Quietum die   作:裸エプロン閣下

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最近ベン・トー要素少なくなってきたな……。
今度戦わせてみるか。


俺の日常と邪魔するバカども

「全く……人が来てみたら二人して何をやっているのだ。特にカール」

「私としてはごく自然な成り行きだったのだがね。そもそも私はマルグリットを嫁に出す気も婿を取る気もないから掛け合うつもりもなかったのだよ。そこに僅かなりとも希望の光を出したのだから褒められることはあっても罵倒されることはないはずだが」

「卿に勝てるものなどこの世にいるわけないだろう。私ですら引き分けになるのだからな。それに、卿の女神ももう幼子ではない。自分の道位、選ばせてやるのが親の度量だろう」

「度量? そんなものは一万年と二千年前から捨てている」

「……はぁ」

「いてて……」

「大丈夫、蓮」

 先ほどまで俺とカール(敬語を使う気はない。お義父さんと呼ぶ気も毛頭ない)は殴り合い(と言っても一方的に俺が殴られているだけだったが)をしていたがラインハルトの仲介(と言う名の暴力)によってようやく収まり卓袱台を挟んでの討論となったのだが本題の方は纏まる気配すら見えない。どうでもいいがドイツ人×3に卓袱台と言うのがシュールでしょうがない。

 

「カール、卿の女神に捧げる愛情の重さは知っているが、それも過ぎれば鎖だぞ。自由に羽ばたく鳥を手元に置くために羽をもぎるつもりか」

「その時はそこら一帯の土地を買うだけだ」

「……はぁ……」

 ラインハルト、本日二度目のため息入りました。実際俺も吐きたくもなる。普通なら戯言で終わるこのセリフもこの男なら出来そうなので一笑に付すことも出来ない。正直このやり取りも何回しただろう。

 

「兎に角、俺とマリィは……その……愛し、あってんだから……邪魔すんなよ」

「声が小さい。もう一度」

 殴り倒してやりたい心境にかられるがそんなことをしたらまた振出しに戻るだけなので隣で赤くなっているマリィを見て癒されよう。この水銀中毒に呑まれたら最後だ。

 

「いくら卿が反対したところであの二人の恋路を阻むことなどできん。潔く引くべきではないか?」

「は、知らぬ知らぬ聞こえぬ見えん。私にかかれば過去に遡って歴史を修正するなど朝飯前だ」

「卿なら本気でできそうだから怖いな」

 そう言い三度目のため息を吐くラインハルトからはいつもの輝かしさが僅かに鈍くなっている気がした。俺とマリィの事でこんなにも迷惑をかけてすまないとは思っているが、正直俺はもうリタイアだ。言葉の通じない相手とはこういうのを言うんだな……。しかし昔言語の通じない時はどういう風に会話したのだろう。現代ですらこうなのだからもっと苦労したのではないのだろうか……。

 

 

「カールよ、どうしても認めぬか」

「ああ認めぬよ。たとえありとあらゆるものが認めようとこの私だけは認めるわけにはいかん」

「そうか……ならばもはや何も語らん」

 溜息を吐いて瞑目するラインハルト。

 諦めるのかよ――そう言いかけたがそれは早とちりだと知る。ため息と思ったのは深呼吸であり、開いた目からは獅子のような闘争の色が濃く在る。

 

 

「行くがいい卿ら、カールは私が説得(くっぷく)させて見せよう」

「ほう、大きく出たな、ハイドリヒ」

 それを聞いてカールは立ち上がる。彼にもやはり闘争の色がある。

 

「いいのかよ……」

「安心しろ、私は負けん」

 きっぱりと言い捨てる。ちらりと見せてきた横顔にはやる気が溢れている。俺が引かなくてもいずれ始めるだろう、ならば今のうちに引くことにしよう。そう決めてマリィの手を引いて俺の家へ帰ることにする。

 

「勝てよ、ラインハルト!」

 

 

 ※※※

 

 

「……これでいいのか、カール」

 闘争の色は濃く残っているが声は先ほどと違い穏やかになるラインハルト。相対するクラフトも闘争の色はそのまま、しかし穏やかに語り始めた。

 

「ああ、これで私は二人の敵となり、マルグリットは私に依存しなくなる」

 マルグリットは幼いころからクラフトと一緒に、しかも箱入り同然の扱いだったため彼に依存、と言うほどではないが頼り切っているのは確かだ。だが今回のこと、己の愛するものを頑なに認めないというクラフトにはさすがに反発するだろう。今はまだ小さな亀裂だが、いずれそれは彼女を縛る鎖を砕いてくれるだろう。

 

「まあ、」「だからと言って」

「「久々の友との喧嘩だ。楽しまずにはいられないな」」

 

 

 ※※※

 

 

 家から出てすぐ走り、半ばあたりでマリィが疲れて来た為足を止めて振り返る。幸いカールは追いかけてきていない。周囲を見渡して誰もいないことを確認してそこでようやく緊張を解く。

 

「ごめんね蓮、こんなことになっちゃって」

「マリィが謝る必要はないだろ。とりあえず挨拶はしたし……遊びに行こうか」

「……うん///」

さて、どこへ行こうか。もうすぐクリスマスも近いから街中それらしいムードが漂っているから急きょのデートでも場所に困ることはないだろう。

 

「行こう、マリィ」

 手を伸ばすとおどおどしながらもしっかりと手を握り返してくれる。それが嬉しくて思わず笑みが浮かんでしまう。今更恥ずかしがることではないはずなのに、一緒に生きようと決めた後だからか、こんな当たり前のことが恥ずかしくなる。顔を見られない為に顔をそむけて並んで歩きだす。隣から笑い声が聞こえるあたりばれてるんだろうな……。

 

 

 ※※※

 

 

「いい具合に青春してんな奴等」

「だねぇ。それに比べてあたしたち何やってんの」

「んなもん尾行に決まってんじゃねえか恵梨依」

「そうじゃないよ。何で年頃の男女二人が青春しずに青春してるカップル追っ駆けなきゃいけないのよ」

「なに、それ遠まわしに俺と青春したいってことか」

「ないわーそれはないわー」

「うっわ、冷てぇ女」

 都心部に向かっていく蓮とマリィ、二人を尾行する司狼と本城恵梨依。どちらも享楽的な二人である為犯罪意識やうしろめたさと言ったものは全くと言っていいほど持っていない。もっとも、そうであるからこそ、尾行の技術が高いのだが。

 

「ていうかあんた蓮君に女の子たちの世話頼まれてなかったっけ。あれどうしたのよ」

「8時にカラオケ来い、っつといたからそれまでに戻ればいい。どうせ明日明後日休みだし二日くらいオールすりゃ傷心程度忘れるだろ」

「あんた女舐めすぎでしょ」

 二日オールと言う時点でいろいろぶっ飛んでいるがそれで傷心が治ると思っている当たり末期だと思う恵梨依。一度脳細胞を調べたほうがいいと本気で考えていた。

 

「大丈夫だって。なんつったってメンツは尻尾垂れてるバカスミ、根暗アホタルにミス電波の先輩に黒魔術部のロリババだぜ。大方バカスミとアホタルはこれで吹っ切るだろうし、先輩にロリババは寝取り上等だろ。ほらこれで万事解決だぜ」

「……できてないように感じるんだけど。特に後半」

「気の所為だって、ほらこっち見ろよ。すっげぇ楽しいことになってんぜ」

 どれ、と視線を向けた先では蓮とマリィの二人に加えて可笑しな服装をした二人の男が絡んでいた。絡んできている二人の服装には色や季節感など統一性と言うのが見られない奇抜な恰好、俗にいう『自称:時代の流行先取りファッション』という奴だ。当然ながらそんな見るものを不快にさせるような格好が逸ることなど未来永劫永遠にない。

 

「あんな恰好で女の子にモテると思ってるとか、あの二人もバカ丸出しだね」

「だな。ところで『も』ってことは俺も入ってんのか」

「今更何言ってんの」

「まあいいや。それよりも、これからもっと楽しくなりそうだぜ」

 そう言い指を指す先には彼の学校の同学年のドイツ人、ヴィルヘルムとその姉――どちらかと言うと妹に見える――ヘルガがいた。舞い上がる姉、だるそうな弟。どちらも方向性は違えど周りの事は目に入っておらずそのまま行けば先取りファッション(爆)な二人とぶつかってしまうだろう。

 そして舞い上がっている姉の腕が先取り(ryの片割れに当たってしまう。それは当たったというより触れたといったほうが近いくらいの力だったが先(ryにはそれでも良かったようだ。

 

「なんじゃわれぇ! 痛ぇなゴラァ! 腕折れてしもうたやんけ!どうしてくれるんじゃ!」

「コンガキャ! 相棒の腕が折れちまったやないか! どう落とし前つけてくれるんじゃあ! あぁ!?」

 蓮たちから視線を移しヘルガへ。二人はカルシウム取ったことある? と聞きたくなるほどの切れっぷりを発揮した。

 

「あっちゃあ……運がないね。あの子」

「だな」

「いやだなって、助けなくていいの?」

 未だに喚き続ける二人。言語まで時代を先取り(笑)したのかもう人の言葉を喋っていない。あの声を猿の群れの中で再生させてもきっと違和感と言うものはないだろう。

 

「大丈夫だっての。なんつったってあそこには姉ちゃん大好きツンデレシスコンのヴィルヘルムがいるからな」

 

 

 ※※※

 

 

「オイ、おまえら……」

マリィとのデート中に絡んできたバカ野郎二人は今は十二歳くらいの少女に喚き散らしていた。正直なところ関わりたくない人種(だと思う。猿が逃げたというニュースは聞いてないし)だがさすがに放置して帰るのも後味が悪いのでどうにかしようと思ったら。

 

「うるせぇんだよ! ピーチクパーチクよぉ!!」

 突如としてバカAのエイリアン染みた言葉が止まった。少女と一緒にいた白髪の男がバカAの顔面を掴んで持ち上げたからだ。

 

「さっきから聞いてりゃ意味分かんねえ理屈と言語でこっちの時間浪費させやがって。俺はさっさと帰りてぇんだよ、なんだその言葉は? 人の言葉喋れるようになってから社会に来いよこの劣等が!」

 そう言い近くの路地にバカAを投げ捨てた。百七十センチはある男を投げる腕力に怯んだのか逃げようとするバカB。しかし白髪の男は彼の腕をおもむろに掴んで、

 

「んだこりゃ? てめぇさっき腕折れたとか言ってやがったよな。じゃあ今のこれはなんなんだよ? あぁ!!」

 近くの電柱に叩き付けた。彼の背中からゴキ、と言う音が静まり返った周囲に響いたがだからなんだという話だ。そんなことよりも今は目の前の男だ。

 バカ二人が消えてようやく俺はその白髪の男の風貌を見ることが出来た。そして俺はそいつを見るのは初めてではない。

 

「お前、カズィクルベイか!?」

「あ? ツァラトゥストラか。てめぇなんでこんなところにいる」

 カズィクル・ベイ。圧倒的な速度と威力を持った掌底で敵を吹き飛ばすその姿から串刺し公と称される狼がそこにいた。ちなみにツァラトゥストラは俺の二つ名だ。無論狼としての。

 

「いや、こんなところもなにも、自分が暮らす街だろ。いてもいいだろ」

「………………」

 なんら躓きのない正論に黙るベイ。こいつ、頭弱いんだな。

 

「そういやてめぇ今日は女と合うっつってたな」

「……なんでお前が知ってんだよ」

「聞いたんだよ、遊佐に」

「司狼が? どうやって?」

 確かに司狼とベイはよく協力することがある。当然狼の中でも名のある俺を警戒するのは別に分からなくもないが何故そこまで詳しい事を聞いているのだろう。

 

「なんでもなにも、てめぇも遊佐も同じ学校で同じ学年だろ。てめぇののろけが廊下にも聞こえてたんだよ」

 なん……だと……っ!

 

「お前、高校通ってんのかよ……」

「……オイコラどういう意味だそりゃあ」

「いや……その……だって……なぁ」

「なにがなぁ、だこの糞野郎。喧嘩売ってんなら買うぞ」

 マズい、さすがに失礼だったか。てかマリィとデートの予定だったのに何でこんなことになってんだよちくしょう。

 

「ヴィル、やめなさいそんなこと。速く行きましょう」

「……チ」

 剣呑だった空気が先ほど絡まれていた彼女の一言でもとに戻る。腹の虫の加護もないのに勝てる気はさすがになかったから助かった。

 

「うちのヴィルがご迷惑をおかけしました」

「あ、その俺も悪かった……ので謝る必要はありませんよ」

 姉か妹か迷ったが呼び捨てにしている当たり姉、俺より年上だろうとみて言葉づかいを正す。少なくとも司狼よりは社交性はあるつもりだ。

 二、三言言葉を交わすと二人は去っていく。カールとケンカしたり、バカに絡まれたり、ケンカしそうになったり、今日は災難が多いな……。

 

「ゴメンマリィ、こんなことになっちゃって」

 せっかくのデートだというのに全くそれらしいことが出来なかった。今から再開する気分でもなく申し訳ない気分になってきた。

 

「ううん、いいの。蓮と一緒にいるだけで私は楽しいから」

 でもそんな不甲斐ない俺をマリィは慈愛の笑みで迎えてくれる。本当に、俺にはもったいない女だと思う。

 

「……ありがとうマリィ」

「どういたしまして」

 いつの間にか離れていた手を再び握り、街へ繰り出す。せめて近場でいい所には寄っていこう。それを償いにするつもりはないが、せめて綺麗なものを見せたかった。

 




積みゲーは積むものではない。消化するものだ。

てなわけで少々遅れました。
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