【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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話の途中でなんで閑話なんだよって言われそうですが、残業で本編書けなかったんです許して。


【閑話】最初の友達な私とハンバーグ

 

「そ、そんな……」

 

 夜、ベッドに寝ころびながら新しく出た漫画の新刊を読んでいた私、倉橋凉は声を震えさせていた。

 単行本派だからとひたすらネタバレを避け続けたというのに、この仕打ちはあんまりじゃない……? 目の前にある漫画の展開に頭が追い付かない。

 

「推しが、推しが……死んじゃったー……!」

 

 

 

「夢希の作ったご飯が食ーべーたーいー」

「えぇ……」

 

 翌日、私は夢希に縋りついていた。

 もう、あまりのショックで昨日は寝れなかったし、SNSで病み発言しまくった。だって、悲しいよ……大好きだったのに……同担の人たちと慰めあったり、推しの推しポイントを言いあう会を開いたりもした。気づいたら朝だったので、慌てて家から登校したくらいだよー……。

 私に縋りつかれた夢希はめんどくさそうにこっちを見てくる。傷心の友人になんて視線を向けるんだー!

 

「食ーべーたーいー!」

 

 夢希を揺さぶりながら駄々をこねる。

 私にとってネット越しの友達はたくさんいるけど、リアルでの友達は愛依と夢希しかいない。そして、こんな風に甘えられるのは夢希だけだ。愛依はこういうときドライだしー。はいはい、いつものねー。くらいの感じだ。夢希は最初はめんどくさそうにするけど、最終的にはちゃんと付き合ってくれる。最初から付き合ってほしんだけどさー!

 私の駄々に根負けしたらしき夢希が白旗を上げた。

 

「わかったわかった。何がいいの?」

「やったー! ハンバーグ!」

 

 やっぱり夢希は優しい。そして、私はハンバーグの気分! 心が弱ったときはカレーかハンバーグ。古事記にもそう書いてある。

 こういう時は当たり前だけど私が材料費を出してる。わがまま言ってる自覚はあるしー?

 

「じゃあ、買い物してから凉の家に行こうか」

「いぇーい。あ、牛百パーでよろー」

「急に難易度上げるのやめて?」

「ふふふー」

「もぅ……」

 

 しょうがないなぁ……みたいなため息はつくものの、なんだかんだしっかりと作ってくれる夢希が私は大好きである。

 

 

「ただいまー」

「おじゃまします」

 

 放課後、スーパーによってから家に帰ってきた。食品は夢希が魔法で収納してくれるので、持ってくるみたいなことにならない。いやー魔法ってマジで便利ー。このためだけに冒険者になりたくなるレベルなんだけど、習得めっちゃ大変って聞いて諦めた。

 私は冒険者の配信とかも見ているんだけど、そこで得た情報から夢希が相対的ではなく絶対的におかしいことは理解している。その夢希が大変と言い切るレベルである。絶対に私には無理だよー。

 家についてさっさと着替える。制服なんて堅苦しいもの家で着てられるかー! でも、これはこれでフェチを感じていいよね。オタクとしてはたまらん服だと思う。夢希も勝手知りたる家って感じで着替えている。よく泊まりに来るから、愛依と夢希の着替えは一通り私の家にあるからねー。

 そして、内緒の話なんだけど、私は夢希に関してちょっとよくない趣味を持っている。でも、これは私が悪いわけじゃない。本当だよー?

 夢希は基本的に露出を一切しないタイプだ。制服の時は夏だろうが黒タイツを履いている。冒険者として活動しているときもそうだ。私服の時だって、夏でも長ズボンである。スカートの時はタイツ履くくらいの徹底っぷり。ほんとーに誰かに肌を見せることをしない子だ。

 でも、家の中でリラックスしているときは違う……! 今みたいなときとかは、タイツを脱いで生足を見せてくれるのだ。いつぞや買ってきたドルフィンパンツが気に入っているようで、部屋着は大体それなのである。普段運動しているから引き締まっている、シミ一つない真っ白な生足があけっぴろげになるのである……!

 そんなの、見るに決まってるじゃん……! そんなの見ちゃうよ! 私は悪くない! 普段厚着の文学少女染みた女の子が自分の前では薄着になって肌晒してくれるシチュエーションでテンションが上がらないなんて、オタクの風上にも置けねー!!

 しかもちょー美人。化粧してなくてそれとかマジ? って言いたくなるような顔してるのだ。本気でゴスロリを着せたい。ゴスロリ着せて適当に座らせておくだけで西洋人形に間違えられると思う。目が青なのも良い……青っていうか碧って感じの青なのが良い。あと、その肌のきれいさはマジで何ー? 結論、私の友達はちょーさいこー! ってこと。

 ちなみに、上着はちょっと大きめのパーカーだ。萌え袖いやっほー!! 超可愛い! 夢希は本当に可愛い! もっとおしゃれに気をつかえばいい……いいやだめだ。ただでさえそれなりに人気があるのに、さらに大変なことになってしまう。今は高嶺の花的な扱いを受けて周りが勝手にけん制しあってるけど、ラインを越えたら大変なことになる。

 私? 私は下着にデカいパーカーのみだよ。ズボンとか履くと洗濯もの増えるんだもん。

 

「じゃあ、作るね」

「待ってましたー、ぱちぱちー」

 

 夢希が台所で料理を作り始めるのを、私は対面でじっと見ている。リビングダイニングなんてついてる洒落たお部屋を用意してくれた両親には感謝しかない。大きめの部屋だから二人も呼べるし。あと、部屋数も多いから使い方で場所変えられるし。

 配信部屋に寝室にグッズ部屋にと部屋分けを過剰なまでに使わせてもらっている。仕送りもしてくれているけど、私は弟用にと思って取っておいてある。こんなに贅沢させてもらっているんだ。それくらいのことはしないとねー。7歳なんだけどちょー可愛いの。ためたお金で将来パソコンプレゼントしてあげるからねー。ふふふー。

 あ、私の生活費は配信活動で十分稼げてるからねー。よゆーよゆー。

 

「いつも思うけど、凉って私が料理作ってるときじっと見てるよね。なんで?」

「ん-……作ってるなーって感じられるから?」

「何それ」

「なんかこー……ご飯ができるんだなーっていう実感があるというかなんというか。普段から見ないし聞かないからねー」

 

 今の部屋は、私が高校に上がったときに一人暮らしをしたいと言ったら両親が用意してくれたものだ。だから、この部屋には私しか住んでいない。確かに寂しく感じるときだってあるけれど、この方が私の家族にはいいのだ。

 私のお母さんは、私を産んだ後に男作って駆け落ちしちゃったそうなので、今のお母さんは再婚してできた人だし、お父さんはその人と幸せに暮らしている。それに、弟も産まれた。

 私が冷遇されてたとかそういうのは一切ない。今のお母さんを本当のお母さんだと思って育ったくらいにはねー。中学に上がったときにそれを聞かされてショックだったのは事実だけど、それ以上に、私がいると気を遣うよなー……。という思いの方が強かった。お父さんに嫌な思いをさせた女の娘だもんねー。それに、お母さん的にも、血のつながっていない娘よりも血のつながった弟だよねー。

 時々お父さんの様子が変だったのはそのせいか。なんて一人納得したりもした。お母さん似みたいだしね。私って。

 というのもあって一人暮らしさせてくれって言ったんだけど、流石にここまでの部屋を用意するとは思ってなかった。最初は普通に抗議したんだけど、女の子の一人暮らしなんだからこれくらい当然。っておじいちゃんおばあちゃんまで出てこられて押し切られちゃったんだよねー。

 今では感謝しているけど、当時はそれはもう気まずかった。いや、確かにオートロック付きの防音設備ばっちりマンションはそれはもー感謝してるけども。友人呼び放題だし、配信もできるし。

 

「そういうもの……か。そうだね」

「でしょー?」

 

 夢希はお母さんが死んじゃってるし、お父さんも片手なのであんまり料理とかできないしで、基本自分で作ってるみたいだしねー。

 私は、時々見たくなるのだ。誰かが料理を作っているところを。あ、お母さんが作ってくれなかったとかじゃないよ。いわゆるホームシック的なー?

 あと、台所に立ってる夢希の脚がちらちら見えるのが良い……

 

「いつか凉も私に料理作ってよ」

「レトルトかカップ麺ならいいよ」

「せめてレトルトをちょっとアレンジするくらいのことはしてよ……」

「えーやだー」

 

 そーいうのは愛依に言ってくださーい。私は食べる専門だからね!

 でもまー、いつかはやってあげてもいいかもね。私が見たいんだもの。夢希だって見たいよね。

 

「食べるだけだから太るんじゃないの?」

「胸がー?」

 

 体型の心配とかしたことがなさそーな奴からのちょっとカチンとくる発言だったので反撃をちょいと。よどみなく動いていた夢希の手が止まってこちらをちらりと見る。そして、ダイニングテーブルの上に乗った私の胸を見て舌打ちをかました。

 

「……チッ」

「舌打ちはよくないと思いまーす」

 

 貧乳の嫉妬は醜いですなー……。とはいえ、本気で気にしているようなので弄ったりしないけどねー。流石にね。ライン超えだからね。あと身長も。

 夢希もそれ以上何も言わず、再び料理を再開した。ちょっとだけさっきよりも包丁の音が大きい気がするけど、まー……ね?

 しばらく夢希の料理する姿を見続けていたら、ふいに夢希が手を止めた。

 

「あのさ」

「なにー?」

「前から思ってたんだけど、そんなに私の脚見て楽しい……?」

「……ふぅー……」

 

 バレてたー!? いや、まっずいバレてると思ってなかったー!! というか、なんで料理中なのに気づくのかなー!?

 言い訳を探して脳みそをフル回転させていたら、夢希がとても優しい顔をしてこう告げた。

 

「……まあ、凉がどんな趣味持ってても、受け入れるから安心してね」

「その発言は嬉しいけど心がえぐられるー!!!」

 

 あまりの火力の高さに床をのたうち回るしかない。夢希は時々こういう発言を天然でするから質が悪い!!

 いや、脚フェチというか、隠されたものがおおっぴらになってるの大好きなんだけども! 厚着から薄着への変化とか、タイツを脱ぐとか好きだけども! それは否定しないけども!!

 でも、それを優しく抱き留められるのはなんか違ーう! それに、私を目覚めさせたのはお前じゃー!! マッチポンプかな???

 

「出来たよー」

 

 のたうち回っている間にハンバーグができたらしい。平常運転すぎー!

 なお、出来上がったハンバーグは大変美味しゅうございました。夢希の料理はオールウェイズ美味しいからさいこー!

 ご飯を食べてお腹いっぱいになって、ちょっと2人でゲームでもして、お風呂に入って泊まってけー! なんて言ってお泊りになだれ込んで。

 そして。

 

 

 

「……凉」

「んー、おいでー」

「ん……」

 

 私の家に泊まりに来て、2人だけの時は、大体こうだ。

 小さな夢希を抱きしめて眠るのだ。そんで優しく背中とか頭とか撫でてあげる。夢希が眠るまで。

 だって私だけじゃ不公平でしょ? 夢希だって、普通の女の子なんだからさ。

 

 

 

 

 

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