【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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配信に興味のない私と《ソロモン》

 

 《ソロモン》。起動。

 いつも使っている効果が常時発動型なら、この効果は能動発動型だ。

 私の両手の指にそれぞれ1個ずつ計10個の金色の指輪が出てくる。そのうち、左手の人差し指と中指にだけ小さな青い宝石が付いている。

 私は、人差し指の宝石に向けて呼びかけた。

 

「出ておいで、クー」

 

 呼びかけに応じて、宝石から大きな白い犬が飛び出してくる。大きさは2メートルくらいで、外見的にはもふもふのでかい犬である。創ったときに大きな白いモフモフの犬を参考にしたから、人懐っこそうな可愛い顔をしている。多分サモエドか何かかな。5歳くらいの時なので正確に覚えていない。

 飛び出してきたクーは、私の後ろから肩のあたりに顔を差し込んで、撫でて! とアピールしてくる。本当に甘えん坊さんだなぁ。しょうがないので、頭を両手でわしゃわしゃしてやると、嬉しそうにしている。可愛い奴め。

 

「え、何々!?」

「いきなりモンスターが……!?」

「ほう。これはこれは……」

 

 とはいえ、これはあくまで私の視点の話。左右の花奈さん彩音さんは驚いているし、金守さんは分かりにくいけど戦闘態勢に入ってる。

 花奈さんの言う通り、ここまで大きな犬はモンスターくらいしかいないからね。驚いて当然である。

 

「この指輪を媒介にした、使い魔の作製と使役。これがもう一つの《ソロモン》の効果、です」

「そ、そんな効果あったの?」

「特殊過ぎるから隠しておきたかったんだ。ごめん」

「……隠しておいて正解だよ。情報が漏れたら大変なことになっていただろうな」

 

 驚愕している彩音さんと花奈さんに謝ると、横から金守さんの援護が入る。実際問題、条件こそあれど、ほぼモンスターと言ってもいい使い魔を多数召喚できるスキルなんてあまりにもだもんなぁ……

 

「その使い魔というのは、何体も作れるのか?」

「指輪に合わせて10体までです。どんな使い魔にするか、限度はありますが自由度もあります」

「今使役しているのは何体いる?」

「2体です。クラーラ」

 

 中指の宝石に呼びかけると、中からクラゲが出てくる。全身は薄いピンク色で、傘の部分に2つ水色の星が浮かんでいる。触手は長いのが4本だ。クラーラは出てくると私のそばに浮かんで、そっと触手を体に巻き付けてくる。この子たちはどっちも甘えん坊だな……

 ちなみに、クーは私に撫でられるのは満足したのか、花奈さんにじゃれつきに行った。花奈さんは、最初こそ困惑していたけど、割り切ったのかクーの頭を撫でまわしていた。

 

「わ、クラゲちゃん?」

「……クーさんといい、デザインが可愛らしいのは夢希さんの趣味ということですわね?」

「ま、まぁそう……」

 

 彩音さんがクラーラの触手の1本と握手を始めるなど、こちら側は結構緩い雰囲気なのだが、金守さんは警戒を解かない。こういうところも信用していいと思えるね。

 あと、可愛いのは確かに私の趣味だけど、クラーラ作ったのは10歳の時だから! 今は流石にここまで可愛いデザインにはしない……と思う。多分。

 

「そいつらは何が出来るんだ?」

「クーは特殊な能力はありません。体格が大きいだけで。クラーラは私と接続して魔法を同時に発動出来ます。触手に合わせて4つ分」

 

 クーの時はともかく、クラーラの説明をしたときに部屋の空気が完全に凍った。

 いや、わかるよ。私もここまですごいのが出来ると思ってなくて自分で引いたもん。なんなら、クラーラを見せたお母さんすら引いてた。お父さん曰くお母さんが引いてるところを見たのはあれで2度目とのことだったので、むしろ一回目が何だったのか気になってしょうがない。ずっと濁して教えてくれないんだけどさ。

 

「……滅茶苦茶すぎないそれ……?」

「夢希さん自身が確か3種類同時に使えましたわよね? ということは7種類も同時に……?」

「いや、クラーラはあくまで同じ魔法を展開することしか出来ないし、同時に別の魔法を使うと混乱するのか発動してくれない。それに、魔力は全部私持ちだから燃費が悪い」

「だが、あの威力の《魔力の矢》を7つ同時に発動出来るなら、強力なんてものじゃないな……」

 

 金守さんの言う通り、弾幕を張るという点でこれほど強力な使い魔もいない。

 ただ、クラーラは複雑な魔力の操作はしてくれないので、曲げるとか溜めるとかはできない。あくまでも素のままの魔法が発動するという点に注意がいる。《魔力の矢》があれだけの威力で使えるのに何言ってるんだと思われるかもしれないけれど、逆に言えばあれ以上の威力は出せない子なのだ。

 この前のトロル戦なんかだと分かりやすくて、クラーラを呼んでも戦力にならない。ダメージが通らない上に吸収される量が増えるだけだ。むしろ、クラーラの分攻撃に当たりやすくなるだけだ。

 また、浮遊魔法も魔法だから、空飛んでる時はクラーラは置物である。なので、地上で立っている時専用だ。

 

「それで、デメリットは?」

「……」

「あるんだろう? これだけ破格のスキルなら」

「使い魔のダメージが私にフィードバックされます。体とかでなく()()()

「魔力に?」

「使い魔が傷付けば、その分魔力が減ります。召喚するにも、維持するにも魔力が必要です。それに、使い魔が死んだら、おそらく()()寿()()()()()()()

「ほう……」

「え!?」

「それは、どういう……?」

 

 三者三様の困惑が返ってきたが、これに関してはもうどうにもならないデメリットなのである。おそらくとつけたのは、今のところ使い魔が1体も死んでいないからだ。最悪、1体でも死んだら私も死ぬ可能性はなくはない。

 

「使い魔を作成するにあたって、指輪に魂の一部を込めているんです。あくまでも感覚的なものではありますが。なので、使い魔が死ねばその一部もなくなる」

「大丈夫なの……?」

「使いどころの問題だよ。彩音さんのスキルと一緒」

 

 彩音さんが私の手を握って心配そうに見てくる。でも、これは使いどころの問題なのだ。間違いなく。

 彩音さんの《乾坤一擲》も、武器の喪失というとんでもないデメリットを抱えているけれど、使いどころさえ見極めればこんなに強力なスキルもなかなかない。

 私の《ソロモン》だってそうなのだ。どうしても手が足りない時にちょっと手伝ってもらう。最悪一歩手前で踏みとどまるために助けてもらう。使いどころさえ間違えなければ、万能のスキルなのだ。

 使いどころ考えずに使うと、一瞬で魔力切れ起こしてお荷物と化すので本当に注意がいるけれども。

 

「……厄介なデメリットだ。複数の場所に展開するわけにも行かなそうだな」

「その場合、他の冒険者にモンスターと間違われて攻撃されますよ」

「ははっ、それはそうか。さて、聞き出しておいてアレだが、その効果については他言無用だ。ここにいる全員な」

 

 金守さんの念押しに、2人が神妙な面持ちで頷く。実際、すでに『魔女の大鍋(コルドロン)』に入ってしまった以上、大丈夫だとは思うんだけど、念のためって大事だからね。

 ちょっと重くなってしまった空気の中、クーだけが一切何も気にせず頭を彩音さんにぐいぐいと押し付けていた。お前さぁ……

 彩音さんも、そんなクーに苦笑しながら頭を撫でてやっている。うちのが本当にすいません。

 とはいえ、いつまでも出し続けておくのもつらいので、一旦2体には指輪に還ってもらった。もふもふ具合に心を奪われたのか、花奈さんがちょっと残念そうな顔をしていたので、どこかでクーを出してあげよう。

 

「さて、全員のものを聞いたからな。最後に俺のスキルについても聞いてくれ。じゃないとフェアじゃない」

「ドラゴンのスキル……!」

「彩音さん……」

「だ、だってドラゴンだよ!?」

 

 金守さんが自身のスキルのついて説明しようとすると、彩音さんが再び目をキラキラさせて食いついた。

 そ、そんなにドラゴン好きなのか……うーん、ドラゴン型の使い魔とか作ったら、彩音さんは喜ぶだろうか? もしそうなら一考の余地はあるかな。

 

「いや、気にしないでくれ。冒険者に限らずドラゴン好きは多いからな。慣れてるんだ。街を歩いていると子供に囲まれることもあるくらいだ。それに、美人に褒められるのは気分がいい」

「び、美人だなんてそんな!」

「彩音さんを口説かないでくださいな」

「おっと失礼」

 

 先ほどとは逆の構図になった。にしても、金守さんはちょくちょくジョークを飛ばして空気を和ませてくれたりと、コミュニケーションうまいな……参考にしたいくらいだ。

 

「と言っても、俺のスキルは見ての通りのドラゴンになることだ。ファンタジーによくいる竜人ってやつに近い。普段はこうだが、スキルを使うとほぼ完全にドラゴンになれる」

「そこからさらに変化するのですか……」

「ああ。だが、サイズがサイズでね。まずボス部屋でもないと使えない。基本的にこの見た目で戦ってるよ。身体能力も上がっているし、翼も尻尾も武器になるからな。そうそう、ブレスも吐けるぞ」

 

 本人の言う通り、本当にファンタジー系の竜人みたいな感じみたいだね。翼も尻尾も、おそらく爪も武器になるだろうから、思ったよりもはるかに多彩な動きが出来そうだ。ブレスまで使えるとなると、遠距離戦までこなせるってことだよね。万能型だ。

 横で彩音さんが「ブレス……!」って感極まってるけど、本当にドラゴン型作ろうかな……

 

「デメリットはあるんですか?」

「デメリットは、極端に寒さに弱くなったな。冬場は眠くてしょうがない。当然氷系の魔法にも弱い。もし君と戦うなら《フリーズコフィン》の一発で戦闘不能になってもおかしくない」

「爬虫類的な感じなんですかね? 冬眠みたいな」

「まさしくそんな感じだ」

 

 うーん結構重いデメリットな気が。寒さに弱いとかいうレベルじゃないんじゃないかそれ。ダンジョン内はある程度気温が一定だから大丈夫なんだろうけど、変異種とかで氷系の能力を持ったモンスターとか来たら大変だろうな……。

 あと、冬場の北国のダンジョンには行けないだろうね。ダンジョンに入る前にダメそうだ。

 

「それと、味覚もだいぶ変化したな。食えないものがあるわけじゃないが、青果の類はだいぶ臭いがキツイ」

「ああ……」

「何、気にするようなことじゃない。かわりに生肉が美味く食べられるようになってな。おかげで生のユッケが食べ放題だ」

「生のユッケとは……わたくしもスキルを使えば食べられるでしょうか……?」

「ははっ、試してみる価値はあるかもな」

 

 生のユッケが食べられるのはちょっと羨ましいかも。食べようと思えば食べられるけどね。でもさ、食中毒のリスクが付きまとうじゃん。そこを無視できるのは羨ましいよね。

 花奈さんは花奈さんで何聞いてるの? いやできそうだけども。そしてその話を聞いて彩音さんも目を輝かせないで。ドラゴンの話とご飯の話で目の輝き方違うのは何?

 

「それと、翼や尻尾が邪魔なことも多いな。特に寝るときなんかは。だがまあ人間ってのは慣れるものだ。今じゃ気にならん。むしろ、寝ている間に枕に角が刺さっている方が怖い」

「ふふっ、あ、ご、ごめんなさい……」

「気にすることじゃない。あとで写真でも見せよう。大分間抜けな絵面だから、存分に笑ってくれ」

 

 そういえば、鬼灯も似たようなこと言ってたっけな。角って結構大変なんだな……




お母さんの引いているもう一回はダンジョン内で露出狂に出会った時なので、お父さんは話していません。
露出狂はお母さんにぶっ飛ばされて、全裸のまま外に放りだされました。運搬はお父さんです。
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