ソシテアナタニ   作:カニ漁船

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ようやくこの話が書けた……オマタセシマシタ。


予選と突然の来訪者

 年が明けて、トゥインクル・シリーズの新しい1年が始まる、前に。グランドマスターズの予選会があった。

 全てのウマ娘、それこそ世界中のウマ娘を巻き込んでの開催となったグランドマスターズ。気づいたら凄い大規模なことになっていた。なんでだろうか?

 

「いや~、子羊くんの対象を世界に広げるという案は素晴らしいな!たくさんの参加者が集ってくれた!」

「管理するのも大変ね~。でも、これだけの子が参加してくれるのは嬉しいわ~」

「やはりウマ娘。競い合う本能を刺激されるのだろう。強敵との出会いが強くする……助力、感謝するぞ高村トレーナー」

 

 うん、僕のせいだった。ダーレーさん達に世界を対象にするのはどうか?と提案したのは僕だった。よし、もう気にしない方向性で行こう。

 そんなわけで、豪華になったグランドマスターズだけど。予選会では大きく分けて2つの部門で別れている。そこから距離別・芝ダート別に分かれていく感じだ。

 トゥインクル・シリーズ部門と、ドリームトロフィー部門。平たく言えば、現役のレースに出ているか出ていないかの違いだ。

 

(クラシックとシニアの混合戦。この予選を勝ち抜いた子だけが、グランドマスターズの本戦に進むことができる)

 

 そして、本戦では2つの部門で結果を残したウマ娘達が競いあうことになる。今なお輝くトゥインクル・シリーズのウマ娘達と、トゥインクル・シリーズで結果を残してきた怪物たちが集うドリームトロフィー。2つは完全に分けられているから、戦うことはない。それを残念に思っている人達は一定数いるみたいだ。

 それが、このグランドマスターズでは戦うことができる。だから、期待しているファンも多い。

 ミーティアのメンバーも勿論出走する。イクイノックス以外。彼女はまたデビュー前だから、そもそも出走できないんだけど。

 

「よ~し、頑張るぞ!」

「頑張ろう、キタサン。お互いに、本戦へと進もう」

 

 トゥインクル・シリーズ部門にはキタサンとドゥラが。長距離のキタサンに、マイルのドゥラ。2人は異なる距離を選んだようだ。

 

「腕が鳴りますよ~!バクシンバクシーーンッ!」

「ふぅン、ものの見事にブロックが分かれたねぇ。ま、同じだとしても私は負けないが」

「むしろ好都合ですわ。私だけ本戦に進むのも悪いですもの……ほほほ」

「自分が勝つ前提で話してますね」

 

 そして、ドリームトロフィーに進んでいるバクシンオー達も出走。ジェンティルとタキオンは同じ中距離、だけど予選は別ブロックみたいだね。タルマエは勿論ダート部門だ。

 リーダーであるバクシンオーはというと──長距離を選んだ。最も得意とする短距離ではなく、長距離を走ることを選んだんだ。

 どうして、と疑問に思うかもしれない。その答えはシンプル。

 

「キタサンッ!」

「は、はい!バクシンオーさん!」

「──本戦で待っていますよ」

 

 キタサンと全力でぶつかるためだ。キタサンの得意な舞台で、バクシンオーは真っ向から挑むことを選んだ。

 元々バクシンオーはキタサンに目をかけていた。成長させ、導いてきた。

 だからこそ、戦いたいのだろう。強くなったキタサンに全力でぶつかりたい。そのために長距離に出走する。

 自信満々に宣戦布告をするバクシンオー。キタサンは──同じように、自信に満ち溢れた表情で返す。

 

「はい!本戦で戦いましょう、バクシンオーさん!」

 

 宣戦布告を受けた。キタサンの目に揺らぎはない。バクシンオーに勝つという気概を感じさせる。以前よりも格段に成長していた。

 

(……楽しみだね)

 

 気づけば予選が始まる時間だ。さて、なにか1つ声をかけるとしよう。

 

「みんな、ミーティアという看板は気にしなくていい。ただ──全力を出してきて」

 

 返事はない。ただ、全員が笑みで答える。各々の戦場へと歩いていった。

 

 

 で、予選会の結果はというと。

 

「では!全員めでたく予選を突破したということで!不肖このキタサンブラックが乾杯の音頭を取らせていただきます!」

 

 全員見事に勝利して本戦出場が確定した。うん、嬉しいね。

 

 

 

 

 

 

 そんなグランドマスターズの予選会も終わり、今度はフェブラリーステークスに向けた調整を進めていこう、と考えていた矢先。

 

「すみません、ここがミーティアの部室ですか?」

 

 見知らぬウマ娘が訪ねてきた。大きなリボン付きのカチューシャに、吸い込まれそうな瞳が特徴的な子。

 少なくとも見覚えはない。ただ、聞かれたことには答えないと。

 

「そうだね、ここがミーティアの部室で、僕がトレーナーの」

「高村聖さん、ですよね?」

 

 どうやら向こうは僕のことを知っている……知らない方がおかしいか。有名なのと、特徴的に。

 

「そうだね。それで、君は?」

「あ、失礼しました。わたし、アーモンドアイって言います」

 

 あ、この子がアーモンドアイなのか。名前だけは聞いたことがあるけど、容姿は知らなかったから分からなかった。

 どうして名前だけ知っているのか。この子はトレーナー間で有名な子だからだ。

 文武両道、才色兼備。スター性も抜群の期待の星と呼ばれている子。それがアーモンドアイ。

 そんな子がどうしてここに?ひとまず、用件を聞いてみることにするか。

 

「君がアーモンドアイなんだね。噂は聞いているよ」

「あら、わたしのことを知っているんですか?」

「まぁね。君は有名な子だから」

 

 で、いざ用件を聞いてみると。

 

「ミーティアは世界最強のチーム。そこに所属しているウマ娘はみな一騎当千の実力者!なら、勝負です!」

「……うん?」

「わたしは強くなりたい。だからここに来ました!」

 

 ……つまり、バクシンオー達と勝負したい、ということだろうか?

 

「バクシンオー達と戦いたいの?」

「はい!最強が相手でも臆せず挑む。そして、わたしが勝ちます!」

 

 うーん、凄い自信だ。

 実力差を理解していない、訳ではない。むしろ実力差なんて痛いほど理解しているだろう。

 それでもなお挑んできた。ということはつまり。

 

(それだけの向上心がある、のかもしれない)

 

 こっちとしては、別に断る理由はない。

 

「いいよ。もう少ししたらみんなが来るから、その時に話をしようか」

「っ!ありがとうございます、高村トレーナー!」

「とはいっても、全員と相手するのはダメだから……今日はタルマエと戦おうか」

 

 今日のタルマエは軽いトレーニングだし、これくらいの併走は許容範囲だ。本人も……まぁ承諾してくれる、と思う。

 目を輝かせているアーモンドアイ。ほどなくして、みんなが部室に到着した。

 

「お疲れ様ですトレーナーさんッ!ややっ?新規入部の子ですか?」

「違うよバクシンオー。この子はアーモンドアイ。みんなと戦いに来た子だ」

「初めまして、サクラバクシンオーさん」

 

 戦いに来た、という言葉に反応するバクシンオー。満面の笑顔だね。

 

「そうですか!では早速「バクシンオーはまだだよ。タルマエとやらせるって決めたから」ちょわ~……」

「わたしは何度でも構いませんよ?勿論、全部勝ちますから!」

「こっちが構うかな。さすがに、まだデビューしてない子に無理はさせたくないから」

 

 こっちも膨れっ面。そんな顔で見ないでほしい。

 さてやろう、と思った矢先、タルマエに肩を叩かれる。誰にも聞こえないように耳打ちしてきた。

 

「ちょっとちょっと、大丈夫なんですかトレーナーさん?彼女まだ未デビューですよね?」

「まぁそうだね」

「そんな子と私達が併走しても大丈夫なんですか?しかも、なんでよりによって私なんですか?」

 

 タルマエの懸念ももっともだ。同じチームのイクイならまだしも、チームメンバーではないアーモンドアイが併走するのはいかがなものかと僕も思う。

 けど、これも学びだ。

 

「まぁ、相手してあげて」

「良いですけど……どうなっても知りませんよ?」

 

 アーモンドアイが欲する強さ。それを知るために、タルマエと併走をすることになる。

 

 

 それで準備を整えて併走が始まったんだけど……うん。

 

「ふ、ふぐぅ~……!」

「な、泣かないでくださいよ!罪悪感が酷いんですけど!?」

 

 アーモンドアイが勝てるはずもなく。タルマエにコテンパンにやられていた。実力差がありすぎるから当然か。

 さて、これでレースは終わった。後は改善点を伝え「もう一度です!」……おや?

 

「もう一度勝負ですタルマエさん!今度はもっと差を縮めます!」

「いや、流石に二度目は「お願いします!もう一度、もう一度お願いします!」押しが強い!」

 

 どうしよう。改善点を伝えようと思ってたのに、アーモンドアイはタルマエに詰め寄って勝負をねだっている。とてもこちらの話を聞きそうにないな、コレ。

 タルマエはさっきから困惑している。アーモンドアイの再戦要求を断ろうとしている。

 けれど、アーモンドアイは一歩も退かない。受けてくれるまで頼む勢いだね、アレ。

 

「どうにかしてくださいよトレーナーさん!元はトレーナーさんのせいなんですから!」

「お願いします高村トレーナー!タルマエさんともう一度併走を!」

 

 タルマエから助けを求められた。元々僕が蒔いた種だし、僕が収めるのが筋だ。

 ひとまず、アーモンドアイを宥める。

 

「いいかな、アーモンドアイ。まず何度勝負しても差は縮まらないよ」

「うぐっ」

 

 痛いところを突かれた表情。アーモンドアイとて分かっているだろう。自分とタルマエの実力差なんて。

 なのにどうして挑むのか?なんとなくの察しはついてるけど。

 

「けど、負けっぱなしは嫌です!せめてもう少し、あと少し差を縮めるまで!お願いします!」

 

 まぁ、そうだよね。さっきの必死さからなんとなくわかってたけど、彼女は相当な負けず嫌いの様だ。

 負けっぱなしは性に合わない、勝つまで挑み続ける。そんなタイプなんだろう。今もこうしてお願いしているわけだし。

 ただなぁ……さすがにレースとなると、アーモンドアイに分が悪すぎる。ドリームトロフィーの猛者相手に挑む気概は認めたいけど。

 

(かといって、退く気もないだろうし……なら、こうするか)

 

 今思いついた妥協案。これを提案するとしよう。

 

「ダメ。何回でも挑むのが目に見えてるし、そうなるとアーモンドアイにも影響が及ぶ。トレーナーとして許可できない」

「うぅ~……!」

「唸ってもダメ。ただ、代わりの勝負をしよう」

「「代わり?」」

 

 声を揃えるアーモンドアイとタルマエ。ここで提案するのは、レースではない別の勝負だ。

 辺りを見渡して、ちょうどよさげなものがあった。このサッカーボールを使おう。

 

「リフティング。これなら勝負の土俵に立てるでしょ?」

「高村トレーナー。さらっと戦いの土俵にすら立ててないって言いませんでしたか?」

「気のせいだよアーモンドアイ。とにかく、リフティングで勝負して。それができないなら、帰ってもらうよ」

 

 勝負内容をリフティングに指定する。これなら勝負になるだろう……U.A.F.でムゲンリフティングをしてたタルマエが相手になるけど。

 

「よ~し……!」

「まぁこれなら……」

 

 お互いに準備ができたようなので、さっそく勝負を始める。

 

「それじゃ──スタートっ」

 

 一斉にボールを蹴る2人。さて、この間にやることをやろうか。

 

「じゃあキタサンとドゥラは来て。今度のフェブラリーステークスの対策をするよ」

「はい!」

「分かった」

 

 相手が相手だから入念に準備しないと……あ。今気づいた。

 

(コパノリッキーを一番よく知っているタルマエが、今リフティング勝負している……!)

 

 何やってんだ僕。それくらいすぐに気づけよ。しかも始まってるから止めようがないし。

 しょうがないから、軽い説明だけして後は終わるまで待つか。

 

 

 で、勝負はというと。

 

「あっ!?」

 

 アーモンドアイの負けで終わった。どちらもいい感じにキープしていたけど、流石に経験の分タルマエが勝ったね。

 

「はい、私の勝ちですね。じゃあこれで終わりです」

 

 ボールを片付けて立ち去ろうとするタルマエ……の手を掴むアーモンドアイ。

 彼女はというと、子供が駄々をこねるような、癇癪を起こしたかのような。悔しさを顔に滲ませながら。

 

「もう一度、もう一度勝負です!今度はわたしが勝ちますから!」

「……勘弁してくださいよ~!」

 

 再戦の要求をしていた。恐ろしい負けん気である。

 

「どうしましょう?トレーナーさん」

「……彼女の負けん気を舐めてたね。相当勝ち気が強いみたいだ」

「あぁ。ウマ娘として大成するだろう」

「そういう問題かなドゥラさん」

 

 結局、この後トレーニングの妨げになるからと後日改めて勝負をすることに。タルマエはやっと解放されたと心から安どしていた……本当にごめんね。

 

 

 

 

 その日以降。

 

「さぁ勝負ですミーティアのみなさん!今日はオセロを持ってきました!」

「……誰が勝負します?私は一昨日やりましたよ」

「じゃあ私がやろうじゃあないか。丁度試験薬の開発が終わって暇していたところだ」

 

 アーモンドアイは度々部室に訪れては勝負を仕掛けるようになった。大体負けて帰ってるけど。

 負けたらまた部室に来る。なんなら勝っても部室に来る。

 

「……せっかくだし、ミーティアに入部でもする?」

「いいんですか!?世界最強のウマ娘達を近くで観察できるまたとない機会……ぜひお願いします!」

 

 そして、流れでメンバーが一人増えた。




投稿おさぼりしている間に4周年だったり色々ありましたが無事にオルフェを引いてアイちゃんを完凸して王の臣下になってます。
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