【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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新キャラやっと出せた……


配信に興味のない私と新人さん

 

 お台場ダンジョンの冒険から二日後の月曜日。放課後に彩音さんと渋谷の冒険者協会(ギルド)前で待ち合わせをしていた。

 昨日の彩音さんのレベリングは、渋谷ダンジョンのモンスターハウスを片っ端から殲滅して回っただけなので割愛する。途中で休憩をはさみつつも、丸一日ひたすらハルバードを振り回し続けた彩音さんは、最後の一部屋を終えたあともう動きたくないと半泣きだったので、最後はおんぶして帰った。

 魔法をぶっぱなすだけの私と違って、体動かし続ける近接職にこのレベリングは無理があったらしい。なんか効率良いレベリング方法考えないとな……

 とはいえ、一日中《スマッシュエッジ》を維持しながらの戦闘に注力していた分、大分扱いにも慣れたらしい。お台場の時には気づいていなかったが、《身体強化》と《スマッシュエッジ》の併用なんてできるんだ……。と思っていたら、近接職には当たり前のことだったらしい。

 曰く、魔法は口で、スキルは体で使うものであるので、歌いながら踊るみたいなもの。だそうだ。私は魔法しか使えないし、スキルも体に関係するもの持ってないしで、知る機会がなかっただけのようである。

 まあ、使えないのに知識だけあっても困るだろうから、両親も教えてくれなかったんだろう。

 そして、なんでわざわざギルドで待ち合わせなのかというと、今日は新人さんの面接をする日なのである……!

 

「こんにちは彩音さん」

「夢希ちゃん! こんにちは」

 

 いつものように事前に待っていた彩音さんに挨拶をして、ギルドの中へ。

 服装は制服じゃなくて戦闘衣だ。冒険者にとっての正装はこれである。武器は持ってきてない。今日は使う予定がないからね。あと、用もないのに持ち歩くのは違法だ。包丁とかと一緒で。

 

「それにしてもギルドで会うんだね」

「ギルドの方が色々便利だからね。書類とか」

「そっか、そうだよね」

 

 ふと気になった疑問を彩音さんに投げると至極まっとうな返事が返ってきた。入るってなったら書類書いたりするもんね。

 

「……あとは、まあトラブル防止かな……」

「トラブル?」

「ギルドだと暴れようとしないでしょ? よっぽどじゃないと、ね……」

「……こわい……」

 

 彩音さんが顔をひきつらせながら、呟いている内容が怖い。確かに、私たち冒険者にとってギルドで暴れるっていうのは、警察署で暴れるみたいなものだし、抑止力にはなるんだろう。

 なるんだろうけど、ギルド内で痴話喧嘩の末の殺人未遂を起こしたパーティに所属してた彩音さんが言うと説得力が違う。

 

「ええと、この部屋だね」

 

 ギルド内を歩いて、彩音さんが借りてくれたという一室にたどり着く。うん、普通の会議室って感じだ。中央に机があって、椅子が四脚あるシンプルな感じである。

 

「部屋借りるのって、お金かかる?」

「ううん。でも、かからないからこそ、予約しないと使えないって感じ」

「なるほどね……」

 

 なんでも、年末付近はどうにもならないほどに予約が殺到するんだとか。税金関係で。

 私もそのうちの一人……にはならないな。今年のやつをやるであろう彩音さんの様子を見させてもらいながら、しっかり教えてもらおう。

 ドアから離れた側の椅子に彩音さんと並んで座って、加入希望者を待つ。

 そうしていると、彩音さんがカバンから書類なんかを広げ始めたので、なんだか緊張してきてしまった。

 

「なんだか緊張してきちゃった……」

「そうなの?」

「変な人じゃないといいなぁ……って」

「…………そうだね」

「?」

 

 正直本当に変な人じゃないといいなっていうのが本音である。

 だって、私の配信って言っていいのかわからない配信もどきを見ているリスナーさんだよ? 申し訳ないけど変人だと思う。本当に。頼りにもしているけれど、それとこれとは話が別である。

 と思っていたら、彩音さんが凄まじく言いよどんだ後に私から顔をそらして呟いた。

 そっちには壁しかないけど……?

 彩音さんの行動に頭をひねっていたら、コンコンコンとドアをノックする音が鳴った。き、来ちゃった……!

 

「どうぞ」

「失礼いたします」

 

 彩音さんが入室の許可を出し、それに室外の人物が応じる。一気に空気が引き締まって、なんだか呼吸が浅くなった。

 入ってきたのは、彩音さんと同い年くらいの女性だった。音のならないようにドアを閉めたあと、緩くウェーブのかかった腰ほどまである金髪を揺らしながら、こちらに綺麗なお辞儀をする。

 

「本日はよろしくお願いいたします」

「よろしくお願いします」

 

 彩音さんが返事を返した後、彼女はテーブルの近くまでくると立ち止まった。

 目は緑色で柔らかい印象を受けるけど、少しツリ目だからか、意志の強さを感じさせる。全体的に見るとちょっと怖い感じがするくらいの顔立ちなんだけど、髪で中和されていて上品なお嬢様って感じの印象でまとまっているのがすごい。おしゃれ上級者だ……

 服装は青のケープを羽織った白のローブ。ロングスカートなんだけどスカート部分にスリットが入ってるみたいで、見た目よりも動きやすそうだ。

 全体を見てまとめるなら、アニメとかでよく見るシスターさんって感じの人かな。

 普通のシスターと違うのは、小手と足甲をつけていることだろうか。なんで……?

 

「お名前をお願いします」

北条花奈(ほうじょうかな)と申します」

「どうぞ」

「失礼いたします」

 

 彩音さんに椅子を手で示されてから、優雅な所作で椅子に座った。いや、なんで私の目の前に!?

 え、ええと、私も何か話さないといけないのかな? いやでも彩音さんから事前に説明とかなかったし、多分何も言わなくても大丈夫だよ、ね……? 

 なんて考えている間にも、彩音さんと北条さんの会話は続いていく。

 

「えーと……申し訳ないんですが、ちょっと砕けてもいいですか?」

「よろしいのですか?」

「はい。その……ね?」

「……ふふっ。承知いたしました。ただ、言葉遣いに関しては普段からですのでご容赦を」

「わかりました」

 

 何が何やらわからないけど、彩音さんと北条さんが笑いあって、空気が一気に和らぐ。

 突然の空気の変わりように固まっていたら、彩音さんに机の下で突かれた。え、私が何……そ、そうだ挨拶しないと!

 

「よ、よろしくお願いしましゅ……」

「はい、よろしくお願いします」

 

 噛んでしまった……。けど、北条さんが何も言わずにこちらに微笑みかけてくれる。よ、良かった。いい人そうだ。

 

「面接ではあるんですけど、こういう感じで行こうかと思います」

「らしくて良いと思いますわ」

「そう言っていただけるとありがたいです」

 

 彩音さんも先ほどまでの真面目! って雰囲気からだいぶ柔らかい雰囲気になったので、私も息がしやすい気がする(?)。緊張しすぎだよ私……

 二人にもかなり気を使わせてしまったと思う。でも、あの空気でいろいろ話すのは私には無理だよ……

 

「……早速ですが本題に入らせてください」

 

 ちょっと弛緩した空気が彩音さんの言葉でまた引き締まった。あの、こういうのってこうアイスブレイク? っていうのがあるんじゃないの?

 

「あなたの夢は、なんですか?」

 

 彩音さんの言葉にハッとする。そうだ。私たちはそれを聞くためにいるんだった。

 北条さんをしっかりと見据えて、彼女の言葉を待つ。どんな夢だったとしても笑ったりなんかしない。

 

「わたくしの夢は……」

 

 北条さんはそこで言葉を切り、目を閉じた。数秒かけて深呼吸をし、そして目を開いて夢を語った。

 

()()()()()()()()()()()()()。ですわ」

「……?」

「……」

 

 想定外の発言に、私と彩音さんは頭が真っ白になって固まってしまった。

 え、モンスターでお酒を……? どうやって……?

 頭の中では、モンスターの血液を樽に流し込んでいる絵面が思い浮かんでいる。完全に吸血鬼とかが飲むやつだ。

 横では彩音さんが思いっきり顔をひきつらせて固まってしまっている。

 しばらく固まっていた彩音さんがなんとか再起動した。

 

「………………えーっと、ハチを漬けてるお酒みたいな……?」

「いいえ、そんなものではなく」

「じ、じゃあ、どんなの……?」

 

 衝撃が大きすぎて完全に素に戻ってしまっている彩音さんを意に介さず、北条さんは説明を続ける。

 

「トレントやグリーンドラゴン等の樹木系モンスターの体やドロップアイテムを加工して樽を作り、フラーラや悪魔のトゲが実らせる果実を発酵させて造りたいと思っております」

「すっごい本格的!」

 

 室内に彩音さんの叫びが響く。確かに彩音さんの言う通りすごい本格的だ。まさかの樽までモンスター製にしようとしているとは……。

 トレントは木に手足が生えたみたいな巨人で全身が木で出来ている。グリーンドラゴンは背中に木が生えてるドラゴンの一種だ。

 フラーラはなんていうか……根っこが足、葉っぱが手で茎の部分に胴体と頭がついていて髪の部分が花という感じの植物系モンスター。悪魔のトゲは顔とかはないんだけど、中心に黒い花があってその周りにトゲの生えた触手がたくさんあるモンスターだ。どちらも花から実がなるらしいんだけど、そもそもあれって食べられるのかな……?

 でも、それってどんなお酒ができるんだろう? お酒には詳しくないからなぁ……種類だけは知ってるんだけども。

 

「それって、何のお酒が出来るんですか?」

「基本的にはワインですわ。その後可能であればウィスキーやブランデーなども作ってみたいですわね……流石に清酒の類は造れないと思いますが」

「おお……」

「樽で造れるお酒は、大体全部造るつもりなんだね……」

 

 壮大な夢を前に感嘆の声しか出なくなってしまったが、実際すごいと思う。そんなに片っ端から造るつもりとは……

 隣で彩音さんも感心したように声を漏らしているし。

 そんな私たちの反応を見て、どう思ったのか北条さんは少し眉根を下げた。

 

「…………やはり、おかしいでしょうか」

 

 北条さんの寂しそうな声を聞いて、一瞬だけ彩音さんと顔を見合わせる。

 そして、2人で笑顔でこう答えた。

 

「とても素敵な夢です。楽しそうですし。私が20歳になったら飲ませてください」

「ふふ、面白そうな冒険になりそう。私にも飲ませてね」

 

 私たちの答えを聞いて、北条さんは目を見開いた後、少しだけ目を閉じた。

 

「……あぁ……」

 

 その絞り出された吐息にどういう想いがあったのかは、分からないけれど。でも、これで良かったんだと思う。

 その後、北条さんはハンカチで目元を押さえ、失礼しましたとだけ言ってこちらに向き直った。

 で、正直もう加入してオッケー!って感じなんだけど、聞いていないことがあったのを思い出した。

 

「そういえばどのような戦闘スタイルなんです?」

「……ふふふ、今更過ぎませんか?」

「それは、そうなんですが……」

 

 面白そうに笑う北条さんの言う通りなんだけども。実際その通りなんだけども! 私たちにとってはそこはまぁ……ね?

 

「わたくしは基本的に盾で()()()()()()()

「はい?」

 

 待って、別のところで衝撃を与えないで! 盾は殴るものじゃないでしょ!?

 思わず固まってしまった私をスルーして、彩音さんがそのまま会話を続ける。

 

「なるほど盾使いなんですね。もし良かったら、ユニークスキルを教えてもらってもいいですか?」

「自身を中心とした円形範囲内の味方に対する状態異常の回復と少しの治癒効果ですわ。あくまでも状態異常の回復がメインで、治癒能力はそこまででもありません。範囲は……5メートルほどでしょうか」

 

 なんで彩音さんは何も触れないの? 私が間違ってる……?

 あと、普通にユニークスキルがすごい。ヒーラー……なのか? 盾で殴るんだよね?

 話に追いつけていない私が首をひねっていると、北条さんが唐突にこんな事を言いだした。

 

「それと、これはアピールポイントとして考えていたことなのですが……」

「?」

「わたくしのユニークスキルは、酔いを状態異常と認識して回復することが可能なので、ダンジョン内でお酒が飲めますわ」

 

 いやそれアピールポイントなの? そもそもまずダンジョン内でお酒なんて飲まな――

 

「採用を決定します」

「彩音さん!?」

「まぁ! ありがとうございますわ!」

「北条さんもそれでいいの? 本当に?」

「ではこちらの用紙に記入をお願いします」

「はい!」

 

 満面の笑みでパーティー加入の用紙に名前を書いていく北条さん。そして、なんだかルンルン気分の彩音さん。

 本当にお酒好きなんだなぁ……あと、私のことスルーしないでよ2人とも。

 

「では、これからよろしくお願いいたしますね」

「よろしくお願いします!」

「……よろしくお願いします」

 

 私たちのパーティーに、ロマンに溢れた夢を持った盾で殴るヒーラー(?)が加入した。

 




夢希の作る飯がことごとくツマミになりそうなのが悪い()
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