【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する 作:もけねこ
前回、初めて誤字報告が来ませんでした。やったぜ
思いのほか長くなってしまっていますが、あと1、2話ほどになると思います。
とりあえず、まずはここにあるモンスターたちを捌かねばならない。とはいえ、普通の魚介類が主だし、そんなに大変なこともない。
問題なのはゴックンチャクだ。イソギンチャクは流石にわからないから、切るだけ切って中身を見てから考えることにしようと思う。
「まずは……ぶっトビウオを先にやろうかな」
普通の魚の形をしているわけだし、内臓を取るだけでいいだろう。あとは丸焼き……でいいよね。トビウオ料理なんて知らないし、そんなに凝ったものを作るつもりもない。お昼ご飯はあくまでも夕飯の材料の味見である。
というわけで、まな板の上にぶっトビウオを置いてさっさと内臓を取り始める。モンスターのそんな光景や物自体を見たことがないんだけど、お尻の穴があるのが不思議でしょうがない。が、調理しやすいのであってよかったと思っている。本当に、何であるんだろうね?
「よし、セッティング終わり! えっと……ユキちゃんどれにお湯沸かしておけばいい?」
「えーと……この鍋がいいな」
「オッケー!」
テーブルやらのセッティングが終わった彩音さんにお湯を沸かしてもらうことにした。あとでいろいろ茹でるからね。そして、私は彩音さんがお湯を沸かし始める前にぶっトビウオの内臓を取り終わったので、彩音さんにこれもパス。
「アヤネさん、これ焼いておいて」
「え!? 早くない?」
「《解体》がこういう内臓取りなんかでも発動するんだ」
「べ、便利……わかった。美味しく焼くね!」
"調理担当アヤネさんになってる?”
"調理というか焼き担当が彩音さんのイメージだな”
"そういや、今日は防護服着ないんだな”
"確かに。魚メインだからか?”
両手を握り締めてやる気満々な彩音さんにぶっトビウオを任せ、私は次に取り掛かる。次は大物。ビューンカジキだ。身体のサイズは2メートル近く、そこから50センチほどのノコギリ状になった角が生えているモンスターだ。ドロップアイテムもこの角。群れを作ったりはせず単体でいるモンスターで、こちらを見つけると突撃してきて、角で攻撃してくる。さらに、一撃離脱を基本にしているため結構面倒くさいのだが、動きが直線的なので《グラビティ》を目の間に置いておくとそれだけで落とせる。まあ、大抵のモンスターが対処法さえ分かってればどうとでもなる。みたいな生態してるけども。
とはいえ、こんなに大きなモンスターを捌けるような包丁は持っていない。よって、内臓付近の処理はナイフで、本体に関してはショートソードで切り分けることにした。
鰓周りにナイフを刺し、そこの薄皮に切れ込みを入れる。左右両方から切れ込みを入れたら、お腹を割く。あごの下まできちんとナイフを入れて、口と鰓がつながっている部分を切る。そして、鰓を掴んで内臓ごと引っこ抜くように取り除く。ウォーターボトルで水をだしながら内臓を取り出した後の腹部を洗って綺麗にした後、腹膜をナイフで背骨に沿わせて2本切れ込みを入れる。そして、水をかけながらその部分をたわしでごしごしとこする。
"めっちゃスムーズに解体していくやん”
"魚丸ごと捌いてるのにこの手慣れてる感じ…出来る!”
"ユキちゃん普段から料理してんだろうなぁ…”
"これが夢だったとまで言ってたからな。準備してないわけがないんよ”
こうすると、背骨のところにある太い血管の血を洗い流すことができて、切り分けた時に肉に血が付かない。最終的に生で食べたいのだから、血なんかは極力つかないようにちゃんと処理しないとね。
ナイフの出番はいったんここまで。次はショートソードの出番だ。
"やっぱこれ包丁扱いされてない???”
"武器として使ってるの一度しか見たことないぞwww”
"ショトソ「俺、武器なんすけど…」”
"お前は包丁だろう。やれ”
"ショトソ「はい…」”
まずは頭をさっくりと切り落とす。角も危ないので切り離す。首の方から、背骨に沿ってショートソードで切っていく。切っているという実感が全然しないので、本当に危ない。それに、背骨に沿って切れているかもちょっと怪しい。うーん、大型モンスター用に別の包丁を用意するべきかなこれは。今後も使うだろうし、作るだけならすぐにできる。ついでにナイフも新調しよう。前からもうちょっとサイズの調整をしたいと思ってたんだよね。
そんなことを考えながら尻尾まで刃を入れたので、一旦剣を置いて持ち上げる。縦に真っ二つになったビューンカジキの肉は、綺麗なピンクががった白に近い色だった。普通にスーパーで売ってるカジキとほぼ大差がない。見た目の時点で美味しそうだ。
ただやっぱりちょっと背骨ごと切っている。まあ、後で取り除けばいいだけだし、別にそこまで気にすることじゃない……か? いや、ここはちゃんと包丁を用意すべきだろう。何かと使えるし。それに、卸すのも綺麗に出来た方が嬉しい。あとでよさそうな素材を探しておこう。それまでは君に世話になるよ。
そんな風にビューンカジキを解体していたところ、後ろで見ていた彩音さんが感動したように声を上げた。
「わ、テレビでよく見るやつだ!」
「あー、マグロの解体とか?」
「そうそう!」
"分かる”
"めっちゃテンション上がってきた”
"綺麗な色してやがるぜ…”
"びんちょうマグロっぽいな”
"あー、ぽいな”
"美味そう”
彩音さんの言う通り、テレビとかで見るような光景ではあるんだよね。まぁ、今からそんな感じにはならないけども。部位の区別とかつかないし。
半身にしたビューンカジキを一旦ラップでぐるぐる巻きにして保管しておく。色悪くなっちゃうしね。で、残り半分を今から食べる……のは量的に無理そうなので、全体の八分の一くらいのサイズにする。そして、ちょっと厚めに切っておく。塩コショウで焼いてステーキにする予定だ。
「あれ? そう切るの?」
「ステーキにするよ」
「ステーキ……!」
"ステーキ!?”
"ビューンカジキのステーキ……美味そう”
"相変わらず見た目はスーパーにありそうなんだよなモンスターの肉…”
"脂のってる……かはわからんな”
彩音さんの目がきらっきらである。食べるの本当に好きだね彩音さん。私も人のこと言えないけど。
さ、次だ次。私を食べようとしてきたヌッホタテである。けど、これ解体する必要あるんだろうか……? 丸焼きじゃダ……メだな。サイズ的にコンロに乗らない。大鍋用のやつになら乗るけど、それは後ででゅくしエビとザシュガニを茹でるのに使うから駄目だ。というわけでこれも解体していく。
とりあえず貝柱を切って、取り出す。貝ひもの部分はやめておく。だって完全に目だったし。気持ち悪くてちょっと……そもそも貝柱の部分しか食べる予定はなかったから、これでいいはずだ。貝柱の真ん中に《魔力の矢》で開けた穴が開いているので、それも含めて細かく切ってしまう。普通のホタテくらいのサイズだ。形は角切りだけど。そのまま適当にタッパーにぶち込んでおく。使い道も後で決める。有力候補はソテーかな。
次は、でゅくしエビを解体……というか、殻剝きをする。頭は倒すときに綺麗に落とされているので、胴体部分しかないしね。大きいうえに殻が分厚かったのだが、結構簡単べりっと剥がせた。殻の下の身は普通のエビみたいな感じなので、これ美味しそうだ。楽しみだなぁ……
ザシュガニは解体とかはしない。そのまま丸茹でにする予定だ。
さ、ウニボーにいこう。といっても、これは解体というかなんというか。先ほど仕留めるために刺した傷口から殻を力づくで開いて中身を見てみると、市販のものと同じようにオレンジ色の部分があった。これは期待できそうだぞ。
一応調べたところによると、この部分って生殖関連の部位らしいので、モンスターも繁殖とかするみたいだね。養殖の道が開けたかもしれない……!
"おお、普通にウニって感じ!”
"バカでかいウニだー!!”
"え、めっちゃ美味そう。腹減ってきた”
"流石にウニは用意できなかったぜ…”
"プリンと醤油で行け”
"やるかボケwww”
"懐かし過ぎて草”
さ、さっさと中身を取り出して……鍋に塩水を用意したので、それで洗う。で、黒い部分が内臓なのでそれらを取り除く。あまりにも大きいのでちぎれてしまったりもしたけど、とりあえずはオーケーということで……いや、にしても美味しそうだなこれ。楽しみだ。今日は楽しみが多くて嬉しいな。
黒い部分を取り除き終わったので、これでウニボーの解体は終わり。食べるのは後。まずは火を通さないといけないから。念のために。
「よし、とりあえずはいいかな……で、これはどうしようか……」
"さあ、メインの登場です!”
"メインw”
"これはメインなのか?www”
"モンスターを食べるという点ではメインといっても過言”
"過言なの草”
私の目の前にあるのは、ゴックンチャクである。デカいイソギンチャクなわけだから、多分イソギンチャクの解体方法でいいと思うんだけど、そもそもイソギンチャクの解体方法ってなんだ?
「スマホで調べてみよ」
調べてみること数分。驚愕のことが分かった。
「全く出てこないんだけど……? え、そんなことある?」
「どうしたの?」
「イソギンチャクの解体方法が調べても出てこない」
「それはそうじゃない……?」
彩音さんの言葉は確かに正しい。食べることが念頭に置かれていないものに関してはその通りだと思う。そう
「でも、イソギンチャクの食べ方は出てくるんだよ?」
「食べ方はでてくるの!?」
"出てくるんだよなぁ…”
"でも確かに解体方法出てこないな”
"体の構造とかは出てくるんだけどな”
そうなんだよ。食べ方は乗ってるんだよ。あと、食べた人の食レポとかも。なのに、解体方法が出てこないのである……!
いや、食べてるんだから、その前の部分は大事でしょ!? なんで出てこないの? おかしくない?
でも、出てこないものはしょうがない。しょうがないので、とりあえず思いついたように切るしかないのだ。
「とりあえず切るだけ切ってみて、内臓があれば取ればいいか」
「ちなみになんだけどさ」
「ん?」
「食べ方ってどんな感じだったの?」
「唐揚げか煮物」
「唐揚げか煮物……」
なんだか彩音さんが苦悶の表情を浮かべているけど、それは放置することにする。なんか結構見ている気がするし。日常的に。
彩音さんをさておいて、当初の予定通りとりあえずで真っ二つにしてみると、なんていうかちゃんと内臓? があった。正確には内臓というか、黒くてちょっとでろでろとした部分。多分内臓だと思う。があったのでそれを取り除くと、肉厚な……肉? が残った。皮は……あるみたいなので、べりべりと剥がしていく。きれいなピンク色の肉になったので、意外と食べられそうである。ぱっと見、毒もなさそうだ。
さっき見たところによると、唐揚げが特に美味しいそうなので唐揚げを作ってみることにする。まあこれは普通に作ってしまっていいだろう。味付けで冒険する前に味を確かめないといけないしね。
これで全部の解体が終わった。なので、彩音さんに作ってもらったお湯の中に、ちょっとずつ放り込ませてもらう。でゅくしエビを少しだけ切ったもの、ヌッホタテ、ゴックンチャクを放り込む。これは食べられるか確かめるための味見用だ。
そして、ようやく空になった大鍋を洗って水を入れてお湯を沸かす。こちらはザシュガニとでゅくしエビ用だ。沸騰したら丸茹でにする。
「ぶっトビウオ、いい感じに焼けたよ」
「こっちもちょうど終わったから、一緒に食べようか」
「ふふ、楽しみだなぁ……一部怖いけど……」
「毒はないと思うから大丈夫だよ」
"基準よw”
"まあユキちゃんだし”
"それはそう”
"さっきも言ってたしな”