海外遠征を終えて、日本へと帰国した僕達チーム・ミーティア。
「この学級委員長が、久々に日本に帰ってきましたよッ!」
「いやはや、1年ということもあってか懐かしいねぇ」
タキオンの言う通り、懐かしさを感じる。さすがに一年も離れていたらそうなるか。
さて、日本に戻った後は。
「まずはトレセン学園に戻ろうか。みんな寮だし、僕も理事長に報告しないといけないから。迎えのバスも来ているはずだよ」
「私は研究室に戻るから、ここでお別れだな。ありがとう、みんな。おかげで、私の研究は飛躍的な進歩を遂げることができた」
「いえ、こちらこそ。シュガーライツさんのおかげで、トレーニングも捗りましたから」
僕達とシュガーライツさんは別行動をとることになる。彼女は研究室に戻らないといけないらしいからね。遠征中はトレーニングのことで随分とお世話になった。エアシャカールのトレーナー達と一緒に、僕らも頭を下げる。
思えば、海外遠征はとても実りのあるものになった。いや、実りのあるものどころじゃないな。
(最大効率でトレーニングしても、最終的には他の子達にステータス面では追い付かれる。そんな時、何が勝敗を分けるかというと)
経験、スキルの差。この海外遠征で、キタサンとドゥラの2人は技術面で著しい成長を遂げていた。
次年度は、日本でのレースが中心になる。さすがに海外に遠征するプランはないだろう。招待は来るかもしれないけど、全部断る予定だ。
(キタサンとドゥラも、今度は日本に集中したい、って言ってるからね)
2人とも、日本にいるライバル達と競い合いたいみたいだ。
「ダイヤちゃんは無敗の三冠ウマ娘になった。そんなダイヤちゃんとあたし、戦ってみたいんです」
「シュヴァルもクラウンも、アースもだ。日本にいるみんな、成長していると聞いている。海外で得た力を確かめるためにも、彼女らと競いたい」
2人の意見は一致。ならばこそ、僕はその願いを叶えるために動くと決めた。
まずはフェブラリーステークス。2月に開催されるダートのマイル戦。キタサンとドゥラ、どちらも出走登録をしてある。
「まずはダート最強のリッキーさんと!リッキーさんも楽しみだ、って言ってくれましたし、張り切っていきましょう!」
「タルマエを下したこともあるダートの英傑。相手にとって不足はない」
こちらも気合十分、といったところだ。
話はほどほどに、バスに乗り込んで学園に戻る。全員で理事長室に向かい、秋川理事長から労いの言葉をもらってから解散になる。
「それじゃあみんな。しばらくはトレーニングお休みにするから。自主トレをする時は、ケガだけはしないようにね」
「「「はい!」」」
こうして、ミーティアの海外遠征は本当に終わった。うん、お疲れ様だね。
◇
遠征から帰ってから早いもので年明け。今僕がなにをしているかというと。
「それではキタサンブラック、歌いますッ!」
「お願いします、お嬢!」
キタサンの実家に連れられた。なんでこうなったのやら。
時はさかのぼること年末。いつものようにスクラップブックの作成と残った仕事の片づけに勤しんでいると、キタサンからLANEが届いた。
【お父さんがトレーナーさんに会いたいそうです!年明けはあたしの実家にきてください!】
内容はキタサンの実家に来てほしい、というもの。なんで?と思わずにはいられないし、訳を聞こうにもキタサンのお父さんが会いたいから以上の理由は聞けず。
親御さんとしては心配なんだろう、どうせ他に用事もないし別にいいか、ということでお邪魔させてもらうことになった。まぁ、みんなの実家には一回は行ったことあるから今更な気がする。
結果、僕はキタサン家の宴会に参加しているところだ。キタサンが歌っているところを眺めながら、料理に手をつける。
そんな折に、厳格そうな男性が僕の方へと足を運んできた。さっきあいさつした、キタサンのお父さんだ。
「どうですか、高村さん。楽しんでいただけると嬉しいのですが」
「とても楽しいですよ。表面上はこんなですけど、内心すごく嬉しいです」
「ハハ、そいつは良かったです。あなたは世界に名を轟かせる名トレーナー、失礼があっちゃいけませんからね」
あんまり慣れてないからやめてほしい。確かに有名になってきたけども、むず痒くて仕方がないから。
「学園ではキタが本当にお世話になって。まさか、G1レースを10勝もしてくるとは」
「ご本人が頑張ってきた成果です。僕は、その手助けをしてきただけですから」
「ご謙遜を。いくら私でも分かりますよ。あなたのおかげで、キタサンはここまでの結果を出すことができた。本当に、ありがとうございます」
深々と頭を下げるキタサンのお父さん。これ以上の謙遜はさすがに失礼、素直に受け取る。
その後、気になるのはキタサンの学園生活。特にミーティアでのキタサンはどうか?という質問が多かった。お弟子さんの人達も気になるのか、何人かはこちらに話を聞きに来る。
「キタサンは恵まれています。同じチームに尊敬する先輩がいて、競い、高め合うライバルが、ドゥラがいますから。彼女の成長は著しいです」
「はっはっは!それは、今年のキタサンの活躍も?」
「体調、仕上がりと相談になりますが」
サトノクラウンやシュヴァルグランの成長もそうだし、元より強敵だったサウンズオブアース、下の世代からはサトノダイヤモンドにヴィブロスがいる。ヴィブロスはドバイのレースに出走予定だから、宝塚記念までは被らないだろうけど、それ以外はみんな日本だ。
全員が強敵。彼女らに勝つために、今年も一層励んで頑張らないとね。
「まずはフェブラリーステークス。コパノリッキーとの勝負になるでしょう」
「ほほう、リッキーちゃんですか。彼女もまた良いウマ娘です」
料理をつまみつつ、今後のレースの展望を語る。年明けから、中々にぎやかなものになった。
◇
年末。学園が長期休みで実家に帰ると、父さんから開口一番言われた。
「キタ、お前のトレーナーさんは年明け暇なのかい?」
「え、トレーナーさん?どうして?」
「いやなに、普段からお前が世話になっている礼をしたいと思ってね。年明けは都合がつきそうだから、ぜひウチの宴会に招待したいんだよ」
トレーナーさんを集まりに誘いたいというもの。普段あたしがお世話になっているから、というのと、お弟子さんの中に何人かトレーナーさんのファンがいるみたいで。一目会いたいらしいんです。
勿論、断る理由はありません!トレーナーさんも楽しい方がお好きでしょうし、これはぜひ誘わねば!
どうやって誘うか?これはもうストレートに誘います。凝った文章なんて送れませんし、何より回りくどくする必要がありませんから。
(宴会に誘うだけだもの。それに、日ごろのお礼もしないと!)
海外遠征でたくさん勝てたのはトレーナーさんのおかげ。そんな人を労いたいと思うのは当然のこと。ぜひともウチの宴会に来てもらわないと!
トレーナーさんはいろいろと聞いてきましたが最終的に快諾。お弟子さん達にもてなされて、我が家にやってきました。
「さぁさぁトレーナーさん!我が家だと思って、ゆっくり寛いでいってください!」
「うん、ありがとうねキタサン」
「今日はトレーナーさんが主賓。あたしも張り切って歌いますよ~!」
この日のために喉の調子を整えてきましたから!
「それでは、キタサンブラック歌います!ハァァ~~~ン!」
「いきなりお嬢の十八番だ!しょっぱなから飛ばしてますねお嬢ー!」
「……お嬢ってどういうことなんだろう」
別に深い意味はないと思いますよトレーナーさん。お弟子さん達が言ってることですので。
宴会は続く。とても楽しい時間が過ぎていく。ずっとこのまま、楽しい時間が続けばいいのになってくらい。
そんな折、ふと聞こえてきたのは父さんとトレーナーさんの会話。
「そういえば高村さん。年明けの都合は良かったのですかな?」
「と、いいますと」
「高村さん程のトレーナーとなれば、年明けでも忙しいのかと思いましてね。キタに頼んだはいいものの、来てくれるかどうか不安だったんですよ」
父さんの言葉……あ、確かに!?
よくよく考えれば、トレーナーさんは世界一の名トレーナー。パーティのお誘いとかもたくさんあるはず!
う、うぅん、やっぱり迷惑だったのかな?でも、迷惑だったらここには来てないかもしれないし……わ、分かりません!
ただ、トレーナーさんの言葉は。
「特に予定は入ってなかったので。年末と年明けはいつも空けてるんですよ、何があってもいいように」
「ほほう?」
「お偉いさんのパーティも、どうも肌に合わないので。担当の子達に誘われるか、友人に誘われてどこかに行くかしかしません」
「……はは、そいつは良かったです」
よ、よかった。特に迷惑ではなかったみたいですね。本当に良かったです。
(トレーナーさんはあたしたちを優先しますから。大事な用事があっても、あたしがお願いしたからこっちに来たってなったら、ちょっとへこんじゃう)
それでも、トレーナーさんが決めてこちらに来たのであれば精一杯もてなします!喉の調子も戻りましたし、もっと歌いましょう!
「トレーナーさん!こちらで一緒に歌いましょう!」
「……いや、僕は良いよ。キタサンだけでも」
「そうですか?じゃあ、トレーナーさんのためにたくさん歌いますね!」
こうして、年明けの宴会は過ぎていきました。今年もいっぱい頑張るぞ~!
徐々にペースを戻していく予定です。