日本に戻ってからの第一戦はドゥラメンテに軍配が上がる。キタサンブラックをアタマ差で躱して、見事にフェブラリーステークスを制した。
キタサンブラックの走りは悪くなかった。コパノリッキーもまた、勝っていても全くおかしくないレースだった。
だが、勝ったのはドゥラメンテ。最後方からの直線一気で、見事にレースを制したのだ。
ちなみにこのフェブラリーステークス、久しぶりにミーティアのウマ娘が日本で走ったので、結構な話題を呼んでいた。
「いや~、何というかさ」
「結果はどうあれ、帰ってきた!って感じがするよな~」
「海外の経験を経て、さらに強くなりましたよね。これからのレースが楽しみ~!」
1年という長い間遠征をしていた彼女達。元からファンだった者たちは、久しぶりの日本で走る姿に感動を覚える。
次のレースに注目が集まる中、フェブラリーステークスのインタビューにて。
「ドゥラメンテの次走は高松宮記念、キタサンブラックは大阪杯を予定しています」
2人の次走が発表された。別のレースに出走するようである。
ドゥラメンテは突如現れた最有力候補に沸き、キタサンブラックは日本で研鑽を積んだライバル達との勝負に胸が高鳴る。
ファンはレースの日を待つ。2人のレースを楽しみにしていた。
◇
日本に戻ってきての初戦・フェブラリーステークスは、ドゥラの方に軍配が上がった。後方からの見事な追込勝ちだね。
「最後方に控えるためとはいえ、わざと出遅れるなんて思い切ったことをしたね、ドゥラ」
「だが、あの手しかなかった。内で好スタートを切れば、間違いなく囲まれる。そうならないためには、ワンテンポ遅らせる必要があった」
「こうして結果に結びついているんだから、言うことはないよ。レース運びも冷静そのもの、文句のつけようがない。この調子で頑張ろう」
見事なレースプランニングで勝利を手にした。ドゥラを褒める……尻尾がブンブン揺れているので、このまま褒めててもいいのだろう、多分。
ドゥラは見事だった。じゃあキタサンはダメだったのか?と言われるとそうじゃない。キタサンの方も、文句はないレース運びだった。
もし彼女に足りなかったものがあるとすれば、仕掛けどころだろう。今回に関しては、もう少し早めにスパートを切っても良かったのかもしれない。
「キタサンも、今回の敗北で学べることがあったと思う」
「はい。もっと自分の限界を見極めないと、ですね!」
「そうだね。今回のレースで、自分はまだまだいけると思ったのなら、次のレースで実践しよう」
キタサンの次走は大阪杯。ここには、サウンズオブアースが出走してくる。
「次のレース大阪杯……クラちゃんに、アースさんも出走してきますっ!」
「そう。キタサンにとってリベンジの機会になるレースだね」
かつて敗北した相手。リベンジする舞台になるわけだ。
キタサンもかなり気合が入っている。燃え上がっているのが目に見えて分かる。
「有馬記念では負けちゃいました。今回の大阪杯では、成長したあたしを見せますよ!」
「気合いが空回りしないようにね。ひとまず、大阪杯に向けて調整していこうか」
「はい!」
「あぁ」
余談だけど、サトノダイヤモンドは出走しないんだとか。阪神大賞典に出走して、天皇賞・春を見据えるプランらしい。
次走も決まって、さぁトレーニングの時間。今日は疲労が残っているから賢さトレーニングをする予定、なんだけど。
「も、もう一回!もう一回です!」
「アイさん、その負けん気は認めますけど、流石にこれ以上は止めた方が」
「嫌!ぜっっっっっっっっったいに、嫌!」
「ゲームにどれだけ気合いが入ってるんだい君は」
アーモンドアイがずっとゲームをやっている。イクイやタキオンに宥められてもこの通りだ。
ちなみに対戦相手はバクシンオー。
「ハーッハッハ!委員長は勿論構いませ「こっちが構うかな。次はドゥラ達のトレーニングに使いたいから」はいッ!分かりましたッ!」
暴れるアーモンドアイに関してはジェンティルが抑え込んで、2人にトレーニングという名の息抜きをさせる。あまり身体を動かさないトレーニングとしては最適なんじゃないだろうか?
僕自身、あまりゲームはやってこなかった身だけど、いざやってみると結構頭を鍛えられる。
(特にパズルゲームとか。落ち方とか次に落ちてくるブロックのことも計算して積み立てていく。頭を使うゲームだね)
やってみるまで分からないものだ。後は忍耐力を高めることもできる……大体が死にゲーとか覚えゲーに分類されるやつだけど。それらはストレスとの戦いになるから、あまりおススメはしない。
「ゲームでも最強は譲らない。勝負だキタサン」
「よーし、負けないぞー!」
余談だけど、この手のゲームで一番強いのはタキオンだ。というか、タキオンがほぼ一強を形成している。次点でタルマエ。
(素の頭の良さが発揮されてるなぁ)
そんなタキオンはというと、薬品片手に何かを探している。チラチラと僕を見ているということは、まぁそういうことだろう。
「さてさて、この試験薬“Ο”を誰に飲ませるか。ウマ娘に作用する効果を調べたいんだけどな~……チラ」
「僕を見てもどうすることもできないよ。他の薬と合わさることになるから、細かい効果は検証できないでしょ」
「ん~、ダメか~!」
別に薬を飲むことに抵抗はないけど、効果を見込めないなら飲む必要はないからね。
「仕方ない。じゃあ飲んでくれタルマエ君」
「なにがじゃあ、ですか。飲みませんよそんな怪しい薬」
「え~?ウマチューブのバズりネタに使えそうじゃないかい?【身体を虹色に光らせてみた!】とか」
「もう食傷気味ですよそれ」
誰のせいで食傷気味なのは言わずもがな。いや、食傷気味なのも大分おかしいけど。
日本に戻ってきてからも変わらず。
「おはよう、聖トレーナー。今日も手伝いに来たぞ」
「あ、シュガーライツさん。よろしくお願いします」
「これがフルダイブ型ロボットST-2……見るのは初めてね」
シュガーライツさんとのトレーニングに加えて、VRでは三女神様とのトレーニングが控えている。キタサン達のステータスもほぼ天井を叩いている、と言っても過言じゃない。なぜかいまだにステータスが上昇し続けているし、なんならチーム外のメンバーもそうなってるんだけど。
その点に関しては、もう考えることを止めた。なんか、触れちゃいけない気がするし。
「キタサンとドゥラはそのままゲームで。他のみんなはサティを含めてのトレーニングをしよう」
今日もトレーニングが始まる。
◇
そろそろ高松宮記念が近づいてきた頃のこと。
「そういえば、このチームはファン大感謝祭で何をする予定なの?」
「あぁ、そういえばもうすぐだね」
アイからファン大感謝祭のことについての疑問が出てきた。そういえばそんな時期か。
春のファン大感謝祭。トレセン学園の一大イベントで、こっちはスポーツ系、どちらかと言えば体育祭チックな側面が大きいイベント。種目も多数あり、申請さえすれば模擬店の出店も可能だ。
また、イベントでは担当しているチームで出店することも多い。天城さんのとこは確か、オーソドックスな執事喫茶をやってたかな。毎年中々な人気を誇っているそうだ。
そんな中、僕達はというと。
「決まったなにかはないね。基本的に、みんなが出たいものに出てるかな」
特に何も出していない。みんなそれぞれ気になるものに足を運んでいる感じだし……ただ、タルマエなんかは苫小牧物産展みたいなものを開いていたはずだ。
「しいて言うならタルマエが出店しているぐらいかな」
「今年も勿論出します!いずれは東京を超える勢いにしますよ!」
「……でも確か苫小牧って別の意味で有名な「アイさん。そこに触れたらダメです。タルマエさんが拗ねるので」わ、分かったわ」
いろんな意味で有名だよ。うん、いろんな意味で。
僕達のチームは特には出店していない、が。
「一応、理事長達からどうか?って声はあるんだよね。理由は大体想像つくと思うけど」
「世界最強チームの出店なんて、それだけでネームバリューが凄いからねぇ」
他のみんなからどうか?みたいな声はある。ミーティアが出店するなら絶対に来るとも。ただ、中々機会に恵まれないからなぁ。前回は海外遠征でいなかったから、そもそも参加もできてないし。
今年も今年で、シュガーライツさんのST-2お披露目会に出なきゃいけない。
「シュガーライツさんの件もあるから、今年も見送りかな。別に出せないことはないだろうけど」
「特に案もありませんからね。なにかあります?」
「別にありませんわ。私も出たい競技がありますので」
ジェンティルが出たい競技?何かあったかな、と少し考えたけど、そういえばあるな。ジェンティルが出そうなもので、なおかつ過去一盛り上がること間違いなしなイベントが。
「【火花散らす激戦必至!三冠ウマ娘の熱き戦い!】。えぇ、出ないわけにはいきませんものねぇ?」
「改めて、よくこんな企画通りましたね。かなり難易度が高いと思うのですが」
「そんなことないと思うよイクイちゃん。なんだかんだ三冠取ってる人たちみんなレース大好きみたいなとこあるから」
キタサンの言う通りで、実現自体は簡単だろう。問題は、出走するメンバーに声掛けする難易度があまりにも高すぎる点だけど。バクシンオーとかトウカイテイオーはともかくとして、メジロラモーヌやオルフェーヴルなんて話しかけるだけでも一苦労だろう。
ちなみにこの競技、題名通りに三冠を取ったウマ娘が参加条件である。うん、あまりにも難易度が高い。なお、天城さんのチームからは3人も出走可能である。凄いな。
で、何をするのかというと……障害物競走もどき、である。
「普通に走るかと思えば、借り物競走にパン食い競走……渋る人たちいません?」
「まぁオルフェーヴルは渋りそうな気がするよね」
実際のところはどうなのか分からないけれど。
今回のファン大感謝祭は、この競技が最も注目されている。そりゃあドリームトロフィーでも滅多に見られない共演なんだから、当然と言えば当然か。
僕のチームから出走できるのは、バクシンオーとジェンティルの2人だ。この2人も出走予定らしい。
「勿論委員長が勝ちますよッ!模範的な勝利をトレーナーさんにお届けしましょうッ!」
「あら、私も負けませんわよ?ほほほ……」
ジェンティルの目は笑っていない。お祭りであってもガチで勝ちに行く気らしい。
「さて、有用なデータを取らせてもらうよ?次のドリームトロフィーの参考になるからねぇ」
「私は出店があるので」
「……出走できない」
「あたしが盛り上げちゃいますよ!実況役で参戦です!」
各々こんな感じ。どんな結果になるのやら。
「ふーん……それなら、ジェンティルさん達の競技を見に行こうかしら」
「学べるものはあると思うよ。そもそもの趣旨がお祭りだから、そんなにないと思うけど」
「どうかしら?三冠ウマ娘と言えど、絶対に負けたくないはず!ならば、本気のレース展開がみられるかもしれないじゃない!」
間違ってないのがなぁ。というか、そうなる未来がもう見えてる。全員負けず嫌いなところあるし。
春のファン大感謝祭も予定は決まっている。先に高松宮記念と大阪杯が来て、終わればすぐにでも春の天皇賞だ。見据えるべきレースはたくさんある。
でも、ガス抜きも大事。楽しまないとね。
「感謝祭はみんな、レースのことを忘れようか。思う存分楽しんでね」
「はい!……あたしは先に大阪杯ですけど」
「私は高松宮記念だ。無論、勝利する」
2人の気合も十分。レースに備えて、万全を期そうか。
気づいたら横になろうとする癖本当にどうにかしたい。