【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する 作:もけねこ
今回は彩音視点になります。夢希以外の視点の練習。
雑談はバッサリカット!
「あ、時間もいい感じだし、そろそろ作り始めようか」
「うん。そうだね」
リスナーさんたちと楽しくお話をして、いい感じの時間になったから、夢希ちゃんとご飯を作る準備を始める。今日は宣言した通り、私も一品作る予定だ。
私が夢希ちゃんと冒険するようになってから、毎日が楽しいし、美味しいごはんを食べられるのがホントに嬉しい。何かと振り回されたり巻き込まれたりはするけど、それもまた冒険だしね。
それに、家を出てからというもの、他人の手料理なんて食べていないから、久しぶりに食べられてすごく嬉しい。
でも、不満がないわけじゃない。夢希ちゃんは普段から料理をしているからすごく美味しいし、モンスター料理そのもののギャンブル性は承知の上なので、そういったところではなく。
それは、ご飯の時に汁物がない。ということだった。
私たちの冒険は、モンスターを食べる。ということなわけだけど、食べているのは基本的に肉だ。大体はそのまま肉を料理しているし、そこにご飯がついてくる感じである。
飲み物はウォーターボトルで作った水をそのまま飲んでいるのだが、たまにきついときがある。
口の中の脂であったり、モンスター特有っぽい匂いなどが口の中からなくならないのだ。今回で言うなら、ビューンカジキのステーキは美味しかったけど、脂がきつかった。
あれだけならご飯があれば大丈夫だけど、他のものと一緒に食べるなら、ご飯だけでは口の中をリセットしきれない。
そういった時に、お茶とかスープなんかの汁物でもあれば全然違うと思ったのだ。
今回は、ぶっトビウオかビューンカジキの骨で出汁を取ったスープを作ってみようかと思う。モンスター料理の一部だし。夢希ちゃんは肉を食べることがメインになっているので、私は別のところで研究してみようかなって思うのである。一緒に冒険してるわけだし、私も別方面でやってみようと思うのだ。
念のため、インスタントの味噌汁とコンソメスープを持ってきた。失敗した時のリカバリーもばっちりだ。私はそんなに料理上手じゃないしね……自炊もするにはするけど、こう、お手軽! 雑に美味しい! みたいなレシピをたまに作るくらいで、後は軽食しか……うん。なんだか悲しくなってきたからやめようかな。
「よし、頑張るぞ……!」
今回はお試しだし、そこまで本格的には出来るとは思ってない。でも、やるからには全力でやるべきだ。
まずは、ぶっトビウオとビューンカジキの骨を茹でる。まずは湯通しして、水で軽く洗う。そのあとに焼く。こうすると、臭みを抑える効果があるみたい。
「ちょっと焦げるくらいまで焼いて……」
そして、骨を折ってお湯の中へ。こうすると骨の中から旨味が出てくるとか。調べただけだから、うまくいくか心配になってきたけど、とりあえず挑戦!
「あとはアクを取って」
アクが出てくるのをひたすらすくって捨てていく。想像以上にアクが出てきてびっくりしてるけど、出てくなくなるまでひたすらすくっていく。
出てこなくなったら、骨を取り出して弱火にして少しおいておく。完全に骨だけだから、出汁だけでオッケーだ。その間にスープの具材を用意する。といっても、野菜をちょっと入れるくらいだけどね。野菜を入れて、すこしだけ煮込んで……
「よし、味見……」
味見をして、調味料で味を調えようと思っているんだけど、ちょっと怖いよね。いやでも、ここは覚悟を決めよう。どっちも美味しかったんだから、きっと大丈夫!
「うん、美味しい。けど、味が薄いし、ちょっとにおいがするから……」
こういう時は味噌を入れるといいらしいので、味噌汁みたいにしてみよう。少しだけ味噌を溶かして、味を調整……完全にあら汁だねこれ。モンスターのあら汁。でも、美味しくできたと思う。ちゃんと出汁の味もするし、いい感じに口の中をリセットできるはずだ。このまま置いておいて、ご飯の時に温め直せばオッケー。
さ、この後はご飯を炊けるのを待つだけなんだけど、夢希ちゃんの方はどうなってるかな。
「うーん、これ結構……いや、大丈夫かな……?」
「!?」
"わぁ!目がぁ!?”
"画面が真っ赤www”
"火がアカンw”
"フランベのレベルじゃなくて草”
夢希ちゃんの方を見たら、恐らくカジキのステーキを作っているフライパンから、火が出ていた。火というか、火柱だし、その大きさがおかしいけど。
いや、何してるの!?
「ユキちゃん大丈夫!?」
「うん? 大丈夫だよ。ちょっとフランベに挑戦してみただけだから」
"挑戦してみた【だけ】”
"だけにしては大惨事だろw”
"まだ燃えてんの草”
フランベに挑戦したにしてはフライパンから上がってる火の大きさがおかしくないかなぁ!? あと、なんでそんなに冷静なの!?
「いや、すっごく火出てるけど!? フランベって一瞬じゃなかった!?」
「あぁ、うん……ちょっとお酒入れすぎちゃったみたいで……あ、収まった」
私がツッコミを入れると、夢希ちゃんが気まずそうにフライパンに目を戻す。
火の収まったフライパンには、真っ黒に焦げた……なんだろう? 多分カジキのステーキだったものだと思う。多分。
「真っ黒になっちゃった……」
「そりゃそうだよ……」
"マジで黒くて草”
"漫画みてぇな焦げ肉で草”
"ひっでぇw”
"マズそうw”
すっごくしょんぼりした感じの夢希ちゃんに呆れてしまう。ちょっと可愛いけど。
にしても、フランベかぁ……やろうとしたことないけど、確かにやってみようと思うなら、ダンジョンの中の方が安全かも。周りが燃えないし。
ん? フランベってことはお酒使ってるんだよね。夢希ちゃんは一体どこからお酒を持ってきたんだろう? 料理酒とかじゃ出来ないだろうし。
「そういえば、そのお酒はどこから?」
「これはお父さんが貰ったはいいけど、あんまり美味しくないって飲みかけのまま放置してたやつをもってきた」
「あー……」
"確かにそういうのあるなぁ…”
”お前らどうしてる?そういうの"
”俺は無理矢理飲む"
”料理に入れる"
"しょうがないので捨てる”
なるほど、そういうやつか。私のお父さんもたまにそういうお酒持ってたなぁ……今実家に帰ったら、まだあるのかな? 私も飲めるようになったから、もしかしたら私は飲めるかもしれない。
なんて、ちょっと実家のことを思い返していたら、炭になったお肉を処理しながら、夢希ちゃんがこっちをみてくる。
「アヤネさんは出来た?」
「出来たよ、はいこれ」
"お、汁物だ!”
"汁物って初?”
"シチューはあったぞ”
"あれ汁物…か”
"メインのイメージ強すぎて汁物の感じしねぇw”
夢希ちゃんに、コップに少しだけ入れて味噌汁を渡す。冷たいけど、味見だから許してほしいな。
「あ、お味噌汁だ……美味しい。なんの味?」
「ぶっトビウオとビューンカジキで出汁取ってみたんだ」
「おお……なるほど、出汁……」
夢希ちゃんが思考の海に沈んでいってしまったのを、しばらく眺める。きっと彼女の頭の中では、出汁を取れそうなモンスターとその料理に関しての考えが巡っているんだろう。
私は出汁っていうと、汁物かラーメンくらいしか思いつかないんだけど、他にも色々考えてるんだろうな……
でも、このまま沈まれているとご飯ができないから、声をかけて戻ってきてもらおう。
「ユキちゃんは他に何作る予定なの?」
「……あとはウニホーレン作れば完了……と言いたいところなんだけど、今カジキのステーキ失敗したところだから、それもだね……もう一回挑戦し」
「私がカジキを焼くよ」
「いやわた」
「私が、焼くよ」
「う、うん……」
"押しつよw”
"ゴリ押ししてて草”
"アヤネさん、強くなって…”
"これくらい出来ないとユキちゃんについていけない”
もう一回フランベをやろうとした夢希ちゃんを遮って、カジキステーキを焼く役目を奪い取る。
あんなに美味しい物をなんども失敗するなんて許せない。あんなに美味しいんだよ!? いや、これが例えばそんなに美味しくないやつだったら許せたんだけど、これだけ美味しいお肉で失敗するのはダメ。ダメったらダメ。
「そういえば、ゴックンチャクの唐揚げはどうだった?」
「味見したら完全に軟骨揚げだった」
「ホント? あ、ホントに軟骨揚げだ」
夢希ちゃんが先に作っていたゴックンチャクの唐揚げを一つもらうと、ホントに完全に軟骨揚げだった。コリコリしている食感はそのまま、下味でちゃんと味がついてていい感じ。
なんなら、軟骨揚げよりも味がして美味しいかも。食材になる前の見た目はちょっとあれだけどね……
「じゃあ、ウニホーレン作るね」
「うん。私もステーキ焼くよ」
夢希ちゃんと分担して、さっさと作り上げてしまおう。さ、美味しいご飯まであともうちょっと!
ステーキの肉汁でソースを作ってみようかなと思ったんだけど、肉汁というか、ほぼ完全に脂だったので諦めた。
ちょっとその……お腹周りの不安が……最近、夢希ちゃんが揚げ物にハマってるからか、ちょっと怖いんだよね……運動はしてるけど、それでも怖いものは怖い。
夢希ちゃんは一切気にしてなさそうだけどね……なんでだろう……
ヒント、食べてる量。
ちょっと短くなってしまいましたが、キリがいいのでここまでにします。
あと1話続きます。
次回は夢希視点に戻します。