偽龍の仔 作:贋子
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「現行稼働率20%。うん、及第点は超えたね。オマケに、力の制御を指向性だけとはいえ、出来るようになったのなら上出来かな」
「コアを二つ、活性剤を四つも使った成果、と言って良いんでしょうか?」
「コアなんて幾らでも手に入るじゃない。研究が成功に近づいた事を今は喜ぼうよ。それにしても、特撮ドラマも馬鹿に出来ないね。何となく見てみたけど、うん。暇潰しにはちょうどいいしさ」
「暇潰し、ですか………報告書が上がっていないようですが?」
「うっ……ま、まあまあ、今は良いじゃない。君も一緒に観ない?子供向けかと思ったけど、凝ったカメラワークとか観ていて結構楽しいからさ」
「ハァ………」
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「集まったね、二人とも」
「お兄ちゃん、急にどうしたの?ギリューと一緒に来てくれ、何てさ。あ、ゴミ出し?」
「ゴミ出しなら、俺行ってくる」
「違うよ。それから、ギリューもあんまりリンを甘やかさないでね。ゴミ出しはローテーションで決めてるんだから。早起きも大切だよ。それから、コレは廃棄されるボンプの部品さ」
ビデオショップの裏手。駐車場になっており、外からは建物が死角となり監視カメラの範囲外の場所。
そこで、三人は顔を合わせていた。
「ボンプの廃品?」
「そう。コレを使えば、通信遮断機を三つ作る事が出来る筈だ」
「それって、Fairyの事、だよね?」
「ああ。彼女、と呼んでいいのかな。とにかく、地獄耳のFairyの近くじゃ内緒話なんてとてもじゃないけど出来ないからね」
「Fairyは、良くない?」
「そうだね。リンに一方的に規約への同意を求めた事や、H.D.Dシステムにまで乗り込んできて掌握した点。それに、規約の来るべきといったマスターと呼ばれてるリンが問いかけても明かさない点。まあ、何の疑いも無く信じる方が難しい話さ」
「まあ、確かにねぇ」
アキラの言葉にリンも頷く。
有用である事と、信用信頼を置く事はイコールでは結ばれない。奸雄という言葉もある。相手が不透明な状態で信を置く事は愚行と言えた。
ギリューは何処か分からない様な様子で首をかしげているが、何かを言う事は無かった。判断を下すための知見や経験が不足している以上、彼個人の判断を下す事は難しいからだ。
「とはいえ、利用できるものを利用するのは当然の事でもある。リンも気付いていると思うけど、Fairyのルート算出能力は非常に高い。ローカルデータに一切頼らない事もあるんだろうけど、そのルート算出速度は僕らの二百七十倍。オマケに、その精度も完璧といって差し支えない」
「だからこそ扱いに困るんだよね。もしもFairyに頼りきりで算出されたルートだけを通ってたら、もしもの時があっても対応できないし」
「正にそこだ。彼女は肝心な部分は何も答えてくれない。来るべき時とは言うけど、そのタイミングが分からない以上もしも仕事を任せた所でその時が来て脱出ルートが出鱈目に改竄されればその時点で詰みだ。僕らだけじゃない、現場でホロウに潜っているエージェントも危険に晒す事になる。ホロウの中じゃ何が起こっても不思議じゃないからね」
アキラが危惧するのが、正にこの点。
リンはボンプ越しに、ギリューに至っては直接ホロウへと乗り込む事になる。
そこで、ルートが役に立たないという事態に陥れば待っているのはホロウでの遭難。エーテル侵食を受けた後、エーテリアスと成り果てる事だろう。
兄の心配事に頷きながら、リンが口を開く。
「そういえば、Fairyの調査を邪兎屋に頼んだんだよね。ニコ達からの連絡は何かあった?」
「生憎と、何も。赤牙組を調査するって話だったけど、音沙汰無し」
「厄介な事に巻き込まれてないと良いけど」
「そうは言ってもね。彼らは、トラブルメーカーな所は否定できないから。下手すると、大事を凶事してしまう事もあるからね」
「!ニコ達が危ない?」
「それは分からない。でも、ニコが厄介事を抱え込んだら僕らの所にもお呼びがかかるだろうね」
「一生のお願い、かな」
「今月だけで何回聞くだろうね。それに………いや、今はこれは良いかな」
言いかけて、言葉を止めたアキラ。
彼は曖昧に微笑むと、ギリューの頭を撫でる。
アキラが言おうとした事。それは、この過去の分からない少年の事。
(知能設備の八割にアクセスできるFairy。そんな彼女の検索にすら引っかかる事の無かった、ギリュー)
そう。少年の居ないうちに、アキラは一度だけFairyに検索を掛ける様指示を出していた。
結果、引っかかったものはゼロ。この新エリー都に置いて、ギリューという少年は存在していない事になったのだった。
無論、軽く浚った程度全てを把握できたとはアキラも考えていない。しかし、Fairyの性能が分かるほどにギリューの謎は募るばかりだ。
もっとも、素性不明のAIと比べればギリューには信頼の積み重ねがある。何より、面倒事込みで背負い込むと最初に受け入れた時に決めたのだ。今更それをひっくり返すような事も無い。
「さて、と。僕はこれを部屋に持っていくよ。その後、ご飯にしようか」
「あ、お兄ちゃん!ルミナスクエアの火鍋屋さんにしよう!予約取ってさ!」
「!火鍋!」
リンが手を挙げ、賛同するようにギリューが両手を挙げて目を輝かせる。
カワイイ妹と弟分のおねだりに、お兄ちゃんは何でもないようにしながらすぐさま頭の中でルミナススクエアにある火鍋屋の情報を引き出していたりする。
しかし、平和の裏には波乱在り。その事を痛感するのは、これから僅か二日後の事だった。