【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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配信に興味のない私と歓迎会準備

 

 北条さんがパーティーに加入した。

 したのはいいんだけど、決め手がアレで本当に良かったのかなぁ……? という考えが頭をよぎって仕方ない。

 嬉しそうな顔をしている北条さんと彩音さんに水を差したくないから言わないけど、お酒ってそんなに良いものなんだろうか?

 彩音さんが私たちの現状やこれからについて、あれやこれや北条さんに伝えるのを見ながらそんなことを考える。

 

「という感じで、今のところ『魔女の大鍋(コルドロン)』が最有力候補になってます」

「それは願ったり叶ったりですわね。彼らなら間違いなくノッてくれるでしょうし」

 

 だろうね。ノリノリだろうねあの人たちなら。でも、確かお酒造るのって免許というか許可がいるんじゃなかったっけ? 勝手に造るのは犯罪だったような。

 

「酒造って、免許とかいるんじゃないんですか?」

「いりますわね。わたくしの場合、実家が酒造を営んでおりまして、そこで造る予定ですわ」

 

 北条さん曰く、酒造に必要な免許は、会社が取る感じで個人で取るわけではないのだとか。製造量や販売金額の規定があるそうで、個人ではとてもじゃないが取れないらしい。

 そして、北条さんの実家はワインやウィスキーなどの酒造会社なので、その一角でモンスターのお酒を製造するつもりだそうだ。これなら、新たな免許の取得は必要ないので、問題なく造れるとか。

 また、そういった酒造会社で新しいお酒を少量(樽1個は少量なのか……?)を造る場合は、試験的な製造とみなされて、例外になるらしい。

 ここまで考えたところで、ふととんでもない考えが頭をよぎった。

 …………ないとは思いたいんだけど、北条さんの話を聞いてノリノリになった『魔女の大鍋(コルドロン)』が製造免許取ってお酒造り始めたりとか……しない、よね……? 流石にないよね? 実験したいからで何でもやる組織だけど、流石にそこまでは……やめよう。

 私は、勝手な妄想から逃げることにした。あそこはなるようにしかならない。考えるだけ無駄だ。考えたことの数段上のことしか発生しない。下かもしれないし、前や後ろだったりするかもしれないが。

 現実に帰ってくると、彩音さんがしみじみとした感じでこうつぶやいた。

 

「……よくご実家は許可を出してくれましたね……」

「ワインを造りたいのでここの一角を貸してほしい。としか言っておりませんので」

「「え!?」」

 

 彩音さんと二人で声を上げてしまった。いやいやいや、いろいろと問題ないかなその許可の取り方!! 私がお父さんに友達とキャンプしたいからテント買って(行先はダンジョン)みたいなものでしょそれ。多分。

 大慌ての私と彩音さんを静かに見つつ、北条さんは話を続ける。

 

「何か問題が? 将来の酒造りのための練習がしたいとも言いましたが、何も嘘は言っておりませんので」

「おぉ……」

「そっかー……」

 

 シレっとした顔のままとんでもないことをのたまった北条さんに、彩音さんと並んで遠い目をしてしまう。確かに嘘はいっていない。いってないけども。それでも何で造るかについては絶対に伝えるべきだったと思う。

 この話題を深掘りしつづけると持たないと判断したらしい彩音さんが話題を変える。

 

「んっ、んん。えーと、北条さん。は他人行儀過ぎますね。花奈さんでいいですか?」

「ええ、花奈で構いません。わたくしも、彩音さん、夢希さんでよろしいでしょうか?」

「はい大丈夫です。よろしくお願いします。花奈さん」

 

 北条さんではなく、花奈さんね。彩音さんと出会った頃を思い出すなぁ……

 

「敬語も不要ですわ。彩音さんと同じようにお願いいたします。それから、彩音さんも夢希さんと同じように、わたくしのことは花奈ちゃん、と」

「え……か、花奈ちゃん……?」

「はい♪」

「あ、あはは……」

 

 にこにこで返事を返す花奈さんに彩音さんがたじたじになっている。強いな花奈さん……。あらゆる面で強くないか? というか、彩音さんよりも年上のはずでは?

 

「ふふ、夢がもう一つ叶ってしまいましたね」

「夢?」

「ええ、昔からさん付ばかりで、ちゃん付で呼ばれるのが夢だったんです」

 

 なるほど、確かに口調とかその辺から考えても、さん付けされるのが当たり前の環境にいたんだろうなっていうのはわかる。それに事の大小にかかわらず、夢がたくさんあるのはいいことだと思う。

 となると、もしかして私も花奈さんのことはちゃん付で呼ぶべきなんだろうか?

 

「……私もちゃん付の方がいい?」

「夢希さんはご友人のことはどのようにお呼びしているのですか?」

「基本的に呼び捨てにしてる」

 

 私は誰かをちゃん付で呼んだ覚えがないし、するつもりもない。あるとするなら年下の子だと思う。美月ちゃんとか。愛依も凉も鬼灯も、全員呼び捨てである。

 なんでって言われると困るんだけど、多分周りの面々が呼び捨てだったから、それを真似しただけだと思う。

 私に返答を聞いた瞬間、花奈さんが目を輝かせた。なんか嫌な予感がする……!

 

「! では、わたくしも呼び捨てに――」

「いや、流石にそれはちょっと……」

「……残念ですわ……」

 

 あからさまにシュンとする花奈さんを見て心が揺らぐけれど、このラインは死守させてもらう……! なんか若干横からも視線を感じるし、彩音さんもか! でも、流石に二人のことを呼び捨てにするのはきついから勘弁してほしい。敬語外すのだって結構大変だったのに、呼び捨てにするのは難易度が高すぎる。

 かといって、このままだと口論に弱い私では二人に押し切られてしまう気がするし、な、何か話題の転換を……そ、そうだ。

 

「そ、そういえばなんだけどさ!」

 

 少し大きな声を出した私に驚いた様子もなく、二人の視線が集まる。彩音さんからは、逃げたな……みたいな空気を感じるけど無視だ無視。

 

「こういう時って歓迎会とかやるの?」

「やるね。ご飯食べたりが主かな。会話するのがメインな感じで」

「じゃあやろうか」

 

 彩音さんの説明的に親睦会みたいなものなのかな。よし、ならやろう。

 

「うーん。何がいいかな……」

「ふふ、楽しみですわ。……? "何が”? "どこ”ではなく?」

「完全にモンスター食べさせる気満々だね……」

「? ダメだった……?」

 

 困惑したような花奈さんと、呆れたような彩音さん。なんでさ。私たちならどう考えてもモンスター料理でやるべきじゃない? それを冒険として冒険者やってるパーティーなんだよ?

 

「ううん、らしいなぁ……って思って」

「このパーティーならではですわね。期待しましょう」

 

 微笑む2人から許可は取れたので、遠慮なくモンスターを食べようと思う。期待されたからには、やはり美味しいものがいいよね。そして、今後の活動を分かりやすく伝えるためには……うん。

 

「よし、ここはジャンボ――」

「それはやめよう?」

「……美味しいのに?」

「美味しかったけどね? でもやめよう?」

「そっかー……」

 

 彩音さんに食い気味に否定されてしまった。美味しいのにな、ジャンボイナゴの佃煮。彩音さんも前食べて美味しいって言ってたのに。

 ビジュアル面で問題があると言われたらその通りなんだけども。丸ごとやってるからね。

 うーん、となると……そういえば、前に彩音さんと何か話したような……あ。

 

「……そうだ。アレにしよう」

 

 彩音さんと前にした約束がそのままになっていたのを思い出し、思わず手を叩いた。アレなら否定もされないだろう。ビジュアル面も問題ないし、美味しいし、お父さん曰くお酒にも合うらしいし。

 と思っていたら、彩音さんにガっと肩を掴まれ、顔を覗き込まれた。こ、怖い……

 

「夢希ちゃん。ちゃんと何か言って?」

「……す、砂ウツボとかどうかなって。彩音さんに蒲焼食べさせるって約束してたしさ。ずいぶん遅くなっちゃったけど……」

 

 申し訳ないなぁ……と思いつつも話したところ、彩音さんが怪訝そうな顔をして固まった。そのままゆっくりと首が傾いていく。

 

「…………そうだったっけ?」

「えぇ……」

 

 完全に忘れていた上に思い出せないらしい。今まで忘れてた私が言うことじゃないけど、ちょっとショックだ。

 

「い、いや、この一ヶ月ホントに濃くてさ! だから、ね?」

 

 慌てながら両手をブンブン振り回す彩音さんにフォローを入れようとしたところで、花奈さんの呟きが耳に入った。

 

「砂ウツボ……ですか」

「あ、魚系ダメだった……?」

 

 そういえば、そもそも食べられないものとかあるかもしれないということを考えていなかった。

 ただ、私が考えたこととは全く違うところで花奈さんは悩んでいた。

 

「いえ、どのような味なのですか?」

「ボリュームのある鰻って感じかな……脂が結構多いけど美味しいよ。前にカレーした時は彩音さんからも好評だった」

「あのカレー美味しかったなぁ……」

 

 頬を両手で抑えながらうっとりと呟く彩音さんを見るに、相当気に入っていたらしい。

 大量に作り置きして彼女に渡そうかな……? 寸胴鍋とか買って。流石に消費しきれないか。

 その間も神妙な顔をし続けていた花奈さんは、しばらく目を閉じたあと、ゆっくりと目を開いた。そして、どこか決意を固めた声を出す。

 

「なるほど……ならば、日本酒。ですわね」

 

 お酒の種類で悩んでたのね……いや、分かるけどね。飲む気満々だったもんね、最初から。

 私はダンジョン内でお酒を飲むのは否定的なんだけど、それはあくまでも酔いによって悪影響が出るからであって、それさえどうにか出来るなら個人の自由だとおもってる。

 どうせ飲み食いするなら美味しく楽しく過ごしたいもんね。そうだ。どうせだし、色々作ろうかな。鰻料理って普段作る機会ないし。

 

「どうせだし、色んな料理作ろうかな」

「色んな料理って、そんなに食べられるかな……?」

「作ったことがない鰻料理に挑戦するだけだよ。う巻きとかうざくとか、色々作っても3人いるなら食べれそうだし」

「聞いたことすらない料理出てきたんだけど!?」

「ふふ、楽しみにしておきますわね。わたくしも吟味しておかなくては」

「あれ? 花奈ちゃんは知ってるの?」

「ええ、存じております」

「ど、どんな料理なの?」

「それは当日のお楽しみというものでしょう。ね?」

「うん。楽しみにしててね」

「うぅー……! 分かった!」 

 

 納得いってなさそうだったけど、彩音さんも吹っ切れたらしい。当日……というか、明日を楽しみにしていてほしい。

 どうせだし、きっちり今日のうちに仕込んでおこうかな。当日バタバタするのも嫌だしね。

 その後、明日の待ち合わせ時間を決めたあとで解散になった。別れ際に彩音さんが花奈さんに釘を刺した。

 

「そうだ花奈ちゃん、お酒のレシートとかちゃんと用意しておいてね。後で払うから」

「かしこまりました」

 

 彩音さんは花奈さんの返事を聞いたあと、私をチラッと見た。

 …………訂正。私に釘を刺した。忘れません。

 




色々調べたんですが、酒の免許関連がこれでちゃんと合ってるのか不安……

以前感想で教えていただいた漫画を読んでいるのですが、非常に参考になります。ありがとうございました。
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