ソシテアナタニ   作:カニ漁船

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進捗どうですか


クラシックに向けて

 皐月賞が近づいている今日、すでに習慣となったサティとのトレーニングをやっている。後は、朝霞さんのチームとの合同トレーニング。

 

〈ふっふっふ。ギムレットの提案のおかげで制動も上手くいっている!細かい動作もこの通りだ!〉

「わ~!すご~い!」

 

 型抜きを凄い速度で完成させているサティの姿……確かに凄いけども。本人達が楽しそうだから野暮なことは言わない方がいいか。

 そんな一幕があったけど、キタサンとドゥラは皐月賞に向けて、サウンズオブアースは春の天皇賞に向けて。各々のレースで結果を残すために励んでいる。

 

「ではアースさん、私と並走しましょうッ!この模範的な学級委員長が力を貸しましょうともッ!」

「あぁ……ッ!なんてエネルジコなメロディーア!どうか、私とアンサンブルを!」

「おっと?私の苦労が加速するのかこれは?」

 

 バクシンオーとサウンズオブアースの併走に絡まれるタキオン。すでにげんなりとしているけど、ドリームジャーニーが加わることで事なきを得たみたいだね。うん、良かった……本当に。

 

「余を退屈させるなよ」

「一緒に頑張ろうね~!」

「は、はい!お願いします!」

「遠慮は必要ない。全力でかかってきてほしい」

「誰に口を利いている?もとよりそのつもりだ……だが、その気概は認めてやろう」

 

 こちらではドゥラとキタサンがオルフェーヴル・マチカネタンホイザとトレーニングをしている。後のメンバーは補助だ。ジェンティルとワンダーアキュートがドゥラ達の、ダンツフレームとタルマエがサウンズオブアースのアシストについている。

 サティは、どっちもだ。正確にはサティも含めたエアシャカール達も、交互にトレーニングをしている。

 

〈スピードも中々のモノじゃないか?年明けよりも格段に向上しているはずだ!〉

「実際、結構な上昇幅だな。遊びに連れ出した甲斐があったってもんだ」

 

 メカウマ娘の性能は順調に上がり続けている。次のアップデートイグザム、の、前に。

 

「確か、お披露目会があるんでしたよね、シュガーライツさん」

〈あぁ、そうだな高村トレーナー。近い時期にメカエキスポというイベントがある。ロボット工学者たちの恒例イベントで、私にとってはとても重要なイベントだ〉

 

 全国から集まった技術者が自分の成果をお披露目する舞台。それがメカエキスポとのこと。【ST-2】は良い感じにスペックが向上しているし、多くの人に喧伝するには良い機会だろう。より多くの賛同が得られるはずだ。そうすれば、今よりももっと進歩した技術を使う可能性だって出てくる。

 けど、シュガーライツさんは最初気後れをしていた。上手く交流できる自信がないのと、シュガーライツさんの状態が理由で。もっとも、その問題はすでに解消済みだ。

 

〈当日はよろしく頼んだぞ、高村トレーナー、ハヤヒデ、タイシン。後はこの場にいないが、タルマエも〉

「はい。万全なサポートを約束しましょう、博士」

「いいよ。でも、アタシは移動のサポートぐらいしかできないから」

 

 僕とビワハヤヒデ、ナリタタイシンにタルマエがサポートとしてつくことになった。せっかくのお披露目の舞台だから、行かないのは損だろう。

 メカウマ娘は順調そのもの。アップデートイグザムも期待ができるし、なによりキタさん達に良い影響を与えているみたいだ。

 

〈さて、研究のレベルが進んだことでより高度かつ効果的なトレーニングを開発することができた。今から言うことを実践してくれ〉

「分かりました!」

「助かる」

 

 サティに経験を蓄積、さらには研究をすることで、より高いレベルでのトレーニングを可能にしている。効率的に、効果的に鍛えられている。

 

(ステータスも順調に上がっている。皐月賞までに、どこまで行くのか)

 

 最終的にステータス差のアドバンテージはなくなるとはいえ、上げられるだけ上げておきたいからね。その分、技術を詰め込むことができるから。

 

「よ~し、好調を維持するぞ~!バクシンワッショーイ!」

「バクシーン」

〈……え?私もか、私も言わなきゃいけないのか?アレ〉

「いや、必要ねェだろ。これ何回目だよ」

 

 皐月賞に向けて視界は良好、といったところだろうか。

 

 

 そうだ、朝霞さんがいるわけだし、今のうちに聞いておこう。畑のことについて。

 

「そうだ、朝霞さん。少しいいですか?」

「うん?いいよいいよ!何でも聞いてね!」

 

 屈託のない笑顔。眩しい。

 

「畑の方は「だだだ、ダメだよ!いくら聖君のお願いでも畑は手伝わせないよ!」……いえ、そういうわけではなく。畑の方は順調ですか?とお聞きしたくて」

「な、なんだそっちの方か……」

 

 ほっと胸を撫で下ろしている朝霞さん。そこまでのことなのだろうか。

 

「えっとね~、今のところ天城さんと倉科君が主導で頑張ってるよ。あの2人が先頭に立って良い感じに畑が成長してってる!」

「天城さんと倉科君、ですか」

「そう!だから2人の担当している子達はすっごく強くなってるんじゃないかな~?元々天城さんが育てる子って聖君に負けず劣らずヤバいけど」

 

 天城さんはシュヴァルグランとサトノダイヤモンド、か。倉科君はサトノクラウンだね。現時点での強力なライバル、キタサンとドゥラが来ないとしたらこの2人が来るだろうと予想されているのがシュヴァルグランとサトノクラウンだ。ステータス的には一段、二段と劣るけど、どうにかカバーしてくるだろう。対策も立てておかないと。2人とも弥生賞に出走するらしいし、偵察に行くのもありだね。

 

「野菜もすっごく美味しくなってて~、理事長も凄くご機嫌なの!」

「それは良かったですね」

「うん!」

 

 さて、と。トレーニングの様子は……問題ないね。全員順調そうだ。

 

「サウンズオブアースも頑張ってください。相手はゴールドシップですから」

「そうだね~。すっごく強いけど、頑張る!」

「はい」

 

 合同トレーニングはつつがなく終わった。

 

 

 

 

 

 

 1日、また1日と近づいている。決戦の日、皐月賞が。

 

(相手はキタサンにクラウン、シュヴァル。対抗として挙げられるのはこのあたりだろう)

 

 クラウンには朝日杯で勝ったが、だからといって油断はできない。ただ一度の勝利で慢心し、次戦った時に勝ちを落とすなどあってはならない。全てを万全に、対策は入念にしなければならない。

 

(トレーナーからもらった資料もある。これには、対戦相手となるウマ娘の詳細なデータが事細かに書いてある)

 

 作成するのもかなりの手間だっただろう。脚質から適性まで、さらには現時点の私の能力と比較したデータまでも書いてある。やはり、トレーナーの目は凄いものだな。普通は、こんな情報を得ることなどできない。

 

「ステータス上ならば、私とキタサンの圧倒的優位は揺らがない。だが、あくまでステータスはステータスでしかない」

 

 能力だけで全てが決まるのならば番狂わせなど起きない。あくまで指標の一つとして頭に入れておく必要がある……トレーナーからの言葉だ。

 

(……クラウンは後ろ、シュヴァルは前。つまりは、クラウンは私のマークにつく可能性が高く、シュヴァルはキタサンをマークする可能性が高いな)

 

 私の位置よりも少し前、差しの位置でレースをするクラウンが相手になるか。朝日杯での敗北がある以上、間違いなくマークしてくる。次に考えるべきは、どのようにして私を封じ込めに来るかだ。

 

「勝ちを狙うなら、できる限り内に収まりつつ私を外に振らしたいはずだ。それができるかどうかは別として、ベストな選択肢はこのプランになる」

 

 周りのウマ娘を使って私を外に振らす。これだろうな。なら、それを踏まえたうえでの対策、というよりは。

 

「いかにして私の勝ちパターンに持っていくか、だ」

 

 最後の直線を、大外一気で抜き去るスタイル。中山の直線だと、私のスタイルはかなりの不利を背負わされるが……問題はない。

 

「走りに磨きをかけた。私の走りは、誰にも負けない」

 

 揺るがぬ自信がある。私の走りならば誰にも負けないという自負がある。そう、キタサンにも負けない。

 

(最終的にはキタサンがどう動くか?だ。向こうは私のスタイルを熟知している。無論、私のパターンも頭に入れてあるだろう)

 

 ならばどうするか?答えは明白だ。

 

「キタサンの想像を超える。私の走りで」

 

 より強い力で押し通る。作戦は決まった、どうやって対策するかも決まった。ならば後は、真っ向勝負で押し切るのみ。

 

「勝つ。クラシックレースの全てを、な」

 

 その後はクラウンが帰ってくるまで対策をしていた。さすがに、彼女に見られるわけにはいかないだろう。

 

 

 

 

 

 

 う~ん……やっぱりドゥラさんだよね、最大の問題点は。

 

「キタちゃん、まだ勉強する?」

「あ、うんダイヤちゃん。もうすぐ皐月賞だから、準備は入念にしておきたくて」

「そうだよね。それじゃあ、私は先に寝るね」

「うん、おやすみダイヤちゃん」

 

 同室のダイヤちゃんが寝た後も、あたしは限界ギリギリまで対策を練る。

 シュヴァルちゃんにクラちゃん。どっちも強いし警戒しなきゃいけない相手なのは分かってる。でも、やっぱり一番怖いのはドゥラさんだ。ドゥラさんの末脚を、あたしは良く知っているから。

 

(併走で何度も見てきた。ドゥラさんの末脚を)

 

 併走での勝負は五分五分。あたしたちの間には差はないっていう証拠だと思う。

 

(どうやってドゥラさんの末脚を封じるか……やっぱり、スローペースを作るのが一番なのかな?)

 

 遅い展開を作って、あたしも十分な余力を残した状態で最後の直線に入る。そうすれば、ドゥラさんが末脚を発揮しても問題はない。前にいるあたしの方が有利だ。やっぱりこれになると思う。

 トレーナーさんからもらった対戦相手の資料を確認しながら、あぁでもないこうでもないと頭をひねります。トレーナーさんの資料は分かりやすいけど、難しいよ~!

 

(はぁ……でも、やることはほぼ決まってるんだよね。スローペースを作って、前有利な展開を作る。それがあたしの最善策)

 

 皐月賞の大前提はあたしがペースメーカーになること。ドゥラさんを封じるためには、他の子よりも逃げないとダメだ。そうじゃないと、有利な展開を作られちゃうかもしれないから。

 

(でも、無茶しすぎるのもダメだよね?自分のペースを乱しちゃったら……うぅ~!分かんない!)

「けど、みんな勝つために必死に悩んでるんだから。あたしも頑張らないと……」

 

 その後も寮長さんのチェックが来るまで対策を練っていました……寮長さんには怒られちゃいましたけど。

 

「レースの研究もいいけど、こんな時間までやるのは感心しないな、ポニーちゃん」

「は、はい。ごめんなさい……」

 

 ま、まぁ作戦は決まりました!後は実行するだけです!




いよいよ皐月賞
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