【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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配信に興味のない私と砂ウツボ料理の歓迎会4

 

 2人が何だか萎れているの横目に、ゴリゴリと大根をおろしていく。上の方だけしか使わない贅沢品である。残りは家で今浅漬けになっている。

 簡単な作業ではあるんだけど、力加減を間違えると()()()()()()()()んだよね……。冒険者というのは、変なところで生きにくいのである。特に力加減関係で。押し引き間違えて、ドアノブ引っこ抜いちゃったりね。

 

「で、この大根おろしを、このザルで……」

 

 調べたところ、ザルに大根おろしを入れて押すのがうまいこと水気が取れるんだって。

 難点は、ザルに繊維が絡みつくので掃除が大変なところ。いや、本当に大変だったんだよね昨日。試しにやってみたら凄まじいことになった。でも、本当に美味しく出来たので、今回もやる。

 それに、面倒だったら最悪水系の魔法で高圧洗浄すればいいし。家でやると大惨事になりかねないけど、ダンジョンの中なら関係ないしね。

 大根おろしを絞り終わったので、ひとまず横に置いて、青紫蘇を千切りにする。これはサクッと終わらせて、卵を溶いていく。

 う巻きってシンプルイズベストって感じの料理だと思うんだよね。鰻の蒲焼きを卵焼きで巻くだけだもの。作るのも簡単だし。

 砂ウツボが大きいので、今日は普通のやつと、青紫蘇入りのやつの2つ作っちゃう予定である。

 

 "う巻きまで作るのかw”

 "う巻きってなんぞ?”

 "卵焼きの具材に蒲焼き入ってるやつ”

 "くっそ美味そう”

 "今日の飯テロ具合は過去一だなこりゃ…”

 

「さ、蒲焼き焼いていこう」

「お、次こそ蒲焼きを……」

「そのままは食べないよ?」

「なんで!?」

 

 彩音さんの驚愕の声が響くけれど、まだそれは後の話である。最後のお楽しみってやつだよそれは。今はまだ前菜なのだ。存分に楽しんでほしい。

 花奈さんみたいに……。とまでは言わないから。花奈さんはなんかもう1本目開け終わってるし。飲むペースがおかしいよ。

 

「ふぅ、こちらのお酒も料理も大変美味しゅう御座いましたね……では、次にこちらを」

「いや待って早いよ!? 1品1本ペースじゃん!」

「流石にそこまでのペースは出ませんわよ」

「今! 今出てるから!」

「あら」

 

 "あら じゃねぇ!w”

 "マイペース過ぎるだろ実食ネキはよぉ!w”

 "アヤネさん、頑張ってくれ!”

 "負担割合がおかしい”

 "ホオズキちゃんも来てくれ”

 "ペースが倍になるが???”

 "倍で済むと思っているとは随分と余裕だな”

 "こわっ”

 

 花奈さんはリスナーさんだったからか、リスナーさんたちの盛り上げ方を分かっているというかなんというか。過去一番でコメントの流れが速い。冒険者パワーがあるから余裕だけど、これ以上速くなると読むのが大変になってきそうだ。リスナーさんたちも楽しそうだし、良いことだと思う。

 うん? 手で数えられるくらいのこの人数で、このペースでコメントが流れているのに、何千人とかが集まってる配信者さんのコメント欄って……。考えないようにしよう。やめよう。やめやめ。さっきから無駄なことを考えすぎだ。

 

「さ、お次はこちらの『かがち大吟醸』を……ささ、アヤネさんも」

「う、うん……ありがとう……」

 

 なんていうか、花奈さんが飲ませるせいで彩音さんの飲むペースも結構じゃないか……? 大丈夫なのかな。悪酔いとか、二日酔いとか。前回死にそうになってたみたいだけど。

 いや、酔いが覚めるって言ってたし、その辺は大丈夫か。気にしてもしょうがないし、私は2人に楽しんでもらうために全力を尽くすのみ。

 そして、蒲焼きが焼き上がったので、調理に入る。と言っても、卵焼きで巻くだけだけども。さっきもそうだったけど、焼くのが大変で、焼き上がったあとは結構簡単な料理なんだよね。

 

「さ、次の蒲焼きは……」

「次のは?」

「卵で巻きます」

「おお! ……? 卵で巻く?」

「そう、こんな感じで……」

 

 彩音さんが見守る中、蒲焼きを卵焼きで巻いていく。このために家から卵焼き器持ってきたからね。

 溶き卵を卵焼き器に流し込んで、薄めに広げていく。そして、蒲焼きを手前に置いて、ちょっとだけ卵を追加で入れてから、くるっと巻いて……後は普通に卵焼きを作るだけである。

 その様子を見ていた花奈さんがしみじみと呟く。

 

「見ていた時から思っていましたが、本当に料理上手ですわねユキさんは……」

「まぁね」

 

 "まぁねw”

 "アンタほどの人が言うなら…”

 "ドヤられても文句がない”

 "卵焼き作るのうめぇな…”

 

「ユキちゃんて、自信あることとないことの差が激しいよね」

「そう?」

「少し分かる気もしますわね」

 

 そうだろうか? というか、自信あることとないことに差がない方がおかしくない? 

 疑問に思っていたら、彩音さんからざっくりと刺された。

 

「正確には、冒険に関すること以外とそれ以外の差というか……」

「あぁ……まぁうん……」

「そこは否定なさったほうがよろしいのでは……?」

「……」

 

 "黙らないで???”

 "めっちゃ目を逸らしてそう”

 "ユキちゃんはさぁ…”

 "冒険に関しても怪しいところあるゾ”

 "強さ以外はそこそこ不安だゾ”

 

 リスナーさんたちまで好き放題言っているけど、でも私は否定できないんだよねこの発言を……! いや本当に冒険以外のことは……いや、勉強に関してはちょっと自信があるかも。成績良いからね私は。

 モンスター食の研究という冒険のために色々犠牲にしてきたことが今私にのしかかっている……!

 

「他に自信あるものある?」

「切り替えの早さは自信があるよ」

 

 さ、そんなことは置いておいて2個目のう巻きを作ろう。こっちは蒲焼きと一緒に青紫蘇を混ぜることでさっぱりした感じになるはずだ。

 

「確かに、切り替えの早さはとんでもないよねユキちゃん」

「今も何事もなかったかのようにもう1個作り始めましたものね」

 

 "切り替え大事だからね(棒”

 "マジで一瞬で切り替えるから笑っちゃうぜ”

 "さっきまでの気まずそうな感じどこにいったのやら”

 

 それはそれとして、これ以上2人やリスナーさんたちにイジられるのはゴメンなので、さっさと作って机に並べてしまう。

 綺麗に並べるとかはしないで、自分で気に入ったものを取ってもらうスタイルに。

 

「というわけで、こちらう巻きです」

「おお! すっごい豪華な卵焼き!」

「大根おろしもたっぷりあるからね」

 

 "いや、美味そうだなぁ…”

 "明日の俺がこれを作るはず…”

 "耐えきれんくなって鰻をゆーばーしてしまった”

 "ブルジョワだなお前…!”

 

 大根おろしも横に置いておく。山盛りである。いや、これ本当に大根おろしのあるなしで全然違う料理なんだよ。

 

「 実 食 !」

「いただきまーす!」

 

 2人とももうさっさと食べ始めたね。私も食べながら、砂ウツボを焼き始める。最後の料理のための蒲焼きを作らないといけないのだ。量もたくさん作るつもりだし、楽しみにしててね……! 度肝を抜いてみせるよ。

 

「とても美味しいですわ。お酒が進みます」

「ちょっと味濃いなって思ったけど、大根おろしと一緒に食べるとすっごく美味しい! お酒にもあうし」

「それは良かった……。うん、良かった」

 

 "おい、酒飲み共www”

 "あれこれアヤネさんもボケ側に行くのでは?”

 "まぁ、酔った人間がボケじゃないかと言われると…”

 "誰かツッコミを呼んでこい!”

 

 2人ともお酒がさらに進んでいるみたいだけど、美味しいねって言ってくれてるし良かった。ということにしよう。

 いや、美味しいって言ってくれるのは嬉しいんだけど、段々顔が赤くなってきた2人のお酒のペースがさらに上がった気がするのがちょっと怖くなってきたんだよね。本当に大丈夫だよね……?

 う巻きを食べつつお酒を飲み続けていた花奈さんが、ふと何かに気づいたように声を上げた。 

 

「……アヤネさん、わたくし思ったのですが」

「うん? なぁにカナちゃん」

「わたくしたち、束になってもユキさんにいわゆる女子力で負けているのでは……?」

「…………い、いや流石にそんなことは……ないと思いたいなぁ……」

 

 "2人の料理の腕によりそう”

 "毎日お弁当作ってるぞユキちゃんは”

 "ファッションでは圧勝してるはずだから(震え声”

 "流石に2人の方が上でしょ。料理は負けてそうだけど”

 

 彩音さんも自信がないらしい。女子力ってあれでしょ? 可愛い女の子の技術とかセンスとかの合わせ技で測るんでしょ? ファッションもメイクも分からない私には縁遠い言葉だと思う。

 

「……私、ファッションもメイクも分からないから、女子力ってやつは皆無だと思うんだけど」

「何を言っておられるのです。家事が出来るというのも女子力ですし、何よりも料理上手というのは高得点ですわ!」

「そうだよ! 料理上手っていうのは、女子力の中でも上澄みだよ!」

「そ、そうなんだ……」

 

 "圧がすごい”

 "酒入ってるなぁw”

 "アヤネさんが今までになく叫んでるw”

 "確かに料理上手は得点高そうだな”

 

 私の意見に2人が反論する。そ、そんなに料理の割合って大きいの……? 愛依みたいな子が女子力高い子なんじゃないのかって思ってたんだけど、そういえば愛依も料理出来たな……

 てことは、私と友人たち3人の中で一番女子力がないのは凉ということに……何も違和感がないな。あいつは低そう。いや低い。

 そして、私の発言に違和感を覚えたらしき花奈さんが首を傾げた。

 

「……ん、メイクも? 今もナチュラルにしておられるのではないですか」

「そうだよ。普段からしてるじゃん。上手だと思うよ?」

「……? してないよ?」

 

 2人の発言に、今度は私が首を傾げる番だった。いや、メイクはしてないんだよね私。そもそも校則で禁止だし……。あってないような校則だけどさ。ナチュラルメイクっていうの? 薄く化粧してる子多いし。

 私の返答に、2人が口を開けて完全に固まった。

 

「………………え?」

「………………はい?」

 

 再起動までに大分かかったね。口が開いたままだけども。

 

「いや、だからメイクしてないよ。初めてしたときに肌がかぶれちゃって、それからしてない」

 

 いや本当に肌に合わなかったみたいで顔が真っ赤になって大変だったんだよね。愛依に相談したら肌に合わない化粧品を使ったらそうなるけど、そうなったなら店員さんとかにきちんと相談したほうがいいから、お金に余裕があるときにしなさいっていわれたんだよね。

 なんでも、パッチテストとかをやって反応を見るとかなんとか……熱心に語ってくれたんだけど、正直化粧に対して悪い印象を持っちゃったから、半分聞き流しちゃったんだよね。あとでもう一回ちゃんと聞いておこう。

 再度重ねて否定したら、2人がわなわなと震え出す。

 

「え待って、スッピンでそれなの……!?」

「の、ノーメイクですって……!?」

 

 "そんなに驚くほどなのか!?”

 "え、ユキちゃんってそんなに…?”

 "ユキはマジで人形みたいだぞ。腹立つ”

 "ホオズキちゃんwww”

 "腹立つwww”

 "ホオズキちゃん見てんの草”

 

 今にも掴みかかって来そうなほどの気迫を放っている2人にちょっと怯えながら、なんとか言葉を絞り出す。

 

「う、うん……あ、化粧水と乳液は使ってるよ。友達にちゃんと選んでもらったやつ」

「……ユキちゃん、ちょっとその辺の話するのやめて? 今ものすごいダメージ受けてるから……」

「これが天性……! わたくしたちとは一体どこで差が……」

 

 な、なんでそんなにダメージ受けてるの……?

 先ほどの金策云々よりも遥かに落ち込んでいる2人にかける言葉がちょっと思いつかなかった。

 と、とりあえず蒲焼き焼こ……現実逃避だ現実逃避。

 

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