ソシテアナタニ   作:カニ漁船

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前回のあらすじ メンバーが増えた。


フェブラリーステークス

 新たに加入したアーモンドアイ。今日も元気にミーティアのメンバーに勝負を挑んでいる……レース以外で。

 ただ、彼女は注目株。動向が気になるトレーナーも多いだろう。

 期待の新星と呼ばれていた彼女が、突如としてチームに加入した。当然だけど、周りのトレーナー陣からは驚きの声が上がる。

 

「アーモンドアイがチームに!?あぁ、でもミーティアか」

「それなら納得だわ」

「なんなら一番加入しそうなところだ」

 

 ……妙に納得されていたけど。彼女の性格と目標を考えたら、僕のチームに入るのはほぼ既定路線とか言われてたな。

 僕のチームに入ったからって別に嫉妬されたりするわけじゃない。この辺は、キタサンやドゥラが入部した時とはかなり違うな。

 

(あの時は実績も何もない新人。今は、信頼されるだけの実績をあげることができたってわけか)

 

 ちょっと嬉しいものがあるね、うん。

 

 

 そんなこともあったけど、時間は過ぎていき。シュガーライツさんの手伝いに三女神様の手伝いであっという間に時間は過ぎていく。

 時間が過ぎればそう、レースの日が来るわけだ。

 日本に戻ってきてからの初戦、フェブラリーステークス。始まりのG1レースに、キタサンとドゥラの2人が出走する。

 

《晴れ空広がる東京レース場、G1レースフェブラリーステークスの日を迎えました。バ場は絶好の良バ場、1600mの距離をウマ娘達が駆け抜けます。本レースで注目されているのはやはり!》

《えぇ。海外遠征から帰ってきたキタサンブラックにドゥラメンテの2人。その2人を迎え撃つ砂の王者コパノリッキーとの対決でしょう。最初のG1がこの好カード、気にならないはずがありません!》

《キタサンブラックはドバイワールドカップを制した経験が、ドゥラメンテはBCクラシックを制しての出走!ともに切磋琢磨してきたライバル!もはやこの2人がダートを走れないと信じている人はいないでしょう!》

《ミーティアの時点で大体察しはつきますけどね》

 

 随分な言われようだ。間違ってないのがさらに困るんだけど。

 

「トレーナー。わたしもいずれはダートを走れるようになるのかしら?」

「……そのうちね。今はまだ適性がGだから無理だけど」

「G……でも!伸びしろはあるってことだものね!」

 

 アーモンドアイはやる気を出している。無論、彼女が望むのであれば走れるようにするのが僕の役目。全力を尽くすだけだね。

 ミーティアのメンバーは変わらない。バクシンオーの声援にデータを取るタキオン、獲物を品定めするように見ているジェンティルに、純粋に応援しているタルマエ。イクイとアーモンドアイの2人は勉強だ。

 タブレットを見ているイクイ。表示されているのは、コパノリッキーのデータ。

 

「ステータス上では、リッキーさんのステータスはキタさん達と変わりません。となると、勝敗を分けるのは」

「展開だねぇ。基本先行有利とはいえ、ドゥラ君の末脚は天下一品。それに、彼女が最も得意とするマイル戦だ」

「むむむ、そうなると、厳しいのはキタさんの方かしら?」

 

 アーモンドアイは、キタサンの方が不利だと判断したようだ。この意見は、他のみんなも一致している。

 

「このレースは3人のウマ娘が有力候補。キタさんとリッキー、そしてドゥラさん」

「キタサンとコパノリッキーの2人は同じ位置で勝負を仕掛けるタイプ……必然、競り合わなければならない」

「対して、ドゥラさんは他に警戒するような子がいません。後で走る不利もあってないようなものですわ」

 

 タルマエやジェンティルの言うように、他に有力候補がいない現状、ドゥラの方が有利だ。マークする関係上、キタサンはコパノリッキーと終始競り合わなければいけないのだから。

 

《各ウマ娘がゲートに収まります。ファンファーレが響く中一人、また一人とゲートに収まっていく》

 

 ドゥラが末脚を発揮するか、キタサンが脚を残すか。勝負の分かれ目はこの2点だ。

 

 

 全てのウマ娘がゲートに収まる。緊張がレース場を支配する中──ゲートの開く音が、聞こえたような気がした。

 一斉に駆け出す。ヒリついた空気が会場中に広がる。

 

《スタートしました!勢いよく飛び出したのは7枠のキタサンブラック、キタサンブラックが果敢に来ます!コパノリッキーも続いているぞ、キタサンブラックとコパノリッキーが早くも競り合うか?内枠のドゥラメンテは出遅れた。これは結構な出遅れ、後ろからのレースになります》

「わざと、ですわね」

「えぇ。内枠の不利をかき消すために、わざと出遅れた」

 

 フェブラリーステークスが幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 外枠からのスタート。とにかく良い位置につけたいあたしは、内へ内へと切り込む。

 

(ただ、やっぱり不利なのは変わらない。他の子達も好スタートだから、思うような位置につけない)

 

 最内はもはや取れない。なら、諦めよう。無理に攻めてスタミナを消費するのが一番の悪手だから。

 

 

 今回のレースで警戒すべきは2人。ドゥラさんは勿論のこと、リッキーさんを警戒する必要がある。

 

(ダート最強のタルマエさんにも何度か勝利したことがある。実力的には、タルマエさんと同程度に思っていた方がいい)

 

 脚質もあたしと同じ。逃げもできる先行型だ。

 同じ位置ということは、競り合う機会も多くなる。頭に入れておかなくちゃ。

 

(外を回っているあたしの方が不利。でも、スタミナ勝負ならあたしの方に分があるから……特に問題はなし!)

 

 リッキーさんは確認できる限り内にいる。当然だけど、かなり警戒されているみたいです。

 それはあたしも同じ。世界のダートで頂点に立ったあたしは、リッキーさんよりも警戒されてる。

 

(後ろの様子は……さすがに詳しくは分からない。でも、多分だけど)

 

 ドゥラさんの警戒は薄い。そう思って走った方がいい。

 ならば、やるべきはただ一つ。他の子達も外に振らせる!

 

《第3コーナーを曲がります各ウマ娘。先頭を走るのはリボンバラード、リボンバラードが2バ身のリードを保って逃げています。内に2番手コパノリッキー、ドミツィアーナ。外の4番手にキタサンブラック、キタサンブラックがここにいる。もう一人注目のドゥラメンテは最後方でのスタートです》

《序盤の出遅れですね。おそらくですが、この最後方を陣取るための出遅れでしょう》

 

 大外の捲りを封じ込める。単純だけどこれが一番効果的!

 勿論、完全に止めることはできない。ドゥラさんの末脚がどれほどの脅威かなんて、嫌というほど知っているから。

 それでも効果はある。やらないよりはマシ、です!

 

 

 レースはもうすぐ第4コーナー。そろそろあたしも、前に出る。

 あたしが前に出れば、つられるように他の子達も上がってくる。うん、これならできる。

 

(ここから先は消耗戦、あたしの土俵に引きずり込む!)

 

 早めに仕掛ける。消耗戦に持ち込めば、あたしの方に分があるから。

 周りもつられるわけにはいかない、って頭では分かっている。けど、ここで追わないといけないのを理解しているはずですから。

 さぁ、ここからお祭り娘の本領発揮です!

 

 

 

 

 

 

 第3コーナーの終わり際で、キタサンブラックが仕掛ける。消耗戦を仕掛けるかの如く、ロングスパートを仕掛けた。

 これに反応する外を走っていたウマ娘。キタサンブラックをマークしていた子達だ。

 ここで仕掛けるのはリスクがある。消耗戦が得意な相手の土俵で戦うのは、良い判断とは言えないだろう。

 だが、仕掛けなければ逃げ切られる。それだけの芸当が、キタサンブラックにはできる。

 

「こなくそっ!」

「好き勝手、やらせるもんですか!」

 

 追わざるを得ない。楽にさせないために、得意分野を発揮させないために。

 状況が目まぐるしく動く。

 外だけではない。内の状況もまた、変化が訪れる。

 

「うん、うん。外がつられたおかげで、道は見えた!」

 

 コパノリッキー。内の2番手に控えていた彼女は、前を走っていたリボンバラードが動いたことで道が開ける。

 すぐさま進路を確保。どこでも動きだせるように準備を進める。

 つられはしない。強者ゆえの余裕か、まだ控えていても追いつけると判断していた。

 

 

 第4コーナーを越えて最後の直線へ。先頭で入ってきたのは──キタサンブラックだ。

 

《最後の直線を迎えます。先頭で入ってきたのはキタサンブラック、キタサンブラックが先頭だ!リボンバラードを第4コーナーで抜き去って、キタサンブラックが先頭に立つ!後方からはドゥラメンテも上がってきているぞ、コパノリッキーも前に出る!》

 

 逃げていたリボンバラードを早々に捉え、先頭に立つキタサンブラック。2番手との差はすでに1バ身はつきそうな勢いだ。

 勢いは衰えない。末脚を維持したまま、東京レース場の直線501mを駆け抜ける。

 黙って指を咥えているだけではない。

 

「開運の兆し、見えたッ!」

 

 現役ダート最強ウマ娘、コパノリッキーが上がってくる。好き勝手にはやらせないと、キタサンブラックへと襲い掛かる。

 コパノリッキーだけではない。最後方からはドゥラメンテも飛んできた。

 

「……ッ!見えたッ!」

 

 最後の直線へと入った彼女は、大外から一気に捲って上がってくる。他のウマ娘が止まって見えるかのような末脚、幾度となく発揮されてきた彼女の本領だ。

 先頭キタサンブラックはまだリードを保っている。しかし、後方から上がってくるドゥラメンテの勢いには負けている。外を回らされる不利も、すぐになくなりそうな勢い。

 さらにはコパノリッキー。彼女もまた、内の経済コースを回りながら上がってくる。単騎で抜け出しているキタサンブラック、外から抜くのは容易だ。

 内から外から。強烈なプレッシャーを浴びせられる。そんな状況下で彼女は。

 

(負けないッ!)

 

 己の気持ちを奮い立たせていた。絶対に負けないと、このレースを勝つと闘志を燃やす。

 諦めの文字はない。ただ勝利を目指して走り抜ける。

 

《キタサンブラックが先頭だ、しかし内からコパノリッキーが並びかける。コパノリッキーが並びかける!だが並んでからが怖いのがキタサンブラック!またも発揮される驚異の粘り腰!外からはドゥラメンテが急襲!その差を5バ身、4バ身と詰めていきます残り200m!》

《勢いはドゥラメンテにありますが、これはどうか!?並ぶ間もなく抜き去るつもりです!》

《キタサンブラックまだ粘る、まだ粘る!消耗戦においては最強だキタサンブラック、コパノリッキーも抜き去りたいがなかなか抜けない!》

 

 その執念が、レースに表れるのだろう。キタサンブラックは並んでからが強い。

 コパノリッキーが並びかけるが、キタサンブラックを追い抜く決定打を発揮することができず。領域を切ってもなお、キタサンブラックは対抗するように領域を切る。

 

(早仕掛けなのに、それでも領域を使うスタミナがあるってこと!?)

 

 体力を著しく消耗する領域を、この局面でも使用できる。同じ域に到達しているからこそ、この情報には驚愕する。

 コパノリッキーは、追いかける。競り合うキタサンブラックに負けじと、勝つために競り合う。

 そんな2人に加わるように──残り100mでドゥラメンテが並んできた。

 

「あぁ、そうだ……この領分において、私は負けないッ!」

 

 勢いは2人以上。大外の不利を感じさせないスピードで、あっという間に2人に並んだ。

 

《さぁ外からドゥラメンテ!大外ドゥラメンテが飛んできた!2人に並ぶ、並ぶがここから先が苦しいぞ!》

《並んでもなお抜かせない2人の意地。3人の意地がぶつかっていますね!》

《残り50mを切った!勝負は3人に託される!3人が突っ込んでくる!誰に軍配が上がるのか!》

 

 大歓声。右も左も大きな声をあげて応援している。

 熱狂に包まれる中で、勝者は──高らかに拳を上げた。

 

《ドゥラメンテだドゥラメンテだ!やはり世界のマイル王は伊達ではない、ダートでもその強さを発揮したドゥラメンテだぁぁぁッ!!最後の最後にアタマ抜け出した!ドゥラメンテが強さを発揮しましたッ!》

 

 ドゥラメンテ。勝利の咆哮をあげる彼女に、東京レース場は喝采に包まれた。

 

 

 キタサンブラックは下を向いている。だが、その目は死んでおらず、むしろ闘志に燃えていた。

 

(ドゥラさんの実力を見誤っていたわけじゃない。きっと、仕掛けが遅かった)

 

 今回のレースをすぐに分析し、自分に足りなかったものを考える。

 次こそは勝つために。すでに次の戦いに向けての準備を整えていた。

 そんなキタサンブラックの前に、ドゥラメンテが立つ。

 

「キタサン」

 

 息が上がっている彼女は、キタサンブラックを見据えて伝える。

 

「私は、負けない。どこだろうと、たとえ君の領分である長距離だろうと。絶対に負けないっ」

 

 宣言。誰よりもライバルと認めているからこその言葉を放つ。

 キタサンブラックは──笑う。

 

「こっちこそ。いつか必ず、ドゥラさんからマイルのレースを勝つ。そして、どこだろうと負けないよ!」

 

 2人の戦いは、これからも続くだろう。そう思わせるやり取りだった。

 

 

 そして、忘れてはならないウマ娘。

 

「いや~……キタちゃん強くなったね。私でも負けちゃうとは」

 

 コパノリッキー。キタサンブラックとドゥラメンテの前に敗れた彼女は、健闘をたたえながらも。

 

「それでも、次やる機会があればよろしくね?今度はダート王者の威厳を見せちゃうから!」

「あはは。リッキーさんも油断できなかったんですけどね」

「あぁ。キタサンの粘りは良く知っている。並んでいたコパノリッキーもまた、強い」

「お、ありがとうね2人とも!よ~し、これからも頑張るぞ!」

 

 おー!と、3人はこぶしを突き上げた。そんな3人を微笑ましそうに眺めるファン。フェブラリーステークスの勝者は、ドゥラメンテ。




育成頑張ってたらこんなに遅くなりました。アイちゃんが強すぎて禿げる。
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