Quietum die   作:裸エプロン閣下

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今回は最初の要望、DiesVS神咒の戦いです。

でも期待されていた覇吐VS蓮はないんだ……。
言い訳をするとその時同時にやっていたケータイのファイルの移動作業で何かエラーが発生したせいでどういう訳か全部書き込み専用になってしまったんだ。詳しいことはTwitterのほうを見てほしい。名前はやはり閣下です。

で、それの修復作業でいろいろやる気をごっそり持っていかれて、しかもそのすぐ似たようなエラーを再び起こして………………すいません。

PS
今回推奨BGMを設定してみました。
小説の雰囲気と合いより深く楽しめると思います。


新たな戦場【ツォアル】

*推奨BGM【心中善願決定成就】

「お前らちょっと弁当取りに行こうぜ!」

「「お前(覇吐さん)は何を言っている(んですか)」」

「うわぁ、テンション低い…………」

 

 ようやく面倒くさい学業が終わったと思い帰ろうとした矢先覇吐が教室のドアを凄まじい音と共にそんなことを告げてきた。面倒事が終わったと思ったら次なる面倒事がやって来たのだ、テンションも下がる。

 

「で、なんなんだよ。話だけは聞いてやる」

「冷てえなぁお前ら。この辺から電車で20分位で着くところにすっげぇ美味い弁当が売ってる店があるんだってよ」

「それで僕たちを誘おうと? ライバルが増えるだけではありませんか?」

 

 それもそうだ。一度戦場に出た以上同じものを狙う相手は全て敵だ。狼たちにうまいと囁かれるほどの弁当だ。半値(ハーフプライズ)印証(ラベリング)時刻(タイム)まで残るかどうかも怪しいだろう。

 

「大丈夫、そこの半額神バカなのか午後にも結構弁当作って毎度半値(ハーフプライズ)印証(ラベリング)時刻(タイム)には弁当が残ってるらしいんだ」

「そりゃあ……俺たちにとっちゃ嬉しい事だが店的にはどうなんだよ」

「店だって慈善事業ではありませんからね……」

「さぁ? 売れ残りの食材とかでやってるんじゃないのか? まあ食中毒患者なんて一人も出てないから問題ないだろう」

 

 そりゃあ食品を扱う店だ。衛生状態には気を使っているだろう。

 しかし……。

 

「お前にバカと言われる半額神も可哀そうだな」←期末成績学年6位

「ですね。本当に可哀そうです」←学年29位

「お前ら最近俺に対して辛辣じゃね? この前も放置してったし」←学年269位

「「バカなのは事実だろ(でしょう)」」

 

 納得のいかない顔をしているが俺らからすればお前のバカっぷりは余すことなく知れてるし、以前の五大竜胆の時はあそこの大きな弁当を持ちながらお前を連れて行くほど余裕ないし。そもそもお前重いんだよ(75キロ)

 

「まあいい。とにかく弁当取りに行こうぜ! 金なら穢土の穴での委託本のがあるし」

 穢土の穴――要するに虎の穴みたいなものである。

 

「今日はバイト無いから退屈だしいいぞ」

「今日は部活もありませんし、ちょうど暇だったのでいいですよ」

「なら最初っからそう言えよ! 俺の力説意味あったの!?」

「「ねえよ(ありません)」」

「ちっくしょおおおおおおおおお!!!!」

 しかし、普通は弁当が残ると分かれば多少量を減らすはず。それなのに、か。半額弁当が手に入る確率が高いのはいいが、気になる。

 単なる客集めか、(おれ)たちを集める為なのか。

 

 

 ※※※

 

 

「蓮、今日争奪戦行くならちょっと久々に遠くまでいってみねぇか?」

「遠く? どのへんだ?」

 

 学業終了と同時に後ろの席の司狼から誘われる。最近ご無沙汰だったから行くこと自体は問題ないが遠くと言うのが気になった。

 

「電車で40分位の店で美味い弁当があるんだってよ。それで」

「でも美味いってことは時刻まで残ってるとは限らないだろ」

「それがどういう訳か、午前にも午後にも弁当を結構作っているらしくて毎回五個近くは残るらしい」

「五個も!? 相当だな……」

 

 別にこういう事例はないわけではない。例えばラインハルトは争奪戦を見たいがために時々弁当を多く、高く作る。どこかの店では出来立てのうなぎ弁当を半額で出す店もあるらしい。前者は明確な目的があって、後者は…………言い方はあれだがただのバカだ。

 

「それで、行くか?」

「ああ、面白そうだしな」

 

 さて、いったいその店の半額神はどちらなのだろうか……。

 

 

 ※※※

 

 

「どちらでもない」

 

「いい加減にしなさいジューダス、ライル!」

「どうだこの鍋使いは! やはりここの半額神にふさわしいのは俺のようだな!」

「抜かせこの野郎! この包丁さばきが目に入らねえのか!」

 

 狼たちの間でささやかれる件のスーパー【ツォアル】の調理場では火花が散っていた。なぜこうなったのか、遡ること三日前――あれは突然の出来事だった。ライルと呼ばれた黒コードの兄であり、ここ【ツォアル】の半額神あるナハトが大なべを振るって弁当を作っている最中、調味料としてワインを加えようとしたが誤ってジューダスが持ってきたスピリタスを入れてしまったのだ。幸い火事になることは避けたがナハト自体は包帯ぐるぐる巻きで全治2か月という状態になってしまった。

 そして一時的に空いた半額神の座を手に入れようとアストの諌言を無視して二人の男、ライルとジューダスは争っているのだ。

 

「アスト、そちらは放っておいてもかまわん」

「しかし店長(マスター)! 材料費が……っ!」

「問題ない。二人の給料から引いている」

「「なにぃ!?」」

 

 店長サタナイルの発言に二人が振り向く。手は相変わらず動き続けている辺りはさすがと言えよう。

 

「そう驚くことはあるまい」

「驚くに決まってんだろ! 売れ残りの食材って言ってなかったか!?」

「それは初日の物だけだ。毎日こうも多くの物が売れ残るはずが無かろう」

「いやでも結構売れてるし、イーブンでどうにか……っ!」

「ならない。弁当自体が多すぎるから毎日半値(ハーフプライズ)印証(ラベリング)時刻(タイム)には五個近く残っている。元の値自体、利益が少ないのだから半額になっては赤字だ」

 

 ライルとジューダスの言を容赦なく的確な事実を持って切り捨てるサタナイル。それを聞いて同時に項垂れる。それでも手はそれぞれ鍋を、包丁をもって動き続けている辺りはさ(ry

 

「それで店長(マスター)、この大量の弁当どうしますか?」

「売るしかあるまい。全く売れていないわけでは無いからな。すこしでも利益を上げておく」

 

 そういい項垂れる二人からすこし離れた机を見やる。その上には様々な種類の弁当が大量に積まれていた。

 

 アストは今日も帰りが遅れるのだろうと思い、嘆息した。

 

 

 ※※※ *推奨BGM【一切衆生悉有仏性】

 

 

(あのさぁ……)

(……なんですか)

(すっげぇ居心地悪いんだけど)

(それは僕もです。我慢してください)

 

「んだてめぇ。誰にガン飛ばしてんだ。アァ?」

「てめぇこそ飛ばしてんじゃねえか。なんだその目は、髪は。中二病か」

「髪はてめぇも一緒だろうが!」

「俺は地毛だ。てめぇみたいなアホの中二病と一緒にしてんじゃねえよ。気色悪い」

「てめぇ……っ! 上等だ、争奪戦でひねりつぶしてやるよ!」

 

「なあ、お前ら知り合い?」

「「なわきゃねえだろこんな奴!!」」

 

 店に入り、対面すると同時に刑士郎とヴィルヘルムは互いの襟をつかんでこれでもかと言うくらいガンを飛ばした。そして現在に至る。

 店内で二人に近づこうとするものは司狼しかおらず、先ほどからこのコーナーへ向かおうとするものが二人の凶悪度(オーラ)によって何人も引き返している。店側からすれば営業妨害でしかない。

 

「司狼、半値(ハーフプライズ)印証(ラベリング)時刻(タイム)まであとどのくらいだ」

「大体20分くらいだな」

「マジかよ……」

 

 普段は短い時間が今この場においてはとてつもなく長い時間に思える。この店に来たことを若干悔む蓮。

 

「……何をしているおまえら」

「…………何をやっている?」

「そこの素敵な貴婦人。俺はガンコナーと呼ばれるしがない者ですが、よければ少し語り合いませんか」

「あんたは初っ端から何をやってんだよ」

 

 マッキー(龍明さん)キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! これで勝てる!

 それがこの場にいるヴィルヘルムと刑士郎を除く全員の正直な気持ちだった。

 

 弁当コーナーから下見を終えてやってくるのは岩谷巻奈、入り口からため息と共にやって来たのは御門龍明。マキナは一人だが龍明の方はもう二人ついて来ている。一人は僅かに無精髭のある緑のジャンパーを着たガンコナーと名乗る男。もう一人は華奢な体つきをした胸のない女でこちらも色は青と違うがジャンパーを着ている。

 

「げ、マキナかよ」「龍明か……」

 

 二人を視認した途端ばつが悪そうな顔をして離れていく。

 マキナと龍明はそれぞれの相手を追いかけていく。龍明について行こうとしたガンコナーは女につかまれ止められた。

 

「ふぅん……君たちも狼かな」

 

 蓮や覇吐たちの前で立ち止まり、四人を眺めた女が口を開く。ここで三人(・・)がただのナンパ野郎とその彼女的存在から認識を改めた。

 

「へぇ……あなたも只者ではないと思ってましたが……」

 

 宗次郎の意味深なセリフに覇吐と蓮が反応する。司狼は気にした様子もなくケータイをいじっている。

 

「ところで麗しいお姉さん、よければお名前聞かせてもらってもよろしいでしょうか。俺の名は坂上覇吐。覇を吐くと書いて覇吐です」

「おい坊主、俺の目の前で女口説こうとはいい――ッ!」

「……悪いが、俺は男だ」

「……………………One more, please?」

「それ違いますよ覇吐さん」

「それだと『もう一つ下さい』だから」

「正確にはOne more time, pleaseだよ」

 

 足蹴にされるガンコナー、そのガンコナーの上に立つ女あらため男。そして呆けた顔でもう一度訪ねる覇吐に呆れる宗次郎、間違いを指摘する蓮、ケータイをいじる司狼。一種の不思議空間が出来つつあった。

 

「まあ名乗られたからにはこちらも名乗りを返そう。俺は天音(あまね)(しき)。二つ名は【誇り高き魔狼(フェンリスヴォルフ)】という。で、こっちの這い蹲ってるのは」

「愛を囁く男、山乃森(やまのもり)(りょう)。今宵も麗しの乙女を探して野に立つ一匹の狼。二つ名は【ガンコナー】だ」

「名前と二つ名以外は戯言なので聞かなくてもいいよ」

 

 地に伏せながらも恰好をつけようと歯を光らせてそれなりに格好良く自己紹介したものの、それを切り捨てる織。

 

「あれ? 【誇り高き魔狼】って、この前のスレでみたような気が……まあいいか」

 ふと頭をかしげる覇吐。記憶から掘り出そうとしているがすぐさま思考を放棄する。

 

 

「へぇ、天音家といえば元忍者でありながら江戸時代に大成した商人の一族で今の世界的財閥。今でもその時の身体能力は残ってるとは聞いていましたが本当だったようですね」

「「何その設定!?」」

「そういう君も随分と鍛えているね。剣道かな」

「お見通しですか。僕は壬生宗次郎。【布都御魂剣(ふつのみたまのけん)】と呼ばれています」

「壬生宗次郎だとっ!? 廃刀令以降も刀の所持を許された剣豪一家壬生の、その歴代の誰よりも強いと言われた<天剣>の宗次郎か!」

「「お前も!?」」

 

 知らなかったマンガらしい設定の家柄の二人を見て驚きの声を上げる覇吐と蓮。司狼も面白そうに感嘆の声を上げる。

 

「それで、君たち二人も二つ名はあるのかな?」

「遊佐司狼、最近【狼を司る者(ゲオルギウス)】っつー二つ名を得た」

「あ、俺は藤井蓮。二つ名は【ツァラトゥストラ】だ」

「俺は覇吐、【春画曼荼羅】の二つ名を持つ」

 

 覇吐の二つ名で全員が困惑の色に染まる。基本的に二つ名は相手に畏敬と畏怖の念を覚えさせるものだが、覇吐のそれからは何一つ感じない。

 

「【春画曼荼羅】……ああ、【性欲界紳士道】の人か! しかし、それが二つ名だったとは…………」

「異名、じゃないのか……?」

「だ、そうですよ覇吐さん」

「んだよどいつもこいつもよぉ! 俺だってお前らみたいにカッコいい二つ名が欲しかったんだよ! でもしょうがねえじゃん! なっちまったもんわよ! いやこれはこれでいいけどよ」

 

 涙を流しながら訴える覇吐だが、聞いている側からすればどっちだよ、と言いたくなる。

 

「いや二つ名は後々変化することもあるから……」

「無理ですよ。覇吐さんの戦い方あれですから」

「どんな戦い方してんだよこいつ……」

「エロ本を見せて相手の食欲を下げる戦法ですが(キリッ」

「じゃあ無理だな。諦めろ」

 

 再び声高に叫んで項垂れる覇吐。相手にするのが面倒になったのかもはや全員相手にしていない。

 

「てめぇらいつまでつまんねぇ会話してるつもりだ? あと5分で時間だぞ」

「お、ヴィルヘルム。お前何話してた、って見れば分かるか」

 

 頭にたんこぶを作ってきたヴィルヘルムとマキナがやってきて、逆方向からも刑士郎を伴いつつ龍明がやってくる。

 

「役者もそろったことだし、もう一度弁当を見てくるか」

「ですね。結構な客が弁当を持っていってましたし」

「ふ、そうだな。この一戦を持ってこの【春画曼荼羅】の意名を響かせファンを」

「「「「「できるはずが無い」」」」」

「(´・ω・`)」

 

 

 ※※※

 

 

「そろそろ時間だな。アスト」

「ハイ店長(マスター)

 

 昨日まで暫定半額神としてシールを貼りに行っていた二人が負のオーラを出している為アストがスタッフコーナーから出ていく。

 

店長(マスター)……」「お情けを……」

「這い寄るな」べしべしっ!

 

 背後に関しては完璧スルーで。

 スタッフコーナーを出ると同時にまずは一礼。こちらにウィンクしてくる赤髪と緑ジャンパーの二人は華麗にスルー。スルースキルの高さに定評のあるアストである。この程度は簡単である。

 

(弁当四個に総菜が二個……やはり多いですね)

 

 平時は残ることすら少ないここ【ツォアル】からすればこの数は半端ではない。しかし元の数が多い事を考えれば売れ行きは好調だろう。

 もっとも売れている一番の理由は利益度外視の値段によるものだろうが。値を正規の物に戻せば買い手は減ってしまう為今のうちにリピーターをつけておきたいところだ。

 

(まあ、それを決めるのは私ではないんですけどね……)

 

 テキパキと弁当と総菜を陳列し直して半額シールを貼りつける。それが済んだら素早くスタッフコーナーに戻る。店内の一区画で争いが起きる中もこの中だけは静粛な……。

 

「正当な給金を我々は要求する!」「労働省に訴えるぞー!」

「ジューダス、ライル、明日から来なくて――」

「「それだけは勘弁してください」」

 

「……ハァ」

 

 

 ※※※ *推奨BGM【唯我変生魔羅之理】

 

 

「うおらぁああ!」

 

 元々人数が多かったツォアルの弁当コーナーは早々に乱戦となった。目覚ましい活躍を見せるのはマキナ、龍明に覇吐、蓮に二つ名持ちの面々。その中でも特に目を引くのは遊佐司狼だった。鎖を巧みに操り狼の力の流れなどを変え相打ちを狙わせたり鎖で手近な者を引き寄せ盾にしたり、【狼を司る者】の二つ名に恥じぬ戦いようだった。

 しかしその司狼を以てしてもこの数を裁き続けるのは難しかった。

 

「しかしここまで数が多いと闘い難いな。マキナ、間引きをするため手を組まないか」

「……いいだろう。ただし出し抜こうなどと考えれば……」

「分かってるっつの。蓮!」

「おう!」

 

 人数を減らす為、司狼は周りの狼の動きを止めることに専念し、止まった狼たちをマキナがその拳で、蓮が手刀で狼を叩きだしていく。

 

「喰らえ春画曼荼羅!」

「おっと危ない」

「こんな下んねえものにかかると思ってんのかよ」

 

 しかし二つ名持ちはやはり簡単に引っかからない。それぞれの特色を生かして回避し弁当コーナーへと近づいていく。

 

「ふ、この俺のために糧になってもらおうか。春画曼荼羅ぁ!」

 覇吐がエロ本を見せつけながら司狼へと近づいていく。それを蓮もマキナも認識しているが止めには入らない。

 

「おっらぁああ!!」

「あれぇ!?」

 

 エロ本を見せつけられながらも司狼は覇吐に対してカウンターを決める。二つ名があれとは言えど持っている以上覇吐も弱くはない。さらに腹の虫の加護があるにも関わらず覇吐に互角以上に戦えた存在は少なくとも刑士郎だけだ。

 ただしそれは腹の虫の加護が無ければ、の話だ。

 

「生憎俺はインポでなぁ! 勃たないんだよ!」

「な、なん……だと……」

 

 エロ本を見せつける戦法。それは相手に性欲があって初めて成立する技。したがって相手に性欲が無ければ意味がない。今までにも『エロ本を見ない』『マニアックな趣味』という相手もいた。しかし見ない相手には官能小説を音読し、マニアックな趣味の相手にも合わせたエロ本を備えてきた覇吐だが『勃たない』相手には会ったことが無かった。

 

「だったら…………これならどうだ! 喰らえ! 『宗次郎×刑士郎本! 僕の鞘になってください』」

「「なにぃ!?」」

 

 だが狼は男だけではないのだ。女性に対してエロ本を見せても反応の薄い者が多い。故にそういった相手にはジャンルを変えて挑んできた覇吐だ。

新たに懐から出されたのは宗次郎と刑士郎が絡みあう表紙の本。所謂ボーイズラブである。さすがの司狼にもこれは効いたのか動きが一気に鈍くなる。覇吐は本を持っていない右ですかさず腹部を決める。腰が若干曲がったところで体全体でぶつかりに行き一気に戦場から叩き出す。司狼の戦線離脱により鎖も離脱し、先ほどまで動きの鈍かった者たちが再び走る。

 

「よっしゃあ!」

「よっしゃあじゃねえよ! いつそんなもん創ってやがった!」

「大体何なんですかそのタイトル! 腹の虫の加護が一気に吹き飛んだんですが!?」

「いや創ったのは俺じゃねえよ。龍水だ」

「オイ龍明! お前の妹は……」

 

 刑士郎が龍明のいる方向に目線を向けると同じ本を持った龍明がいた。

 

「おい、風紀委員長…………」

「元だがな。個人の趣味に関してまで風紀委員は口出しはしない」

 

 完全無欠で伝説の風紀委員長、そう称される女性がBL好きだったとは……。宗次郎も刑士郎も狼として最初期から世話になっていただけにショックは大きかった。しかしさすがは歴戦の狼と言うべきか早々に体制を立て直した。

 

(さらば龍明……後で酒でも供えてやるよ)

(僕たちの知っている龍明さんは、もう亡くなったんですね……)

「はっ倒すぞ貴様ら」

 

 

 ※※※ *推奨BGM【尸解狂宴必堕欲界】

 

 

「あと、少しなのに……」

「その少しが遠い!」

 

 弁当は二つ減って残りは二個となっていた。最初に上空から織が強襲して、次に龍明が前列を薙ぎ払い素早く入手していった。

 現在残っているのは。

 

「吹き飛べオラァ!」

「さっきからごちゃごちゃと、咆えなきゃ戦えねえのかよてめぇ!」

 

 ヴィルヘルム、刑士郎、

 

「ふん!」

「く、固い……でもっ!」

 

 マキナ、宗次郎、

 

「オラオラ春画曼荼羅ぁ!」

「うわぁ……うざい……」

 

 覇吐、蓮の六名だけだ。

 

 

 ※※※

 

 

「オラどうしたさっきまでの減らず口はよぉ!」

「チッ、うざってぇ野郎だな」

 

 弁当・総菜コーナーに一番近いのはヴィルヘルムと刑士郎の二人だ。隙を見出せばすぐさまとることが出来るのだが二人はあえてそれをしない。取ろうとすれば大きな隙ができるというのもあるが、この勝負(けんか)から逃げたように思われるのが気に食わなかった。

 しかし、傍から見ればこの喧嘩、ヴィルヘルムの方が圧倒的に優位である。日本人としては比較的身長の高い刑士郎もヴィルヘルムより極僅かだが身長は下回るが、それに加えてヴィルヘルムは(リーチ)が長い。それにより決め手を持たない刑士郎は対抗する術が無くじわじわと削られていく。

 

「チマチマした手で調子に乗れるたぁ、ずいぶん小さい胆だなオイ」

「吠えてろよ犬ころが」

 

 加えて挑発にも応じない冷静さ。こと戦闘と言う面に関しては軍人をも上回る精神だろう。もっとも、この場にはそれ以上の精神の持ち主がさらに数名いるのだが。

 

 休む暇なく繰り出される槍のような刺突の雨、体力は徐々に削られ段々と各所に掠り始めていた。刑士郎も出される腕を掴もうとするがそれが隙となり一撃をもらいかねない。

この現状を一人で打破するのは難しいと刑士郎は判断したが、そう都合よく助けてくれる人間がいるとも思わない。防御に徹して対抗策を考える中、刑士郎の視線は一角を見据えていた

 

 

※※※

 

 

 所変わって鮮魚コーナー。そこでは宗次郎とマキナが闘っていた。

 本来乱戦の多い剣術に一騎打ちの剣道、その二つを持ち武術の腕前もある宗次郎は覇吐や刑士郎たちの中でも古流武術を習う紫織に次いでの勝率を誇る宗次郎が劣勢を強いられている。剣術とはいえど武芸の天才と、学校教師。これが本物の戦場であったり街角でのケンカであるならば宗次郎の圧倒的な勝利だがこの場においてはそうではない。

 

 マキナの拳の連発が宗次郎の身体を何度も掠めていく。巨体に見合わぬ拳速は回避しづらく、その破壊力はとても防ぎきれるものではない。

 対して宗次郎の反撃は微々たるもの。割り箸を竹刀に見立てた戦法は見た目からは考えられない力を伴う宗次郎の戦闘法だがそれを以てしてもマキナにはダメージを与えられない。筋肉の薄い関節部分に、時には人体急所と呼ばれるところを挿すが全く効果が無い。

 宗次郎が専門とする相手は基本軽量の者だが、弁当争奪というこの場は部活帰りの者も多く重量級の者も少なくない。その為宗次郎もそう言った相手に対する戦闘法は備えているが、悪い事にこれまでの相手とマキナでは格が違った。

 

「グウ、このっ!」

 

 ついにその凶拳が宗次郎を捕える。幸いなことに当たった部位は右肘、素早く体を捩じり拳撃を逸らすが今の一撃だけで宗次郎の体力はかなり落とされていた。

 

 体力が落ちた今、マキナの攻撃を躱し続けれる自信が無い。玉砕覚悟で行こうと思ったとき、

 

「宗次郎変われ!」

「え?」

 

 背後から聞きなれた声がして振り返ってみれば背後から見慣れぬ白髪の男がその長い腕でこちらを狙っていた。

 

「あぶなっ!?」

 

 刑士郎に声を掛けられ程よく弛緩していた身体はヴィルヘルムの突きを容易く避け、空いた体に突きを叩きつける。振り返れば刑士郎も拳を受けながらもカウンターを顎に決めていた。

 

「てめぇ……この野郎……」

「何を勘違いしていたのか知らねえがここは戦場、乱戦だぜ」

 

 怨念に近いものを込めたヴィルヘルムの視線を無視して宗次郎に向き直る。普段から共にいる仲で共闘したからと言っても確実に安心できるわけではない。狙っている弁当が被っているなら両雄共に闘うことは辞さない。

 

「俺が狙ってんのは【銀シャケの塩焼き弁当】だが」

「僕は【青椒肉絲弁当】ですが、なければ銀シャケですね」

「そうか」

 

 弁当・総菜コーナーで戦っていた刑士郎は、宗次郎の狙っていた弁当が残っていないことを知っていた。

 

「銀シャケ狙うってんなら倒していくが」

「どうするかって? 決まってるじゃないですか」

 

 逡巡の迷いもなく両者再び構える。疲れ切った宗次郎にマキナの一撃を浴びた刑士郎、どちらが勝ってもおかしくない勝負が始まる。

 

 

 ※※※ *推奨BGM【吐菩加身依美多女】

 

 

「俺の、勝ちだ!!」

「ごめん、マリィ……」

 

 金髪巨乳のエロ本片手に勝ち誇る覇吐と地に伏す蓮。多くのギャラリーは覇吐の事を非難の目で見ていたがそこは変態、薔薇のエフェクトが出てると錯覚するくらい華麗にスルー。

 

「さて、と弁当弁当。最近取れてなかったからし、ここ美味いって話だし楽しみだなぁ」

 

 ウキウキ気分で弁当・総菜コーナーに足を進める覇吐、その弁当コーナーの前に宗次郎に肩を貸し弁当を持った刑士郎がいた。

 

「お、刑士郎か。宗次郎はその様子だと取れなかったのか。ちなみにその弁当は。あとこの前俺放置したのに何で宗次郎は背負ってんの?」

「お前も残ったのか。これは銀シャケだ。あとこいつは軽い(約56キロ)」

 

 そう言い弁当を見せてくる刑士郎。容器の中には綺麗なオレンジ色の大きなシャケの切り身が美味しそうに三石転がっていた。

 

「そうか。ならもう片方の【しじみ出汁ごはん弁当】は残ってるな」

 

 傍から見てわかるほどに心躍らす覇吐。

 

「…………あー、その、だな…………」 *推奨BGM【幸魂奇魂守給幸給】

 

 しかしそれを見た刑士郎は言いにくそうに口ごもる。

 

「あん? どうしたんだよ。最初に四個で二個取られて、お前が一個、俺一個じゃん。問題ないだろ」

 

 そう言い身を乗り出して弁当・総菜コーナーを見る。しかしそこには弁当はなく、惣菜が二つ残っているだけだった。

 

「……………………どゆこと?」

「…………」

 

 振り返れば親指でレジを指す刑士郎が。指し示す方向に目をやれば。

 

「ありがとうございました~」

 

 ホクホク顔で店を出るガンコナー、山乃森喨がいた。

 

「な、なんじゃそりゃー!! ここにきてこの展開ってありかよそんなん!?」

 

 吠えて項垂れる覇吐、無理もないだろう。この頃散々な目に合ってきてようやく弁当を手に入れたと思ったら思わぬ伏兵に掻っ攫われたのだから。

 

「まあ、その、なんだ。…………一匹やるよ」

「…………ありがとよ」

 

 結局覇吐が宗次郎の分も含めて二個の総菜とどん兵衛を買いここ【ツォアル】の争奪戦は幕を下ろす。

 

~勝者~

・天音 織 【海老沢山海鮮丼】230円

・御門 龍明 【青椒肉絲弁当】240円

・山乃森 喨 【しじみ出汁ごはん弁当】190円

・刑士郎 【銀シャケの塩焼き弁当】210円

 

 

 




ちょくちょく出ている天根くんですが彼は以前私が練っていたベン・トー二次創作の主人公です。
時々設定がでてはメモに書いているんですが…………まあ放置してしまっているんですがスレの時に掘り出しまして……。
これからもちょくちょく出していこうかと思いますがどうですかね。
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