【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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配信に興味のない私とお台場ダンジョン配信⑵

 

 まずは彩音さんのソロの練習とレベリングからというのが、土日のダンジョン探索におけるテンプレートである。でも、最近の彩音さんはソロの練習をする必要がないくらいには動きも意識もよくなった。なので、私がいない状況で誰かと組む練習……はいらないか。今までさんざんやってきたもんね。

 このままどんどん強くなってもらって、そのうち深層のモンスターたちにも手を出したいものだが、深層域のモンスターはちょっとおかしな強さをしているのでだいぶ先になるかな。渋谷と品川はソロで踏破出来たけど、それだって下手したら死んでたしね。今ならもうちょっと余裕持っていけるかな。

 周囲を警戒しながら思考を回していると、いい感じにモンスターが固まっているところが。地上に3体、空中に10体ほど。流石に一人では厳しそうな気もするが、提案だけはしてみよう。

 

「とりあえず……あの辺からやってみる?地上に何体かと、空中はあれ」

「……分かった。ちゃんと見ててね」

「?うん」

 

 指し示したその周辺に視線を向けた後、自信満々に頷いた彩音さんにちょっと違和感を覚えつつ、《サンダーレイ》をいつでも発動できるように準備しておく。《魔力の矢》と違って少々発射までのラグがあるので、準備しておかないと間に合わないかもしれなちし。

 さて、どうやって攻略するのかちゃんと見ていよう。下層域のモンスターとの集団戦は私と組んでから初めてのはずだし、ミノタウロスの時には複数相手は厳しいって言ってたのに。それに、普段あんなに自信満々な感じじゃないしね、彩音さんは。何か秘策でもあるのかな?

 

「《ガイアウェポン》」

 

 少し前に出た彩音さんは、周辺の岩を集めて槍?を作り出すと、それを左手でもつ。キレイな槍の形ではなく、ボコボコとした棍棒みたいな見た目で、大分脆そうに見えるけど、何に使うんだろうか?

 彩音さんは、そのまま前方へその槍をサイドスローで投擲しながら、ユニークスキルを発動した。

 

「《乾坤一擲》!」

 

 スキルが発動した瞬間、スキルによる強化の威力に負けて岩の槍が砕け散った。金色の軌跡を残しつつ、砕け散った岩の散弾が空中のモンスターに襲い掛かる。小さな石片に過ぎないはずのそれらは、モンスターたちに直撃してその命を奪い取った。

 流石に全部を倒しきれていないが、それでも7体は倒しているし、他の3体にもダメージは通っている。攻撃されたモンスターがこちらに向けて突っ込んでくるのを確認しながらハルバードを両手で構えなおした。

 

 "かっこよ!?”

 "そ、そんな使い方が!?”

 "武器が壊れるからってそんな使い方出来るんだ…”

 "武器が壊れるのは着弾してからだから、投げた時に砕けるように調整して作ってるはず”

 "めっちゃ器用なことしてるじゃん”

 

 いいな今の使い方。魔力の消費はそれなりにするだろうけど、ある程度のモンスターならあれでどうにでもなるし、武器も使い捨てにしたって問題がない。初撃の不意打ちにしたってとんでもなく有効だと思う。慣れてきたら、戦いながら……は長物使ってるから厳しいか。片手じゃ振り回せないもんね。

 傷を負いながら突っ込んでくるそのモンスターたち――ぶっトビウオに向けてハルバードを横一閃する。綺麗に断ち切られたそのモンスターには目もくれずに、連続で突っ込んでくるぶっトビウオを次々に斬っていく。

 

「ふっ! えいっ!」

 

 勢いそのまま振り回しているようで、きちんと制御できているらしい。というか、なんか振るのが速くないか? 前見た時よりもぶんぶん振り回しているような……レベルが多少上がってはいるだろうけど、あんなに見てわかるくらいに速度が一気に上がったりしないし……

 その攻防を横から見ていた、地上組のザシュガニが2体、岩陰から彩音さんに向かっていく。空中のぶっトビウオを対処し終えた彩音さんが、そのままその二体も切り捨ててしまう。す、すごい鮮やかだ……!

 

「すごい……!」

 

 "え、すご”

 "すげぇ!”

 "あんなにブンブン振り回してなかったよね”

 "なんか動きがスムーズ”

 

 ぶっトビウオとザシュガニを倒し終えた彩音さんは、こちらに振り向いてウィンクをした。

 

「練習してたからね。結構すごいでしょ?」

「うん。すごかった」

「ふふっ、でしょー?」

 

 彩音さん可愛いなぁ……女の私から見ても可愛いんだから、リスナーさんたちだって……モザイクで見れないんだったなそういえば。解除するつもりはないけども。いや、成人したら考えようか……?

 そして、彩音さんはこう……言い方は悪いけど調子に乗るとダメだね。うん。

 

「油断さえしなければ、ね」

「え」

 

 彩音さんを捕まえようと、後ろからゆっくりと触手を伸ばしていたゴックンチャクを《サンダーレイ》で貫く。

 後ろを残像が見えるくらいの勢いで振り返った彩音さんが、穴の開いたゴックンチャクの死体を見て肩を落とした。

 

「……ありがとう……」

「ここでは特に気をつけてね。本当に」

「はい……」

 

 "一気にテンション落ちてて草”

 "ちょっと気を抜いちゃったかー…”

 "ここだと洒落にならんよマジで”

 "ちなみに今のは何?”

 "ゴックンチャク。獲物を触手で捕まえて丸のみにするモンスター。触手に麻痺毒持ってて、捕まったら死ぬ”

 "えげつなさに対して名前がさぁ…”

 "的確ではあるが…なぁ?”

 

 落ち込んでしまった彩音さんの気分はさておいて、さっきのあのハルバードの速度はどういう原理なのか聞いてみよう。気になる。ちゃんと反省はしてほしいし。

 

「ところで、あれってどういう原理なの? 前はあんなにブンブン振り回してなくなかった?」

「……あれはね、《スマッシュエッジ》を発動し続けて加速させてるの」

「発動し続けられるの?」

「《地砕き》と違って特定の行動の威力を強化するスキルじゃなくて、攻撃行動全般を強化するスキルだからってこの前言われて。それから練習してたの」

「あー、なるほどね……」

 

 振り下ろししか強化の出来ない《地砕き》と違って、斧を振るならなんでも強化出来る《スマッシュエッジ》なら、常に発動条件を満たせるのか……

 

 "な、なるほど?”

 "なるほどわからん!”

 "誰かゲームで例えてくれ…”

 "《地砕き》は攻撃技で、《スマッシュエッジ》はバフ技”

 "発動時2倍と発動中1,5倍の違いみたいなもん”

 "なんとなく分かった”

 

「疲れるのが玉に瑕なんだけどね。慣れれば使い勝手いいから練習してるんだ」

「確かにすごい使いやすそうだった。動きが良かったし」

「……そういえば、ユキちゃんは強化系の魔法使わないよね? 《身体強化》は使ってるみたいだけど」

 

 魔法にも、自身の強化をする魔法はある。ただ、使うことは基本的にない。そもそも《魔力の矢》があの火力で連射できる以上、わざわざ使うよりもその時間でタメたり連射したりしていた方がいいのである。しかし、使わない理由はもっと別のところにある。

 

「下手に使うと料理に使えなくなるから……」

 

 うん。爆発するんだよねモンスターが。食べられなくなっちゃう。今でさえ上層のモンスター相手だとああだからね。流石にね……

 

「あぁ、そういう……あれ、トロルの時は?」

「浮遊魔法で飛び回ってるときに強化すると、浮遊魔法の速度も上がっちゃうから、ちょっとね……下手すると壁や天井に激突するし……」

「そこも強化されちゃうんだ……確かに使えないかも……」

 

 普段と違う軌道な上に、体で制御しているわけじゃないから、ちょっとの差が結構な違いになってしまうのだ。レベルが上がるくらいゆっくりな上昇幅ならともかく、強化魔法で一気にとなると怖くて飛べない。

 逆に言えば飛ぶ必要がないのであれば、使ってもいいかなって感じ。

 

 "あ、そういう問題あるんだ…”

 "初めて聞いたわそれw”

 "浮遊魔法をちょっと浮く以外に使ってるとそうなるのか…”

 "回避ミスったら大問題だもんな…”

 

「他人の強化……は奇跡だから使えないか」

「うん。まぁ、効果が低すぎてちょっと……みたいなのは使えるけどね」

 

 他人を強化出来る魔法は存在していない。それは全部奇跡の領分である。

 だが、私には《ソロモン》で覚えた劣化したユニークスキル達がある。一つ一つは弱くても、同じものは重ねがけ出来なくても、違うものなら重ねがけが出来る。なので、時間さえ確保できれば数の暴力で割とシャレにならない強化は出来るのだが、その時間の確保が……うん。

 そして、彩音さんが当然の疑問を浮かべてしまった。

 

「……そんな魔法あったっけ?」

「……アルヨ」

「……ソッカー……」

 

 "絶対嘘だゾ”

 "くっそ片言で草”

 "隠し事へったくそ!”

 "未だにユキちゃんは謎が多い…”

 

 やっばい。リスナーさんたちには隠しておこうと思ったのに! 疑ってるわけではないけど、どこから漏れるか分からないんだから、なるべく誰にも言わないようにしてたのに……! あとでちゃんと彩音さんにはきちんと《ソロモン》について話しておこう。

 とりあえず今は触れないでくれ……! ということを目で伝える。

 

「……そういえばさ、ぶっトビウオは食べないの?」

「うーん……食べてみる? 丸焼き以外思いつかないし、これは流石に食べたくないけど……」

「私も地面に落ちちゃったのは嫌かな……」

 

 "砂まみれになってるもんな…”

 "洗って食べよう!とか言わないんだ…”

 "お前ユキちゃんをなんだと思ってんだよ!”

 "変人”

 "それはそう”

 

 先ほど彩音さんが倒したぶっトビウオは、縦真っ二つとか、石片でぐちゃぐちゃになってしまっていて、これをご飯に使うのはちょっとなぁ……って感じである。

 そもそも、あんまり食べるつもりはなかった。今日の予定としては、夜は海鮮丼にする予定だが、昼はその前段階として、海鮮丼の材料に使うモンスターたちの試食をする予定だった。

 それなりに数も多いしサイズもあるしで、ぶっトビウオまで食べてる余裕はない気がしてたんだけど、食べたいというのなら食べてみようかな。まだ食べたことないし。

 ぶっトビウオは30センチほどの魚型モンスターで、集団で活動しており敵を見つけるとヒレを広げてぶっ飛んでくる。ヒレがとても切れ味鋭いので、それで切り裂くのが主な攻撃方法である。単体だと強くない代わりに、集団で突っ込んでくるので、数の暴力というものを思い知らされる感じである。

 なので、一振りの威力は高くても、連続攻撃が出来なさそうな彩音さんだけでは倒しきれないだろうなと思ってたんだけど、まさかあんな方法で突破するとは……

 最近、彩音さんが凄まじい勢いで成長していて、私も負けてられないと思う反面、じゃあ何すればいいんだろう? っていう疑問も出てきてるんだよね。

 この前のトロルの反省を活かして、物理特化型でも創ろうとは思ってるけど、それ私自身ってわけじゃないしなぁ……

 やっぱり色んな魔法の熟練度を上げて威力を上げる。しかないかな……? あとは同時使用数増やせるように頑張ろう。あくまでもパーティーの後衛として成長しないと意味がない。

 思考が別な方向に向かっていたのを、彩音さんの言葉が引き戻した。

 

「そういえば、こういう飛んでる魚はどうやって綺麗に取るつもりなの?」

「《グラビティ》でドサッと落として、頭にナイフをザクッと」

 

 あれらはどうやって空中を泳いでいるのか分からないが、《グラビティ》で下に引っ張ると普通に地面に落ちるので、そのままグサリとやってしまうのがいい。

 もし難しいなら、落としたあとに《ライトニング》で痺れさせてもいいだろう。

 割と単純なのである。

 

「じゃあ、ザシュガニは?綺麗に倒せる方法考えてるの?」

「《ライトニング》でビリってさせて、締めてから鍋でグツグツと」

「……どうやって締めるの?」

「お腹の……みぞおちって言えばいいのかな?その辺りに針をグサっとやる」

「……そっかー……」

 

 なんか彩音さんが遠い目してるな。カニの締め方の話しかしてないんだけど、どこにそんなに目を遠くさせる要素が……?

 彩音さんがどことなく笑っているような顔をして、理由を明かした。

 

「ユキちゃん、気付いてないかもだけど」

「うん?」

「なんかさっきから擬音が多いよ?」

「…………」

 

 "確かにwww”

 "なんか男子小学生みたいだったわ”

 "男子小学生は草”

 "ずしゃ!ズバーン!ドカーン!”

 "コメ欄にもおるな”

 

 確かに……! ダンジョンのモンスターに引っ張られてる……!




 鬼灯(捕まえたはいいけど、食べ方っていうか、締め方知らねー……いいか、そのまま突っ込めば。茹でてる間に死ぬだろ。それに、その方が出汁とか外に出ないから美味いやろ)
 こうしてメッサークラブ君は生きたまま茹でられたのだった……

追記:投稿時間の設定ミスってて草
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