ソシテアナタニ   作:カニ漁船

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周りも進んでいくよどこまでも。


次走を見据えて

 天皇賞も無事に終わり、次のレースを見据えて出発、の前に。

 

〈おぉー、これがメカウマ娘のボディなんだね!〉

「はい!ついに完成しましたよ、三女神様!」

〈凄いわ~。ついにわたし達もリアルに侵攻ね~〉

「その言い方だと反逆みてェだな」

 

 シュガーライツさんが開発していた三女神様のボディがついに完成した。すでにAIの三女神様はダイブ済みで、感触を確かめるように動いている。いや、うん。

 

(凄いな。オーバーテクノロジーもいいところだ)

 

 少なくとも前世よりも何十年先もいってるスペック。開発したシュガーライツさんの凄さがよく分かるね。

 心なしか嬉しそうな三女神様達。すぐにでも走りたそうにしている、が。

 

「あ、でもあんまり激しい運動はしない方がよろしいです。もししてしまったら」

〈なにかあるのか?シュガーライツ〉

メカの方が出力に耐えきれなくて爆散します

 

 あ、さっきまで動き回っていたけど急に止まった。見事なまでにピタッと。爆散って聞いたらそうなるか。

 

「まだまだ試作段階ですからね。どうにか作ることはできましたが、強度自体はそこまでありません。身もふたもない言い方をすれば、脆いです。凄く」

〈そ、そうなんだね。でも、なんで爆散を?〉

「比喩表現みたいなものと思っていただければ。さすがに本当に爆散はしませんよ多分

 

 凄い小さい声でなんか言ったような気がするけど、いいか。

 気を取り直して。現実世界の方にこれたということで、三女神様達は大興奮だ。再開するように動き回って、感動に震えている、ように見える。メカだからさすがに表情は変わらないか。

 

〈これでいろんな子達をさらに導けるわ~〉

〈あぁ。サポートAIとしてさらなる発展ができるな!〉

〈まずは、ミーティアのメンバーで実験と行こう。構わないな?高村トレーナー〉

「勿論構いません。みんな、準備はできてますので」

 

 準備が整ったのでチームのトレーニングへと。シュガーライツさんにお披露目にもついてきてくれたエアシャカールも一緒だ。こうしてお披露目にもついてきてくれたので、エアシャカールはなんだかんだ面倒見が良い気がする。

 少しだけじっと見ていると、怪訝な表情をした彼女が睨み返してくる。しまった、流石に見すぎたか。

 

「……ンだよ?」

「いや、エアシャカールは面倒見が良いと思ってね。今日もここに着いてきてくれたし」

「そりゃ協力してンだから当然だ。ま、それとは別にメカ三女神のトレーニングデータももらえる。この機会を逃すわけにはいかねェ」

 

 なるほど。自分にも明確な利益があるからこそ、か。

 見られて困るものもないし、むしろどのような結果をもたらすのかは気になるところ。彼女のデータと僕の主観なんかを交えて、学園のレベルアップに努めないとね。

 

「そっか。それじゃあトレーニング終わりには」

「あぁ。いつものだ」

〈おーい、早く行こうか子羊くん!みんなが待っているよ!〉

 

 さて、話はこれまでにして向かうとしよう。三女神たちも待ちきれなさそうだし。

 

 

 いざミーティアのメンバーと邂逅すると、みんな興味深そうにしていた。

 

「おぉ!ついに完成したわけですねッ!」

「す、凄い。VRじゃない女神様がいるよドゥラさん!」

「あぁ。新鮮さを感じるな」

「三女神様の見た目でST-2のようなメカっぽさ。凄いですねライツ博士」

 

 冷静に考えて、三女神様が現実の世界にいるって凄い……いや、凄いなんてものじゃないな。歴史の証人レベルの出来事じゃないか?これ。

 なんにせよ、トレーニングをすることに。中心となるのはやっぱりキタサンとドゥラの2人だ。

 

「うおおおぉぉぉ!次走は安田記念、張り切っていこ~!」

「天皇賞は後れを取ったが、次は負けない。私の本領を見せてやる!」

「マイル戦でドゥラさんに勝ったことないからね。次こそ勝って、バクシンオーさんに並んで見せる!」

「させない!」

 

 次走は安田記念。状態を見て、出走できると判断した。宝塚記念はまた、安田記念次第だね。好調を維持したまま出走できるように、調整を頑張ろう。

 

 

 

 

 

 

 トレーニングの休憩中、今後のことについて考える。

 春天は無事に勝つことができました。得意な距離で負けるわけにはいかない、って意地がありましたから。ただでさえ慢心して負けたことがありますし、二度目はしないようにと張り切りました!

 勝因はなんといっても、あたしの得意な消耗戦に持ち込めたこと。マークが凄いキツかったけど、逆手にとってみなさんの脚を削った。その結果、レコードでの逃げ切り勝ちを収めました。

 やっぱり勝つのは嬉しい。ダイヤちゃんやドゥラさん達みたいなライバルと競えて、凄く楽しいって気持ちがある。

 

(いつかきっと、キタちゃんを超えてみせるよ、か。ダイヤちゃん)

 

 春天が終わって学園に戻った後、ダイヤちゃんから改めて宣戦布告されました。今回は負けたけど、この先勝負する時は負けない。あたしに、挑み続けるって言ってくれた。

 気持ちは折れていない。ダイヤちゃんは前を向いている。やっぱり、ダイヤちゃんは強い。

 

(だからこそ、絶対に油断しない。どんな距離でも、ダイヤちゃん相手に勝つ!)

 

 短距離でもダートでも!どこでもダイヤちゃんに勝ちます!

 

 

 と、ダイヤちゃんと次戦うのは多分宝塚記念。それよりも先に、考えるべきことがある。

 あたしの次走は安田記念。春のマイル王を決める戦いで、ドゥラさんが出走するレース。

 マイル。つまりはドゥラさんが最も得意とする距離だ。春天ではあたしが全力で挑めたけど、安田記念ではドゥラさんが全力で来る。どっちかというと、100%が120%になっている、って感じなのかな?

 ドゥラさんの120%は何度も体感している。それこそ、直近ではフェブラリーステークスがそうだ。

 

(ドゥラさんの全力。フェブラリーステークスでは、あたしが負けた)

 

 リッキーさんと競り合っていたから、展開が向いてなかった。そんな言い訳は出てこない。敗北は敗北、しっかりと刻まないと。

 ドゥラさんに勝つためには何が必要か?いろいろと考えなきゃいけない。

 

(まず、あたしに向いた展開にすることが絶対条件。マイルだけど、消耗戦に持ち込む)

 

 距離が短いからかなり難しい。スタートダッシュに優れているわけじゃないから、序盤から飛ばしてハイペースを取り続けるのも簡単じゃない。

 それに、あたしがどの距離でも戦えるのはみんなもう分かってる。だから対策も取られちゃうわけで、安田記念でも春天みたいにマークされることが予想されてる。もう自由に走るのは難しい。

 

(でもやらなきゃ負けちゃう。どうにかしてできないか考えないと)

 

 トレーナーさんと要相談、だ!

 

 

 次を考えていたら、休憩時間が終わったのか、トレーナーさんが呼びに来ました。

 

「キタサン。休憩終わりだよ」

「はい、すぐに向かいます!」

 

 よし、頑張るぞ~!

 トレーニングはライツ博士のサティ……だけではありません。なんと!今回は三女神様達も一緒にトレーニングをしています!

 VRでの姿を模したようなメカデザイン、一目で分かるボディです。

 

〈中々馴染んできたんじゃないか?〉

〈そうね。いろいろな動きができるようになってきたわ~〉

〈だが、あまり派手な動きはできんぞ。爆散しては敵わんからな〉

〈いや、それシュガーライツの冗談みたいなものだろう。誇張表現、ってやつだな〉

 

 ……なんか凄い物騒な会話をしているような気がします!爆散って何!?あのボディ爆発するの!?

 ま、まぁ気を取り直して。中に入っているのはVRウマレーターでいつも接している三女神のみなさん同様の性格。AI人格がそのままダイブしているから当然だ、って三女神様は言ってました。

 ボディの方はライツ博士特注のボディ。まだ試作段階らしいですけど、それでも十分凄いです!

 

「いずれは飛行機能も付ける予定です!空を飛び回るのも自由自在ですよ!」

〈シュガーライツ、その機能はいるのかな?〉

「要ります!なぁ聖トレーナー!」

「……まぁ、要るんじゃないですか?シュガーライツさんがこう言ってるので」

 

 楽しみだな~、そのうちST-2さんみたいに飛び回ることもできるのかな?可能性は無限大だな~!

 

〈それにしても、やっぱり感じるものが違うね〉

〈そうね。やっぱり、VRとは細部が違うわ〉

 

 三女神様達も楽しそう。こっちの世界にこれたことが、凄く嬉しいみたいです。

 トレーニングも手伝ってくれるそうで、相談にも乗ってくれる。

 

〈気軽に相談するがいい。我らはサポートAI、当然のことだ〉

〈相変わらず固いな~バイアリーは。ま、気軽に相談してくれよ〉

 

 相談、相談か。それなら、ちょうどいいかもしれない。

 

「あの、三女神様。ちょっといいですか?」

〈あら?どうしたのかしらキタサンブラック。どんなお悩みかしら?〉

〈現役最強と名高い君の相談とはねぇ。さ、ドンと任せてくれ!〉

 

 げ、現役最強なんてそんな大げさな……えへへぇ。

 相談は勿論次走のこと。現状を把握して、なおかつ勝つためにはどうしたらいいのか?今のあたしにできること、どうすれば勝ちの目が出てくるかを女神様達に聞きます。

 

「……というわけなんですけど」

〈う~ん、サトノダイヤモンドもそうだが、難しい質問ばかりだねぇ本当に。ま、全然構わないが〉

 

 ダイヤちゃん?ダイヤちゃんも似たようなことを聞いてたのかな?しゅひぎむ?とかで教えてくれませんでしたけど。

 

〈現状を分かっているうえで、俺達が君にアドバイスするなら──気負わずに行くことだ〉

「き、気負わずに?……そんなに気負ってたかな?」

〈君は無意識に気負ってしまうタイプだからね。期待に応えたい、目標や憧れに並びたい。そう思っているんじゃないのかい?〉

 

 ち、近いところはあるから否定できないっ。で、でも!そこまで表には出してませんから!セーフですセーフ!許容範囲許容範囲。

 

〈とにかく、ある武器で勝負するしかないわね。今回はマイルだから、長距離の様にはいかない。それは分かっているでしょう?〉

〈ハイペースで展開しても、スタミナを残せるから割り切って走ってくる。特に東京の直線は長い、追いつくのも容易だろう〉

 

 やっぱり、似たような結論になっちゃうのかなぁ?最適解が一緒なのは嬉しいけど、答えはどうしようもないって言われてるようなものだし。

 ただ、気になることを言われました。

 

〈消耗戦は難しい。それでも消耗戦に持ち込むのであれば……()()()()()()()()()()()

 

 さ、さらに割り切る?どういうことかな?

 

ぶっ潰れてもいいからとにかく逃げる。簡単に言えば、ダイタクヘリオスやメジロパーマーのような爆逃げをかますことだね〉

「……えぇ?」

〈おっと、懐疑的だね。だが、悪くない提案だと思うよ?俺は〉

 

 女神様から提案されたのは、後先考えずに逃げること。つまりは、大逃げのスタイルをすればいいというものでした。それはさすがに……?

 

(待って、よくよく考えたら……)

 

 距離が短いからスタミナが残る。だからドゥラさんは追いつくだけの脚を残せるってずっと考えてた。

 でも、スタミナが残るのは──あたしも同じ。距離が短い分、あたしもスタミナを残せるからもっと長く脚を使えるんだ。

 それに、限界を見極めることが必要だって考えていたはず。なら、大逃げはちょうどいい機会じゃないかな?

 そうだ、そうだ!今まで逃げと先行の位置に拘ってたけど、さらに前の位置でレースをするのも悪くない!

 

(勝つためにはどうしたら、って意識が先行しすぎて、割り切ることを考えてなかった!うん、これなら!)

〈その表情、覚悟は決まったみたいね?〉

 

 三女神様達は優しい表情、をしているような気がします。メカで表情は変わらないから、雰囲気だけど。

 女神様達のおかげで晴れました。安田記念の作戦、決まった!

 

「はい!ありがとうございます女神様!安田記念、頑張りますね!」

〈それは良かった。自らを信じれば道は必ず開ける。己の力を信じて、全力を出し切ってこい!〉

「はい!」

 

 激励ももらって、やることも決まった。なので!

 

「ひたすらに鍛えますよ~!バクシンワッショォォォイ!」

 

 安田記念までひたすらにトレーニング、です!




サトノダイヤモンド「キタちゃん、私はダートも短距離も走れないよ」
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