ひにん生まれの男の娘、剣術が最強なので辻斬りで無双します 作:上殻 点景
[強盗を、したいと思い、柵を切る]
暗闇が風景をそめて、月が出かかっている刻。
とある山奥の村は夜にも関わらず活気に溢れていた。
村の別名は【才を知る村】。訪れれば自分の才能を知れるという。
今日も噂を聞きつけ、多数の人間が昼夜を問わず訪れる。
村の入口では夜にも関わらず大行列。
そんな入口とは反対方向。
山に面した西側には、男の娘が一人。
村を大きく囲う柵の手前にしゃがみ込む。
取り出すは銀筒。行うは────柵の切断作業だ。
「ビーム・刀をお願い」
『任された』
ジジッ。柵を斬り進めるは極小のビーム刃。
目立たない様にゆっくりでの作業は疲れるのだ。
なぜこんな作業を? それは昼間に門番に追い返されたからである。
「(おいしいご飯、おいしいご飯、おいしいご飯♪)」
脳内には村の中にある食い物の事だけ。
漫画知識に支配された脳内は普通の食事では我慢できず。
見つけた村でおいしいご飯を頂こうという算段であった。
つまるところ、飯泥棒をする為に柵を切っている。
『周囲に同期できる機械があります』
『データリンク開始:失敗』
『一部の機能だけ使用できます』
男の娘。耳が機械音を捉える。
「銀筒、何か言った?」
『あァ、今それどころじゃねーんだ』
銀筒はビームの刃を極小にするで大変のようだ。
「私も頑張る」
『おう、頑張れ』
半分ほど柵を切断し、あと少し─────
「何をなさっているんですか?」
穏やかな声が、後方から届く。
(バレた⁉)
振り向けば少女。背は小さい、齢は十ほど。
言いくるめてしまえば、誤魔化せる年頃か。
「わ、私は柵の修理業者」
『それは無理があるだろ』
修理業者なら柵を切断したりはしない。
あまりにも浅はかないい訳である。
男の娘も無理を感じ、覚悟を決める。
「ごめん。見られたからには仕方ない」
『おまっ、ちょっ』
一閃。ビームの光りは少女の首を─────
「アレ?」
「ゴホっ、ゴホっ、何をするんですぅか」
少女は五体満足であった。首が斬られるどころか、傷一つ無い。
(確かに斬ったはず?)
「銀筒、出力弱めた?」
『俺はそんな事はしてないが』
ぐー。健気に鳴るは男の娘のお腹。
『パワー不足が考えられるな』
「草木はいっぱい食べたのに」
『草木は食べ物じゃないからな』
少女は体をまじまじと見つめている。
鮮やかな着物は夜によく合っており、髪は丁寧に纏められている。
山で遊ぶにしては綺麗がすぎる、一般的な感覚として感じるところだ。
「(先までただの少女にしか......)」
感覚のズレ。暗闇故に目が曇っていたと結論付ける。
「ええっと──────」
決心。少女は思い立ったように、男の娘に話しかける。
「この事を秘密にする代わりに、頼み事を聞いてくれませんか?」
掛けられた言葉は、取引であった。
◇◆◇
「こっちに来てください」
頼み事を聞くことを了承し、案内されたのは、森の中。
人手によるものか、地面が開けた場所だ。
「ここを掘ることは出来ますか?」
「あの、案内は?」
「その恰好では、少し目立つので」
少女から見ても、服装は先進的であったようだ。
ボロ服に愛着が湧いていた男の娘は、少々がっかりする。
「でもどうやって掘ろう」
『手で少しずつ掘ればいいんじゃねーの』
「銀筒......」
『いや俺はスコップじゃないんだけど』
「いい感じに頑張って」
『無茶を言うなッ』
結局、ビーム刀で地面を焼き切っていくのであった。
◇◆◇
[ここを掘れ、中身はなんだ、普通です]
バタン。蓋をこじ開ける。
埋まっていたのは五斗(約90L)の木箱。
中には、豪華で綺麗な着物、化粧品、紫の布に包まれた小箱。
「ざっくざく」
『人の心とかないんか』
「なんで?」
『どー見ても棺桶だろォ』
妙にビビっている銀筒。
疑問符を浮かべる男の娘。
気にせず中身を漁る、少女。
「この服だと目立ちすぎるから、肌着を主にして」
手際がいい。墓荒らしの才能がある。
男の娘は少女を評価するのであった。
「あっ、見繕ってる間に体を洗ってきてもいいですよ」
「体を? 洗う?」
「水浴びはご存じですか」
「お風呂は知ってる」
「風呂場は村の内部にしかないわね」
「お風呂ないの?」
「その代わり、外には川があるわ」
「川があるのっ」
ウキウキで水浴びをしに行く、男の娘。
銀筒すらほっぽり出して、夜の森を走り出す。
「あっ、もう行っちゃった」
『全く、この時期の川は......』
ちべたかった。帰ってきた男の娘はそう言い残し、ぶるぶると震えるのであった。
◇◆◇
[男の子、女装をすれば、男の娘]
服を着替え、身だしなみを整えた男の娘。
少女は案内を、男の娘は後に続き、トンネル内を進む。
「ほら、こっち」
「大きな抜け穴......」
歩くは洞窟に偽造された抜け穴。
ピュウと吹く風が冷たいながらも、繋がっていることを教えてくれる。
「昔、山城だった時の名残でね」
「つまりお城がある?」
「柵と陣だけの簡素な山城よ」
「お城がなかった」
「でも立派なお屋敷があってね」
「立派な、屋敷っ」
銀筒は疑問を投げかける。嫌な予感がしたといった所。
『まさか盗みに入るつもりか』
「ソンナワケ」
『隠す素振りをしたらどうだ』
「少しとってもバレない」
『前回ぶっ倒れて捕まったのは誰だ』
「あれはお腹がへったから」
冷たい銀筒。言い返す男の娘。傍から見れば独り言のヤバい人。
少女は訝しみ、こちらを見る。
「そこに誰かいるのかしら?」
「なんでもない」
男の娘。大きな野望を、小さな体に隠して答える。
ふーん。少女はジロジロ観察、ため息を一つ。
「にしても、馬子にも衣装を実感するわね」
男の娘が着るは、白肌着に、藍の留袖。
袖丈の不一致により、着崩す様子ではあるが。
「本当に男の方ですよね」
「うんうん」
留袖から覗くは、白い肌着、すべすべの白い肌。
肌着はわずかに盛り上がっているようで、わずかに動くだけで揺れている。
小さな肩は白くつるりとしていて、ぺろりと食べれそうなほど甘美であった。
控えめに言って、えっちである。
中身がアレでなければ百点。銀筒評価である。
「まさか私より似合ってるとは」
「えっへん」
ワイワイ。足取りは進む。
抜け穴を抜け、出口を開けると、村の小屋。
一歩、外にでると、賑やかな光景。
男の娘は好奇心と欲望をもって村に繰り出すのであった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字報告があると作者が喜びます