ソシテアナタニ   作:カニ漁船

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ちょっとした催しみたいな。


グランドマスターズ 交流会

 東京大賞典も終えて、後は今後のレースに向けての準備……の前に。

 

「というわけで、グランドマスターズ開幕だよ子羊君!」

「今回はどちらかというと交流会ですけどね」

「楽しみだわ~」

 

 VR世界にて、ダーレーさん達主催のグランドマスターズの交流会が開催されることになった。部門は全部で5つ。短距離から長距離までの芝4部門と、ダートがランダムで選ばれる仕様。結構な規模であり、多くのウマ娘が参加している。

 今回は交流会ということもあり、選ばれたウマ娘は無作為だ。ミーティアのメンバーから選ばれたのはキタサンとドゥラ、そしてバクシンオーの3人である。

 

「委員長が頑張って走りますよ~!」

「が、頑張ります!」

「交流会でも変わらない。勝利を掴み取る」

 

 さて、ここでダーレーさん達主催のグランドマスターズだけど。これは普段のトゥインクル・シリーズとは違う特色がある。まぁバクシンオーが選ばれている時点で分かるかもしれないが。

 

「トゥインクル・シリーズとドリームトロフィーの垣根を超えて。全てのウマ娘が挑戦することのできる舞台!それこそがグランドマスターズ!」

「ウマ娘の頂点を決めるのにふさわしいレースになると思うわ~。私達も、腕が鳴るわね~」

「遠慮はいらない。全力でぶつかってこい!」

 

 このグランドマスターズ、なんとトゥインクル・シリーズに在籍していようがドリームトロフィーで走っていようが関係がない。学園どころか地方、ゆくゆくは世界を対象にして、全てのウマ娘達が走れる舞台としてレースを設定した、というのが女神様の話である。うん、とんでもない規模の話になってるなぁ。

 今回交流会の対象となったのはトゥインクル・シリーズとドリームトロフィーのウマ娘。まずは身近な存在から、とのことらしい。あたりを見渡せば、シンボリルドルフだったりシーキングザパールだったりといろんなウマ娘の姿がちらほらと見えていた。

 もちろんダーレーさん達三女神様も走る。やはり実践に近い形で走ってみたいらしい。今までのは併走だったから当然の感情だろう。

 

「さてさて、もちろん俺達は全レースに出走するよ」

「……大丈夫なんですか?一応聞いておきますが」

「問題ない。むしろ、彼女達と走る機会を一度たりとも逃したくないからな」

「どんなレースになるのか楽しみね」

 

 ダーレーさん達も気合いが入っている。かなりバチバチだ。闘争心が凄い。

 

 

 さて、選ばれたウマ娘は好きなレースに出走できるわけだけど……キタサンに関しては僕が選ばせてもらおう。

 

「じゃあキタサン。出走するレースは覚えているね?」

「は、はい。覚えてますけどぉ……だ、大丈夫でしょうか?」

 

 不安そうなキタサン。仕方ないけど、これも彼女の成長のためだ。

 

「芝の短距離。一度、バクシンオーの本気を感じてみるといい」

「やや?キタさんとの勝負ですか!もちろん委員長は構いませんともッ!胸を借りるつもりで挑んできてくださいッ!」

 

 キタサンが挑むのは芝の短距離。つまりは──バクシンオーが最も得意とする距離での勝負となる。そして、短距離で結果を残してきた猛者たちとの戦い。キタサンにとって財産となるはずだ。

 キタサンは震えていたけど、拳を握り締めて気合いを入れる。そして、バクシンオーをまっすぐに見据えて、言い放った。

 

「キタサンブラック、バクシンオーさんに勝ってみせます!」

 

 バクシンオーに勝つと。それを受けて、バクシンオーはにっこりと笑う。

 

「はいッ!大変花丸な気合ですねッッ!これは委員長も頑張らねばなりませんッ!いざ、バクシンバクシーーーンッッ!!」

 

 受けて立つ。キタサンブラックの宣言に対し、サクラバクシンオーはそう返した。この勝負で、キタサンがさらに上のステージに行くことを願おう。

 そしてドゥラの方は──中距離。今回無作為に選ばれた中距離ウマ娘の中には、彼女がいる。

 

「ニッシッシ~。このテイオー様が大勝利しちゃうモンニ!」

 

 中距離の適性Sにしてドリームトロフィー最強格のトウカイテイオー。さらにはオグリキャップにヤエノムテキ、ドリームトロフィーの名だたるウマ娘達が相手になる。

 震えるドゥラメンテ。だけど、その目には炎が宿っているようにも見えた。

 

「楽しみだ。ドリームトロフィーのウマ娘と走る機会などそうそうない。この勝負……楽しませてもらう!」

「そうだね。滅多にない機会だから、楽しんでおいで」

 

 頷くドゥラメンテ。3人は出走するウマ娘の列に混ざっていく。さて、僕の方も行くとするか。

 

「タキオンたちが待っている観客席に戻ろう」

 

 それに、トゥインクル・シリーズとドリームトロフィーの垣根を超えたレースなんてそうそうないんだ。このレースを見れることに、ワクワクしている自分がいる。うん、楽しみだね。

 

 

 

 

 

 

 三女神様主催のグランドマスターズ。トゥインクル・シリーズを走るあたしやドゥラさんが、ドリームトロフィーを走るバクシンオーさん達と戦うことができる数少ない機会。今回はその交流会で、あたしはバクシンオーさんと同じ芝の短距離で走ることになった。

 

(トレーナーさんが言ってた。間違いなくあたしのためになるって)

 

 だからこそ、このレースを糧にしよう……なんて、思っていたけどッ!

 

《芝の短距離はまさに電撃戦。先頭のサクラバクシンオーがやはり逃げている。キタサンブラックが必死に追走している。しているが徐々に差は開き続けている。短距離最強の驀進王、後輩相手でも容赦はしない。先頭はサクラバクシンオー、遅れて今は2バ身から3バ身の差がついているか?2番手はキタサンブラックだ。中団にはヤマニンゼファーが、後方にはダイイチルビーが控えています。この電撃戦を制するのはどのウマ娘になるのか?すでに1200mも半分を過ぎました》

 

 そんなこと考えている余裕がない!速い、ひたすらに……速いッ!

 序盤からずっとそうだ。同じようにスタートダッシュを決めて、同じような位置からスタートした。最初は差がなかったのに、半分を過ぎる頃にはもう3バ身以上の差が開いてる!

 あたしが手を抜いてる?そんなことは絶対にしない。むしろ全力で走っている。1200mを、ロングスパートをかけるように全力で。じゃあ、追いつけない理由なんてただ一つで。

 

「バクシンバクシンバクシンシーーンッッ!これが委員長のバクシンですよキタさんッ!」

「ック!」

「まだまだ!委員長は上がりますよ~!それーーーッッ!」

 

 バクシンオーさんが、それだけ強いということ!

 バクシンオーさんの実力は当然知っています。併走で何度も相手をしてもらったことがありますし、レースでも圧倒的な成績を収めているのを見てきましたから。トゥインクル・シリーズはおろか、短距離に限定すればドリームトロフィーですら負けなしを誇る最速無敵の驀進王。匹敵するともいわれていた龍王さんにも勝ち、世界の名だたるスプリンターと鎬を削ったこともある、日本どころか世界最強クラスのスプリンター。いざレースで対峙すると……その強さが肌で分かる!

 

(地力が足りてないとか、そういう次元じゃない……ッ!)

「う、あ、あああああッ!」

 

 なんとか食らいつく。必死になって走るけど、バクシンオーさんはあまりにも速すぎる。

 

《さぁサクラバクシンオーだ、サクラバクシンオーが先頭で最後の直線に入りました!中山の直線は短いぞ、後ろの子達は間に合うのか!ここで後方からダイイチルビーが剛脚一閃!華麗なる一族のダイイチルビー、電光石火の末脚を炸裂させる!さらにはヤマニンゼファー、ヤマニンゼファーも追い上げてきた!キタサンブラック必死の追走、しかしこれはどうか?先頭サクラバクシンオーを捕らえることはできない!》

 

 バクシンオーさんから感じるのは──自信。自分の実力を絶対的に信じていて、誰にも負けないという自負が背中から感じ取れる。どんな策を使っても無意味になるし、あらゆる駆け引きを真っ向からねじ伏せる。この人相手に、駆け引きは通用しない。そう思わせるだけの走りを、バクシンオーさんから感じる。

 届きたい、負けたくない。でも、そんな思いとは裏腹に差は離れていく。ここまでなのかな?なんて思った、その時。

 

「勝負は最後の最後まで分からないものッ!模範的な学級委員長は最後まで絶対に油断はしませんよッッ!これこそが私のバクシン、模範的な学級委員長の花丸なバクシンですッ!」

 

 そんな声が聞こえてきた。

 

「ここが限界?なら委員長はその限界をさらに超えましょうッ!限界を超えて、さらなる高みへッ!学級委員長のバクシンは止まりません!」

 

 ……限界なら、その限界を、超えて。

 

(……そうだっ!勝負は、まだ終わってない!)

 

 確かに追いつけないかもしれない。でも……領域を切れば!

 

(序盤から飛ばしっぱなし、いくら短距離でもスタミナがもたないかもしれない)

 

 そんな不安が頭をよぎる。でも、関係ないんだ!今ここで切らなきゃ負ける。自分の全部を出し尽くすこともなく負けちゃう。そんなのは、そんなのは……!

 

「絶対に、嫌だぁぁぁッ!」

 

 あたしは領域を切る。全身全霊、最後の直線に全てを込めて。ここが限界なら、限界を超えてやればいい!だから、走れ!あたしッッ!!

 けど。

 

「さすがはキタさん!では委員長も──全身全霊で応えましょうッ!」

 

 バクシンオーさんも領域を切る。あたしと同じで、最初から飛ばして走っていたはずなのに。

 それに、バクシンオーさんだけじゃない。他のみなさんも切っていた。必死に走るけどどんどん追い抜かれちゃって。領域を切っても届かなくて。

 

(だけど、最後の最後まで……)

 

 全部を出し尽くす。その気持ちだけは、ちゃんと残っていた。

 

《サクラバクシンオー強し!やはりこのウマ娘こそが短距離最強にして頂点!サクラバクシンオーが見事に逃げ切ったぁぁぁ!中山に桜が満開、サクラバクシンオーが見事に勝ちました!2着はダイイチルビー、3着はゴドルフィンバルブ!》

 

 結果は、惨敗。掲示板にすら入れないほどの負けでした。

 

 

 苦しい、新鮮な空気が欲しい。必死になって取り込んで、どうにか息を整える。そんなあたしに。

 

「す、素晴らしい勝負でしたよキタさん……フゥ」

 

 バクシンオーさんがやってきた。バクシンオーさんも、少しは疲れているみたいで。

 

「ば、バクシンオー、さん」

「えぇ、最後の最後まで、しっかりと全力で駆け抜けることができましたね!委員長が花丸を上げましょうッ!」

 

 いつものキメポーズ。ちょっとバランスが崩れてましたけど、褒められて嬉しくなって。

 

「あ、ありがとうございます……でも、さすがに惨敗でした」

 

 相手はトゥインクル・シリーズで結果を残してきた人たち。さらには三女神様だっている。おこがましいって思われるかもしれないけど……それでもあたしは、勝ちたかった。全力を尽くして、それでも追いつけなかったのはちょっとへこむなぁ……。

 でも、バクシンオーさんは落ち込んでるあたしに、優しい表情をしてくれた。

 

「大丈夫ですよ。キタさんはこれからです。世界を知って、もっともっと強くなります」

「……バクシンオーさん」

「その時はッ!また委員長が受けて立ちましょうッ!なので、これからも走りを磨いてよいバクシンをしていきましょうッ!」

 

 またキメポーズ。うん、そうだ。バクシンオーさんの言うとおりだ。

 

(これが今のあたし。しっかりと刻んで、敗北から学ばないといけない)

 

 あたしはまだまだだ。もっと強くならないと!

 

「ではキタさん、ご一緒に!」

「はい!せーのっ!」

「「バクシンワッショーイッッ!!」」

 

 もう絶対に驕らない。自分の実力を過信しない。走るレース全てに全力を注ぎこむ!ここからあたしは、さらに進化をしましょう!




バクシンオーはヤバい。タキオンは中距離戦でも勝ったり負けたりを繰り返してますけど、バクシンオーは主戦場の短距離なら負けなしです。なんだこのバケモン。


ちなみにバクシンオーのステ


サクラバクシンオー

適性:芝A ダートA
距離:短S マA 中A 長A
脚質:逃げA 先行A 差しG 追い込みG

スピード:UA7 1871
スタミナ:UD3 1534
パワー :UC1 1617
根性  :UF2 1322
賢さ  :UE5 1451


現行のシナリオではまず不可能ですね、はい。
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