【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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配信に興味のない私と餃子づくり

 

 調理を2人に任せて私が解体をし始めてからしばらくして、後ろからミンサーのハンドルの音が消えた。

 

「結構できちゃったね……」

「山になっておりますね……」

「どうしよこれ」

「とりあえず、混ぜられる分は混ぜましょう。その後は……きっとユキさんが何とかしてくれますわ」

 

 "後ろの会話不穏で草”

 "山になっておりますね!?”

 "どんだけ作ったんだよwww”

 "唐突に投げられる理不尽な期待”

 

 なんか後ろから不穏な会話が聞こえるんだけど。なんでかなぁ……?

 ちらっと後ろを振り返ってみたら、ひき肉の山が出来ていた。加減ってものを知らないのかな!? 食べきれないよそんなに! 確かに少し多めに作ってほしいとは思っていたけども。それにしてもじゃない?

 あと、何とかするのは私じゃなくて彩音さんだよ。お腹の容量的に。自分でやったんだから自分でなんとかしてよね。

 とはいえ、出来てしまったものは気にしてもしょうがないので、とりあえず解体に戻ることに。耳だけは後ろに注意が向いてるけども。

 

「餃子作るなんて久しぶりだなぁ……いつ以来だろ?」

「アヤネさんは料理はよくされるのですか?」

「一人暮らしになって最初の方は頑張ってたかな……」

「ふふふ、やはりそうなってしまいますよね」

「カナちゃんも?」

「ええ、一人暮らしになって最初は頑張っていたのですがね……一人分となると手間の方が勝ってしまいまして」

「そうなんだよねー。まとめて作ると今度は消費しきれなかったりするしさ」

「中々苦労いたしましたわね……」

 

 "分かるわー”

 "最初は頑張ろうと思うんだけど途中からってのはマジでわかる”

 "好きなもん好きなだけ食いたいとかでないとやらないわ自炊”

 "まとめて作ろうとすると保存場所も足りなかったりな…”

 

 2人とも料理しないタイプなのかな。話を聞いてる限り、一人暮らしになってしばらくしてから徐々に減ったって感じみたいだけど、私はどうだろうなぁ……

 ほぼ趣味みたいなところもあるし、何より普段から家では自分の分しか作ってないからあんまり変わらなそう。お父さんが家にいないことの方が多いから、必然的にそうなるんだよね。朝ご飯とお弁当を作って、夕飯はダンジョンでって感じだし。

 もしかしたら、寮の部屋ではおすそ分けなんかが出来るかも? と思ってたけど望み薄だろうか。まあその時はその時ということで。

 

「今はおつまみ作るときくらいだよ」

「ツマミは自在に作れるのが素晴らしいですわよね」

「ね。それに、言うとアレな感じなんだけど、ご飯は今食べてるしさ」

「ふふふ、確かにその通りですわね」

「よし、これで餡が出来たから、作っていこ」

「ご指導お願いいたします」

 

 "確かに飯は今食っとるわなwww”

 "夕飯はダンジョンで食ってるもんなぁ…”

 "この前の砂ウツボで思い知ったけど、経済的なのが強いよなモンスター飯”

 "危険度がおかしいけどな”

 

 …………なんだろうなぁ、くたびれたOLの会話を聞いているような気分になってきた。仕事で疲れて帰ってきて、まずは冷蔵庫から取り出したお酒の缶を開け、それを飲みながら冷蔵庫の中身と相談をしつつもう片方の手で服を脱いでいくようなそんな感じの。

 なんだか失礼なような気もするんだけど、彩音さんはやたら似合うなって思ってしまった。髪だけ解いて缶チューハイ片手に冷蔵庫漁ってる姿が。花奈さんはなんかもうワイン飲んでるイメージ。一通り飲み終わってから動き始めてそう。

 この頭の中のイメージは絶対に2人には言わないようにしよう。そうしよう。

 私に怒られる趣味はないのだ。

 

「餡をこれくらい入れて……皮をこんな感じで」

「ふむふむ……」

「こうやっていって……こう!」

「おお! とても綺麗ですわ。お店にあるような見た目で素晴らしいです」

「正直、自分でもびっくりするぐらいうまくいって驚いてる」

「ではわたくしも……入れすぎましたわねこれは」

「ミートパイみたいになってる!」

 

 " ミ ー ト パ イ ”

 "そうはならんやろ” 

 "なっとるやろがい!”

 "見えてないからわからんのだよなぁw”

 

 どれだけ入れたら餃子がミートパイになるのかなぁ……? いや、多分アレだよね。餡を入れすぎて皮を閉じられなくなってるだけだよね。ミートパイと言うかシュウマイみたいな……いや待って、そうだよあのサイズ感ならシュウマイのはず。どうやったらミートパイなどと言う例えが!?

 正直後ろを振り向いて確認したいんだけど、それ以上にさっさと終わらせて2人の元に行かないとマズい気がしてきた。彩音さんはともかく花奈さんが結構トンチンカンなことしてる気がする……!

 あとはゴブリンとホブゴブリンだけだから急ごう。なるはやってやつだ。

 というわけでさっさと解体を……いやまて今更だけどこいつらの肉ってどの部分? ガリガリ体型の緑色の人間みたいなやつのどこを持ち帰れと……? 

 漫画とかだと耳持ち帰ってる印象あるけど、あれは討伐した証みたいなものだし絶対に違うと思うしなぁ。無難にお腹辺り……いや、肉なくない? お尻とか……?

 

「……カナちゃんはもうちょっと量減らそうか」

「そうですわね……どうにも上が閉じませんわ」

「これくらいだよこれくらい」

「少なくありませんか?」

「ちょうどいいでしょこれで! ほら、ぴったり!」

「ここは限界に挑戦してみなくてどうするのです!」

「さっきから限界突破しちゃってるじゃん!」

 

 "アヤネさんは今日も大変”

 "ツッコミがさえております”

 "実食ネキはホンマにさぁwww”

 "もう、基本的に実食ネキとしか呼ばれてないの草”

 

 いや本当に不安になってきたなあ! お父さん、もしかしたらこのアイデアは失敗だったかもしれません。花奈さん料理出来ないタイプだなきっと。いや、出来はするんだけど、自己流アレンジで大失敗するタイプだ。

 

「もうそれ諦めてシュウマイにしたら? 皮閉じないよそれ」

「くっ、この程度のことで……!」

「なんでそんなに悔しそうなの? 何か悔しく思うところあった?」

「わたくしは不甲斐ない女ですわ……!」

「……そうだね」

「アヤネさん!?」

 

 "そうだねwwwwww”

 "アヤネさん、キレる…!”

 "クッソワロタ” 

 "そうだねマジで草”

 

 そうだね!? 彩音さん、どうか見捨てないであげて。いや、気持ちはちょっと分かるけども。聞いてるだけで苦労は偲ばれるけども。

 ゴブリンどもに関してはもう分からないので、皮を剥いでパーツ毎に切り分けるだけにした。もう全部骨付き肉にしても食べる部分ないよこれ。いや、食べないと思うけどさ。

 ……食べないよね?

 

「はい、わかったらちゃんと作る!」

「……はい……」

 

 "実食ネキのテンションの落差よwww”

 "自由すぎたんだ…”

 "これってユキちゃんも聞こえてるんですよね???”

 "解体中にこの会話聞こえて手元狂ってないか心配だわw”

 

 花奈さんのテンションが一気に落ちたなぁ……まぁ、ちょっと自由すぎるので反省してください。ゴーイングマイウェイはあなたです。

 よし、解体終わり。大量に持ってきた新聞紙で包んで、大鍋に入れて収納魔法にぽい。防護服脱いで水で洗って振り回して水気を切ったらこれも収納魔法にぽい。

 さ、餃子を作るぞ! ……うーん、本当にミートパイみたいなのがある……

 むしろあれどうやって作ったの? 逆にすごくない? もう皮で包んでるというか、皮にのせただけみたいになってる。ピーマンの肉詰めみたいな感じだよあれ。なのにちゃんと周りは肉に張り付いてるし……逆に作るの難しいでしょ。

 

「……解体終わったから私も作るね」

「ユキちゃんお疲れ様」

「お疲れ様です……」

「よし、私も久々だなぁ……」

 

 "ミートパイみたいなのってあれかぁwww”

 "マジでミートパイみたいで草”

 "皮の部分ほぼ見えねぇじゃんwww”

 "対してアヤネさんの餃子のきれいさよ”

 "めっちゃ均等やんけすご”

 

 皮を手に持って餡を置いて、皮の外周部辺りを水で濡らしてから、そのまま折りたたむみたいにして皮の重なった部分をちょいちょいちょいとやって行けば……うん。出来た。

 彩音さんのに比べると小さいな……手のサイズ差の問題かなこれ。花奈さんのと比べるとさらに小さいけど、あれはそもそも餃子じゃないから。シュウマイだもん。

 

「綺麗だねユキちゃん」

「ちょっと小さくなっちゃった」

「大きいよりはいいよ」

「大変申し訳ございませんでした……!」

 

 "ユキちゃんの小さいけど綺麗やな”

 "おてて小さくてかわちーねー”

 "刺していくぅwww”

 "アヤネさんどしたwww”

 

 彩音さんに追撃をもらって撃沈する花奈さん。この人最年長なんだけどな……。こう、気易くていいんだけど、もうちょっとこう……うん。

 

「食べ物で遊んではいけません」

「はい……」

「……最年長なのに……」

「ぐふっ……」

「あ」

「ユキちゃんがトドメ刺したね」

 

 撃沈を通り越し、ついに膝までついて顔が机の下になってしまった。まあ、ちょっと反省していてください。今は餃子作るので忙しいので。

 

 "ノックアウトー!”

 "確かに最年長なんだよな実食ネキ…”

 "アヤネさんの先輩だもんね”

 "先輩の姿か? これが…”

 

 そうだ、アレについてもちゃんと聞いておかないとね。

 

「……ところでなんだけどさ」

「うん?」

「あのひき肉の量は何?」

「あれはー……その、楽しくなっちゃって気が付いたら……あはは……」

 

 "大人二人はさぁ…”

 "ユキちゃんが一番しっかりしているとかいう矛盾”

 "アヤネさんも結構はじけるタイプではあるからな”

 "内容が常識的だけどな”

 

 彩音さんが目をそらしながら言い訳を並べる。とはいえ、その気持ちはよーくわかる。自宅で試したときは私も楽しくて作りすぎちゃって、しばらくひき肉でご飯を食べ続けていた時期があったからね。

 

「…………まぁ、処理はアヤネさんに任せるとして」

「あんなに食べられないよ!?」

「責任持ってください」

「うっ……」

 

 "アヤネさん、撃沈!”

 "ユキちゃんが一番強いからなw”

 "やはり最強…”

 

 残ったら、普通に冷凍して持ち帰れば良いだけなんだけどね。大人2人はなんというか……テンション上がるとダメな感じなのかなぁ。私もそうだけど。

 こうなるとアレだね。常に冷静な人が1人欲しくなってくるね。その人負担がヤバそうだけども。身近にいる人だと……金守さんとか? 流石に忙しくて無理か。

 

 

 




金守「なんだか悪寒が……」
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