【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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名前決めるのに、姓名判断とかに手を出したらマジで全く決まらなくなったので、もう知らん!となりました。

変なところで親の苦労を知りました


配信に興味のない私とお父さん

 

 彼女――連絡先を交換する際に知ったが、美空彩音(みそらあやね)さんというそうだ――と別れて、家に帰る。お詫びとしては、冒険の手伝いをして欲しいとのことだったので、いくらでも付き合うつもりだ。軽く話を聞いた感じだと、彩音さんは下層の上の方がギリギリくらいの強さだろうから、レベリングか、金策だと思うし。任せてくれ。1週間どころか、1ヶ月潜りっぱなしブートキャンプでもこなしてみせるから!

 さて、現実逃避はやめて、今の状況を確認しよう。現在地は自宅の玄関前。現在時刻は22時30分。何で現実逃避してたかって?門限過ぎちゃったんだよね……

 私の家の門限は22時だ。遅いと思われると思うが、そもそもダンジョン下層まで潜って目的果たして帰ってくるだけで普通に4、5時間かかる。学校が終わるのが大体15時30分で、家に帰って準備して、ダンジョンに着くのが16時過ぎ、何事もなく中で冒険してダンジョン出るのが21時前後という感じなのだ。放課後からダンジョンに潜る際は大体こう。お父さんは仕事の付き合いが多くて、夕飯を食べて来てしまうことが多いので、私もダンジョンでご飯食べちゃうしで、門限はかなり遅めの設定だ。もちろん、イレギュラーが起きたりすると遅くなることもあるが、今回は完全に、私のやらかしオンリーなので、情状酌量の余地はない。

 玄関扉の前で深呼吸。覚悟を決めてドアノブに手をかけ……ようとしたら向こうから開いた。家の中からの明かりで逆光になった、190センチ超えの大男がヌッと出てくる。お父さんだ。

 

「おかえり」

「た、ただいま……」

 

 口元はにっこりと笑っているけど、目が全く笑ってない。お、怒ってる……私がちょっと、ちょっっと小さいせいで、身長差もあるし、めちゃくちゃ怖い。元冒険者だけあって、大抵のことは笑い飛ばして終わりな人なだけに、怒ってるときは本当に怖い。

 お父さんの先導でリビングへ。椅子に座らず床に正座。お父さんも私の前に正座。目をあわせられなくて、視線がお父さんの膝辺りに行く。

 

「今日は何やってた?」

「八王子ダンジョンに潜って、ソードスコルピオからショートソードを作って、砂ウツボでカレー作ってそれで……」

「それで?」

「…………その、ショートカットで飛び降りたんだけど、それを見た人が、心配して降りてきてくれて……」

「ほう……」

「その人がお腹空いてたみたいだから、カレーを食べてもらったんだけど、砂ウツボのカレーだって伝えるのを忘れて食べさせてしまった上に、配信してることを完全に忘れたままダンジョンの外まで一緒に行って、そこで初めてその人に指摘されて、その謝罪をした後、お詫びするために連絡先の交換をした……」

「そうか……大分、いや、本当に大分迷惑をかけたな。その人には……」

「うん……」

 

 しばしの沈黙。いや、改めて並べるとホントに酷いな私。そして、優しすぎないか彩音さん。手伝い程度で許してくれるの聖人だよ本当に。

 

「お詫びの内容は?」

「配信のアーカイブを消すことと、後日、冒険手伝って欲しいって言われた。カレーについては美味しかったから許すって……」

「そうか……だが、本来それで許されるようなことじゃないからな?菓子折りを用意するから、手伝いの時に持っていけ。帰りに渡すんたぞ?忘れるなよ?」

「……わかった」

 

 お父さんに釘を刺されて結構、胸にぐさり。そうだよね、許されることじゃないよね……モンスターなんて嫌いな人が大半だし、食べるなんて以ての外だろう。虫嫌いに虫とか、犬好きに犬食べさせるようなものだと思う。私は犬好きだから、そんなことされて、それが善意だったとしても許せる気がしない……うぐぐ、彩音さんの聖人具合と、自分のやらかし具合の落差による自己嫌悪で死にそう……

 

「お前も反省しているようだし、その件については、これで終わりだ。その件については、な?」

「……?」

 

 なんでそんなに強調したんだろう?ちょっと疑問が浮かんでお父さんと目線を合わせた瞬間、ガシッと頭を掴まれる。あっ……

 

 ギリギリギリギリギリギリッ!

 

「いだだだだだだだ!!」

「何度門限を破るつもりだお前は!!」

「ご、ごめんなさいぃぃぃいいい!!」

 

 アイアンクローは勘弁して!本当に痛いんだよ!?頭割れるって!いや、確かにこれが()()4()7()()()の門限破りなのも分かってるけど!

 お父さんは怪我で引退する前はバリバリの前衛冒険者で、()()()()()()()をやっていたような、トップの中のトップ冒険者である。そんな人のアイアンクローはシャレにならない威力がある。ぶっちゃけ、昔食らったミノタウロスの一撃よりも痛い。

 

 ぎゃーぎゃー騒ぎながらアイアンクローを受けきって、門限破りの罰は終わった。私が、頭を抱えてうーとかあーとか呻いていると、お父さんから声がかかる。

 

「……今日の冒険は楽しかったか?」

「うん。とっても」

 

 即答する。もう、過去一番と言っていいほどトラブルばっかりだったけど、楽しかったかどうかなら、楽しかったに決まっている。お父さんも満面の笑みを浮かべてくれた。なんていうか、甘々だよね、お父さんって。

 

「そうか、なら良かった。砂ウツボ、どうだった?美味かったか?」

「うん、美味しかったよ。なんていうか、ウナギに近い感じがした。ほかだと……脂マシマシのタラ?とかも近いかも」

「おぉ、そりゃ美味そうだな!」

「とりあえず、カレーの残りがちょっとと、切り身があるんだけど……お父さん明日は家で食べれそう?」

「お、カレーの残りもあるのか!明日の弁当にでもさせてもらおう……明日は……うん。予定はないから大丈夫だ。何か作ってくれるのか?」

「うん。白焼きで美味しかったから、今度は蒲焼きにして、うな重ならぬ砂ウツボ重と、付け合わせにお吸い物みたいな汁物を作る予定。こっちも砂ウツボ入れるよ」

「ゴクリ…………日本酒飲んでいいか?」

「好きにしなよ。二日酔いしない程度にね?」

「それは……味次第だな!」

「えー……ふふ」

「ははは!」

 

 いつもの我が家のやりとりだ。お父さんは冒険者で、冒険が好きだったけど、もう出来ない。やろうと思ったら出来るのかもしれないけど、多分、私のためにやらないんだと思う。だから、その分、私が冒険譚を聞かせてあげるんだ。私が子供のころ、たくさんしてもらったように。

 一通りお父さんと会話したあと、リビングの隣の和室に入って、奥の仏壇に手を合わせる。

 

「ただいま、お母さん」

 

 お母さんも冒険者だった。日本一めちゃくちゃな冒険者だったってお父さんが言ってたし、お母さんの知り合いも全員、あんなにめちゃくちゃな人は他に知らない。と言うような人で、私も記憶の中のお母さんも、かなりめちゃくちゃだ。オークキングに相撲を挑んで勝ったとか、ミノタウロスと腕相撲して勝ったとか、本当に意味わかんない冒険譚をたくさん語ってくれた。お父さんが否定せずに引きつった笑みを浮かべていたところを見るに、多分事実なんだろう。子供の頃は楽しく聞いていたけど、冒険者になった今では、事実であってほしくなかった話もチラホラある。

 お父さんとお母さんは、たまたま同じ日に同じ場所で、ほぼ同時に冒険者登録したらしく、その縁でよく一緒にパーティを組んで冒険をしていたらしい。そこから結婚までいったんだから、相性が良かったんだろうな。

 そんなお母さんは、私が10歳のときに、お父さんや他のトップクランの人たちと、未探索領域探索に行って……下半身を無くした死体として帰ってきた。お父さんも左腕と左眼を無くした。後で他のメンバーが教えてくれたけど、皆の反対を押し切って、お父さんが死に物狂いでお母さんの死体を持って帰ってきてくれたらしい。冒険者の葬儀は、死体が残ってなくて、ただの箱に花を詰めたりすることになりがちだけど、お父さんのおかげで、私は幸運だったと思う。顔に損壊もなくて、綺麗な顔のまま、お母さんは見送られた。お父さんがあんなに泣いていたのは初めて見たし、全然知らない色んな人が葬儀にやってきて、あんなめちゃくちゃな人なのに、色んな人から愛されてたんだなーなんて、子供心に感心したりして。

 そんなお母さんのことが好きだから、私は冒険から帰ってくると、必ずお母さんにも報告をする。モンスターを食べるなんてお母さんもしてないから、きっとゲラゲラ笑いながら聞いてくれているはずだ。

 ……本当は、一緒に食べてほしかったし、感想も聞きたかったけどさ。一緒に冒険するっていう、私の密かな夢も果たせなかった。でも、しょうがないのだ。冒険者なんていつ死んでもおかしくないのだから。そう考えると、私が冒険者やってるのって、めちゃくちゃ親不孝なんじゃないか…?今更過ぎるし、辞めるなんて考えられないけど。お父さんのためにも、ちゃんと生きて帰ってこないとね。

 

 リビングに戻って、寝ようとしていたお父さんに声を掛ける。これは聞いておかないといけない。

 

「そうだ、お父さん、このショートソードなんだけどさ」

 

 作ったショートソードの柄をお父さんに向けて渡す。片手しかないから、鞘から抜けないし、こう渡すのが一番のはずだ。

 お父さんも意図を汲んでくれたようで、右手でショートソードを引き抜き、軽く刀身に目をやる。いつもの優しい目じゃなくて、冒険者としての目だ。少し離れると、軽く剣を振り、頷きを1つ。

 

「結構良い感じだな。斬れ味も良さげだ……重心が刀身に偏ってるのは、意図したものか?」

「うん。手で持つんじゃなくて、浮遊魔法使って振り回そうと思って」

「浮遊魔法で?面白い使い方を考えたな!」

「友達に教えてもらったマンガに、そんな戦い方してるキャラがいてさ、面白そうだなって思って」

「ははは、そりゃ確かに真似したくなるわな……手に持って振るわけじゃない以上、確かにこの方が使いやすいだろうな。ただ、柄に何か巻いたほうが良いと思うぞ。持つ時に滑って危ないし、見た目もちょっと……鉄の棒過ぎるな…」

「うん。だから明日、ミノタウロスの革でも巻こうかなって思ってる」

「頑丈だしな。それがいいだろう……そういや、持ち運ぶためのベルトは?」

「あ、用意してないや……とりあえず収納魔法の中に入れとくよ」

「明日、一緒にミノタウロスの革で作っちまえ」

「うん。そうする」

 

 剣を返してもらって、鞘に収める。お父さんのお墨付きなら、間違いないだろう。うむうむ良いものが出来た。ベルトもいい案貰ったし、明日さっさと作っちゃおう。夕飯作るために早く帰らないといけないし。

 

「俺は先に寝るから。お前もさっさと寝ろよ?」

「うん。洗い物してから、お風呂入ってすぐ寝るよ」

「おやすみ、夢希(ゆき)

「おやすみなさい、お父さん」

 

 

 

 お風呂に入ったあと、髪を乾かして、ヘアオイルを塗って梳かす。この行程がめんどくさくて嫌いなんだけど、友人たちから、服もメイクもお洒落もする気がないのに、髪の世話まで止めたらもう女として終わりだよ。とまで言われたので、髪だけは頑張ってる。セミロングの長さしか無いけど、癖っ毛なせいで、これ以上伸ばすとちょっとね……ふわふわで触るの気持ちいいとかで、友人たちからは好評だけど、自分で触ってもよくわからない。褒められるのは嬉しいから、なんとか続いてるところもある。ちなみに、パーマは掛けたことないけど、他の何やっても真っ直ぐにならないくらいには、謎のクセがついてふわふわしている。

 

 寝る前にスマホを確認したら、友人から、明日、話聞かせてもらうから。の一文だけメッセージが入っていて、萎れた顔で布団に入ることになった。

 プラマイで見ると、マイナスで終わった1日だった気がするな。とほほ……

 




描写する気がないのでここに書きますが、主人公の身長は145センチです。
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