【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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初心に帰って、毎日可能な限りやってみようと思うのでよろしくお願いします。


配信に興味のない私と砂ウツボ料理の歓迎会3

 

「ふむ。白焼きがここまで美味しいとは……ですが、確かに脂が少々濃いですわね」

「ワサビでちょうどいいくらいだね。ダメだ、お酒が進んじゃう……」

「良いではありませんか。さ、どうぞどうぞ」

「わわっ!? あ、ありがとう。私も注ぐね」

「あら、ありがとうございます」

 

 "完全にただの飲み会www”

 "先輩後輩感あるなぁ…”

 "髪色が近いから尚更そう見えるな”

 

 うん、完全にただの飲み会だね。でも、歓迎会って感じがするから、これでオッケーだと思う。私も成人したらあそこに加わ……らないな。多分その時もこっちで料理してるな。

 私はこの時間が好きだ。料理は出来立てが美味しいし、誰かが美味しいって食べてくれるのが嬉しい。それに、私はこっちで出来立てを味見という体で食べられるのもいい。咎められないし。ふふふ。 

 

 "そういや、カナさんの方がアヤネさんよりも上なんか?”

 "雰囲気的にはそんな感じがするな”

 

 蒲焼きを作るために、まずは白焼きをつくる。このサイズだと、1枚で1品作れるかな。一気に2品は作れないから、1枚ずつ焼いていこう。

 うざくはともかく、う巻きは流石に他のもの作りながら出来ないし、その後に使う分を一緒にやっちゃうと冷めちゃうもんね。

 

「そうですわよ。わたくし23ですので」

「出身校聞いたら、私の先輩だったんだよね!」

「ええ、まさか後輩だと思っておりませんでしたわ。世界とは意外と狭いものですわね……」

「壮大な言い方だね……ちょっと分かるけど」

 

 "どっかしら繋がっててびっくりするときあるよな”

 "まさかのガチの先輩後輩だったとはw” 

 

 あの2人が先輩後輩だったのはびっくりしたけど、冒険者学校自体がそんなに多くないから、意外と先輩後輩多いんだって。

 言われてみればそりゃそうなんだろうけど、なんだか本当に世界って狭いよなぁ……。って思う。

 先にうざくの調理をするから、収納魔法からきゅうりとみょうがを取り出して、と。

 

 "ん? きゅうり?”

 "あぁ、うざくかぁ。美味いよなあ”

 "ツマミにいいよな”

 "聞いたことない料理で草”

 "知らんのか。俺も知らん”

 "お前もかよ”

 

 まずは、きゅうりを薄く切る。そして、塩をまぶして水を出す。水を出している間にみょうがを千切りにして……きゅうりの水気をよーく切ったら、お酢、醤油、砂糖で味付けをする。

 きゅうりの酢の物って簡単に作れていいよね。さっぱりするしさ。浅漬けなんかも好き。

 さ、こっちは出来たから、白焼きを作っていこう。じっくりと火を通すというよりは、表面を焦がしてく感じで。そして! 昨日夜に味を調整してきた蒲焼きのタレをハケで塗ってっと。

 試作で散々穴子で試し焼きしたから、味はバッチリだよ……! 昨日晩御飯は穴子丼にした。ちょっと作りすぎちゃったから、今日のお昼も穴子丼になった。お昼は凉と愛依に少しずつ持っていかれた。お返しにクリームパンと卵焼きもらった。

 それにしても、うーん……いい匂いだなぁ……。

 

「……醤油の焦げる匂いって、本当にいい匂いだと思わない?」

「分かる……」

「本当に良い香りがいたしますわね……」

 

 "醤油の焦げる匂いはマジで良いよな”

 "あれなんなんだろうな…”

 "最高だよな…”

 "いい…”

 

 花奈さんも彩音さんも、リスナーさんたちとも価値観を共有することが出来てご機嫌になっちゃうよ。今まで結構な割合で私だけズレてるのを突きつけられてきたからね……!

 じっくりと蒲焼きを作っていく。焦がしすぎちゃうと美味しくなくなっちゃうし、加減が大事だ。

 

「美味しそう……」

 

 いつの間にか隣にいた彩音さんにびっくりした。目がキラキラさていて、今にもよだれを垂らしそうなほど緩んだ顔をしている。

 そんなに楽しみにしてくれていると作りがいがあるなぁ。頑張っちゃうよ。

 何度かタレを塗って焼いてを繰り返し、完璧に仕上がったと思う。ふふん、練習の成果を見よ……!

 まぁ、実際のところ、焼きは一生らしいから本職の人からするとダメなんだろうけどね。プロを目指してるわけじゃないからこれでいいのだ。

 蒲焼きを串から外してと……

 

「これを今から」

「今から……?」

「こうやって切って……」

「うんうん!」

 

 私の手元を満面の笑みで覗き込んで来る彩音さん。昨日名前出した時に知らないって言ってたから、多分びっくりするだろうなぁ……私も初めて見た時びっくりしたからね。

 

「お皿にきゅうりの酢の物と交互にのせる」

「なんてことするの!?」

「ふふふ」

 

 横で彩音さんの悲鳴が聞こえる。それを聞いて花奈さんが楽しげに笑っている。うんうん。良い反応するよね彩音さんって。

 

「で、最後にみょうがを乗っけて、うざくの完成」

「えぇ……これ美味しいの……?」

 

 "な、なんてことするんだお前!!”

 "あー、美味そー!”

 "マジでこんな料理あるのか…”

 "美味いんだぞ”

 

 珍しく彩音さんが懐疑的な反応をしている。まぁ分かるよ。蒲焼き自体がおいしいのに、無駄に手を加えてる感じがするよね。私も最初そう思った。

 味見で先に一口食べる。うん。問題なし。美味しく出来た。なので、もう二皿ささっと盛り付けて2人の席に置いていく。

 

「美味しいですわよ。味もさっぱりとしていて食べやすいですし、これは脂も強いですから尚更でしょう」

「でも、蒲焼き……いや、食べよう!」

 

 食べたことのある花奈さんが、その味を伝えてくれる。実際脂の感じがかなり軽減されていい感じだよ。そして、迷いを振り切った彩音さんが、席に戻ってお橋を掴む。存分に食べてほしい。

 そして、その横では花奈さんが再び手を合わせて目を閉じていた。

 ああこれは……

 

「 実 食 ! 」

「毎回言うんだね……」

「味がしなくなるまで擦ると申したではありませんか」

 

 "実食ネキブレねぇな…”

 "アヤネさんの気苦労が増えそう”

 "ボケが増えたもんな…”

 "ホオズキちゃん呼ぼう”

 

「あ、ホントに美味しい! さっぱりしてて美味しいね。お酒にも合うなぁ……」

 

 彩音さんからも好評のようで良かったよ。そして、ぐびぐびいくね花奈さんは……今それ何杯目なの? っていうくらいのペースで飲んでいる。強いみたいだけど、あんなペースで飲んで大丈夫なんだろうか……?

 彩音さんはちびちびって感じで飲んでるね。そんな感じだよね多分。普通はさ。

 鬼灯とかお父さんなんかはぐびぐび通り越して飲むからなぁ……鬼灯なんかは特に。盃に注ぐ! 空になるまで飲む! みたいな飲み方するし……

 

「ふふ、贅沢な食べ方でもありますよね。蒲焼きで作っていますから」

「そう! だからちょっと微妙な感じがしちゃったんだけど、美味しくてびっくりしちゃった」

 

 "へー、作ってみようかな。簡単そうだし”

 "市販の鰻で作るの簡単でええぞ”

 "今度試してみよ”

 "鰻の蒲焼きかぁ…高いな”

 "そう考えると高級品だなこれ…”

 

 鰻の蒲焼きで作ると確かに高級品だろうね。でもこの砂ウツボのうざくは違う。なんて言っても一番高い材料費である鰻の部分が無料だから……!

 

「私が作ったのは、材料費がきゅうりとみょうがくらいしか掛かってないから、むしろ貧乏飯に片足突っ込んでそうだけどね」

 

 "あっ、ズルいぞ!”

 "そうだわ、そこの部分無料じゃん!”

 "アタイ、許せへん…!”

 "くっそ羨ましい”

 

 リスナーさんたちのノリ良さよ。いや、今回に関しては本心で言ってる人が多い気もするけども。お高いもんね鰻。でもこれは私たちの特権だから。モンスター食を研究している私たちだからこその利点だからね。誰がなんと言おうともね。

 

「確かに、そう考えるとこんなに美味しい料理が安く食べられるのってすごいよね……」

「メインになっている部分が基本的に無料ですものね」

「手間以外何もかかってないから、本当に経済的だよ。私でも好き放題出来るくらいだし」

 

 モンスター食を研究するんだって思ったときはその辺のことを考えたことはなかったけど、今は本当にありがたいなって思ってるよ。もっと研究が進んだら、多分冷蔵庫の余りものと組み合わせて……とかやり始めると思う。

 その前にクランにインターン扱いになって、ある程度お金に余裕が出来そうだけどね。

 

「これまで散々強さを見ていましたから忘れがちですが、ユキさんは未成年でしたわね……」

「そういえば、ユキちゃんは成人したらやりたいことってあるの?」

 

 成人してからやりたいこと? 成人したらやりたいことかぁ。東京以外のダンジョンに遠征したいし、その場所でご当地のご飯とかお土産とか食べたいし、装備の更新とかしたいし……

 こんな感じで色々あるけど、そのために絶対に必要なことがある。だから、まずはこう答えるのだ。

 

「金策」

「そ、そっか……」

「言い切りましたわね……」

 

 " 金 策 ”

 "草”

 "即答すんの草”

 "迷いがないwww”

 

「何をするにしたってまずは金策だよ。その時は2人に荷物持ちやってもらってでも全力でやるから」

「全力が過ぎるよ……」

「なんの躊躇もないのが流石ですわね……」

 

 "全力すぎるwww”

 "出来るのが怖い”

 "間違いなくできるだろうからな…”

 

 下層で問題ない2人なので、例え深層でも私がすべてのモンスターを殲滅して回ればどうとでもなるだろう。渋谷……はちょっと守るのが厳しいので品川かな。渋谷は物量がね……上位のゴブリンが大量にいてそれが軍団として襲ってくるからなぁ……魔法使ってくるのもいるし。万が一が怖い。

 その点品川は、渋谷に比べて単体の強さこそ上だけど数は出てこない。潰して回るならこっちの方が楽だ。2人とも大きなリュックでも持ってもらって、パンパンになるまでドロップアイテムを詰め込んでもらうからね。

 それにしても、2人ともひきつった顔をしているけど、そもそも2人にも関係あることなんだけどな、この金策。

 

「それでまずはパーティー用の貯金を作ってから、他に回そうと思う。2人もその方が安心でしょ? 今は私のせいで貯めようがないしさ」

「……」

「……」

 

 そう、私が未成年なせいでお金を稼げなかったため、パーティーとしての貯金なんてものはないに等しい。強いて言うなら、以前の犬束さんの依頼と白石さんの頼み事でもらった分があるくらいだ。緊急用にしてもあまりにも心もとない。だから、早々にパーティーの貯金を作らないとね。いつイレギュラーが起きるかわからないんだから。

 そう思って発言したんだけど、2人が唖然とした表情で黙り込んでしまった。え、なんか変こと言ったかな。

 

「え、なんかおかしいこと言った……?」

「ううん、ユキちゃんは正しいよ……」

「ええ、己を恥じていただけです……」

 

 何で哀愁のようなものが漂っているのかな2人とも……? それに、恥じるような要素あったかな今の会話で。

 私は首をかしげながらも、わからないものはわからないので次の料理のために大根をおろし始めた。

 

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