ソシテアナタニ   作:カニ漁船

80 / 92
今話にて、本作におけるラスボス共のスペックが明らかになります。


上半期の総決算

 宝塚記念も終わり、無事に上半期のG1レースは全てが終わったことになる。ジャパンダートダービーがあるけど、僕達の中から出走する子はいない。

 そうなると、次に待ち構えているのは。

 

「夏合宿ッ!1000m海上バ場の状態は凪!さぁ、共にバクシンしましょぉぉぉ……」

「あぁ!?待ってくださいバクシンオーさん!しかも勝手に新しいバ場を作ってるし!あたし達以外に走れる子なんて「負けません。最速は私です。ハァァァ!」なんかチームじゃない人が紛れ込んでる!?」

「ライトオ君だねぇ。バ場に関しては稍波、高波、荒波の3種もあるよ」

「バ場も何も海上ですよねあそこ」

 

 夏合宿だね、うん。バクシン水上理論に関しては、毎度恒例になってるし、気づいたらカルストンライトオも紛れ込むようになったね。

 ま、いつものことはいいとして。

 

「今回はアイとイクイを中心に、トレーニングを組み立てるつもりだよ。まだまだ本格的なものはしないけど、2人はそのつもりでいるように」

「もう見慣れた光景なのね……分かったわ」

「分かりました」

 

 ぶっちゃけた話、バクシンオー達はドリームトロフィーに向けた調整、キタサンとドゥラはステータスがほぼ頭打ちな現状、やるべきなのはメンタルトレーニング。陽が落ちてからでもできないことはない。

 ってなると、次を見据えるのが大事になってくる。近い将来、アイとイクイがレースで勝つために。

 

「適性、に関しては……今は考えなくても「そうはいかないわトレーナー!」どうしたの、アイ?」

 

 ぶっちゃけ後回しでもいい、なんて言おうと思ったら、アイに遮られた。えらく気合いが入っているけど……あぁ、なんとなく想像がつく。

 

「勿論、わたしも全距離走れるようにしてもらうわ!ダートもね!」

「……いいの?僕としては構わないけど、その理由は?」

「チームのみんなは走れるのに、わたしだけ走れないなんて負けてるみたいじゃない!そんなの絶対嫌よ!」

 

 そんなことだろうと思った。気合いがあるならいい、バクシンオー達に協力してもらって、夏合宿は適性上げに臨もう。

 アイは決まった。で、後はイクイだけど。

 

「私も、やります。偉大な先達に並ぶため、ですので」

 

 彼女も、アイと同じように覚悟を決めたみたいだ。なら、夏合宿のテーマは決まったも同然、だね。

 

(さて、そうなると……タキオンとジェンティルをサポートにつけるとしよう)

 

 あの2人は指導に向いているし、アイとイクイに技術も授けてくれる。タルマエも悪くないから、ジェンティルとタルマエをかわりばんこにつけるのが最適解、か。キタサンとドゥラはトゥインクル・シリーズのレースがあるから除外、バクシンオーは……うん。どうも感覚派なところがあるから、指導には向いてないかな。

 

(メンタル強化には一番なんだけどね。この辺は適材適所、か)

 

 頭の中で今後のプランを考える。今回の夏合宿も、忙しくなりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 メインはアイとイクイの適性改造、と決めた通りにトレーニング。

 

「さてさて、まずは長距離を走る心構えを教えておくとしよう。君達2人とも、長距離は苦手だからねぇ」

「もっとも、すぐに走れるようにして差し上げましょう。よろしくて?トレーナー」

「……さすがに夏合宿中は無理だからね?この合宿中に、適性Gから適性Aまで上げるなんてことはできないからね?」

 

 そんなあなたならできるでしょう?みたいな目されても無理なもんは無理だよジェンティル。本来、適性上げって結構厳しいものだし。みんなホイホイ上がっているように見えるけど、これでも結構苦労しているのだから。

 

(思えば、最初も割と手探り状態だったなぁ)

 

 バクシンオーを担当した頃にはある程度のノウハウは確立していたけど、資料を漁って徹夜したのは良い思い出だ。何かの役に立つかもしれないと、研究資料には全部目を通していたあの日に懐かしさがある。

 結果は、ご覧の通りだ。みんな結果を出せている。

 

「極論マイラーでも長距離は走れるよ。前例があるからねぇ」

「……え?本当ですか?」

「嘘じゃないよ。それこそ、トレーナー君がいる前からの記録だ。で、長距離を走るのに必要になってくるのは」

 

 タキオンの講座が始まる。アイとイクイは一生懸命、聞き漏らしがないようにノートを取っていた。

 ジェンティルも加えての講座、他のメンバーはというと、それぞれ調整をしている。

 

「バクシンバクシーーンッ!次のサマードリームに向けて、バクシンステイヤーですッ!」

「気合入ってるなぁ、相変わらず。ねぇキタさん」

「ワッショイワッショーーイ!スプリンターズステークスに向けてワッショイでーーすッ!」

「しまったこっちもだ!」

 

 バクシンオーはサマードリームの長距離部門、タルマエはダート部門だ。今回のダートは中距離らしいので得意分野だ。レースもそろそろ、夏合宿の半ばほどにあるから、気合がさらに入っている。

 キタサンとドゥラは次走のスプリンターズステークスに向けて。お互いにビーチフラッグをして、加速を鍛えている。一進一退、ではなく。

 

「また私の勝ちだな、キタサン。たとえトレーニングであったとしても、君に勝ちは譲らない」

 

 ドゥラが大きく勝ち越している形になる。ドゥラの方が加速力は上だし、この結果も当然というべきか。

 それでも、キタサンの目は燃えている。

 

「まだまだ!ここから五分に戻していくよドゥラさん!」

「フッ、それでこそ君だ。次、行くぞ」

「うん!よーし、頑張るぞ~!」

 

 ドゥラに負けないと、闘志を滾らせているみたいだ。こちらも絶好調、ってところだね。

 ……あの2人も、バクシンオーをスカウトした時からの間柄、か。

 

(チームの古株、ってところか。大した差はないけど)

 

 バクシンオーをスカウトしてから始まって、ドゥラとキタサンに手伝ってもらっていた日が懐かしい。2人はスカウトされたもんだと思っていたから、ずっと手伝ってくれていたことも。

 タキオンからの逆スカウトに、実績を積み上げた結果声をかけてきたジェンティルとタルマエ。海外にはヴェニュに、つい最近もアメリカのウマ娘をどうか見てくれ、とお願いされていたな。彼女はまだデビューしてないけど、VRウマレーターを介して今も指導をしている。

 

(嬉しい限りだ)

 

 気づけば僕自身も、かなり成長したように感じられる。無機質で、ただ作業のようにこなしていたあの日々はもうない。やりがいがあって、自分がいる意味があって、トレーナーという仕事を続けている。

 これからも、彼女達のために万全に。

 

(下半期のレース、そして──グランドマスターズ。特にグランドマスターズは、かなり凄いことになりそうだ)

 

 主に僕のせいで……いや、うん。まさか三女神様があそこまで強化されるとは思わなかったよ。というか伸びしろがあったことに驚きだよ僕は。

 

〈おやおや子羊くん。変な顔をしているね、どうしたんだい?〉

 

 気づけば三女神ボディ(メカ)を纏った三女神様達がいた。あれから改良を重ねたので、中々の強度を誇っているとはシュガーライツさんの話。

 

「……いえ、グランドマスターズが楽しみだな、と」

〈あら~、もう考えているの?勤勉ね、相変わらず〉

〈我々も、貴様のおかげでかなりアップデートされた。楽しみだよ……現代の彼女らと、対決する時が〉

 

 こちらも燃え上がっている。うん、頑張ってほしいね。

 

 

ダーレーアラビアン

 

適性:芝A ダートA

距離:短A マA 中A 長A

脚質:逃げG 先行B 差しA 追い込みC

 

スピード:UA3 1833

スタミナ:UD8 1589

パワー :UC2 1625

根性  :UD2 1527

賢さ  :UE9 1496

 

 

ゴドルフィンバルブ

 

適性:芝A ダートA

距離:短A マA 中A 長A

脚質:逃げB 先行A 差しG 追い込みG

 

スピード:UA1 1819

スタミナ:UD7 1574

パワー :UC3 1638

根性  :UD1 1511

賢さ  :UD2 1523

 

 

バイアリーターク

 

適性:芝A ダートA

距離:短A マA 中A 長A

脚質:逃げG 先行G 差しB 追い込みA

 

スピード:UA4 1848

スタミナ:UD5 1557

パワー :UC7 1676

根性  :UD3 1533

賢さ  :UE5 1454

 

 

 グランドマスターズも、盛り上がること間違いなしだ。

 

 

 

 

 

 

 滾る、滾る。沸々と燃え上がり、私の胸を高鳴らせる。

 春の天皇賞で見た景色が忘れられない。私の脳に、深く刻まれている。同チームのシュヴァルグランとサトノダイヤモンドには悪いが、私の興味は……キタサンブラックに向けられていた。

 初めてだ。ここまでかき鳴らされるのは。

 

(生徒会長としての私は、封印しなければならない。もし、いつもの私で挑んだら)

 

 負けてしまう。許されるべきではない。そんなことは、断じて認めない。

 

「まずは、サマードリームを取る。トレーナー君」

「……なんだい?ルドルフ」

 

 私の変化を感じ取っているのだろう。多くは語らずとも、トレーナー君は全てを理解している。私が何を考え、何をしようとしているのか。頼もしい限りだ。

 

「長距離部門には、バクシンオーが出走するそうだね?」

「そうだ。彼女が出走してくる。おそらくだけど、グランドマスターズを見据えて、だ」

「そうかそうか。それは重畳」

 

 気づけば、私は目を細めていた。さながら、獲物を狙う肉食獣のように。

 

「刻んでやるとしよう──皇帝の絶対を」

「それで崩れる相手じゃないけどね。なんにせよ、久しぶりだね。そこまで気合を入れるのは」

「心外だな、トレーナー君。普段の私も全身全霊を尽くしているとも」

「分かっているよ。ただ、心構えは違うだろう?」

 

 その通りだ。今の私は、自分勝手だからね。

 

 

 サマードリームトロフィーの日はほどなくしてやってきた。元より夏合宿の間に開催される、気づけばあっという間だな。

 現在私は5番手の位置。メジロパーマーの大逃げで展開されたレースは、かなり早いペースで進んでいる。

 

《サマードリームトロフィーもいよいよ大詰めを迎えました。メジロパーマーの大逃げを捕まえんと、サクラバクシンオーとメジロマックイーンが上がっていく!驀進王と名優が争う先行の位置、ビワハヤヒデもこの位置につけているぞ。その後ろにはシンボリルドルフ、そのルドルフをマークするようにライスシャワーがいます!》

 

 だが、()()()()。私の目に映るのはただ一つ──勝利のみ。

 

(どうも、マークされているようだが……知ったことか

 

 踏み抜く脚に力を込める。芝が抉れて、むき出しの土が姿を現す。

 大逃げのメジロパーマーは落ちてくる、他3人はこのまま脚を伸ばしていくだろう。

 脚に関しては五分。いや、サクラバクシンオーだけは、私すらも超えているかな?ただ、それはあくまで基礎ステータスの話、データだけのもの。

 

(これほどの気持ちでレースに挑むのは、いつぶりかな?)

 

 昂る気持ち、抑えられない激情。本能のままに走る今の姿。シリウスやラモーヌが見たら、なんて言うか。私らしくない、と笑うだろうか?

 しかし、もう抑えることはできない。この感情を制御することはできない。いいや、()()()()()()()()()()()

 私の道に、邪魔をするウマ娘が──4人。

 

「道を開けろ」

 

 渾身の力を込める。前を走るウマ娘との差は3バ身程。問題ない。

 

《最後の直線、先頭で入ってきたのはメジロパーマーですがっ!ここでサクラバクシンオーが来る!サクラバクシンオーが来る!メジロマックイーンも突っ込んできた!さぁ息をつく暇もない攻防が始まッ!?》

 

 全員追い抜くのだから

 

「スタートからそうでしたけどっ、変わりすぎでしてよ……ッ!」

「これが、本気を出した皇帝の圧っ、しかしッ!」

「バクシンバクシーーンッ!このままバクシンを貫きますよーッ!」

 

 あぁ、君らは変わらないな。だからこそ、私が()()()()()()()()()()()()

 

《シンボリルドルフだ、シンボリルドルフが来たッ!ここで上がってきたシンボリルドルフ!マークしていたライスシャワーを振り切って、シンボリルドルフが上がってきた!メジロマックイーンらをすぐさま捕まえる皇帝!シンボリルドルフの走りが、京都の舞台で炸裂する!》

 

 一人、また一人と追い抜いていく。

 

「ついてくっ、ついて……くっ!」

 

 ライスシャワーが懸命に追いすがるが、私には届かない。

 落ちていくメジロパーマーを横目に捉え、追いつく。

 

「負けんよ、皇帝!データを狂わされたとしても!」

 

 ビワハヤヒデ。

 

「長距離は私の庭、たとえ皇帝であっても、無礼は許しませんわッ!」

 

 メジロマックイーン。そして。

 

「バクシーーンッ!」

 

 サクラバクシンオー。古今無双の英傑たちと競り合い、後続からも迫ってくる強者を気にも留めず、ただ自らの走りに注力する。

 残り100m。私は抜け出した。

 

(抜け出したのであれば、やることは一つ)

「駆け抜けるのみ」

 

 領域はすでに全員切っている。私含めて、一人残らず。

 

《シンボリルドルフ、シンボリルドルフだ!圧巻とも言うべき皇帝の走り!サマードリームトロフィー長距離部門を制したのはッ!【皇帝】シンボリルドルフだァァァッ!1バ身差の快勝、これが皇帝の強さ!いかんなく発揮してくれたシンボリルドルフゥゥゥ!》

 

 ならば結果は、抜け出した私の勝利で確定だ。

 

 

 呼吸を整える。我ながら、久しぶりの感覚だ。

 

(全力を出す感覚が、ではない。これはきっと)

「会長さんッ!」

「っ、おや、サクラバクシンオー。どうしたのかな?」

 

 顔を上げて、サクラバクシンオーへと視線を向ける。彼女の目は、煌々と輝いていた。

 

「なんとも素晴らしいバクシンッ!ここに至ってもまだ、私はまだまだ教えられてばかりですッ!」

「それは、こちらも同じだよサクラバクシンオー。君の猪突猛進とも言うべきスタイルは、私も見習うべきだと常々思っている」

「そうでしょうともッ!なんといってもバクシンですからッ!」

 

 変わらない彼女。その目は雄弁に語っている。次こそは負けない、と。

 負けてやるつもりはない。この先も、私は勝ち続ける。

 

「次はグランドマスターズかな?今後もお互い、切磋琢磨して日々精進していこう」

「勿論ですともッ!」

 

 そう、誰が相手でもだ。

 

 

シンボリルドルフ

 

適性:芝A ダートG

距離:短E マB 中A 長S

脚質:逃げB 先行A 差しA 追い込みB

 

スピード:US5 1954

スタミナ:UC1 1614

パワー :UC2 1628

根性  :UD1 1513

賢さ  :UD4 1549

 

 

サクラバクシンオー

 

適性:芝A ダートA

距離:短S マA 中A 長A

脚質:逃げA 先行A 差しF 追い込みG

 

スピード:US7 1977

スタミナ:UD6 1568

パワー :UB1 1711

根性  :UD5 1557

賢さ  :UE2 1426




【悲報】ドリームトロフィー魔境問題【他も同じ】。おかしい、ドリームトロフィーはこんな魔境ではなかったはず……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。