同じく、変態の次郎坊 作:イチャパラで優勝していくわね
「オレ達は音隠れの忍だよな」
「あぁ?当たり前だろーが。脳みそまで腐ったのかよ、変態デブ」
次郎坊のいきなりの疑問提示に、かわいそーなモノを見るような目で多由也は見つめた。
「よせよ…照れるじゃないかね」
「なんで照れてんだよ!わけわかんねーんだよ、ゲスデブ!キメェ!マジでキメェ!」
「多由也…無駄ぜよ」
「罵れば罵る程、次郎坊の術中にハマるっていい加減学習しやがれ」
鬼童丸と左近が、いつもの凸凹コンビに突っ込みをいれていた。
二人の言った通りで、次郎坊は多由也に罵声を浴びるたびに、「へへっ」と嬉しそうに鼻の下を擦ってちょっと照れるワンパク少年ぶっていた。
それを見てさらに多由也が「うがぁー!きっめぇーーーンだよ!!!」とさらなる罵声を浴びせる。
そしてまた次郎坊は興奮する。
いつもの悪循環の完成である。
「いい加減にしないか、二人とも」
こうやって君麻呂が止めるまで、次郎坊と多由也の騒動は続いた。
五人衆筆頭だけあって、マイペース過ぎる次郎坊も君麻呂の言う事は常に尊重していたから騒動はピタリと収まる。
「それで…何が言いたいんだ、次郎坊」
君麻呂が次郎坊に話の続きを促すと、次郎坊は「うむ…」と言って至極真面目な顔となる。
「オレ達は音の忍だ。額当てだって音符の印だ」
そうだな、まぁそうぜよ、と仲間達も口々に同意する。
「だというのに、音を武器に使うのは五人衆の中で多由也だけだ。こいつは由々しき問題だとオレは思う」
「思わない。話は終わりだ」
いい加減、次郎坊のノリにも慣れてきた君麻呂の対応は、次郎坊対策として花丸だった。
彼の話に付き合っていると自然とおかしな事になるのはいつもの事。
悪即斬(悪しき話は即座にぶった斬る)の精神であった。
「ドスやザクに、音忍たるお株を奪われている…音の五人衆なんて謳われておきながら恥ずかしいと思わないのか、君麻呂」
「思わない。話は終わった」
「そう先を焦ってはいけない。お前は物事をあせりすぎる」
さすがの君麻呂もイラッとする物言いだった。
しかし君麻呂も次郎坊には一目置いているから、溜息をつきながら仕方無しに話に乗ってやる。
「…で、どうしたいんだ?お前は」
「オレの肉遁は、ご存知の通り肉を操る。で、だ。肉を激しく細かく振動させる音波攻撃の必殺技を考案したんだ」
そこまで言われてようやく五人衆達の目の色も変わった。
「そこでだ…大蛇丸様の木ノ葉崩しまでまだまだ時間があるし…オレの技の実験に付き合ってくれないか」
「いや、時間ねーぜよ。オレ達は、明日…木ノ葉隠れでやる中忍試験本選に、風影に化けた大蛇丸様に付いて一緒に行くんだからよ」
「そうだぜ…だからもう今日はオレは寝る…。明日はS級難度相当のミッションなんだからよぉ」
「わけわかんねーこと言ってないで、さっさと風呂入って寝ろ、くせーんだよデブ」
「僕もまだ体が本調子じゃない。せっかくの木ノ葉崩しにも、大事を取って参加するなと大蛇丸様はおっしゃった…無念だよ。だから、君の練習相手にはなれない。次郎坊…君は、左近達が言ったようにさっさと寝て体調を整えるべきだ。それこそが、大蛇丸様の御為になるのだから」
「…」
皆にそうまで言われて、ようやく次郎坊もシュン…となって諦めた。
肩を落としているせいか、筋肉と贅肉とで構成された巨体がこじんまりと見えた。
五人衆は、それぞれが明日の大任務に備えて散っていく。
「おい」
「ン…?」
とぼとぼと自室へ帰ろうとした次郎坊に、背後から投げかけられる声。
その声は、次郎坊が一番好きな、アルトな声質の勝ち気な少女の声であった。
「多由也」
皆が去っていく中、この少女は引き返してきてくれたらしかった。
「音の技だっつーなら、ウチの専門だからな…。ちょっとだけなら見てやるよ」
「た、多由也」
「勘違いすンじゃねーぞ!?いいか!!癪だけどてめーは強ぇからな。最近、ウチが五人衆で最弱っつー噂までちらほら出てきやがって、ウチはむかっ腹たってんだよ!ちょっと前までデブが一番のウスノロだったくせに…。だから、急成長したデブヤローから少しでも、強くなる秘訣を分捕るっつー算段なんだよ!わかってるよな!?だから絶対勘違いすんなよ!あとウチに5m以内に近づくな!触んな!でないと、てめぇの音の技見てやんねー!」
全ては自分が強くなる為だと、多由也はそう怒鳴りながらも次郎坊の音の必殺技を見てくれるらしい。
「ツ、ツンデレ…っ」
「っ!?な、泣くな!きめえ!」
本場のツンデレに、次郎坊が感動の涙を流す。
「いいからさっさとしろよ!ウチだってさっさと寝てーんだよ!オラ!早く(技を)出せ!」
「ぬふぅ」
何やらそれっぽいシーンで、S嬢に責められているような台詞回し。次郎坊の暴れん坊が暴れ出す!
多由也の言葉責めだけで次郎坊は頂きに登ったのだ。恐るべし、多由也の言葉責めの妙技。まさに毒舌地獄。
「な、なんだ…?なんか…イカ臭ぇ…?」
「よし、いいか多由也。これは空腹時に腹が鳴る理論を応用した技で、かつて伝説の忍者絵巻物語に記された技でもある。その名も忍法〝胃の笛の術〟」
「うわ!急に冷静になんな!」
言葉責めで満足した次郎坊は賢者モードになっていた。
イカ臭くなると賢者となる。これは世のすべての男に共通する事実であったが、多由也はまだそれを知らない。ある意味でピュアであった。
ちなみに、胃の笛の術とは某ラブコメ忍者漫画に登場する、女性の衣服だけを破砕する音波技である。
女性特有のチャクラの性質を感知しすると、その衣服の固有振動数を解析して粉砕するという、次郎坊の熱心過ぎる原作再現には恐れ入るばかりだった。
ちなみに、以前、音隠れの食堂にて中忍3人を粉砕したのはこの技であり、普通に残虐無惨な技としても機能する。
「っっ!!!!こ、こここ、この…っっ!エロチンヤローーー!!!!」
技を披露され、服が砕け散った瞬間の多由也の秘部を隠して恥じらう姿は、普段のガサツな毒舌少女からのギャップも相まって凄まじい破壊力であったという。
キレた多由也に殴られたのは言うまでもない。
ちなみにどうでも良い話だが、〝胃の笛の術〟は字面がカッコ悪いという事で、多由也に〝威嚢笛の術〟に改名された。
木ノ葉崩しが始まったと思ったら終わった。
次郎坊のデビュー戦は、結界を張っただけで終わった。
君麻呂も寛解しつつあるし、次郎坊も大幅に腕を上げて、それに影響を受けてか残る3人も(あのデブに負けたくねー)と一層の努力をした結果、全員良い感じに仕上がっていたのに…だ。
理由は簡単で、結局のところ大蛇丸の木ノ葉崩しとは、〝猿飛先生〟への執着による。
だから、一対一の対決に持ち込み、彼を凌駕する場面を猿飛自らに見せつけて…自分を捨てて波風ミナトを選んだ猿飛への意趣返しをしてやる…そういう意志が多分に含まれていた。
故に次郎坊には、本来の運命の通りに四紫炎陣を組ませる事しかしなかったし、君麻呂という最大のエースカードも、彼自身の体調も考慮して温存するつもりもあったのだろうが、結局は使用せず単体で挑み…見事に腕を封印されていた。次郎坊、心の中で大爆笑である。
(まぁ良かったのかもしれない。ここで大蛇丸様が不自由な身になったお陰で、部下の重要度が増すからな。即ち…オレと多由也の価値が上がるのだ)
そうなれば、今後も簡単には切り捨てられないだろう。
大蛇丸が弱体化した今こそ、彼へ忠義を示す時だと次郎坊は思う。その忠義が打算とかを結構な比率で混ぜ込んだものだとしても。
「ぐ、ウゥゥ…!腕が、焼けるようだわ…!ゥゥウ…ッ、作戦は、ここまでよ…!結界はもういい…帰るわ…!」
保護者同伴の、楽しい音忍ハイキング終了のお知らせが宣言された。
ついこの間まで上機嫌だった大蛇丸は、現在絶賛不機嫌だった。
腕の治療をしてもらおうと、綱手にも交渉を仕掛けたがあえなく撃沈し、さらに不機嫌は加速している。
この不機嫌ボーナスタイムは、サスケを手に入れるまでは続くと次郎坊は知っている。
それまでは、以前の大蛇丸にあった寛容の精神が激減しているので接し方には気をつけよう。
そんなこんなで、サスケ強奪を命令された五人は木ノ葉に潜入していた。
身を潜めつつ、遠くからサスケを発見し、カカシとくっちゃべっている彼を監視していた。
「アレ並みの忍にウロウロされるとやりづれーからよ。少し待つぜよ」
「お前らみたいなビチグソヤロー共じゃダメでも、ウチならやれる」
「ふん、どうかねェ…。二人いりゃ十分首チョンパで、バーラバラだけどよォ」
「いちいち口出しするな、ゲスチンヤローが」
「…チィ………」
「多由也…女の子がそういう言葉をあんまり――」
「くせーよ、デブ!あとそれ以上近づくな!豚くせー体臭伝染ンだろーがっ」
「ぬっ」
「なにが、ぬっ、だっ!お、おい…ほんとやめろ、マジで近づくなよ!」
「…隙あり――」
「っ、ぁ、ン!?だ、だからァ…!やめろって!あ、ちょっ、…っ、ほんと、やめ、ろッ…!どこでも盛んじゃねー…っ、この…エ、エロチンヤロぉ、っ、他の奴が…いる時に、やんなっ…」
「ほぉ…つまりは二人きりなら存分にやっていいというお墨付――」
うわ、始まったぞ、恒例行事だ。鬼童丸と左近は、知らんぷりして距離をとり、そして呆れ顔で白けた雰囲気を作りながらも、居心地が悪そうにする…というのがテンプレートであった。
最近は多由也もなんだかんだで次郎坊に引きずり込まれている感満載であったから、鬼童丸と左近にはこの二人が乳繰り合っているようにして見えない。
そんな中、きちんとストッパーとして、綱紀粛正を行う音の五人衆中の風紀委員長がいた。
頼れる我らがリーダー、復活の君麻呂だ。
「いい加減にしろ、次郎坊…多由也」
「いい加減にしておこう。すまん君麻呂」
「ぅ…く…な、なんでウチまで怒られるんだよ!ウチ、被害者じゃねーか!?」
そう言われても、赤い顔でツリ目をしっとりと潤ませ、温度の高い喘ぎ声を漏らしていた様は、君麻呂からすれば十分に共犯者であった。
大蛇丸様から託された重要任務直前だというのに、そんな白けた空気をまといながらも、音の五人衆はきっちり仕事をこなしていく。
隙をついてサスケと無事接触。
何者だ、とサスケに問われて、
「音の五人衆…地の君麻呂」
「同じく、東門の鬼童丸」
「同じく、変態の次郎坊」
「同じく、正常な左近」
「同じく、北門の多由也」
流暢な自己紹介が決まっていた。
が、一拍置いてから多由也ががなり立て始めた。
「おい、今なんかおかしかったぞ!てめー次郎坊!」
続けて鬼童丸も非難の声をあげた。
「せっかくの決めシーンが台無しぜよ!テメェ、左近もふざけやがって!」
慌てて左近は弁明した。
「チィ…!落ち着け、テメェら…オレは真面目にやろうとしていた。が…次郎坊につられちまったんだ…いきなり変態なんていうからよ!」
「テメェのどこが正常ぜよ!次郎坊と同じでアブノーマルだろうが」
「どこがだ…!ちょっとばかり骨をバキバキ折りながらヤッてみてぇって言っただけだろーが!オレがアブノーマルだったらテメェもだぜ、鬼童丸!」
「次郎坊と左近に比べりゃかわいいもんぜよ…チャクラ糸で拘束プレイしてぇなんてよ!」
次郎坊に思考を汚染されていた。思わぬ性癖暴露合戦となってしまったが、彼らとて14歳の思春期真っ盛り。エロトークを誘発してくる微笑みデブが仲間にいれば、思春期のエロは抑えられない男子達であった。
サスケが、心の奥で(第7班みてーな空気だな)と、白けつつも微笑ましいものを見るような目になってしまったり、君麻呂が殺気を放ちはじめて四人を制したりでくだらぬ一騒動があった。
ごほんっ、と咳払いで場を仕切り直した君麻呂は、改めてサスケを挑発しつつ勧誘する。
先程までのフザけた空気が消え失せ、一気に冷たく殺伐としたものへと変化し、その落差が逆にサスケにとっては脅威的に映る。
まずは左近が、サスケを煽りに煽って、骨バッキバキにしてドレミファソラシド奏でてやり、そしてとどめに君麻呂がサスケの攻撃をカスリもさせず、指一本で圧倒するという屈辱の完敗を味わわせてやり、そしてそれを腕組んだままくつろいだ様子でニヤニヤと眺める鬼童丸、次郎坊、多由也という構図は、エリート一族うちは最後の一人というプライドを持つサスケからすると、屈辱で屈辱でそれはもう素敵な憎悪に顔を歪ませて闇落ちした。
その後、合流してきたサスケに醒心丸を飲ませ、四人の結界術・四黒霧陣にて仮死状態にして桶に封印。
意気揚々と音隠れへと出発する寸前に、ささいなアクシデントが起きた。
付近に居合わせた、任務帰りの特別上忍の小隊が音の五人衆を感知したのだ。
「…その桶の中はなんだ?」
木ノ葉の忍、ゲンマが臨戦態勢のまま問うた。
君麻呂達は
(おかしい…この場面は……特別上忍の二人、ゲンマさんとライドウさんが来る場面では?)
だが眼の前には、ゲンマ、ライドウ、イワシ…そしてあの綱手の付き人・シズネまでがいた。
特別上忍2人、中忍1人、そして伝説の三忍の直弟子たる上忍1人。
本来の運命より腕を上げていた音の五人衆でさえ、全く油断ならぬ相手だ。
「気配の隠し方が巧妙だったから、念の為4人で来てよかったです」
「あぁ。オレとライドウだけなら確実に殺られていたな」
なるほどそういう事か、と次郎坊は納得できた。
音の五人衆が腕を上げてしまっていたが為に、警戒心をワンランク挙げたシズネ小隊は全員で来てしまったらしい。
「上忍クラス4人相手じゃ…ちとキツいぜよ」
「これは厄介だな…全員、〝状態2〟でいくぞ」
「チィ…急いでるってのによ」
五人衆vsシズネ小隊の戦いが始まる。
シズネ小隊は忍務明けなのもあり、形勢は圧倒的に五人衆のものだったが、シズネは医療忍術に長けており、そして大人の忍である彼女らは実戦経験が豊富だ。
才能も実力も音の五人衆が上だったが、経験の差によってシズネに粘られる。
「予想以上に粘るものだ…だが、これで終わりだ」
「く…つ、強すぎる…!あの時…綱手様と戦っていた大蛇丸の付き人と同じくらい…いや、あれ以上に…強い!」
「それはそうでしょう。僕は…単純な戦闘力なら、カブト先生以上だ………―――唐松の舞」
「…っ!」
シズネ撃破。
そして、こちらの方も終わりそうであった。
「肉遁ズームパンチ!!そして……胃の笛の術!!」
「ぐはっ!」
「ぐわああ!!」
伸びる巨腕に盛大に殴りぬかれたゲンマは宙を舞い、声帯と胃袋の振動をシンクロさせ威力を倍増させるサウンドビーム…胃の笛の術をくらったライドウは服を木っ端微塵にされて肉体も損傷し吹き飛んだ。
恥ずかしい&大ダメージという屈辱の技…それが胃の笛の術だった。
本来なら、シズネ相手に使うべき胃の笛の術だが、次郎坊としては多由也以外の衣服破壊は、眼福ではあろうが一種の浮気のような意識がある。
妙なところで律儀な次郎坊だった。
ちなみに、たたみイワシは真っ先にやられて脱落していた。
これにてシズネ小隊全員撃破は成った。
「思ったより時間をくったな…それに、状態2を使うと、その後にどうしても反動がくる。休憩が必要だ」
「仕方ねーよ。手を抜けばこちらがやられる可能性だってあったしな」
音の五人衆は棺桶を抱え直し、現場から離れての小休止を余儀なくされた。
この出来事に忌々しそうな君麻呂達だったが、1人、次郎坊だけはワクワクしていた。
(君麻呂がいる時点で、スムーズに事が進みすぎて、危うくオレとチョウジとのライバル対決が流れるところだったぜ……だが、ありがたいことにシズネさん達のお陰で、運命通りに戦えそうだ)
そんな事を思っていると、
「おい、デブ」
急に多由也に話しかけられた。
いつも次郎坊から一方的に絡みにいっているのに、珍しいこともあるものである。
「テメェ、さっき〝胃の笛の術〟って言ってたろ」
「…いや、ちゃんと多由也に改名された方で――」
「黙れ。息がくせー。…イントネーションもちげェし、ウチが教えた方は〝いのぶえのじゅつ〟…。テメェが言ったのは〝いのふえのじゅつ〟……濁るんだよ。〝威嚢笛の術〟だ…〝威・嚢・笛・の・術!〟…分かったのかよ、このウスノロヤロー。…ったく、せっかくウチが考えてやったのに。…あと、肉遁ズームパンチってなんだ。そっちもダセェ。マジでセンス終わってるんだよ、このデブが」
いつの間にか次郎坊は正座させられていた。
岩場に座った多由也は、足を組みながら延々と次郎坊に説教…というよりはいちゃもんを付けていたが、次郎坊は既に気が気でない。
というのも、地面に正座している次郎坊から見ると、岩場に座って足を組んでいる多由也の脚は…スパッツに包まれて黒く艶めかしいテカリを醸す肉付きのよい太ももは真正面であった。
しかも脚を組み替える度に、前垂れが捲れてスパッツに包まれた魅惑の三角コーナーが覗く。
無論、これは下着ではなく、立派なアウターである服なわけであるが、これはスパッツぞ。魅惑の着衣ぞ。脚線美全だしであった。
次郎坊の暴れん棒は暴れん坊になりつつあった。
「―――だからウチがいつも言ってンだろーが。テメェのセンス終わってんだよ。これからは、ウチが考えた膨重崩拳に改名だ。分かってんのか、悪臭デブヤロー…―――って、な、なんでそこでっかくしてやがる!?」
そこ。
多由也の視線が釘付けになった
もっこりしていた。
いくら男のイカ臭さを理解せぬ毒舌ピュアガールである多由也でも、そこがもっこりする意味は分かっている。
「ふふふ…多由也の…スパッツ。前垂れに隠された魅惑の三角州…ふふふ」
ジュルリと、次郎坊が
「…っ」
いつもは全く気にもしないスパッツ姿だが、このように次郎坊は時偶、多由也のスパッツ姿に興奮する。
こうなってしまうと、多由也にしても途端に恥ずかしくなって、まるでスカートで下着を隠すような、そんな仕草がつい出てしまった。
そしてそれを見た次郎坊はまた興奮する。
「見んな!変態エロデブ!」
「くくく…多由也のスパッツ!」
正座している次郎坊の顔を、何度も足蹴にして蹴りまくる多由也だが、その度に次郎坊の興奮レベルは上がっていく。
悪循環の完成である。
蹴られて興奮する。
その度、スパッツに包まれた太もも肉に挟まれし聖域がムワァっと主張する。ぴったりスパッツに、任務中なのもあいまって、実に匂い立ちそうな桃源郷がそこにある。
次郎坊、暴れん棒、暴れん坊。OH、Yeah。
「……またやってるぜよ」
「チィ…いちゃこらしやがって」
「へっ…次郎坊のやつ、多由也のどこがいいんだか。確かに顔はちょいとばかし良いが…女はやっぱおっとりタレ目で、真面目に見えてむっつりタイプぜよ」
「くはっ!わかってねぇ…わかってねぇな、鬼童丸。やっぱり至高は、全身包帯グールグル巻いてるような満身創痍薄幸型無口美少女だぜェ?傷つき、苦悶に喘ぐその姿…引き毟りてぇし守りたいじゃねぇの。右近もそうだそうだって言ってるぜ」
最近、君麻呂を除く4人はこんな感じであった。
君麻呂が遠くを見るような、そんな表情となる。
(こいつら…強くなったのはいいが………とんだ変態共になってしまったぞ。…大蛇丸様…僕はどうすれば)
「清純真面目むっつりを攻略して、一枚また一枚と理性を引っ剥がして攻略していく!それが女を口説くってやつぜよ!」
「ちげー!女は、ボッコボコにされて全身の骨からドレミファソラシド奏でてる時が一番キレーなんだよ!」
鬼童丸と左近が、互いの襟を掴み合っている姿。
気持ち悪いなら離れて無視でもすればよいのに、鼻息荒い次郎坊を、真っ赤な顔で何度も罵倒し足蹴にし、いつまでも相手にしている多由也。
そんな4人を、君麻呂はどこか達観した表情で眺める事しかできなかった。
追いつかれた。
シズネ小隊戦の疲れを癒やしている間に、見事に帳尻を合わせたかのように本来の運命に近い感じと相成った。
そこからあれよあれよと戦いは流れ、シカマルの影縛りは咄嗟に次郎坊が原作知識を利用して、火遁を吹き照明代わりとして影を消す。
からの、即座に土遁結界・土牢堂無を発動してナルト達を閉じ込める。
「…こいつらはオレが貰っていいか?腹が減ってたんだ」
「フッ…さっさと食い終われよ。僕達は先に行く」
次郎坊を残し、残る4人が桶を担ぎ場を速やかに去っていく……その中で、多由也だけが一瞬止まり、
「おいデブ、さっさと追いつけよ。桶を担ぐのは、パワーしか取り柄のねェ、てめーの役目なんだからな」
とだけ言って飛び去った。
次郎坊、歓喜の涙である。
今晩は、あれだけでご飯4杯は食べられるだろう。
多由也の応援もあったことだし、このままナルト達を全滅させてかっこいいとこを見せたいところだったが、いくら次郎坊が幾らかレベルアップしているとはいえ、さすがにそんな都合良くはいかないだろう。なにせ相手は
次郎坊はそう考えていた。
ナルト達を土のドームに閉じ込め、遠慮気味にチャクラ吸収もしつつのんびりと打ち破られるのを待った。
ドーム内から、シカマルが次郎坊の位置を確認しようと色々と喋りかけてきて、次郎坊もそれにのってあーだこーだと問答を繰り返してやって、次郎坊としてはドームは破られるつもり満々だった。
が、変。
明らかに変。
いつまでたっても揺るがぬドーム。
静かになっていくナルト達。
「…?おい、どうした?」
思わず、心配して声をかけてしまう。
「く、そ……ゼェ、ゼェ……か、硬すぎる…!」
「ダメだ…チャクラも…どんどん吸われちまって…っ」
「すまねぇ、みんな…オレの計算違いだった……弱点を突いても…コイツの結界は、か、硬すぎる…!」
「う、うぅ…こんな格上の奴らだったなんて。シ、シカマル…こんなの…僕らだけで本当に、勝てるの…かな…」
「くっそぉぉ…!シカマル…何かいいアイデアないのかってばよ!?」
ドーム内の声に耳を澄ますと、なんとも力無く掠れた声の会話がぼそぼそ聞こえてきた。
なんと、ドームのチャクラが薄い場所を狙って、ちゃんと攻撃していたようだ。
だが強くなりすぎた次郎坊の土遁結界は、今の新米中忍シカマルや、九尾を使いこなせないナルト達では如何ともし難かったらしい。
やべぇ。
次郎坊は焦った。
このままじゃ完封してしまう。
ナルト達、もしや原作より弱いのか。
オレは大したことしてないが、何らかのバタフライエフェクトでナルト達に弱体化イベントでも起きたのか。
次郎坊は無い知恵を絞って色々考察したが、今となっては意味のないことだった。
「あー!いかん!いかんなぁ!この術は、維持できる時間が短いんだよなー!」
次郎坊は棒読みで叫びつつ、土遁結界を解除。
ナルト達を解放する。
土壁が消え失せ、次郎坊の視界に写ったのは、死屍累々と倒れ込む少年達。
やべぇ。
本日二回目、次郎坊はそう思った。
「………よ、よくぞオレの結界忍術を破った」
やぶってねーよ。
シカマルは薄れる意識でそう突っ込んでいた。
眼の前の強敵は、明らかに自分から結界を解いた。
あのまま自分達を閉じ込めて、チャクラを吸い尽くして殺せたはずなのにだ。
シカマルの明敏な頭脳でいくら考えても、腑に落ちる答えはなかなかでない。
「…どうした。さぁ立て!オレの結界を破ったんだぞ!外に出られりゃ…お前達だってオレを倒せるかもしれん」
次郎坊に言われて、ふらふらと気合で立ち上がる木ノ葉下忍御一行。
満身創痍である。
「……なんか、スマン。あー…そうだ!兵糧丸でも食ったらどうだ。そう…これは、ハンデだぜ。お前ら如き雑魚達には、こんぐらいハンデやらねーとな」
次郎坊は申し訳無さそうにしていた。
シカマルの優秀な頭脳は、ハテナマークで埋め尽くされていく。
本当に、あの冷酷な大蛇丸の側近達なのだろうか…と思うほどに、眼の前の巨漢からは非情なる殺気が伝わってこない。寧ろ、アスマに稽古を付けてもらっている時のような、格上からの指導時のような包容力さえ感じた。
ちらりと仲間を見ると、どうもネジもそう思っているらしかった。
「く、そ…!こんな奴が、あと4人もいるってのか…!…でも、オレはここで…立ち止まってられねぇんだ!やってやるってばよ!!」
「ま、まてナルト!」
瞳をキツネ目に変じさせたナルトが、ガルルっ、と突っ込んでくる。
次郎坊はどこか安心したような表情で、そして小者力士を撃ち迎える横綱かのようなどっしり感でナルトに構えていた。
「さぁ来い!」
「オラァァぁぁぁ!!」
走りながらボンッ、と影分身を出して、四方八方からナルトは攻め立てた。
「ほぉ…いいぞ、お前が九尾の人柱力か……うむ」
うむ、と言ってその後の言葉を飲み込んだ次郎坊だが、思わずサイン下さいとか口走りそうだった。なにせ相手はナルトだ。NARUTOの主人公だ。次郎坊はNARUTOが好きなのだから、当たり前のようにナルトは好きだ。
「…おお、影分身の陰からか…考えてるな」
そしてそれに紛れて、キバとネジが攻めてくる。
それを次郎坊は、自慢の防御力やタフネスを活かすまでもなく、スピードと体術でいなして躱す。
(く…あの野郎、あんなデカブツのくせに、見た目よりずっと速い…!だが、ナルト達が頑張ってくれたお陰で――)
即興とはいえ、シカマルの指示通りのフォーメーションを仲間達は忠実に実行する。
先程、「まてナルト」と慌てたようにシカマルが言ったのはブラフである。
独断専行で先走った仲間…という体での攻撃を実行し、連携などまるでとれないと相手に錯覚させたい。そういうシカマルの計算だった。
「よし…!捉えたぜ!影縛り…!!」
「ぬぐ…!?おお、これが影縛りの感覚か…」
(っ!こいつ…影縛りしてるってのに…あんな軽い表情で体を動かそうと!っ…ぐ、ぅ…!マジかよ!?もっとチャクラ練らねーと、マジに破られそうだ!!)
「…っ、余裕ぶっこけるのも今のうちだぜ…!やれ!チョウジ!」
「うん!くらえ…!!肉弾戦車!!!」
倍加し、高速回転の肉の弾丸となったチョウジが無防備丸出しとなった次郎坊へと突っ込んだ。
吹き飛ぶ次郎坊。
地面に何度も打ち付けられ、ゴロゴロと転がっていくさなか…次郎坊は思った。
(…ヤバいぞ。…まったく、痛くない。肉遁でいなすまでもなく…。なんてこった)
土煙の中、ゆらり、と立ち上がった次郎坊。
そのまま思いついたように膝をついて、アイテテッ、という顔を作ってみせて、そのままやられたフリでもしようか。そう思っていたのに。
「だ、ダメだ、シカマル!手応えがなかった!僕の肉弾戦車は…効いてない!」
次郎坊に直接突っ込んだチョウジには分かってしまったらしい。
次郎坊の圧倒的な肉の鎧。筋肉。骨の軋む感覚。
それらから、自分の一撃がまるで応えていないのは丸わかりだった。
「いや、き、きいたぞ!」
「…クソ。テメェの下手なブラフにゃ引っかからねぇよ」
傷んだフリをして、こちらの油断を誘うつもりだ。シカマルのそういう判断である。
(…あれだけ強ェーのに、少しの油断もねぇ。オレ達の油断さえ誘う念の入りよう…クソっ…なんてめんどくせー相手だ)
シカマルは焦る。
全員でかかっても、倒せるビジョンが浮かばぬ相手だ。
こんな奴をいつまでも相手していては、サスケ奪還という主目的を達成できない。
ならば、ここは誰かの命を捨てさせて足止めをすべきなのか。そういう思考すら頭をよぎるくらいには、シカマルは追い詰められ始めていた。
(こいつは明らかに上忍レベルだ…。奴ら、いきなり最強の手札を切ったとも考えられる。運搬役よりも足止めにより強力な手駒を使うのは合理的だ。…けど――)
先程の、敵達の別れ際のやり取りから推測して、恐らくリーダーはあの白髪頭の色男だ。
シカマルのように、貧弱ながらもリーダーの適正有りと見られて班長を務める場合もあるが、白髪男の悠然とした態度から見ても、明らかに実力の伴うリーダーという奴と思えた。
(少なくとも、眼の前の巨漢クラスがもう一人…。最悪だと、先行して逃げた奴ら全員がこのレベル…)
そう考えるのが自然だった。
敵1人に、全員で当たらねばとても勝てない。
非情なる捨て駒作戦を実行したとしても、足止めさえ出来るか怪しくなってきた。
これは明らかに新米中忍と下忍達とで何とかなるレベルではないと、シカマルのよく回る頭脳は訴えかけていた。
全員でかかれば…1人ずつ分断出来たとしたら、その勝負自体は何とかなるとは思う。ネジもいるのだし、肉弾戦車が効かぬような屈強な奴でも、点穴攻撃は有効だろう。しかしそれではとても時間が足りない。確実に、火の国の国境を越えられてしまう。
サスケ奪還という主目的を鑑みれば、詰んでいた。
シカマルは、血が滲むほどに唇を噛み締める。
(こっちだけ飛車角落ちの気分だぜ……とてもじゃないが、オレ達には敵さんの飛車角と競り合える駒がない)
上忍レベルが、最低でも1人欲しい。
アスマか、ガイか、高望みをすればカカシか自来也、火影本人。
ないものねだりであった。
(詰み、か)
そう思った時だ。
「情けない顔してるじゃないか」
風にのって、空から凛とした声がするりと降りてきた。
どうやら、シカマルの願いを聞きつけて、天からご褒美が舞い降りたらしかった。
シカマルは、一瞬呆気に取られて、そして苦虫を噛み潰したような顔となって、空から来た少女へと言った。
「…裏切り者の砂と仲直りしたってのは聞いてたが……、こうも早く手の平を返すとはな…」
「私らだって好き好んで木ノ葉を襲撃したわけじゃない…。命令だった。今、ここにいるのと同じようにな」
「そうかよ……けど、砂の同盟はおまえだけを派遣してくれたわけか?あの人形使いとか、おっかねぇ砂ヤローがいねーけど…?」
「なんだよ、私だけじゃ不満なのかよ。……カンクロウと我愛羅は、バキ先生と一緒に一足先に向かっているよ。…目的は、先行組なんだろ?」
あの砂のバケモノが同盟相手となれば、これ程心強いことはない。
この風使いの美少女もだ。同様に心強い。
しかし、それでもシカマルの思考から不安は消えやしなかった。
相手もまた、間違いなくバケモノ揃いなのだから。