ソシテアナタニ   作:カニ漁船

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キングジョージの決着ゥ!


終戦と次の戦い

 激戦となったキングジョージはドゥラメンテの勝利で幕を閉じた。ガネー賞とコロネーションカップに引き続き、日本のウマ娘によるワンツーフィニッシュ。

 本場である欧州は良い気がしない……なんてことはなく。毎回毎回素晴らしいライバル対決を魅せてくれるドゥラメンテとキタサンブラックの2人に対し称賛の声を上げていた。

 

「『やはりミーティアの2人は素晴らしい!育て上げたトレーナーも、応えるウマ娘もそうだ!』」

「『日本から遠征してきてくれてありがとーう!』」

「『でも、そろそろ負けないでねー!ノースランドダンサーも次のレース応援してるわー!』」

 

 今回のキングジョージでも素晴らしい勝負を繰り広げた。極めつけに、これである。

 

「「次も勝つ(次は負けない)ッッ!!」」

 

 日本語での宣言。最前列にいる人の、さらには日本語が分かる人にしかなんて言ったのかは理解できないが、理解した人たちは卒倒ものの宣言だ。

 

「『ライバル同士の宣言……!最高かよ!』」

「『待って?この素晴らしい勝負がまた見れるの!?今から興奮してきたわ!』」

 

 どこまでも熱いライバル関係。欧州でのキタサンブラックとドゥラメンテは、かなりの人気を博していた。

 

 

 レースを見守っていた高村率いるミーティア。サクラバクシンオーはいつものように2人を労い、アグネスタキオンは高笑いしながらデータをまとめている。

 

「お疲れ様ですよーッ!キタさんは惜しかったッ!ドゥラさんはよく頑張りましたッ!これでまた、私のような学級委員長に一歩近づきましたねーっ!」

「いつも思いますけど学級委員長って何ですかね」

「素晴らしいウマ娘ってことじゃない?」

 

 ホッコータルマエと高村の漫才のようなやり取り。高村は内心、このレースを見て興奮を覚えていた。

 

(お互いに戦うことで、高めあっている。負けた悔しさをぶつけるように、譲れない思いを抱いてレースに挑んでいる)

 

 素晴らしいレースを展開したキタサンブラックとドゥラメンテ。皐月賞からぶつかり合ってきた彼女達は、昔とは比べ物にならないほどの熱を帯びている。より強く洗練されたことで、見る者に興奮を覚えさせる。海を超えて、その熱狂は広がっているのだ。

 

「……凄いな」

「はい。本当に凄いです……ッ!」

 

 イクイノックスも高村に賛同するように声を漏らす。尊敬するキタサンブラックが負けたとはいえ、キングジョージの戦いに心を躍らせていた。

 

「素晴らしい勝負でした!さぁ、帰ったら走り「ダメだよ。何時になると思ってるの」ちょわぁ……」

「ま、当り前ですわね。ですが、明日は……分かっていますわね?」

「勿論。ちょうどヴェニュが走りたいって言ってたし、併走を組んでるよ」

「それはそれは。ほほほ、楽しみですわね」

 

 笑うジェンティルドンナ。深い意味はないだろう。多分。

 

 

 終わってホテルに戻った後、キタサンブラックとドゥラメンテは同じ部屋で語り合う。

 

「やっぱりドゥラさんの末脚は凄いね!一気に差を詰めてくるからびっくりしちゃうよ!」

「いや、キタサンの持久力も素晴らしい。追いつくのも一苦労だし、考える余裕なんてなかった。何度対峙しても、君は恐ろしいな」

「えへへ……て、待って!あたしってそんなに怖い!?」

 

 レースが終わればノーサイド。禍根を残すことなく、お互いの良いところを褒め合う。ライバルというだけではない。苦楽を共にした仲間との友情が確かにあった。

 

「そ、それを言うならドゥラさんだって怖いよ!毎回毎回気が気でないもんあたし!」

「?そうか?キタサンに比べればマシだと思うが」

「ドゥラさんも負けず劣らずだと思うよ!?」

 

 余談だが対峙したウマ娘側からしたらどちらも怖い。前を走る方は恐ろしい粘りで抜かせないし、後ろを走る方は10バ身差などあってないようなものとばかりに差を詰めてくる。どっちも怖いのは明白だろう。

 そんなことは関係ないとばかりに話に花を咲かせる2人。次走について話し合っていた。

 

「次はインターナショナルステークスか~。ヨークレース場だよね?」

「あぁ。かつてアグネスタキオンと走ったサリーブも出走したレースだ。コースも、アスコットに比べれば落ち着いてる方だろう」

「アスコットもエプソムダウンズも凄いコースだもんね……ヨークレース場も普通とは言い難いけど」

 

 2人の次走はインターナショナルステークス。8月の中旬に開催されるG1で、10ハロン56ヤード──約2063mのレースだ。場所はヨークレース場、イギリス内では最高のレース場と呼ばれている場所である。

 起伏が激しいわけではなく、コースの形もまぁ平凡。インターナショナルステークスで好走したウマ娘は日本やアメリカでも好走できるともっぱらの噂だ。

 インターナショナルステークスのことを2人でおさらいする中、キタサンブラックが眼を鋭くしてドゥラメンテを見据える。その眼には、レースに負けた悔しさのようなものを感じさせた。

 

「今度は逃げ切るよ、ドゥラさん。次はあたしが勝つ」

 

 唐突な宣言。一瞬呆けた表情を浮かべるドゥラメンテだが、すぐにふっと笑う。

 

「望むところだ。欧州では、まだ私が負け越している。次も勝って、ガネー賞とコロネーションカップの負けを取り戻させてもらう」

 

 先ほどまでの友情ではなく、今度はライバルとしての感情を向け合う2人。友達でライバル、2人の関係を表すのにこれほど適している言葉もないだろう。

 2人はどこまでも高め合う。最高で最強のライバルに負けないために。

 

 

 

 

 

 

 唐突なキタサンからの宣言。インターナショナルステークスでは負けないと、そう言われた。

 

(望むところだ。次も、その次も私は負けない)

 

 欧州遠征においてはまだ私が負けている状態。次のインターナショナルステークスでイーブンに戻す。ライバルである君に、勝ち越すためにも。

 

 

 ……ライバルと言えば。

 

「話は変わるが、シュヴァルとクラウンは大丈夫だろうか?」

「あ~……確かに。LANEでやり取りはしてるけど、シュヴァルちゃんもクラちゃんも通話はしないもんね。ダイヤちゃんとも通話はしないし」

「時差があるからな。そう簡単に交流はできない」

 

 シュヴァルたちのことを思い出す。彼女らもまた私とキタサンにとってライバル、日本で頑張っている2人が、今どのレベルまで成長を遂げているのか……少しばかり興味がある。

 

「クラウンは大阪杯、シュヴァルは宝塚記念を勝ったからな。特に、シュヴァルはアースを倒したうえでのG1制覇だ」

「そうそう!あたしたちが負けちゃったアースさんに勝ったんだもん!凄いよねシュヴァルちゃん!」

 

 ……本当のことではあるがグサッと来るな。アースにもリベンジしなければならない。彼女は凱旋門賞に興味はないのだろうか?もし出走するのであれば……次は負けない。

 確かにG1制覇はめでたいことだ。数が限られているレースで、実力が最上位の者たちが競い合うレース。本来であれば制することだけでも偉業、並大抵の努力では到達しえない領域。それこそがG1レース。嬉しさから涙を流すことは当然でありなんら不思議なことではない。

 だが、私とキタサンは違和感を覚えた。記事の内容に。

 

「でも、気になるな。どうしてシュヴァルちゃん泣いてたんだろう?」

「ニュースの記事では、勝った嬉しさからと書いていた。だが、どうにも違う気がする」

「ドゥラさんも?あたしもそう思ってたんだよね……シュヴァルちゃんが涙を流してたのは、なにか違う意味があるんじゃないかって思ってる」

 

 【ついに届いたG1の冠。涙を流して喜ぶシュヴァルグラン】、【チームメイトには負けられない!涙のG1初戴冠!】、どれもこれも勝った嬉しさから涙をこぼしたと解釈されているが……私とキタサンは別の意味があるんじゃないか?と感じている。

 なんていえばいいのか分からない。ただ、映像で涙を流しているシュヴァルを見て感じたのは──喪失感。

 

「……分からないな。何かに嘆いている、とは思うのだが」

「うん。そこから先は分からないよね……まさか本人には聞けないし」

「クラウンも教えてもらえてないそうだ。そうなると」

「同じチームのダイヤちゃんも分からないって。ってなると、シュヴァルちゃんと天城トレーナーしか分からないかな」

 

 さすがに本人に聞くことはできない。シュヴァルと同じチームであるサトノダイヤモンドすら知らないということは、デリケートな問題だからだ。そこに足を踏み入れるわけにはいかないだろう。さすがの私も、それくらいの分別はある。

 シュヴァルの涙の真意。それは分からない。

 

「しかし、彼女ならば必ず立ち上がるだろう。そして、私達とまた走ることになる」

「うん。成長したシュヴァルちゃん達と走るのも楽しみだね!」

 

 だが、走る機会はある。その時は、全身全霊でぶつかるだけだ。ライバルはキタサンだけではない。クラウンにシュヴァル、アースもまた、私にとってのライバルなのだから。

 

「インターナショナルステークスに愛チャンピオンステークス。これから先もG1レースは目白押しだ。すべて私が勝つ」

「そうはいかないよドゥラさん!クラシックで負けた分、ここから先はあたしが獲り返すんだから!」

「望むところだ。私は最強であり絶対。相手が誰であっても君であっても勝つ。というか、クラシックもイーブンだろう」

「それはそれ、これはこれ!とにかくあたしが勝つんだから!」

 

 レースの興奮は冷めないまま。けれども疲労は確かにあったのか、21時にはお互い眠りについた。次のレースも、楽しみだ。




かすかな違和感を抱く2人。同じチームのダイヤも知らないシュヴァルの真意とは。
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