくと生姜のチューブを取り出す。これをしょうゆ皿の端につけて、と。
少しだけルイペに乗っけて口の中へ。
「うん。こうしたら臭みが消えて美味しい。ありがとうリスナーさんたち」
ふむふむ。実際美味しい。シャリシャリした食感が楽しい。悪くないね。この分なら、これから作ろうとしていたものにはちょうどいいかな。
「それでも、次やる時は臭み取りしようかな。ソッチのほうがもっと美味しそうだしね。でも、調理するならともかく、生ってどうやるんだろ……?」
"生の臭み取りかー”
"料理しないので分かりません!”
"魚だと大抵塩振って水を取る。だよね”
"あとは、コショウとか?”
"それは肉じゃね?〉コショウ”
リスナーさんたちのコメントを横目にスマホで調べていく。本当に便利な世の中だ。ダンジョンの中で調べ物が出来るんだもの。いや、なんでこんな地下深くに電波が届くのかはよく分かんないけどさ。
肝心の臭み取りについては、よく使っているレシピサイトに載っていたので、そのまま使わせてもらおう。
「えーと……塩をまぶして水気を取る。よく聞くやつだね。あとは……生きたまま1週間ほど真水で絶食にする……これは絶対に無理だから、塩でやろう」
"1週間絶食w”
"そんな方法あんのかwww”
"拷問で草”
リスナーさんたちのコメントを見て、確かに。と思った。1週間絶食させるって結構な酷さだよね。でも、美味しく食べるためならしょうがないかな。それに、モンスター相手だから、そんなに罪悪感湧かないし。
ただ、生きた状態でMr.クマを安全に持ち帰る方法がまったく思いつかないけどね。安全性を無視するなら、大鍋に水を入れてその中に放り込むだけでいいし。
さて、調べ物も終わったし、臭み取りを始め……いや、そうだよ凍ってるんだけど!?半分溶けてるとはいえ、本当にいけるか……?
「……いやでも、一応の抵抗を……」
"抵抗て”
"そういや凍ってるもんな…”
"確かにw”
"まぁ、いけるやろ多分”
塩を振って、キッチンペーパーを上に乗せてしばらく放置。暇な時間が出来てしまった。でもこればっかりは仕方ない。しばらく待つ間、リスナーさんと雑談でもしようかな。今借りてる漫画とかもないしね。
……雑談するにしてもネタがない……あ、アレについて聞いてみようかな。
「……モンスター料理専門店をやるって妄想してたんだけど、リスナーさんたちはどう思う?」
"モンスター料理専門店!?”
"熱狂的なファンがいそうw”
"メニューによるなぁ…”
"そもそも、安定供給出来るん?”
「朝にダンジョン潜って昼前くらいまで材料集めて仕込みして、夕方辺りから営業開始……みたいな感じかなって」
"くっそ忙しそう”
"仕入れも自分でやるのは激務過ぎないかそれw”
"ほ、ほら、目利きとか大事だから…”
"目利きの概念ある???”
"看板娘にホオズキちゃんをおこう”
"アヤネさんもおこう”
"ユキちゃんは???”
"シェフだから…”
「確かに一人でやったら忙しそうだし、何人かでやりたいよね」
意外かもしれないけど、私はこういうちょっとした妄想話が好きな方だ。凉と2人でバカなことを考えるのが楽しかったからである。オリジナルのユニークスキルとか。漫画の技とか。
リスナーさんたちも盛り上がってるみたいで良かったよ。それにしても、看板娘に鬼灯と彩音さん……うーん、いいかも。
"店開くなら、もう一人くらいシェフ欲しくない?”
"いやそこはユキちゃんがやるべきでしょ”
"3人で仕入れしながら経営するとして、休みは…?”
"無休は死ぬのでは…?”
"週2、3営業くらいが良さそう”
「確かに……休みは必要だね……」
飲食店のお休みって、週1回とかのイメージだけど、仕入れも自分でやるなら、もっとないと大変だよね……うーん……ダンジョンに潜りたいのに、休み増やさないといけないのは本末転倒だな……
そんな感じの妄想話をリスナーさんたちとしていたら、いい感じに水が出ている。よし、あとはこの水気をきちんと拭き取って……ちょっと溶けすぎちゃったけど、まぁいいだろう。とりあえず同じように薄切りにして……
"あ、水抜けた?”
"お、いけそう?”
"泥臭さは抜けたか?”
「ん、こっちは結構泥臭さが抜けてる」
食感、味ともにほとんどただの鮭のお刺身。わさびを取り出してつけて食べてみると、本当に普通のお刺身って感じだ。でも、やはり泥臭さは感じるので、生姜の方がいいかな。にんにくだと、にんにくが強すぎる。
美味しいことが分かったから、今から料理開始である。メインはルイペだったけど、こっちも楽しみである。
「うんうん、これは美味しいな……さて、他の食べ方をしよう」
"行けたか”
"他の食べ方?”
"他もだと!?”
"大盤振る舞いやね”
「……サンドイッチを作ろうと思って」
食材入れのリュックから食パンと、他の食材を取り出す。なんでサンドイッチかというと、この食パンの賞味期限が今日までだったからである。消費しないとなぁ……と考えていたとき、サンドイッチなら作れそうじゃないか?と思いついたのである。サーモンのサンドイッチなんて豪華な感じがして美味しそうだし。
"サンドイッチだと!?”
"Mr.クマのサンドイッチかぁ…”
"どんな感じになるのやら…”
何でそんな懐疑的なんだ君たちは。普通のサンドイッチを作るつもりなのに。
「えっと、こんな感じに食パンをフライパンで焼いて……」
まずは、フライパンで軽く食パンに軽く焦げ目をつけていく。こうしたほうが美味しくなるし、そもそも賞味期限ぎりぎりの食パンだから硬いしね。
耳は切らない。ここが美味しいのだから。昔は耳だけの袋詰めなんかが売ってたって聞いて、本当に羨ましく思ったよね。
軽く焦げ目がついたら、両面にバターを塗る。こうしないと、パンが水分を吸ってべちゃべちゃになっちゃう。
「レタスをひいて、そこにMr.クマ、タマネギを乗っけてマヨネーズをかけて、コショウを多めに……で完成」
Mr.クマのサンドイッチの出来上がりである。普通のサーモンのサンドイッチのレシピまんまだから、味については保証されているといっても過言ではない。
見た目も綺麗に出来たし、調子に乗って、テレビで見るみたいにサンドイッチを真ん中で切ってパカっと開く。
"おお、美味そう!”
"かなりまともな作り方してる!”
"飯テロやん…”
"ぱかってやんの草”
"テンション上がってるやんw”
やりたいことはやったので、いざ実食。間違いなく美味しいだろうけども。
「いただきます……うん。美味しい!……もしかして、スモークしたらもっと美味しいのかな……」
"燻製にまで手を出すつもりなの?”
"燻製沼めっちゃ深いっぽいが…”
"そうなん?”
"するだけなら手軽だけど、煙の温度管理とかまでこだわりだすとヤバい”
"煙の温度管理……?”
実際、ちょっと気になっているのだ。燻製というものが。ちょっとした装置だけで出来るわけだし、色々出来たら楽しそうじゃないか?キャンプでもできることはここでもできるのだから。
よし、ちょっとスモークサーモンの作り方でも調べてみるか……
「……うわ、スモークサーモンってこんなに大変なの……?」
ちょっと引いちゃうくらいに大変じゃないこれ?冷燻という、低温の煙でじっくり燻す必要があるみたいで、30度まで下げないといけないらしい。
流石にそこまでの温度調整は出来そうにないな私では……そこまで手間かけたくないしなぁ……これやるくらいなら、《ガイアウォール》でピザ窯作る練習してピザ焼きたいよ。
"燻製するだけじゃダメなん?”
"温度管理必須”
"低温の煙でじっくりと。やね”
"お前ら何で詳しいんだよw”
"変なところで詳しいやつらおるなwww”
ピザ窯の構造なんかを調べながらサンドイッチを食べ終わり、諸々全てを片付けて撤収する。
腹ごなしついでに上層まで駆け抜けて、いつも通りに配信を終える。
「おつかれさまでした」
"おつー”
"お疲れー”
"お疲れ様でーす”
配信終了ボタンを押して、配信が止まっていることを確認。さあ、帰ろう。
Mr.クマが生で食べても美味しいことは分かったから、良かったよ。ルイペに関しては……あれでよかったのかな……?
「あとは……今夜の私のお腹がどうなるか、だね……」
願わくは、無事であってほしい。切実に。トイレに一晩こもるのは結構つらいのだ。
ギルドへの報告は、明日することにした。だって門限超えちゃいそうなんだもん。決して逃げたわけではない。本当に。
ちなみに、お腹は無事だった。