同じく、変態の次郎坊   作:イチャパラで優勝していくわね

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ナンバー5 死んだと思ったらもう生き返ったんですけど…!!

悲報。

おうちに帰ったら大蛇丸、死んでいた。

 

これには音の五人衆もびっくりである。次郎坊も思わず〝多由也のお墨付きセクハラ仕放題タイム〟をゲットした時のような、バタフライチョウジに殴り殺された時のようなアヘアヘ顔を晒して驚いていた。両手をきちんと前に添えてひょえーのポーズまで付けていた。つまりは知る人ぞ知る二階堂盛義のポーズであり、次郎坊のアヘ顔とは極めてシナジーが高く、最近は持ち芸の一つとして確立しつつあった。

大蛇丸細胞を移植して、左腕がほぼ全て大蛇丸化しているカブトからの詳細な報告と、そして監視カメラの映像もあったから間違いなくサスケに乗っ取り返されて死んだのは確定である。

こうなった理由の一つには、大蛇丸が〝変態音の五人衆〟(君麻呂、多由也は巻き添え)とサスケとの接触による悪影響を嫌がり、サスケと二人っきりのランデブー♡を望んだせい…というのもあったので、いつぞやの木ノ葉崩しの時と同じで結構自業自得なわけだが…。

だがそれはそれとして……君麻呂、キレた!!

 

「サスケ様………いや、うちはサスケを……………殺す―――」

 

正直に言うと、君麻呂以外の4人は「あー、死んじまったかー」という程度のものだったが、その一方で「どーせ生き返る算段つけてるだろ」とも確信していた。

伊達に親衛隊紛いの側近を何年もやっていない。

 

「死亡というよりは冬眠…ちょっとした充電期間だな。どうせ生き返るだろうし…何故めんどくせー復讐を…?」

 

次郎坊が言うと、他の3人はウンウンと頷いていたが、君麻呂は額に青筋を立てながら今にも「なんだァ、てめェ…」と言いそうな程の威圧感を次郎坊とその他3名へ向ける。

次郎坊達は即座に言った。

 

「やっぱ復讐だよな」

 

「たりめーよォ!大蛇丸様には大恩があるぜよ。ここでやらにゃー男がすたるってもんぜよ」

 

「チィ……マジでめんど―――いや、まァ…やられっぱなしじゃ音の五人衆の名折れだな。賛成だ…兄貴もそうだそうだと言っているぜ!」

 

「大蛇丸様は…男だらけの中で、同性の意見を聞ける貴重な存在だった…ウチは、マジで弔い合戦してやりてー」

 

同性…?

その瞬間は、音の五人衆中男共の意見が合致した。

 

「音隠れは大蛇丸様のワンマンの隠れ里だ。そして、音の五人衆と僕は立場の違いがあるだけで、そこに権力の上下関係はない。君達が復讐の旅に出るというなら止めはしないよ…好きにするといい。僕だって独自にやりたい事があるしね」

 

カブトとしては、音の五人衆が派手に動くと、暁や木ノ葉にも音隠れ残党が狙われやすくなると予想できるから、余り表沙汰で動き回ってほしくはないようだった。

だが、君麻呂がカブトとはまた違ったベクトルで、大蛇丸様の狂信者なのは理解している。

制御ができぬのなら、最初から干渉は最低限にするつもりのカブトだった。

大蛇丸が沈黙した今、カブトも音の五人衆も、それぞれがそれぞれのやり方で蛇の意志を全うすればいい。互いの意志を尊重しつつ、大蛇丸の駒同士で最低限の協力関係を保証する約束を交わし別れるのであった。

 

というわけで、音の五人衆は(君麻呂によって半ば強制的に)復讐の旅へと仲良く出発した。

カブトからの情報提供によって、サスケが既に水月を仲間にし、他のアジトに潜伏している有能な仲間を集める旅に出たのも分かっていた。

そしてそれは、北のアジトの重吾と、南のアジトの香燐であろうともカブトは予測した。

この辺の出来事は、カブトの予測など聞かずとも…当たり前だが次郎坊は知っていた。知っていたが、それを有効に使って先回りしてどうこうとかうんぬんとか別にするつもりはなかった。

何故なら、もう放っておいた方がラストバトルへ向けて結果的に丸く収まるから…というのを知っているからだ。

かえって次郎坊が掻き回す事の方がこれから先はリスクが高くなる。

些細な出来事、偶然の重なり合いが、奇跡的な大団円へと向かっていくのだから、別に英雄になったりラスボスを勝たせたりしたいわけでもない次郎坊は、本来の運命を書き換える魅力を感じない。

次郎坊がやりたい事などしょせん、美味しいチャクラを食べること…それに面白い敵と戦うこと…最後に、これが最も重要だが、多由也とイチャパラし続ける―― という事だけなのだから。

木ノ葉に妙に優しくしているのも、出来る範囲で好感を持てる見知った人物を助けているだけのことと、後は将来的にさらなる文化的な経済大国となる火の国で、多由也と新婚生活を送りたいという大変自分勝手で都合の良い妄想的将来設計の為である。ようは好感度稼ぎだった。

 

()()()()()次郎坊にとっては当然の事であるが、サスケの気配を追えばその予測は大当たりだ。

そして香燐は既にサスケに付き従い、南のアジトはもぬけの殻。

続いて北のアジト。

そこでは、大蛇丸死亡の噂を聞きつけた実験体達が大暴れしたようで、皆が惨殺されていた。

だがここで少しだけ、次郎坊の知識とは違うことが起きた。

重吾がサスケと対立し、戦闘に発展した結果重傷を負って倒れていたのだ。どうやら、君麻呂がまだ存命である事から、サスケの誘いを断ったのが原因らしい。

 

「重吾…まだ生きているとは、やはり君は丈夫だな」

 

「う、ぐ…き、君麻呂…!お前も…元気そうで良かった…!」

 

「左近、重吾の治療を頼めるか」

 

おう任せろ、と左近が重吾へと駆け寄って診てやり、この3年間で会得した医療忍術と双魔の攻との複合術で、重傷を負っていた重吾を見る見るうちに回復させていった。

左近は、見ての通りの性格でとても医療忍者に向かない男なのだが、皮肉な事にこの複合医療忍術は伝説の三忍・綱手にも劣らぬ程のハイレベルなものへと至っていた。

今も、死にかけの重傷だった重吾を、もはや治療ではなく〝再生〟させていた。

 

「…ありがとう、左近…助かった」

 

「ククク…別にいいぜ。礼は、オレに包帯が似合う幸薄そうなめちゃんこカワイイ女を紹介する事で勘弁してやるよォ」

 

「それに他の五人衆も…久しぶりだな、みんな。誰も欠けてなくて何よりだ」

 

「おい重吾てめー、流すんじゃねーぞ…」

 

左近流ジョークをあっさり流すことから見ても分かるとおり、重吾と音の五人衆はそこそこ盛んに交流しており、特にこの5人は重吾の殺人衝動からの暴走を完封できるのもあって重吾は懐いていた。中でも、君麻呂には別格で懐いている。

 

「重吾…僕達は裏切り者のサスケ討伐の旅をしている。君はどうする?」

 

君麻呂にそう言われてしまえば、元々五人衆が好きな重吾だ。このパーティーに彼が参加しない理由はない。

大蛇丸が死んだ今、ここにとどまっていても実験はないし、実験体とサスケ一行の破壊行為で北アジトもボロボロだ。ならば、君麻呂を筆頭に、五人衆と一緒に行動した方が、重吾の暴走への懸念も解決できる。

重吾は二つ返事で了承した。

 

「ふふ…君麻呂、それに皆…君達と一緒に旅が出来るなんて…嬉しいよ。まさかこんな日が来るなんてな」

 

「それはこちらもだよ、重吾。僕も、旅が出来る程に病から解放されるなんて…昔は思ってもみなかった」

 

「フッフッフッ…そこはオレの悪性チャクラ吸収のお陰でもある。何せ未だに君麻呂のまっずい悪性チャクラを吸い取ってんだからな!泣いて感謝してもいいぞ、君麻呂、そして重吾!さァ…オレのでっかい胸板にいつでも飛び込んでこい。そして泣くが良い。オレの贅肉の中で」

 

「さて…では、このままサスケを追撃する。行くぞ、みんな」

 

君麻呂、次郎坊流ジョークを完全無視であった。

音の五人衆は全員がアクの強いジョークを多用する為に、最近は皆がこうやって面倒くさい言動を流す事が流行っていた。

次郎坊はしょんぼりしている左近の隣でしょんぼりした。

 

「重吾も合流して、これでオレらは〝音の六人衆〟ぜよ」

 

「…まァ、正確に言やァ左近の中には右近がいっから、音の七人衆だとは思うけどな」

 

「そいつはダメぜよ、多由也…忍刀七人衆と被っちまう」

 

ここで次郎坊がポンッと手を打つ。

 

「じゃあ〝七人隊〟はどうだ」

 

「七人隊?」

 

「うむ…七人隊とは、はるか昔、東国で活動していた伝説の傭兵集団であり…その力は一人一人が一騎当千。七人集まれば、一国をさえ落とすと言われた。リーダーの蛮骨はそりゃあもう強くて、四魂のかけらを与えられたとはいえこいつら本当に人間?強すぎない?ってぐらいの――」

 

「また次郎坊の与太話がでたぜよ。んな話、聞ーたことねー。どこ情報だっつーの…忍者なら忍者らしくソースだすぜよ、ソース」

 

「なら〝七人ミサキ〟はどうだ」

 

次郎坊は懐から中濃ソースを取り出しつつ次の名をあげた。発言しつつ、次郎坊と鬼童丸は男同士のグータッチをしていたが、誰もがその光景を無視していた。

七人ミサキとは、次郎坊の前世知識にある妖怪の名だが、この世界にも同名の伝説は存在し、因果なもので伝説の内容も殆ど一緒である。

 

「見た者は死んじまう七人の妖魔伝説か……ククク、確かに敵として出会ったらぶっ殺されるの確定なウチらにぴったしじゃねーか。たまには童貞デブヤローもマシな事言いやがる」

 

少し油断すると、すぐに次郎坊へ飛んでくる多由也の毒舌。多由也からの毒舌など、次郎坊にとっては栄養源に過ぎないと、今まで共に育った多由也は理解しきっているはずなのに、彼女のサガなのかつい口走ってしまうのだ。或いは、これもわざとなのか。それは神のみぞ知る。

だからこそ、「これはフリなのだろうか。やっていいってこと?そうなの?」とばかりに、次郎坊も隙あらば多由也へとセクハラをするのだ。

これも全て因果応報なのだ。

 

「隙あり――」

 

「ちょッ!?な、何してやがるこのデブ―――っ、ぁン…っ、て、てめー!この…っ、あぅッ」

 

「インガオホー…オレの好きな言葉です。多由也がオレを挑発するからイケないのだ…」

 

「は、はァ!?誰も挑発なんて…っ、あっ、コラっ、そこ――っ、ン~~~ッ、っっ、ぁ、そこ…摘む、なァ…っ、エロチンヤロー…が…っ」

 

不用意に次郎坊に毒舌を吐くと、次郎坊はそのまま興奮して暴れん棒は暴れん坊モードへと移行する事が稀によくある。気をつけよう。

ただし多由也限定で起きる現象である。

 

「ハハハ、次郎坊と多由也は相変わらずだな。安心したよ」

 

「さて…発情してる猿二匹は放っておこう。出発するぞ」

 

「あ?オレらの改名問題はどーするんぜよ、君麻呂」

 

「僕らには、大蛇丸様から頂いた〝五人衆〟という名がある。それが全てだ」

 

「なにィ!?じゃ、じゃあオレらは〝七人揃って五人衆!〟が持ちネタになっちまうぜェ!!いーのかよそれで、君麻呂ォ!」

 

今しがたの発言は左近であり、その内容の遠因はこれまた次郎坊に由来する。

彼が長年、音の五人衆達にあることないこと(前世知識)吹き込み続けた成果であった。

君麻呂はイラッとした。

 

「この話は終わりだ。いいな?」

 

「「わかったぜ(よ)」」

 

鬼童丸と左近は礼儀正しく頷いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楽しい楽しい音の五人衆(7人)の旅は続いた。

そしてとある場所に辿り着いた時それは起きた。

超クソデカな光の柱が出現し、轟音が響いた。

その地域一帯を揺るがすような大爆発が起きたのである。

 

「おおお…あれが太陽の塔…!まさに爆発芸術!惜しい男を亡くしたぜ………デイダラ…お前と戦いたかった…」

 

使徒が殲滅されたのか、20世紀少年なのか、それともタローマンなのか、とばかりの巨大な爆発光に1人黙祷を捧げている次郎坊を放っておいて、君麻呂達は駆け出そうとした。

次郎坊が「デイダラ」、「惜しい男を亡くした」と呟いたのだから、間違いなくそこにはデイダラがいて、そして死んだのだ。

そして暁のデイダラを殺せるような男はサスケで間違いない。

デイダラが〝大蛇丸〟と〝うちは兄弟〟に執着しているのは、次郎坊からの情報で既に君麻呂は知っている。

次郎坊の情報網は、時に大蛇丸やカブトでさえ舌を巻くほどで、時には予言のような事さえ言ってそれをピタリと当てさえする。

というよりも、次郎坊は普通に「一種の予言だ」と公言していた。

なんでも〝自然物からチャクラを吸うと、自然達が知っている万物の流れをある程度知れる〟とかそれらしい事を言っていたが、それがどこまで本当なのか怪しいものだと大蛇丸も笑っていたものだ。

とにかく…時偶非常に胡散臭くなる次郎坊だが、これまで一度も仲間を嵌めて危険にさらすような嘘をついたことはなく、信頼できる情報ではあった。

 

だから一秒でも早く駆け出して、サスケを捕らえたかったのだ。

だが、黙祷を捧げていた次郎坊が、駆け出し始めていた君麻呂を制止した。

 

「焦るな、君麻呂。サスケを追う必要はない」

 

「…なに?」

 

「君麻呂…お前は、大蛇丸様からマンダとの口寄せ契約を許されて実行していたな?………サスケは、あの爆発から身を守るため、マンダの口の中に逃れている」

 

「!!」

 

それからの動きはまさに目にも止まらぬ速さであった。

次の瞬間には、大きな大きな煙とともに巨大なウワバミがそこに横たわっていた。

大蛇丸が誇った、わがまま大蛇・マンダであった。

だが、マンダが自慢にしていた立派な巨体とキレイな鱗は無惨に焼け焦げて、肉が焼けて削げて抉れ、重大な火傷は傷口から臓腑を焼いて、長年大蛇丸と共に威名を誇っていた大蛇は無惨な死を遂げようとしていた。

 

「…マンダの瞳に刻まれていた紋様…なるほど、写輪眼でマンダを操ったか………大蛇丸様一のお気に入りのあのマンダを…下賤な瞳で…!」

 

憎悪込めた声を漏らしながら、君麻呂は一気にマンダの腹を骨で裂いた。

 

「が、ああああ!!!クソガキ、共ォ…!!こ、このオレ様、をォォォォ…!貴様ら如きのガキが、ガキ風情、がァァァ…!写輪眼、で、オレを操り…、今度は…ほ、骨で……ゆるさ、ねェ…ゆる、さ…ね…ェ……―――」

 

マンダが呻き、怨嗟の声をあげながら最後の力でのたうち回ったが、それも一瞬のことだった。大蛇丸の手さえ煩わせた偉大なる大蛇は、サスケと君麻呂という大蛇丸の生涯で一二を争う弟子の手で呆気ない幕切れを遂げることとなった。

 

「…!?き、君麻呂…マンダはまだ息があった…!まさか、てめーがトドメ刺しちまうとはよォ…」

 

「マンダは確かに大蛇丸様がもっとも愛した蛇だが…もうそれは些細な問題だ。そうでしょう?…何故なら、マンダの中には大蛇丸様を苦しめた愚か者が潜んでいるんだ。ならば……マンダの腹を割いて確かめねば。大蛇丸様の仇を殺すためなら…マンダだって喜んで腹を割かれるだろう………そのために命を落とす事になっても」

 

左近は、どうせ自分が治療するのだろうと思って駆け寄っていたが、君麻呂の突然の凶行にさすがにギョッとし、そして君麻呂の狂気の一端に触れて、改めて君麻呂という男の恐ろしさを味わった。

どうせマンダの死は避けられない。ならば喜んで死ね。大蛇丸様のために。

それが君麻呂の思想の全てであり、それを前にしてはマンダの生死などもはや二の次。

君麻呂は微かなチャクラを感知して、それを目指して一心不乱にマンダの腸を引っ掻き回し、漁り、そしてマンダの返り血を全身に浴びながら一点を目指して骨の槍を突き刺した。

 

「――――いた」

 

君麻呂は口を弧にして、底冷えするような声で呟いてた。

君麻呂の骨の切先が、腹に潜んでいた忍を炙り出す。

 

「…ぐ、ぅ…!お、音の…五人衆…か…!」

 

骨に右肩を貫かれ、そのまま腹からまろびでてきたのはうちはサスケその人。

もはやチャクラも体力も使い切った、哀れな手負いの獣であった。

サスケの指先がピクリと動いた瞬間、鬼童丸がすかさず動く。

 

「忍法・蜘蛛糸縛り!!」

 

「っ…!」

 

チャクラ糸がサスケの指先までも縛り、ほぼ同時に左近が動いてサスケの首を掴んでそこから細胞へ浸透していく。

 

「ぐ、う…!」

 

「おっと、無駄な抵抗だなァ…サスケ様よォ。クククク、あぁそうか、もうてめーに様付けしなくていーんだったな。オレの同化はてめーのまぶたにまで達したぜ。その物騒なお目々は閉じておきましょーねェ?サスケェ…クックックッ」

 

サスケも必死の抵抗を試みるが、マンダから引き擦りだされた今、水月の口寄せによって仲間の元に召喚されることも期待できず、この場に直ぐ様水月や香燐が来る可能性もほぼゼロなのはサスケにも分かっていた。

とすれば、宛になどしたくなかったが、自分を追跡しているはずの木ノ葉忍共であるが、そもそもそれを宛にする時点で、己は詰んでいるとサスケは知っていた。

 

「…うちはサスケ………大蛇丸様の栄誉ある器に選ばれておきながらの弑逆…決して許せるものではない。…大蛇丸様を殺した罪……君の命で償ってもらう。だが、簡単には殺さない。君が、〝もう殺してくれ〟と泣いて懇願するまで…生き地獄を味わわせてあげよう」

 

サスケを見下ろす君麻呂の瞳に宿るは、憎悪、怒り、失望、そして嫉妬だ。

自分という器を蹴落として、大蛇丸に選ばれたというのに…その栄光を足蹴にし、大蛇丸からの〝愛〟に唾を吐き、大恩ある師でもあった主・大蛇丸を裏切って殺すとは何事だ。

君麻呂の価値観にとって、サスケの行為は何一つ理解できぬ愚行であった。

そんな荒ぶる感情をありありと浮かべる君麻呂を嘲るようにサスケは薄く笑う。

 

「くく…大蛇丸のやつが、それだけ見る目が無かったという事さ……。オレの…実力も見抜けず、無様にもオレに逆に喰われた」

 

「そのなりで良くもまァそんだけ吠えられるな…さすがはサスケ。大蛇丸様に目をかけられていただけはある」

 

次郎坊のサスケを僅かでも称賛するかのような物言いに、君麻呂は目線だけで次郎坊を咎めたが、次郎坊はどこ吹く風であった。

君麻呂は鼻を鳴らすと、そのままサスケの瞳へ骨の剣の剣先を突きつけた。

 

「まずは、君ご自慢の眼球を抉り潰してやろう」

 

しかしいくら強がってみせても、サスケの表情に狂おしい程の悔しさが滲んだのを君麻呂は見逃さない。

サスケの目的がイタチへの復讐というのは、君麻呂でさえ充分に知る情報だ。

木ノ葉の同胞達を裏切ってでも遂げたかった志が、半ばで散るというのはさぞ悔しかろう…と思うと君麻呂の心を愉悦の波が幾度も押し寄せた。

 

「……さァ、右目からだ―――」

 

君麻呂が言うのに合わせて、サスケの瞼の支配権を持つ左近がゆっくりと瞳を開陳した。

もはや写輪眼を発動する余力もなく、黒曜石のような瞳がただそこにあるのみだった。

 

「や、め…ろッ」

 

「君がどんな悲鳴をあげるのか…楽しみだ」

 

つぷ…と、骨が眼球に触れて、ゆっくりとゆっくりと浅くめり込みだす。

 

「ッ…!やめ、ろォ…!!」

 

その瞬間、君麻呂の腕を次郎坊が掴み、押し留めた。

 

「なんのつもりだ」

 

「まァ少し待ってくれ。…サスケから大蛇丸様を呼び出そう。全てはそれからだ」

 

「…なに?」

 

思いがけぬ言葉だった。

どういう事だ、と君麻呂が次郎坊に詰め寄る。

 

「だから…サスケ討伐の旅に出る前言っただろう。大蛇丸様は死んでない。どーせ生き返る算段をつけている…って。―――サスケの呪印の中に…まだ大蛇丸様は存在している」

 

その言葉を聞いた瞬間、君麻呂は笑顔になり、逆に鬼童丸と左近は「ゲェ!」という顔になり、そして多由也は「うわ…ウチらの呪印の中にもいんのかァ?それはちょっと…キメーな…」と言いつつ呪印をバッチィ汚れのように擦っていた。

 

「今はサスケのチャクラに抑え込まれているが……――ほれ、この通り…!」

 

「う、ぐ…ぐぁあ…ッ!?」

 

サスケから、残り僅かなチャクラさえ吸い取っていく次郎坊。

その途端、サスケはチャクラ枯渇以外の苦しみを感じ取って呻き出す。

 

「お、おお!このチャクラは!!」

 

君麻呂は歓喜の表情だ。

 

 

 

――ずりゅりゅっ

 

 

 

っとサスケの呪印から白蛇が飛び出して、その白蛇の口からさらに大蛇丸が飛び出した。

キモいマトリョーシカであった。

なんか色々と粘液に塗れているし。

少し生理的に嫌な光景であった。

だがしかし誰がなんと言おうと、我らが大蛇丸の貴重な復活シーンである。

 

「復ッ活ッ!大蛇丸様復活ッッ…!大蛇丸様復活ッッ!!」

 

「――クククク…!」

 

「復活ッッ!!大蛇丸様復活ッッッ!!!!」

 

「アハハハーーーーッ!!蘇ったわよォーー!…――って、次郎坊、ちょっとうるさいわね。黙りなさい、殺すわよ」

 

次郎坊の趣味というか、ノリというものを大蛇丸は良く理解していた。なんだかんだで優秀な弟子には甘いところがあるから、「黙れ」とか「殺す」とか言っててもさして本気ではないし、次郎坊も引き際を弁えてピタリと静かになって膝をついて主を出迎えた。

それを迎えるは1人万雷の拍手を送る君麻呂と、それを真似して拍手しまくる重吾。まばらな拍手の鬼童丸、左近。ちょっと引いている多由也。

サスケだけは、驚天動地といった雰囲気で己の首から生えてきた大蛇丸に度肝を抜かれていた。信じられぬ…という顔で眼の前の大蛇丸を見ていた。

大蛇丸は不敵な笑みを浮かべながら、自分を復活させるべく蠢動していた弟子兼部下達を眺め回し、「さて――」と呟いた。

 

「……次郎坊、さすがね。私がここに潜み、復活の機会を狙っていたのを分かっていたなんて。ホント…スケベで変態じゃなかったら、私の(モノ)にしても良かったのだけれど」

 

「光栄です、大蛇丸様。……しかし、それはちとご遠慮致しとうございます。器になってしまうと、多由也と共に在る、というオレの誓いに背いてしまいますので」

 

「あら、妬けるじゃない…フフフ」

 

「おい…バ、バカ…!大蛇丸様に…なんてだいそれた事言いやがる、このデブ!」

 

大蛇丸の次期器という誉を蹴るかのような次郎坊の発言に、君麻呂はギロリと眼を向けて、そして多由也もやや慌てて、そして少し頬を赤めながら次郎坊を叱責するも、当の次郎坊はまるで大蛇丸のように不敵に微笑むだけだった。

大蛇丸相手に尊敬の念を顕にしていようと、些かの怯えもみせないのが次郎坊という弟子だった。

時偶、こうやってただの変態ではない豪胆な姿を見せてきて、それが大蛇丸は好きだった。恐らく、きっと他の五人衆も大蛇丸と同じ想いだろう。そして多由也も。…いや、恐らくは多由也はそれ以上だろう。大蛇丸の見立てではもうすっかり次郎坊に参っているに違いなかった。

ただ、多由也はこうも思っているに違いない。 ――その剛毅で胆力に富む男らしい姿を、自分にも見せろ。自分にも向けろ…と。なぜいつもドスケベな面しか見せないんだ、と。そんなことまで大蛇丸には手に取るように分かっていた。伊達に、ドスケベな旧友(自来也)と、満更でもないくせに素直になれぬ旧友(綱手)と一緒に、長年三忍などやってきていない。

 

「クックック…多由也、そんな事言っておいて、あなた…随分嬉しそうよ?次郎坊が私のアプローチを断って、自分を選んだ事がそんなに嬉しいかしら?」

 

「ぁ…い、いえ、そんな…!そんな……事は、決して……っ、ウチは…その…」

 

珍しく多由也がしどろもどろとなる。

大蛇丸が、多由也を次郎坊の事でからかうと、こういう珍しい光景が拝めるのだが、実を言うとこういう面は大蛇丸の前ではたまに出ていた。

多由也を相手に、〝同性〟としての人格で、こういった方面の相談やらにのっていたのは、どうやら本当らしい。

大蛇丸は愛弟子達と言葉を交わし、目線を交えてから、最後にゆっくりとサスケの方を見る。そしてニヤリと笑った。

 

「お、大蛇、丸…!」

 

「ちょっとぶりね、サスケ君。ふふふふ…あなたのことはずっと、あなたの中から見ていたわよ。……あなたの中、暖かかったわァ」

 

じゅるり、と長いべろをベロンベロンさせながら大蛇丸が言うと変態発言にしか聞こえなかったが、こう見えてこの大蛇丸は冷静そのもので…、例えば、『待ちに待った念願の復活したてで眼の前に弱ったイタチがいる』とかの状況でもない限りは変なテンションで隙だらけで考え無しに暴れたりはしない。

それにしても冷静でありながら際どい変態発言をするのだから、やはりさすがは次郎坊の師匠であった。案外、似たもの師弟なのかもしれない。

 

「さて早速だけど……あなたの体を…ちょうだァい?」

 

フザけた雰囲気のようでいて、しかし大蛇丸の目にはどこまでも寒々しく残酷なものを含んでいる。

大蛇丸とサスケの視線が交差し、サスケはそれに飲み込まれんと必死に睨み返す。

すると大蛇丸が微笑んだ。

 

「ふふふ…なんてね、冗談よ。………さすがだわね、サスケ君。そんなに追い詰められているのに、まだそんな目が出来るなんて。……やっぱりいいわね、あなた。クククク…ほんと、今すぐにでも食べちゃいたいくらいだけど……気が変わった。………あなたのボディ、今しばらくはあなたに預けておく事にするわ」

 

「な、に…?どういうつもりだ…大蛇丸」

 

「あなたの中から這い出てくる時に、あなたの細胞を少し頂いたの。サスケ君の血肉は、今や私の中に流れている……感じない?私の中に溢れる若いエネルギー…私と君はもういつでも一緒よ…クククク。だから、あとは必要なのは目だけ。目さえ手に入れてしまえば…うちはの瞳術は私のものになる。だから、もう焦る必要はないのよ。今となっては、あなたを完全に乗っ取る事で、あなたの人格…あなた特有の物の考え方が失われてしまう事の方が惜しい…」

 

それに、うちはの眼球を手に入れる伝手には心当たりがある。大蛇丸はそう言って笑っていた。

 

「……あなたの中にいる間…私はあなたの頭の中も覗いていたのよ。だからかしらね……サスケ君、あなたの行く末も見てみたくなったわ。私がここまで作り上げてきた〝うちはサスケ〟という芸術が如き風車が、どのような風で回るのか…興味があるのよ、私は」

 

次郎坊によって少しずつ変化していった五人衆。

そんな彼らと接し続けて、かつての母性的なまでの面倒見の良さと人の良さが人格の表層に現れやすくなったところに、人生で初めて不屍転生を返されて乗っ取り返されるという劇的な経験と、初めて乗っ取り返された事による、宿主(サスケ)との人生共有体験。

サスケの中の記憶、思い出、感情までも共に味わったという、それらの化学反応が、本来の運命よりも一足先に、大蛇丸の母性的な側面を強くしていた。

 

あまりの人の変わりっぷりに、大蛇丸を見つめるサスケの目は困惑一色へと変わっていって、どう反応すればいいのかすら今のサスケには分からなかった。

自身の弱りっぷりも手伝って、ただただ狼狽していた。

 

「…気配が近づいてくるわね。……このチャクラは、水月に香燐。……ここで私が見つかっちゃうと、サスケ君が歩みたがった道に余計な色が垂れてしまうかも。――…多由也、今回の件…サスケ君の記憶を消しなさい。そういう曲、作っていたわよね?」

 

「ウチにお任せを」

 

普段の毒舌勝ち気娘っぷりが嘘のように、片膝などついて恭しく頭を垂れてみせる多由也。

大蛇丸は矢継ぎ早に命を飛ばし続ける。

 

「重吾、あなたの血を寄越しなさい。サスケ君に新たな呪印を授ける」

 

「はい」

 

重吾も従順に頭を垂れて、口寄せのように指先を噛み切って大蛇丸へと血を捧げる。

呪印は、重吾の体液を元にして大蛇丸が練り上げた疑似仙術の術式印であるから、ここに重吾が居合わせれば新たな術式を組み上げて新型呪印を構築する事ぐらい、大蛇丸には朝飯前であった。

 

「――出来た。さァ、サスケ君…これが私からの餞別」

 

自分の復活の為に消費された呪印に変わって、幻術に陥りボーっとしているサスケの首元に新たな印が刻まれた。

 

「よろしかったのですか?大蛇丸様」

 

それら一連の流れを、君麻呂は感情を殺して眺めていた。

 

「ふふふ…不満かしら、君麻呂」

 

「いえ、全ては大蛇丸様のお決めになった事。僕には僅かな異議もございません」

 

「……あなた、そういうところがカブトやサスケ君、次郎坊に比べると、つまらないところだわね」

 

「つ、つまらない…!?」

 

大蛇丸がポツリと漏らした言葉に地味にショックを受ける君麻呂。

面白いかどうかなど二の次で、どれだけ大蛇丸の役に立てるか…有能な駒となれるか…。そういう価値観を至高としてきた君麻呂には、そんなくだらぬ点で自分の評価が下げられたらしいことが非常にショックであり、悔しい。

というよりも、以前の大蛇丸なら間違いなく君麻呂の価値観に近い評価を下していたはずだ。

やはり大蛇丸には少し変化が起きているらしい。

 

「そういえば…いましがたカブトの名が出て思い出しましたが、大蛇丸様…カブトはあなたの細胞を取り入れて自分なりに動き出しているようです。どうなさいますか?」

 

次郎坊のその言葉に、大蛇丸はしばし考える素振りをみせたがキッパリと言いきった。

 

「放っておきなさい。私のコントロール下から離れたカブトが、一体何をするのか…そちらも興味深いからね」

 

カブトは、君麻呂とはまた違ったベクトルで大蛇丸の崇拝者だ。

何から何まで大蛇丸のやり方を学び、真似て、今では大蛇丸に近づくために思考パターンすら真似ようとしているのを、大蛇丸は見抜いていた。

自分が何なのか分からぬと言っていた男は、大蛇丸に同化する事で自己を確立しようというのだ。

大蛇丸からすれば、自分が成そうとしていた事を実行してくれるらしいカブトの道は、見届けるに相応しい価値があった。

かつての大蛇丸のやり方を実行しようとするカブト。

今までの大蛇丸にない発想で進もうというサスケ。

そのどちらもが、自分の撒いた種であり、チャクラを通じて今も大蛇丸の精神へと臨場感たっぷりに状況を盗み見れる現状は、大蛇丸にとって非常に面白いと思えた。

ならば、フリーになった今の自分(オリジナル)はどうするか。何をするか。何をしたいか。

 

「……まァ、おいおい考えればいいでしょう。時間はあるのだから」

 

口を弧にして笑う大蛇丸の顔からは、今まで染み付いていた〝険〟とでもいうものが本格的に欠け落ちていたように見えた。

 

「帰るわよ、()()()

 

「え゛?」

 

「き、聞いていたんですか…」

 

「大蛇丸様は、七人隊がおすすめ…と」

 

「ふん…ウチは七人ミサキがいいと思うけどな」

 

くだらぬ事を言い合いながら、音隠れ忍達はドロンと煙の中に消えていった。

あとに残されたのは、倒れ伏したサスケのみである。

 

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