そして世界を救うため~偽勇者として追放されたけど、俺に聖剣なんて必要ないし、何ならお荷物なんだが?~   作:ナカザキ

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11:これからの方針

 馬車での移動中、御者台に乗った商人たちが話しかけてきた。

 

「今更ながら恩人たちに名前を聞いていなかったな」

「シンデリカよ」

「アレインだ」

 

 商人たちが目を丸くする。

 

「アレイン? 勇者がそんな名前だったな」

「ありがたいことだよ。勇者さまと同じ名前なんて」

 

 俺は適当に口から出まかせを言う。商人は頷いた。

 

 

「間違いない。しっかし、残念だ。お前さん達聞いたか? そのアレイン様は、魔族にやられて亡くなったらしい」

「……へえ」

 

 なるほど。そういう感じになってのか。

 

「それ、本当の話か?」

「いや、噂だよ。前に寄った町で聞いた。ただ、聖女様から直にそう聞いたって奴はいたな」

「ふうん、でも、そりゃ大変だな」

「本当だよ。魔物に襲われたそばから言うのはなんだが、アレイン様のお陰でようやく王都周辺も落ち着き始めてきたっての…。新しい勇者さまが選ばれたらしいが、それも本当なんだが、どうか…」

 

 そんな話をしながら、俺たちは馬車での移動を続ける。商人から情報収集をするのはもっぱら俺だ。シンデリカは景色の方に夢中だった。

 

 商人たちの話をまとめると、どうやら俺ことアレインは魔族にやられて死んだことになっているらしい。そして、新たな勇者としてジークとかいう少年が聖剣に選ばれたんだと。なるほどな。そんなシナリオになったのか。

 

 ジークくんと聖女たちは亡き俺の意志を継いで魔族と戦う訳か、泣ける話だ。

 

 

 馬車に揺られて数時間、俺たちは商人たちの目的地である村についた。

 

 プエナ村と言うらしい。

 

 養鶏が盛んな地域らしく、ここの宿屋で出るチキンソテーは近くの村や町からわざわざ食べにくる人もいるらしい。商人たちはこのチキンソテーに使う塩や香辛料を売りに来たそうだ。

 

 折角なんで俺たちも食べてみようとシンデリカと話す。

 

 他種族の料理をエルフの彼女が気に入ってくれるといいのだが。

 

 エルレインやシンデリカとの野宿でエルフの料理を食べる機会が何度かあったが、彼らの料理は結構薄足だ。

 

 というか塩気がない。まあ、外部との接点を断った森の中じゃ塩を手に入れる機会なんて殆どないだろう。

 

 どの料理も薬草っぽい香りと味で、俺は普通に食べられるが人によっては好き嫌いが分かれると思う。

 

 

 商人と別れた時にはもう、日差しが赤くなっていた。俺たちは商人がおすすめしてくれた宿に向かう。幸い部屋は空いていた。

 

「一部屋で良いですか?」

 

 と、宿屋のおばちゃんは聞いてきたが俺は普通に、

 

「2部屋で」

 

 と答えた。

 

 商人を助けたお礼に心ばかりのお金を貰っていたので、それで宿代を払う。

 

 ……とはいえ残金は心もとないな。ここら辺はシンデリカと後で相談が必要だ。ちなみに俺が受付を済ませている間も、彼女はずっと宿の中をきょろきょろ見回していた。見るもの全てが珍しいのだろう。

 

 すぐに夕食の時間がやってきた。

 宿屋の名物料理であるチキンソテーは確かに絶品だった。

 

 肉の表面に塗された香辛料のさわやかな香りがまず鼻孔に届き、食欲を刺激する。皮はパリパリに焼かれており、フォークを入れると肉は簡単に切れた。口に入れると旨味のある肉汁がじわっと溢れ、香辛料の刺激が広がる。美味い。

 

「美味しいね、アレイン! 初めて食べる味だ」

 

 お姫様もお気に召したようだ。よかった。

 

 料理に舌鼓をうった後は、俺の部屋に集合した。

 

「話って何アレイン?」

 

 シンデリカは満腹になったからか、眠そうだ。

 

「これからの俺たちのことだ」

 

 真面目な話なので、俺は真面目な顔になった。

 

「はい」

 と、彼女も真剣な顔になる。

 

「ぷ、プロポーズとかではないわよね?」

 

 すぐに真剣な顔を崩して、ほんのり頬を朱に染めながらシンデリカが言う。お姫さまはそういうのに興味深々なお年頃のようだ。ぶっちゃけ、かわいい子は普通に好きだが、今はそういうのは求めていない。

 

「普通に違います」

「はい。普通にごめんなさい。真面目に聞きます」

 

 こほんと、咳払いして俺は続ける。

 

「俺の目的は世界を救うことだ。で、何をしたら救うってことになるかというと、魔族の王である魔王を倒すことだと思う」 

 

 魔族は元々、この世界にはいなかった。

 約40年前、魔王の復活と共にこの世界に突如出現した。

 

「魔王を殺すと、魔族たちもこの世界から消えるらしい。少なくとも伝説にはそう残されてる」

 

 魔王は千年前にも魔族と共にこの世界を襲ったらしいが、その際は勇者と聖剣によって討ち果たされたらしい。この伝説は、唄や壁画、伝承となって各地に残されている。

 

「だから俺の目的も魔王を倒すことなんだが、一つ問題がある。それは魔王の居場所が分からないってことだ」

 

 魔族の王である魔王だが、別に城を構えている訳でなければ、先頭に立って人間を虐殺している訳でもない。むしろ、先兵である魔族の陰に潜み、自分は姿を見せず、じわじわと人類を追い詰めている。

 

 魔族たちの口ぶりから、魔族から魔王と呼ばれる彼らの指導者がいることは、間違いないとされているが…。

 

「そ、それ、どうするの?」

「いや、本当に。どうしたらいいと思う?」

「ええ…?」

 

 まあ、ずっと森にひきこもっていたエルフに聞かれても困るよな。

 

「とりあえずは、出会った魔族をかたっぱしから殺していく」

「地道だね…」

 

 草の根活動だ。実際魔族なんて色々な意味で雑草みたいもんだしな。

 

「仕方ない。あとは…そうだな。魔王は北の方にいる、らしい」

「らしいんだ…」

「ああ。魔族は基本的に北から攻めてくる。最初に魔族が大規模に攻めたのは、国は北のレージル王国だ。今でもその一帯は国家の体を為してない。魔族の巣窟になってるそうだ。名のある魔族の中には、町1つを自分の支配域としてる奴もいるんだが、そんな魔族も北には数多くいる」

 

 あくまで傾向、だが。極論、魔族は世界の至る所にいる。

 

「このレージル王国の何処かに魔王はいるんじゃないか、とよく言われてる」

 

 そもそも現状、レージル王国に入った奴は殆どいないし、入っても誰も帰ってこないから、国内がどうなっているか分からない。

 

「なんで、当面の目的は北のレージル王国を目指しつつ、見付けた魔族や名のある魔族を兎に角狩っていく感じだな」

 

 その道中で魔王に関する何らかの手掛かりも得られるかもしれない。

 

「わかったわ」

 

 とりあえずの方針は決定した。

 

 

 次の日の午前中、俺たちは村の商店に行った。

 

 俺の旅の装束を買うためだ。今の俺は灰色のシャツに茶色のズボン、皮の靴という装備だ。夜中に聖女に呼び出され、そのまま大森林に飛ばされたままの服装である。エルフの都ではエルフの用意した違う衣服を着たりもしたが、都を出るときには着慣れたこの服に着替えた。

 

 マントやリュックサック、その他、旅に必要なものを買いそろえる。商人からもらったお金はこれで空っぽになった。

 

「これ使える?」

 

 とシンデリカはエルフの通貨を取り出す。俺は微笑みながら首を振った。

 

 綺麗な葉っぱだった。まあ、栞コレクターとかにはそこそこの値で売れそうではある。

 

 宿屋に戻って、何か仕事はないかと相談する。冒険者ギルドがあれば楽なんだが、この村にはなかった。

 

「できれば荒事か力仕事が良いな」

「そうねえ…。ここら辺はあんまり魔物も魔族もいないし。あぁ、そういえばグリーンオウルの番と子が最近森にやってきたとか聞いたけど…」

 

 それはさっき俺が殺した。

 

「あっ、だったら。ダンじいさんの様子を見に行ってくれないかい? 草原と森の境目に住んでいるじいさんなんだけど、ここ数日姿を見なくてね。少し心配で…」

 

 それ、孤独死してないよな。……まあ、数日なら遺体も傷んでないだろう。

 

 俺とシンデリカはダンじいさんという老人の家を目指して、村を出る。2、3時間ほど歩くとそれらしき家が見えてきた。

 

「……シンデリカまて。血の匂いだ」

「私は何も匂わないけど…」

 

 足音をできるだけ消しながら、家に近づく。獲物が俺たちに気付いて、逃げないためだ。

 

 バンとドアを勢いよく開ける。

 

 家の中には魔族がいた。

 そしてダンじいさん、だったもの(・・・・・)。明らかに人間で遊んでいた、愉しんでいた。

 

 

 魔族はぎょっとした顔をして、俺たちを見る。

 

 

「なんだ、おまっ―――」

 

 魔族が何と言おうとしていたか、俺には分からない。言い終わる前に、俺が魔族の頭を潰したからだ。部屋に飛び散った血痕が魔族のそれで上書きされる。こいつの言葉を聞きたくもなかったし、傍らの少女の耳に入れたくなかった。

 

「……こんなのばっかだよ、シンデリカ」

 

 俺は呆然とするシンデリカに言う。

 死体は先日の魔族の襲撃で見たはずだが、今回のこれは凄惨がすぎる。

 

 人が魔族に殺される。

 世界ではありふれたこと出来事である。だけど、こんなことはありふれてはいけないのだと、世界から無くなさなければいけないと、ステラは言うだろう。

 

「魔王、倒さなきゃね」

 

 その呟きに俺は無言で頷いた。

 

 

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