【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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配信に興味のない私とお台場ダンジョン配信⑷

 

 大鍋を持った彩音さんと一緒にお台場ダンジョンを進んでいく。途中に出てきたぶっトビウオを《グラビティ》で落として仕留め、大鍋の中へ。

 その後ザシュガニも《ライトニング》で痺れさせてから締めにいったのだが、そこでちょっとした事件が起きた。

 

「これでこの辺を、こう!」

 

 痺れて動けなくなったザシュガニをひっくり返し、ちょうど鳩尾あたりにナイフを突き立てる。ザシュガニがビクンと震えて脚がピンと空中に伸び、その後しばらくして脱力したように脚が地面に落ちる。

 よし、これで仕留めたぞ。と気を抜いた瞬間、ザシュガニの爪がすさまじい音を立てて開いた。

 

「うわっ!?」

「大丈夫!?」

 

 "うおっ!?”

 "怪我は!?”

 "大丈夫か!?”

 

 驚いて飛びのいた私に彩音さんが大鍋を投げ捨てて駆け寄ってくる。 

 

「…………びっくりした……」

「大丈夫!? 怪我してない!?」

「……だいじょうぶ……」

 

 本当にびっくりしたけど、怪我とかはない。にしても、なんで爪がひらいたんだろう……? もしかして死んだふりだった……? 最後っ屁の可能性もあるけれど、念のために調べておこう。

 調べた結果、これは単純にザシュガニが死んで力が抜けた結果、爪が開いただけらしい。あれって本当にデコピンの要領で発射されてたんだな……爪を小さな指で押さえつけているらしい。曲げるのに相当の力が必要のようで、伸びているのがデフォルトの状態のようだ。痺れても開かなかったのは、閉じたままで硬直してたからみたいだね。

 ある意味では死んですぐに開いてよかったな。これで痺れがとけた時に開いていたら、タイミングによっては大鍋ごと彩音さんの腕とか胴が斬れていたかもしれない。

 

 "最後っ屁にしては危険すぎませんかねぇ!?”

 "なんで今までバレてなかったんやこの習性(?)”

 "そもそも魔法で吹き飛ばすのがセオリーだしなぁ…”

 "遠すぎて聞こえてないか、魔法の直撃で聞こえんのやろうな”

 "あと、近づきすぎて倒した奴はたぶん相打ちで死んでる”

 "死人に口なしってことか…”

 

 彩音さんに心配されつつもきちんと原因を究明し終わったので、大鍋の中に入れる。こいつは後でちゃんといただくのだ。まずは火を通して大丈夫そうなら冷凍してから生で海鮮丼の具にする予定である。他のも同じように調理する予定ではあるけどね。でも、ザシュガニに関してはちょっと個人的な恨みも上乗せしておこうか。

 そうだ。美味しかったらたっくさん捕まえて他の人におすそ分けしてやるからね……

 きっと、『白の騎士団(ホワイトナイツ)』に渡せばそれはそれは喜んでくれるはずだ。だってカニだもんね。お酒のおともにちょうどいいだろう。

 そんなことを考えていたら、彩音さんに肩を叩かれた。

 

「でゅくしエビも同じようになりそうだから、気をつけようね」

「……そうだね……」

 

 彩音さんの指摘に若干の恐怖を覚えつつ、再びダンジョン内を歩いていく。とはいえ、でゅくしエビもそうなると思って行動できるなら、そこまで危険ではない。だって、直線状にしか攻撃できない以上、目のまえにいないなら問題ない。ザシュガニと違って直線攻撃だけだからね。

 念のため、でゅくしエビを解体するときに注意しておこう。大丈夫だとは思うんだけどね。

 本来のエビなら氷水にいれて動けなくしてから、頭と胴を切り離すのだが、流石にダンジョンのモンスター相手にそんな悠長なことはできない。《フリーズコフィン》で凍らせるのは締めてからでないと美味しくなくなってしまうので、それは最終手段だ。

 そのため、ザシュガニと同じように《ライトニング》で痺れさせてから首と胴を切り離す。彩音さんの協力を得て、一発で綺麗に首と胴体を分割することができた。出来たのだが……

 

「ならないし!」

「ならなかったね。でも、危なくなくてよかったよ」

 

 "ならないんかーい”

 "めっちゃ慎重にやってたのにw”

 "まあ、危険がないのが一番よ”

 "それな”

 

 それはそうなんだけど! でも、やっぱりなんか納得いかない。なんでこいつはでゅくしが発動しないんだ?

 一応調べてみたら、こっちは射出されずでろんと垂れ下がったので、そもそも伸びている状態がデフォルトではないらしい。射出した後に飛びすぎないようにしているだけで、他の筋肉で射出しているようだ。

 地味にモンスターの生態研究が進んでいくな……とはいえ、私たちが知らないだけですでに知られている知識の可能性はある。だって、死んだ後にモンスターがどうなるとか、そもそもどんな原理で攻撃しているかなんて、冒険者にはあまり必要がない。射出してから再装填までの時間ととかの方がよほど重要だし。どういう原理かなんていうのは後回しで、何をしてくるのかさえ分かっていればいいのである。

 その後も食材を求めてダンジョンを歩く。景色は本当に綺麗だし、近づきすぎなければ魚系のモンスター以外は攻撃もしてこないので、歩いているだけでも楽しい。

 イソギンチャクはゴックンチャクと混じって存在しているので危ないけど、サンゴは擬態してるモンスターとかもいないので、純粋に楽しめる。あとはクラゲのモンスターがいれば完璧なんだけどなぁ……

 そんな感じで景色を楽しんでいたら、少し先の地面に濃い水色の貝殻が置いてあった。それなりのサイズで、地面から少しだけ浮いている。

 

「あ、ヌッホタテ」

「あれはどうするの?」

 

 "あの濃い水色のホタテがヌッホタテなんか…?”

 "あれがキモいと噂のヌッホタテ…”

 "普通のホタテの貝殻にしか見えんw”

 

「うーん……一旦鍋おろしてもらって、アヤネさんに首ちょんぱしてもらおうかな。私だと首まで届かなそうだし」

「わかった。よいしょっと……」

 

 彩音さんが近づくと、ヌッホタテが立ち上がった。本当に、音もなく、ヌッと立ち上がる病的に細く青白い八頭身ボディ。何度見ても気持ち悪い……

 立ち上がって少しだけ固まったあと、腕をこちらに伸ばしながら突進してくる様はホラーゲームのそれである。頭はホタテだけど。

 こいつのメインの攻撃は、あの両手で掴んでからホタテで()()()()。そういう攻撃である。たまに格闘戦を挑んでくるみたいだけど、今のところ遭遇したことはない。

 

 "きっっっも!?”

 "マジでキモくて草枯れた”

 "ニョキって生えてくるの草”

 "突進してくんなぁ!?www”

 "ホラーやろこれwww”

 

「せいっ!!」

「おお、綺麗に切ったね」

 

 彩音さんが突進してくるヌッホタテの首を一発で切り捨てる。そのまま勢いで体と頭が後ろにゴロゴロと転がっていった。うーん、結構マヌケな絵面だ。

 

「これは……もう倒せてるよね?」

「うん、だから、あとは鍋に入れるだけ……うわっ!?」

「ユ、ユキちゃーん!?」

 

 "ぎゃああああ!?”

 "やばいやばい!!”

 "なんで生きてんだよ!”

 

 鍋に入れようと思って、ホタテ部分を持ち上げようとしたら、()()()()()()()()()()()、私に飛びかかって来た。なんとか噛み潰されないように、両手で抑えつけられたけど、嘘でしょ!? こいつ頭だけになっても噛み付いてくるの!? いや、ホタテなんだし、ここが本体と言われればそうなんたけど、じゃあ体はどういうことなんだよお前!!

 《魔力の矢》を即発動し、貝柱を打ち抜く。こういうとっさの時でも発動までが一瞬なこの魔法が輝くんだよね。みんなももっとこの魔法を使おうよ。

 あ、ドロップアイテムの真珠。てことは今度こそ倒したね。びっくりはしたけど、まあこのくらいはよくあることだ。

 

「あー、びっくりした」

「首ちょんぱしても生きてるんだねこれ……」

「……これも鍋に入れてっと」

「入れるんだ……」

 

 "入れるんかい!”

 "食われかけたのにこの冷静さである”

 "食おうとしてきたんだから、食うにきまってるだろ”

 "因果応報……なのか?”

 

 ちょっと彩音さんが引いているけど、そりゃ入れるよ。ホタテだよ? 美味しそうじゃん。生が無理でも全然いける。バター醤油で焼こうじゃないか。

 バター醤油で焼くと、本体の味とか関係なくバター醤油の美味しさでどうにかなっちゃう気もするけども。

 それにしても、全然ウニボーが見つからない。

 

「ウニボーが見つからないなぁ……」

「ユキちゃんの探知範囲にもいないの?」

「今のところは。レアモンスター扱いされてるとはいえ、そんなにレアな感じじゃないはずなのに……」

 

 そんなにたくさんいるわけじゃないけど、歩いてたらちょこちょこ出てくる感じなんだけどなぁ。

 

 "レアモンスターなんだ?”

 "レアモンスターではあるけど、他に比べて出やすいのはマジ”

 "他が少なすぎるともいう”

 "レアだしな”

 

 後ろで大鍋を抱えたままの彩音さんから、ぼやきに近い言葉が聞こえてくる。振り向いたけど、鍋の中身が増えすぎて顔が見えないな……

 

「ユキちゃん基準のレアって、ちょっと違いそうな気がするんだけど……」

「そうかな? レアモンスターはレアモンスターじゃない?」

「でも、前にホクト食べたって言ってなかった?」

「あれは探せば普通にいるし」

「いるかなぁ……?」

「コツがあるんだよ。ある程度いる場所は絞れるからねあいつは」

「……ホントに、ユキちゃんって謎の知識たくさんもってるよね……いっそモンスターの生態研究とかしてみたら?」

「生態研究かぁ……」

 

 "生態研究かぁ…”

 "すでに半分くらい生態研究してそう”

 "食い方調べるのは生態研究なのか?”

 "毒があるかどうか調べてるから生態研究!()”

 

 モンスターの生態研究か。確かにしてみたら面白いかもしれない。何を食べているのかとか、繁殖が出来るかどうかとか。

 養殖出来そうなら養殖出来たら美味しいものがたくさんだし、食性で毒を溜め込んでいるタイプなら、毒をなくせるかもしれない。

 

「食べてるものをちゃんと確認して、毒を抜ければ美味しいモンスターとかいるかもしれないね」

「…………」

 

 "そこなのかwww”

 "毒抜きするために研究すんの草”

 "食うことしか考えてねぇw”

 "アヤネさん無言にならないでwww”

 

 そのことを彩音さんに伝えたら、無言が返ってきた。何かあったかな?

 

「……どうしたの?」 

「いや、ユキちゃんだなぁと思って……」

 

 "マジでそう”

 "それな?”

 "分かる”

 "この信頼感よ”

 

「……?」

 

 私だなぁってどういうこと? なんか絶対褒めてないよね? まぁ、私らしいと言われれば、私らしいことではあるだろうけども。

 ウニボーを探しつつ拠点にする予定の洞窟に向かう途中で、ビューンカジキに出くわすことができた。まあ、これについては詳細は省略する。落として頭をザクリ。以上。

 

「あ、ウニボーだ」

「え、どこに?」

「洞窟の中。ちょうどいいね」

 

 "待っててえらいねぇ”

 "食べられるために待ってたのかな?”

 "お前らウニボーを何だと思ってるんだwww”

 "食材”

 "やめたれwww”

 

 洞窟内にいたモンスターたちに《魔力の矢》の掃射を叩き込み、ウニボーのみを残す。痺れさせてひっくり返して、口の部分にナイフをザクリ。《魔力探知》で死んだことを確認してから、手を放す。よし、ウニボーも確保できた!

 結界石で拠点を作成。諸々のセッティングは彩音さんに任せて、私はこいつらを捌く。

 さあ、豪華な夕飯のために、今ここで食べるぞー! 待ってろよ、モンスターの海鮮丼!

 




どこでどういう特典SSが付くのかの詳細が出たので、リンクを貼っておきます。
https://x.com/drecom_media/status/1970058054491312567?t=6n2TkSUGPndR6uZSoDhwOw&s=19
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