【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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タイトルが若干不穏ですが、シリアスにはなりません。


配信に興味のない私と裏切り

 

 

「……最後の最後に一つ、聞かせてほしいことがある」

 

 金守さんが背筋を正し、改まって私たちを見据える。

 自然と私たちも背筋が伸びた。こうやって相対していて思うけど、威圧感すごいな……色々ごついし大きいし。

 

「なんでしょう?」

「君たちは何故ここに入った?」

「何故、ですか?」

 

 うん? なんでそんなことを改まって聞くんだろう? さっきの雑談みたいな雰囲気のままでよかったんじゃないだろうか。

 わざわざ大げさにするようなものでもないような気もするけども。

 

 

「実は、他に入った連中は……ソロの連中ばかりでね。君たちだけなんだパーティー単位で入ってきたのは」

「え」

「そもそも変わり者のクランだ。だから一匹狼が多くなるのは必然だと思っていた。でも、君たちは違う。だから聞いてみたかったんだ。何故なのかを。わざわざここに入る理由がないと思ってね」

 

 金守さんの発言に思わず固まってしまったが、なるほど……。確かに『魔女の大鍋(コルドロン)』は変人ばっかりのクランだし、必然的にそういう人が入ってくるんだろう。

 ちょっとだけ発言を濁したのは……多分だけど、ユニークスキルで見た目が変わってしまった人とか、陽向みたいに大変な人とかが集まってきたのかな。なんて予想を立てる。

 さっきの、ユニークスキルを聞いたときにありがたいと言っていたのは、他の人たちが姿かたちが変わるスキルなんかで汎用性が低いとかだったんじゃないだろうか。私たちは自分で言うのもなんだけど結構万能型だからね。

 そして、そんな中唯一パーティーで入ってきたのが私たちと。確かに気になるかも。

 と言っても、大層な理由があるわけじゃないというか、凄まじく単純な理由というか……言うしかないんだけども。

 

「クランに入ってないと未探索領域に行けないからです。それに、他と比べて自由だったので」

「…………は?」

 

 金守さんが私の発言に、口が半開きで目を見開いたまま固まった。そ、そんなに固まらなくてもよくないかな!?

 結構大事じゃない? 自由なのも、未探索領域に行きたいっていうのも! それと言う必要がないと思って言わなかったけど、勧誘がめんどくさかったからっていうのもあるし……

 ようやく再起動しかけている金守さんが呆然としたまま問いかけてくる。

 

「……それだけのために入ったのか……?」

「……はい」

 

 なんだかいたたまれない気持ちになっているのは本当になんで? でも実際そうなんだからしょうがないじゃないか! 

 なんかやっぱり私ってズレてるのか? いや、ズレてるんだった。そうだ散々自覚はしたんだった……。あと、彩音さんは謎に頭を撫でてこないで。

 金守さんは徐々に肩を震わせはじめ、最終的にこらえられなかったのか笑い出した。

 

「くくっ、はははっ……いや失礼。まさかそんな理由だとは思ってもみなかったな」

「夢希ちゃんは自由人ですから……」

「ゴーイングマイウェイですからね」

「……」

 

 なんで左右の2人も私を刺してきたの? 2人も納得してこのクランに入るって決めたよね?

 というか、彩音さんはともかく花奈さんにゴーイングマイウェイとか言われたくないよ。あなただってよっぽどゴーイングマイウェイしてるよ。この前散々暴れてたじゃないか!

 

「そういえば、その自由で何がしたいんだ?」

「……モンスターを食べる研究をしています」

「ほう……モンスターを、か……」

 

 何かを考えるように腕を組んだ金守さんは、しばらくしたあと、こう続けた。

 

「興味深いな。今度何かご馳走してくれないか」

「わかりました。今までで一番おいしかったものを持ってきます」

 

 まさかの食べてみたい勢である。少なくとも初手で食べてみたいと言ってくれたのは、両親に白石さんに続いて4人目である。彩音さんはだまし討ちみたいに食べさせてしまったのでノーカンで……

 腕によりをかけて作ってこようじゃないか。美味しいと言わせてみせよう。

 

「ははっ、それは楽しみにしておこう。他2人は何か理由はあるのか?」

「私は夢希ちゃんと一緒に冒険したら面白い冒険が出来そうだったので」

「なるほど。確かに面白い冒険になるだろうな」

「わたくしは、モンスターでお酒を造りたいのです。理解ある方々と一緒に」

「ほう、酒か……出来たら味見させてくれないか?」

「ええ、その時は是非」

「ははっ、これは一気に楽しみが増えたな……そうだ、すまないんだがさっそく仕事を頼んでもいいか? おそらく君たちが一番確実にこなせると思うんだが」

 

 2人の理由も聞いて金守さんが本当に楽しそうにしている。いろんな人との関わり合いが必要な役職だろうし、楽しみはあった方がいいよねきっと。花奈さんの話にものったあたりお酒が好きなのかもしれないから、お酒のつまみになりそうなものも用意しておこうかな。

 まさか初日から仕事を回されるとは思っていなかったけど、私たちが一番確実な仕事とはいったい……? 人手が必要な仕事とかだろうか。フィールドワークの護衛とか。

 

「どんな仕事ですか?」

「これだ」

 

 金守さんがテーブルの上に置いた2枚の紙を3人でのぞき込む。なになに……。

 

「えっと……こっちは品川ダンジョンのモンスターの一覧で、で仕事内容はこっち……モンスターの肉の調達。なるほど」

「わたくしたち向けというか、夢希さん向けですわね」

「まさに適任だろう?」

 

 ここまで適任な仕事もない……というか、完全に私たち向けの仕事だろう。これで私たちパーティーも給金が出て、無収入ではなくなるはずだ。

 私はまだ未成年だからインターン扱いでちょっとしかもらえないけど、その分はパーティーの貯金に回るはずだし、何より今まで無収入になってしまっていた2人にちゃんとした収入が出来るのが嬉しいね。貯金切り崩しながら冒険は万が一があまりにも怖いし……私のせいだけど。

 それにしても、品川か。ちょうどいいな。ブレイクレッグの肉を金守さんのお土産にしよう。焼き鳥にするにも、他の調理法をするにも、味もほぼ鶏肉だから美味しいし、ツマミになるはずだ。満足してもらえなかったら、その時は最終兵器、ジャンボイナゴの佃煮の出番だ。

 

「じゃあ明日は品川ダンジョンに行こうか」

「そうだね……何食べるの?」

「この表に乗っててまだ食べていないモンスター……うん。オークにでもしようか」

 

 ブレイクレッグキングでもいいかなって思ったんだけど、オークはそもそも系統ごとまだ食べていないから、こっちの方がいいと判断した。せっかく新しい環境になったんだから、新しいモンスターに挑戦しようという感じだ。

 

「オーク……豚肉でしょうか?」

「多分」

 

 花奈さんの意見に賛同する。オークは豚顔だし、豚肉みたいな味がするんだろう。ミノタウロスは牛だったしね。硬い可能性があるから、そこだけは注意かなぁ。ミノタウロスを初めて食べようとしたときみたいに、硬くて噛めない。なんてならないように注意しないと。

 

「当たり前のように人型でも食べるんだな……」

「ミノタウロスも食べましたよ」

「み、ミノタウロスをか……?」

 

 金守さんが若干引いている。あ、あれ? さっきまで結構好意的に見てくれていなかったっけ? なんか一気に距離が出来てしまったような……

 

「美味しかったですよ、ミノタウロスカレー!」

「機会があればわたくしも食べたいですわね……」

「次はビーフシチューがいいなぁ」

「ワインですわね。バゲットもつけましょう」

「お酒好きだねホントに……」

 

 美味しかったという感想や次に何で食べようかと話し合う彩音さんと花奈さんの平常運転っぷりに、金守さんがたまらず笑い出した。

 

「ふっ、はははっ! 本当に楽しそうな冒険してるじゃないか」

 

 よ、良かった、そんなに距離が開いたわけじゃなさそう! 

 その後、依頼の内容の確認や、持ち込みの仕方などの説明を受けた後、私たちは退室することになった。

 ……2人を先に行かせて、私だけ執務机に座りなおした金守さんの元に戻る。

 

「最後に一つだけいいですか」

「何かな?」

「なんでまだあるって確信してたんですか?」

 

 あれだけはちょっと不自然と言うか、そもそも私の《ソロモン》の指輪の方の効果を知っているのは両親と白石さん、鬼灯だけのはずだ。そして、この面々が言いふらすとは思っていない。だったらどこでその情報を仕入れたんだって話になる。

 それがどうしても気になったのだ。

 金守さんは私を見つめると、そのまま話し出した。

 

「昔、君のご両親に会ったことがあってね。うちの娘はすごいんだぞ。とやたら自慢されたんだ」

「それは、大変ご迷惑を……」

 

 親バカすぎるでしょ2人とも……お恥ずかしい限りだ。もう勘弁してほしいよ全く。いや待って、この流れだともしかして……

 

「いや俺が若造の頃に助けられてね。帰りの道中に聞かせてもらったんだよ。その中に、娘が犬を呼び出した。というものがあったのを覚えていてね。尤も、その発言をした直後にお父さんに口を塞がれていたし、他言無用を申し付けられたが」

 

 お母さん!? 何してるのさ本当に!! 不用心すぎるって……。もう、本当にかっこいいんだか、かっこよくないんだかよくわかんない人だな……。破天荒な人なのは間違いないけども。

 それに、なんだか詰問したみたいになったのに、まさかの身内の裏切りだったのがすごく恥ずかしい!!

 

「そ、そうでしたか……ありがとうございました」

「どういたしまして。……おっとそうだ。写真を見せるんだったな」

 

 そういって最後に見せてもらった写真には大いに笑わせてもらった。まるで大きな冷却シートのように枕が刺さったまま、鏡の前に立って真顔でスマホ構えてる成人男性の姿はだいぶ面白かった。

 私の笑い声で何があったのかと部屋に戻ってきた二人も、写真を見て大笑いしていた。

 その姿を見て、金守さんもなんだか満足そうにしていた。結構おちゃめなのかもしれない。

 

 

 

「良い人だったね」

「ホントにね……かっこよかったし!」

「彩音さんはドラゴンが本当にお好きなんですね」

「だってドラゴンだよ!? 嫌いな人いないでしょ!」

「いないとまでは申しませんが、確かにお好きな方は多いでしょうね」

 

 雑談しながら『魔女の大鍋(コルドロン)』の本部を歩き、エントランスを抜けたところで解散した。

 

「じゃあ、明日は品川で。また明日」

「うん、また明日ね」

「はい、ではまた明日」

 

 明日はオークを食べるぞー!

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