同じく、変態の次郎坊   作:イチャパラで優勝していくわね

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ナンバー6 ペイン六道vs音の七人衆…!!

「ペイン六道…ここに見参」

 

輪廻眼を持つ6人の忍…ペイン。

瓢箪カエルの体内の結界に引きずり込み、ようやく1人を倒したものの、もはや自来也は限界だった。激しい戦闘の末に片腕も失って、得意ではない片手印で戦えるようなレベルの相手ではない。

もはやここで命を捨てるのは確定した。倒した1人を、仙人カエルのフカサクが妻…シマに持って帰ってもらい、今はフカサクとのコンビで足掻いている最中である。

結界から這い出て、音を消し水中を進む。

巨漢の背後を完全に取った。

巨大クナイを無音で投擲し、それは間違いなく巨漢忍の後頭部を穿つはずだったのだ。

だが、視えているかのようにそいつはヒョイと避けた。

 

視界共有など、とっくに見抜いたカラクリだ。

だがもはや自来也には打つ手はない。

チャクラも体力も失せて、素早く跳躍する4人のペインを視線で追うのがやっとであった。

だから、完全に1人を見失っていた。

それに、自来也の脳裏に突如走った閃きも、このときばかりは邪魔をした。

自来也の今までの旅が、点が、全て繋がった。

 

(…!!!そうか…!分かったぞ!ペインの正体!!)

 

全てが繋がったまさにその時、水中から飛び出したペインの1人の手刀が自来也の喉を潰す。

 

「っ!!!?ゴフッ!!!」

 

フカサクが、自来也の名を悲痛に叫んだ。

4人のペインが、黒い杖を槍のように構えて無防備になった自来也の背へ突き立てんと殺到し、そして致命の一撃を同時に四撃、決めた。

1人が心臓を、1人が右肺を、1人が左肺を、1人が脊髄。

確殺の殺意がそこにはあった。

自来也の意識は暗転していき、心の臓は鼓動を止める。

〝死〟が来た。

それは無明の闇そのものであり、間違いなく永遠の眠りであった。

 

だが、自来也には〝諦めぬド根性〟があった。

後悔ばかりの自分の人生の中で育み、打ち負ける度に、鍛え直してきた不屈の名刀。

弟子達にも受け継がれていった自来也の忍道が、彼を死の淵から帰還させる。

 

(まっすぐ自分の言葉は曲げない…そして、どんな時もあきらめない…。それがお前の忍道なら―――ナルトよ、ワシはそのお前の師だ。…弱音を吐くわけにはいかんのォ……)

 

虚ろだった瞳に活力が戻り、心臓が再び動き出す。

 

(…なぜなら弟子の忍道は師匠譲りと相場が決まっとる!なあ、そうだろ…、ナルトよ…のォ!!)

 

「…!気力で吹き返したんか!?」

 

何百年という月日を生きるカエルの老仙すら驚嘆する出来事だった。

同時に、自来也という傑物の覚悟の最期を、フカサクは確かに感じ取った。涙は見せれる状況ではないが、フカサクは仙道の弟子でもあり友であるこの忍の覚悟を受け取らねばならなかった。

 

「心の臓は止まっていたハズだが…」

 

去りかけていたペイン達が、踵を返して再び跳んだ。

フカサクは瀕死の自来也に背を晒し、自来也の最期の言葉をそこへ刻ませていく。

魂の籠もったチャクラが、辿々しい指の動きとともにフカサクの背を焼いていく。

 

「よし…!確かに受け取ったけんの!!」

 

血で溢れた口を、自来也は最後に優しく微笑ませた。

 

(あきらめねェ…それこそが、ワシの取るべき本当の〝選択〟だった…!ナルト…〝予言の子〟は間違いなくお前だ……、…あとは全て、託すぞ!!!)

 

フカサクの背に刻まれた暗号化メッセージ…ダイイングメッセージを見たペイン。

すかさず修羅道が腕を切り離し、自来也とフカサクへ向けて超高速で射出した。この〝怪腕ノ火矢〟は、起爆札十数枚分の破壊力を誇る。確実に、今の自来也とフカサクを殺すに足りた。

寸前で、フカサクは逆口寄せで妙木山に帰還し、そして残った自来也はコンクリートの浮島ごと吹っ飛んで、そのまま冷たい水底へ延々と落ちていく。

その遺体は、誰も手出しが出来ぬほどの静寂な海の底へと沈んでいく。

それは、運命と向き合い続けた豪放磊落な自来也に対して、この星が与えた慈愛の安らぎにも似ていた。

そうなる筈だったのだ。

だが、運命は既にねじ曲がり、自来也の最期はペインの予想を大きく裏切るものとなる。

 

フカサクが消え、怪腕ノ火矢が浮島を砕いたその瞬間、もはや死に体であった自来也の体をナニかがぐんっと引っ張った。

 

 

 

 

 

 

蛇だ。

 

 

 

蛇が何匹も首を伸ばして己に巻き付いて、物言わぬ自来也を一気に引き寄せてペインから遠ざけていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

もはや自来也には殆ど意識はない。

視界は霞みきって、眼の前の景色すら正しく認識できない。

朧気な輪郭が自来也の虚ろな目に映っていた。

 

(あぁ……なんとも、粋とでもいうのかのォ……それとも、末期に思い出すのが、よりにもよって…お前かよって…愚痴るべき、か、のォ……………なぁ、大蛇丸…)

 

自来也の意識は途絶え、鼓動は止まった。

物言わぬ姿となった自来也を、幾匹もの蛇が雁字搦めに絡め取って、そして1人の男の腕の中にすっぽりと収めさせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見てられないわね」

 

大蛇丸は、物言わぬ自来也を見下ろしながら呟いた。

 

「とっておきの奥の手(仙人モード)まで使っておきながら手酷くやられたものね。…まァ…相手があのペインではねェ」

 

「大蛇丸……まさかお前が先生を――自来也を助けようとするとはな。……木ノ葉を裏切り、暁を裏切り……裏切りを繰り返し木ノ葉崩しまでした三忍の面汚し。その貴様が…なぜ自来也を助ける?………それとも、その遺体を回収しにきたか?自来也の心の臓…今度こそ動き出す事はあるまい」

 

5人のペインが、輪廻眼を見開いてその様をジッと眺めていたが、無機質な彼の顔には少しの驚きが浮かんでいるようにも見えた。

 

「フフフ…そうねェ…どうしてかしら。やろうとしていた事を、任せられる優秀な後進が育ってしまって…自分でヤらなきゃって気概が薄れたのかもね。それで、思いがけず私がフリーになってたところに、古馴染みがボロ雑巾みたいになってるから、つい面白そうで…って事でどう?ペイン」

 

喋っている相手はペインだが、大蛇丸は終始自来也の死体を扱っていた。どこか優しげに横たえて、そして彼の体に突き刺さっている黒杖を抜き去っていき、チャクラを送り込み蘇生処置を試みているようだった。両手の魂を未だに屍鬼封尽で封じられている今…古今東西の術を扱う大蛇丸ですらこの程度の処置しかできない。

転生と復活をし、腕の痛みも少なくなっていたので、まだ調査中で不確かな〝屍鬼封尽の解除方法〟を試していなかったわけだが、今、少しだけ大蛇丸は「…腕、治しておけばよかったかしら」とも思う。別段、腕が治っていたからといって、この状態の自来也を治せるわけもないと知っているのに、何故だか自然とそう思ってしまっていた。

ちなみにこの件(屍鬼封尽・解)に関しては、次郎坊は何も助言出来ていない。というのも、彼の記憶には〝どこかの寺社にある鬼の面を使う〟という程度のものしかなく、それぐらいならば既に大蛇丸が自力で辿り着いているからだ。

 

大蛇丸の興味は依然としてサスケが主であったし、今頃サスケは彼の思う通りの道をゆき、まさに今念願のイタチとの邂逅を迎えている。それが新たに刻んだ呪印からも伝わってくる。

本来なら、あれ程こだわったうちは兄弟の宿命の戦いを生で見届けたいところであったが、そう思っていたはずの大蛇丸は方々にばら撒いている間諜からの情報で、自来也が暁の首領の探索に赴いたと知ってから、彼の脚は自然とこちらに向かっていた。

大蛇丸自身に言わせれば、それはただの気まぐれ以外の何物でもない。なにせ、自分の本心や本願も認めず、それを野心邪心で塗りつぶして誤魔化しているのが大蛇丸なのだから。

つまりは、なぜ雨隠れくんだりまで来て自来也を助けようとしているのか…大蛇丸もよく分かっていないのが本音だった。

 

「…あの大蛇丸が、旧友の死を悼んでいるとでもいうのか?数々の非道に手を染めた貴様が…今更ながら〝痛み〟と向き合うつもりにでもなったか?―――…滑稽だな、大蛇丸。そして…無駄なことだ。自来也は死んだ」

 

「そうかしら?こいつはね……あなたが思うよりずっとタフなのよ。たった3年間弟子だったあなたより…私は自来也をよく知っている」

 

確かに、自来也の遺体へ掌仙術を施す大蛇丸の表情は、死を受け入れられぬ愚者のものでもなく、そして死を悲しむ悲壮感も微塵もない。少なくとも表面上は、ペインから見てさえそう思えた。

 

「…まァいい。大蛇丸…お前の方からオレの前に現れたのは好都合なのに変わりはないのだから」

 

「…ところで、ペイン。どれを見ながら話せばいいのか迷うところだわ。どれが本体?」

 

「どれもがペインであり、オレそのものだ。……その無駄な掌仙術…いつまでも目障りだな。…大蛇丸。貴様もここで自来也の後を追え。お前を殺してから、指輪は探すとしよう」

 

「あらごめんなさい。あんな指輪もう処分しちゃったわ」

 

無論、嘘だ。あの指輪は、イタチに切り落とされた大蛇丸の腕ごとアジトに保存してある。

全ては取るに足りない大蛇丸の言葉遊びでしかない。

それらの会話を口火として、戦いは再度始まった。

ペインが跳躍し、大蛇丸も自来也を抱えながら跳んだ。

 

「大蛇丸…貴様の腕は、三代目火影との戦いで役に立たぬと聞いている。そんな貴様が、このオレに敵うと思うか?」

 

「クククク…私がのこのこ1人でここに来たとでも?」

 

「…っ!?なに!!?」

 

気づけば、大蛇丸と自来也を守るようにして音隠れの上忍…重吾が煙をドロンと巻き上げ立っていた。

その直後、ペインの1人…巨漢の耳なし髪なしのヤツ(修羅道)を蜘蛛糸が執拗に、幾重にも幾重にも雁字搦めにし封殺していく。事前に、肉体そのものを武器へと変える人間武器庫だと、とあるデブに教えてもらっているからだ。

さらに別の太ったペイン(餓鬼道)を謎の怒声が物理的ダメージを伴うサウンドビームとして襲っていた。声の主は「ウララー!」とか叫んでいた。

この餓鬼道は、チャクラを吸収して術を完全無効化するという忍術主体の忍の天敵ともいえるペインであったが、純粋な音波攻撃であるこの技は完全に素通りであった。

後に彼は言う……同じデブキャラとして、キャラ被りが許せなかった、と。

そしてさらに別のペイン…イカツイ顔のヤツ(地獄道)を、一際目つきの悪いダウナー系の音忍が襲う。

 

「へェ…完璧死角から襲ってやったのに、マジで反応してくんじゃねーの!ハハハ!んじゃー、こういうのはどうだよッ!ドレミファ!!」

 

高速の拳撃に反応し捌いてみせたペインは、あらぬ場所からの拳を直撃させられ体をくの字に曲げて、続けざまに左近の体から()()()()()手足が、地獄道の手足をガッチリと抑え込んだ。

 

「ククククっ!てめーの骨はどんな音がするかなァ!?ほーら、いくぜェ…!ソ・ラッ!!シドォォ!ヒャハハハ!」

 

地獄道の抵抗を封じつつ、左近は自由が効く右手で、無防備となった地獄道の胴体を解体していく。皮膚を剥ぎ、肉を割き、抉ってアバラを剥き出しにして掴み、引き千切る。そうまでされて尚、地獄道は無表情でありまるで機械か死人であった。

それらとほぼ同時に、とある音隠れの巨漢デブに影響を受けて開発した〝笛の音から発する物理的ダメージを伴うサウンドビーム〟という指向性音波攻撃で、自来也に目を潰された長髪のペイン(人間道)を一方的に封殺していた。

そして最強のペイン天道の相手は、やはり最強のエースカードであった。正確には、最強の()()()エースカードのうちの一枚であるのだが。

天道を涼し気で冷酷な瞳で見つめるのは、白髪の美青年。名を、地の君麻呂といった。

おもむろに手から骨を生やし、そして君麻呂は海の上を走る。その余りの疾さに、海面は割れて波飛沫が次々に散っていく。

 

「神羅天征!」

 

強烈な斥力が君麻呂を吹き飛ばすも、瓦礫にぶち当たっても強固過ぎる骨の鎧が君麻呂を無傷で済ませてしまう。

 

「なるほど…弾き飛ばす力…ですか。かなりの威力だ……―――お礼に僕の舞を披露しよう」

 

「っ!」

 

体中から骨を伸ばし、それをスパイクとする事でより俊敏で変則的な動きを可能にする。

コンクリートを跳ね、超高速で伸ばした骨を海底に刺し、通常ではあり得ぬ軌道の連続で天道に迫り、そしてまた神羅天征で弾き飛ばされる。

宙で身をひねり、骨で防御。君麻呂は無傷。

直ぐ様立て直し、高速での多角的突撃。そしてまた弾かれ、立て直し、突撃し…そんなやり取りを何度も何度も繰り返していく。

そのうち、何度も攻撃をその身で受け続けた君麻呂はその威力、タイミング、仕草、それらを急速に学んでいく。そして、神羅天征のインターバルさえこの超短時間で把握しつつあった。

神羅天征という一見無敵である攻防一体の攻撃に対し、こんな無理やりで力付くの攻略方法は、彼の師である大蛇丸でさえ無理だ。

物理的攻撃に対し、肉体そのものが絶大な防御力を誇る君麻呂と、或いは彼の盟友・次郎坊でしか行えぬ突破方法で、実際、次郎坊がペイン天道に相対してもこの攻略方法を実行するだろう。

 

「フフフ…このタイミング…だろ?」

 

「――…!」

 

君麻呂の超高速の斬撃が、ペイン天道の頬を掠める。

ならばと、天道がとる次なる選択肢は引力だ。

出力を上げた神羅天征で強力に弾き、

 

「万象天引…!」

 

僅かな間もなく超引力が働いた。瞬間的に猛烈に引き寄せられていく君麻呂。

天道の手からは黒杖が延び、真っ直ぐに君麻呂に差し出されていた。

 

「…僕の骨と同程度の速度で伸ばせるようだな…その黒い棒は。だが…僕には及ばない」

 

凄まじき引力で超高速で引き寄せられながらも身をくねらせて君麻呂は舞う。そしてその引力すら利用し、黒杖以上に固く長く鋭く伸ばされた骨の舞が、黒杖を寸断し、一気にペイン天道をバラバラにしてやろうと目論んだ。

だが、それはペインも理解していた。

引力の惰性が働いているうちに、間髪入れずに斥力を発生させる。

引力と斥力のぶつかり合い。その狭間。そこへ君麻呂を引きずり込んだ。

 

「っ!!!」

 

強固な骨の鎧が未だ無傷なのは恐ろしい限りだったが、強力な急ブレーキの衝撃が君麻呂の臓腑を襲う。

君麻呂の口から、一筋の血が流れた。

 

「…………僕に、血を流させるとは……さすがは暁のリーダーだ。危なかった…危うく内臓がいくつか潰れるところだったよ」

 

「…硬い、な」

 

天道をして、最上の警戒心を抱かせるに値した。

君麻呂は、あの一瞬で内臓にまでカルシウムを浸透させ細胞の隙間に骨の網を張り巡らせて、それをクッションにして衝撃を大幅に緩和していた。

君麻呂唯一の突破口となり得る、内部攻撃。それに対する策など、この数年の間に次郎坊との修行でとうに見出していた。

 

天道が辺りを機械的に見回していく。

どの個体もが一進一退か、或いは苦戦を強いられている。

ここが雨隠れの里の都市部の外縁なのが、天道の全力を躊躇わせ戦いを冗長なものへとしてしまう。

ここで全力の神羅天征を発動すれば、この場の敵全員を始末できるかもしれないが…雨隠れも大きなダメージを負ってしまうのは目に見えていた。

 

(―――…どうする?)

 

迷う長門が答えを出すよりも先に、大蛇丸が勝ち誇ったように言った。

 

「ここらでいいわよ、みんな………本体を見つけたわ」

 

ニィィっと邪悪に笑う大蛇丸の笑みは、ペイン越しに長門さえゾッとさせる不吉なものを含んでいる。

 

(バカな…!ここには小南の結界を幾重にも張り巡らせてある…そう簡単に見つかるわけがない!それにどこでペインが死体傀儡だと見抜いた…!自来也先生ですら気付けなかったというのに!バレているはずはない!だが、万一にも……っ)

 

その逡巡が、ペイン達の動きに僅かな隙を生んだ。

と思った次の瞬間だ。

ドロンっ、という見慣れた煙がそこら中に立ち込めて、煙が晴れた時には大蛇丸達の姿はどこにも無かった。

 

「…!小南!状況はどうだ」

 

雨隠れの中央塔。

その最上階ブロックの奥の隠し部屋が、ペイン本体である長門を()()している聖域。

そこには、先程の自来也戦から撤退した小南が控えていた。

長門と共に自来也の最期を見届けるつもりで、乱入してきた大蛇丸一党との戦いも紙分身の術で見ていた小南だが、大蛇丸の言葉に彼女もまた動揺していた。

 

「待って…今、探しているわ!……っ」

 

雨隠れは彼女のテリトリーだ。

そこかしこに紙の偵察人形をばら撒いているし、感知結界もトラップのようにそこら中に設置している。

大蛇丸が、この中央塔に侵入し潜んでいるかもしれない。となると一大事だ。

ある意味で、自来也以上に厄介な忍。あらゆる隙間に潜り込む蛇そのもの。

念入りに、何度も何度も、探知し、感知し、つぶさに見て回る。

 

だが―――

 

「…い、いない…!どこにも…大蛇丸達の姿は、ない」

 

「ブラフ…………一杯食わされたか」

 

このままここで戦い続ければ、自来也への蘇生処置が無に帰すとの判断だろうか。

それに、まだまだペイン天道に余力があったのも見抜かれていたらしい。

さすがは、1人で大国木ノ葉を揺るがした稀代の陰謀家であった。

ペインの手の内をある程度理解されていたようだし、しかもそこに自来也が得た知識も加わってしまえば、今後は長門とて危うい。

 

「自来也先生は…確実に殺した。だが、急がなくてはならない…計画を、前倒していくぞ」

 

焦りを募らせた長門に、小南は従順に振る舞いつつも、どこか憂いを秘めた瞳で見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ペインが木ノ葉の里に来襲した。

理由は当然、九尾の人柱力・ナルトだ。

これを木ノ葉忍は動員できる全ての兵力で迎え撃った。

ペイン六道を相手に、木ノ葉はまるで総力戦の戦争の模様を呈していたが、ペインがそれほどの規格外だったという事だ。

ペインも全力でなかったとはいえ、この怪物相手に終始優勢に立ち回れた音の七人衆が異常だっただけであり、そして次郎坊の〝予言〟による事前知識の恐ろしさを物語る。

大蛇丸が温厚になっていたのには、きっとこういう理由もあったのだろう。

自分が見出し手ずから育てた弟子達が、その誰もが大蛇丸の予想を越えて成長してくれたのだ。それこそ、〝暁〟達を相手にして立ち回れるくらいに。

これは、大蛇丸が心の奥底で永遠のライバルとも思っている自来也に対して抱いていた鬱憤、溜飲を大いに下げる事だった。

自来也が育てた弟子には、大蛇丸を次期火影の座から蹴落とした波風ミナトがいる。過日、激闘を演じたペイン長門がいる。

一方で、音の七人衆やカブト、サスケという果実が実るまでは、大蛇丸の弟子として名を馳せたのはアンコだ。

アンコも無能ではないが、ミナトと比べると明らかに小粒。

物足りない…という不満は日ごとに高まっていき、やがては〝ミナトの足元にも及ばない失敗作〟という認識に変わっていった。そして、それはそのまま自来也に対する嫉妬と敗北感にも繋がったのである。

しかし今は、大蛇丸はとても充実していた。

長年の捻くれた愛情・尊敬が裏返って、愛しさ余って憎さ百倍となった猿飛ヒルゼンを木ノ葉崩しで殺し、克服したとして一定の満足を得た。これが第一歩目。

次いで、カブトとサスケはほぼ独り立ちをして、今現在も世界に大騒動を起こそうと暗躍している。良くも悪くも世界の関心を独り占め…といったところで、それを育て導いた大蛇丸の自尊心を大いに満足させた。

そして今現在も大蛇丸の親衛隊として便利に使っている〝音の七人衆〟…或いは〝音隠れ七人隊〟は、大蛇丸を悩ませる存在の一つ、暁と対等以上に戦った。飛段と角都などは、アジトで薬品付けにして絶賛実験中である。これも大いに満足だった。

 

最後に、最も重要なポイントが自来也だ。

あの腐れ縁の親友であり宿敵が、自分の慈悲によって出来立てホヤホヤの新鮮な死体を回収され、そして自分の知識と技術によって蘇生一歩手前まで漕ぎ着けた。

今の自分の技術を持ってしても完全復活には一歩足りぬが、生き返らせたら、果たしてどれだけの負け犬ヅラを拝めるだろう…と、大蛇丸は今からその様を想像するだけで笑いが止まらない。

 

「大蛇丸今まですまん。ワシがバカだった。ワシの忍道はお間抜けでございましたのォ…。やっぱお前がNo.1だのォ!」

 

そんな事言わせて土下座させて頭を踏んづけてやろうかしら。だなんて大蛇丸は考えていた。

そんなこんなで、大蛇丸は自来也蘇生に忙しいし、なんならあの自来也を好き勝手に出来る状況とあって、大蛇丸のマッドサイエンティスト気質にも火がついて、パワード自来也feat.大蛇丸というのも悪くはないなァ…なんて思っていたり。

ありったけの大蛇丸謹製マル秘技術を注ぎ込んでいる真っ最中である。

 

「自来也の強化は極めて順調…。でも、魂が肉体から離れる前に彼の魂は留めたはずなのに……。やはり、一度魂が死を認識し受け入れてしまうと難しいようね……やはり完全なる死者蘇生となると、そう簡単ではないか…。フフフ…でも、この程度の失敗は予想の範疇よ」

 

大蛇丸は自来也が浮かぶ培養ポッドを鼻歌交じりで眺めている。

ペインによる木ノ葉襲撃からこちら、世間は激動の日々らしく、イタチが死んだり、綱手がペイン戦で張り切りすぎてダウンしたり、その隙を突いてあの志村ダンゾウが火影に就任したり、五影会談が開催されてそこにサスケが乱入したり、自称うちはマダラが乱入してきて〝月の眼計画〟を語った後に第四次忍界大戦を宣戦布告したり、サスケがダンゾウを暗殺したり、ナルトが九尾と和解して両親の真相を知ったりが起きた。大騒動の連続である。

しかし大蛇丸はダンゾウの死について、「あら、ダンゾウの写輪眼を奪おうと思ってたのだけれど……まァいいわ。私が乱入してサスケ君の戦いに水を指すのも風情が無いしね」などとコメントを残したぐらいで、一連の騒動には我関せずの態度を貫き、自来也の蘇生にのめり込んでいた。

 

「大蛇丸様、いい加減その腕治したらどうですか?もう殆ど、屍鬼封尽は解明できたんですよね?」

 

「転生を繰り返していくうちに痛みは大分引いてきたのよねェ……だから急ぐ必要もないと思って。まァ、複雑な印とか細かい作業しようとすると手が震えちゃうのは、確かに不便だけど…わざわざ木ノ葉の里にまで戻るのも面倒でね……今はこちらが優先よ」

 

「またそんなに油断バリバリに驕っちゃって…いいんですかァ?またペイン級の奴に突然襲われたらどうするんです」

 

「今は、音の七人衆がいつも側にいるんだから平気でしょう?いいから実験を続けるわよ」

 

次郎坊に言われてもそんな調子で、カブトが抜けた穴を七人衆総出で埋めて、今も忙しく指示を飛ばしまくっていた。

つくづく大蛇丸はマッドであったし、そして亡き旧友への重い想いもなかなかにヘビーであった。蛇だけに。

 

「…!ほら、そこ!鬼童丸…タイミングがズレているわよ!あなた、腕がいっぱいあるんだから、全部のパネルの操作くらい一人でやりなさいな」

 

「うぇ!?そんなん無茶ぜよ、大蛇丸様ァ…!」

 

「左近…自来也の様子はどう?少しの反応も見逃してはダメよ?」

 

「……右近と交代交代で、24時間バッチリ監視OKです」

 

「君麻呂。新しい幹細胞を持ってきなさい。Mの試験管は廃棄」

 

「ハッ。かしこまりました、大蛇丸様」

 

「……!そうよ多由也、いい感じね。あなた、センスいいわよ。チャクラの拒絶反応をうまく避けたわね」

 

「ありがとうございます。ククク…、ビチグソヤロー共よりも、ウチは役に立ってごらんにいれます」

 

「ぬっ!」

 

「座ってろ!てめーに言ってんじゃねー!!全員に向けて言ってんだ、全員だ全員!!」

 

「あらあら…全く仲が良いわね、ホント」

 

「!?ち、違います、大蛇丸様!ウチはべつに!」

 

「はいはい、いいから手を動かしてちょうだい」

 

騒がしい実験はいつまでも続いた。

 

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