pixivに投稿したものと一緒です。
先生が指揮することによる優位性ってこんな感じだろうかと思って書きました。カイザーの工場に潜入するのでカ号作戦です。安直ですね。


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カ号作戦

 夜の森にヘリのローター音が鳴り響く。ヘリの中には先生とRABBIT小隊が搭乗していた。

「作戦目標をおさらいするね。目標はこの先にある工場で違法に製造された銃器の引き渡し先の資料を確保すること。前情報だと、資料は工場の中心にある管理室で保管されているみたい。可能であれば生産ラインの破壊をする。突然の依頼で申し訳ないけどよろしく頼むよ」

「問題ありません」

「報酬もばっちりだし私としても問題はない」

「せ、先生のお役に立てるなら」

「工場の破壊は任せてよ」

 ヘリは高度数十メートルでホバリングし、中から三人が舗装された道に下りた。森の中にしては広い道だ。最後の一人がホイスト装置を外すと、ヘリはそれを回収しながら再び空へ上がった。

「目標地点までここから直線距離で数百メートルだ。検問が二つある。気を付けて」

「了解です。RABBIT2は先行してください」

「RABBIT2了解」

 ミヤコの命令でサキは一人森に入って走っていった。

「私は右側を、RABBIT4は左側から向かってください。途中の検問を制圧しながら、目標の工場へ接近します」

「ら、RABBIT4了解」

「RABBIT3回収地点で周回する。援護が必要になったらいつでも言って」

「了解です。それでは状況開始」

 ミヤコの指示に従いで三人はそれぞれ森に入った。街灯など一切無く、星や月の明かりでは森の中を照らすことはできない。暗闇に慣らした目で僅かに見える地面の輪郭を捉えなら小走りで北上する。

 森を駆ける音、落ち葉が踏まれ飛んでいく音、僅かに聞こえる虫の音や風切り音、そして自身の呼吸の音が聞こえる。それでも普段の喧騒よりずっと静かで、自身が出している音が大音量じゃないかと錯覚する。乱立する樹木を避ける。一瞬飛び出した根が見えて咄嗟に飛び越えた。果たして本当にさっき見たのは根っこだったのか、ただの見間違いだったのか、そんなことを考える暇はない。

「サキの五十メートルほど先、丁度カーブを曲がった先が一つ目の検問所だ。敵は二人、道を挟むようにしてそれぞれ部屋の中にいる。そこまで苦労はしないはずだよ」

 先生からやけに詳細な情報が届いた。直後にサキから同じ報告が上がった。

「先生の言う通りだ。五十メートル先に検問所が見える。敵も確認した。全く、私の仕事を全部取られてしまうな」

「私語は慎んでください。ですが、そうですね。確かに先生の情報は正確ですし、RABBIT2は私と一緒に行動してもらいます。敵は私とRABBIT4で始末、合図はRABBIT2に任せます」

「了解」

「りょ、了解」

 更に先を急ぐと、サキが立っていた。サキはミヤコに気が付くと、持っていた双眼鏡を手渡し、指さした。その方向を覗くと、道路を挟むように小屋が二つあり、南側に空いた窓からそれぞれカイザーのPMC兵が見える。暗闇に慣らした目では検問所の明かりは酷く眩しかった。

 サキに双眼鏡を返すと、ミヤコはサブウェポンの拳銃を取り出してサイレンサーを取り付けた。

「南側の窓が開いているので、そこから攻撃します。私が右側を、RABBIT4が左を担当してください。射撃位置に着いたら報告を」

「了解」

 ミユの返事を聞いてミヤコは検問所への接近を開始した。なるべく音を立てないように慎重に近づいた。たった五十メートルの距離に何分もかけて移動する。これだけ静かだと、ほんの僅かな音でも気づかれる可能性がある。

「RABBIT4射撃位置に着きました」

「まだだ、RABBIT1が射撃位置についていない」

 ミユの報告が少しだけミヤコを焦らせる。しかしそれでも慎重に気づかれないように少しずつ、少しずつ近づく。気づかれにくくするために、少し迂回して小屋の入口方面から忍び寄った。そうしてやがて小屋までたどり着き、壁に張り付いた。すぐ横に窓がある。声を上げて報告するわけにはいかないので左腕を上げた。きっとサキが双眼鏡で状況を確認しているはずだ。

「RABBIT1が射撃位置に着いた。三……二……一……撃てっ」

 サキの合図に合わせて飛び出した。中にいたPMC兵に向かって三発撃った。サイレンサーをつけてると言っても音は大きい。しかしこの森の中ではそう遠くまで届かないだろう。左からミユの撃ったライフルの音が聞こえた。PMC兵は頭に三発喰らって崩れ落ちた。頭部が凹み中の機構が見えかけている。

「よし、二人とも倒したみたいだ」

 先生からキル報告が挙がった。ミヤコは拳銃をしまい小屋の中に入った。死体と化したPMC兵の背中を持つとそのままずるずると外に出す。森の中、道路からは木の裏側になるところへ死体を置いた。道路を渡り、反対の小屋の死体も片付ける。ミユのライフルを喰らったPMC兵は吹き飛ばされたかのように頭が北側の窓からはみ出ていた。

 二体目の死体を片付けたころ、ミユと合流した。

「このまま進みましょう」

「うん、了解」

 ミヤコはもう一度道路を渡った。サキが小屋の前で待っていた。二人とも何か話すわけでも無く、目が合うとすぐに北上を開始した。

 工場までの道はカーブが多かった。何故こんなにカーブさせるのか。何かしらの効果があるのだろうか。例えば遠くからの視線を切ることで遠距離からの狙撃を防ぐため。パッと思いつくのはこれだろう。ああやってカーブの先に検問を置いておけば強制的に交戦距離は短くなるだろうから。しかし真夜中にあれだけ煌々と小屋の中を照らしていては意味が無い。練度の問題だろうか。

 もう一つ浮かぶのは建築コストを抑える為。なるべく木を伐採せずに進むルートを模索した故のこのカーブの多さだ。目標の工場は森の奥深くに建設されており、重機が中々入れないはず。道路を敷設する際も相応の苦労をしたはずだ。そこでコストを抑える為、なるべく工事が必要ないルートを選んだ。

 どちらにしろ彼女たちには関係ないことだ。ミヤコは思考を捨て去り意識を目の前に移した。

「そのカーブを曲がったらあとはまっすぐな道しかない。その先が工場だよ。そこの検問はさっきと比べて厳重だから気を付けて」

「了解です。詳細は分かりますか?」

「検問は入り口の両側にあって、それぞれに二人ずついる。一人が外を見張って、もう一人は中で待機している構図だ。あと、サーチライトが設置してあって、入り口前約五十メートルほどは常時照らされてる。工場の周りは二十メートルにわたって木が伐採されてるから至近距離まで近づくのもちょっと難しいかもね」

「了解しました。作戦は直前で考えましょう。まずは近くまで接近します。先生、因みに敵の視線は分かりますか?」

「視線? どこ向いてるかってこと? いや流石にそこまでは分からないかな」

「分かりました。RABBIT2は到着次第検問にいるPMC兵の視線を確認してください」

「了解した」

 三匹の兎が森を駆ける。規則的な短い呼吸が聞こえる。銃を抱えたまま走るのは辛い。それに真下の視界が悪くなる。障害物に躓いて転ばないことを願うばかりだ。

 やがて前方から強い光が見えてくる。あれが恐らく先生が言っていたサーチライトの光だ。光は広範囲に及び、道路どころか森の中にまで届いている。三人は光を避けるように森を迂回した。そして工場まで二十メートル、丁度森が途切れる寸前の場所まで近づくことが出来た。

 木に身を隠し、サキが双眼鏡で検問所を確認した。

「外にいるやつは二人とも正面を向いているな。中にいるやつは……右側のは道路の方を向いている。左側はこっちからじゃ確認できない。RABBIT4、そっちから左側の小屋の中にいるやつを確認できるか?」

 ミユはスコープを使って検問所を確認する。

「えっと……こっちも道路を向いてるけど、若干下を見てるかも」

「だそうだ。どうする。敵は四人、こっちは三人。同時に撃つにしても一人は必ず残るぞ。それに狙撃が出来るのはミユだけだ。近距離ならともかく、この距離じゃお前も私も当てるのは難しいだろ」

「先生、工場の警備は何名いますか?」

「えっと……PMC兵が三十人ほど、あとは……あー、その便利屋68って知ってるかな?」

「便利屋? いえ、聞いたことないですが」

「まあ、僕の知り合いなんだけどね。彼女たちが工場内にいるみたい。多分僕たちの敵になるかな」

「先生のお知り合いという事は生徒ですか。少し厄介ですね」

「まさか彼女たちがいるなんて、ミヤコ達なら多分大丈夫だけど一応気を付けてね」

「問題ない。ただもう少し事前に作戦を練りたかったな」

「ごめんね、こっちとしても急な依頼だったんだ」

「問題ありません。先生、その便利屋68について教えていただけませんか?」

「分かった」

 先生はミヤコ達に便利屋68のことを話せるだけ話した。それを踏まえてミヤコはしばらくの間、目を閉じて作戦を練っていたが、やがて眼を開く。

「便利屋68のことは分かりました。なるべく広いところで戦った方がいいでしょう。工場の警備も三十人。これなら正面突破でも問題は無さそうです。RABBIT2はスモークグレネードを投擲、それを利用して敵の側面を取り一気に制圧しましょう。RABBIT4はスモークが出始めたと同時に前方の二人を狙撃してください。その後はまっすぐ管理室まで移動します」

「了解した」

「了解」

 ミユは狙撃体制に入り、小屋の前にいるPMC兵に照準を定めた。

「投げるぞ」

 サキがスモークグレネードを投擲した。地面に転がり数秒後、煙が勢いよく放出されだした。それと同時にミユが発砲。サプレッサーをつけても尚響く轟音と共に、小屋の前にいたPMC兵が大きくのけ反って倒れた。

 ミヤコとサキは煙幕を利用し、大きく右側から迂回した。検問所のPMC兵は突然目の前に現れた煙幕と、倒れた同僚に気を惹かれ、二人に全く気付いていなかった。

 ミヤコが目の前のPMC兵に向けて発砲した。発砲音に咄嗟に振り向いたが時すでに遅し、全身に銃弾を浴びて絶命した。そのままミヤコは小屋の窓から部屋全体に銃弾を浴びせた。まだ二人目が中に残っていると決めつけての発砲だったが、彼女の予想は当たっていた。突然の出来事に対応が後手に回っていたのか、未だに部屋にとどまっていたPMC兵が火花を散らしながら倒れた。

「このまま管理室まで向かいます。RABBIT4は後ろから援護を」

 意外に警報はならなかった。さっきの瞬間を目撃したものはいなかったらしい。思っていたより警備がずさんだ。森の中という事もあって、PMC兵たちもそこまで警戒していなかったのかもしれない。しかし銃声は聞かれたはずだ。やがて検問所を確認して異常に気付くはずだ。その前になるべく奥に潜り込む。もしくは先に警備と交戦を開始する。

 三人は近くの入口から工場内に入った。

 そこは思っていたよりも静かで、廊下は狭かった。ここは工場の生産ラインではない。

 廊下は非常に明るく、三人は思わず目を細めた。明るさに目を慣らすには少し時間がかかる。それでもなお疾走は続けた。

「その廊下の先にある角の奥から五人きてる。これは……多分向こうが先に曲がるかな」

「了解しました。全員、射撃準備」

 三人は意識と銃口を前に向けた。重心が目に向き、若干猫背になる。銃口のブレを抑えようと、銃を支える腕に力が入った。サイトを覗くことは不可能だが、きっと銃口と目線は一致している。

「来るよ」

 先生がそう告げると、三人の意識はより前に向いた。全神経が指にかかった。直後、三人のPMC兵が角から飛び出した。三人は反射的に引き金を引いた。数秒間射撃音が大音量で廊下に響き、PMC兵は倒れた。まだだ。先生の話によればあと二人いる。目の前で三人やられたのを見て咄嗟に留まったらしい。

「このまま突撃します」

 ミヤコは睨み合いではなく、突撃を選択した。

 ロボットに感情は無い。あったとしてもそれはそう見えるだけだ。感情を見せるのは主に表情だ。続いて言動だろう。特に言葉は声色で表情が分かりやすい。

 PMC兵に表情は無い。だから声色で表情を判断するのが普通だろうが、三人が角から飛び出してから発砲するまでの僅かな時間でPMC兵が言葉を発することは無かった。代わりに未だ銃を構えず、顔だけが彼女たちを向いていたその格好から読み取れる感情は驚愕だろうか、それとも恐怖だろうか。果たして彼女たちがそれに気づくことは無かった。

 壊れたPMC兵をそのままに彼女たちは先を目指した。

 工場の内部で発砲したのだ。流石に侵入者の存在を感知しただろう。それか、もうそろそろ検問所の異変に気付いたかもしれない。そんな思案をした直後、けたたましい警報が工場内に響いた。それは外からなっているものだが、建物の中でも十分に聞こえた。しかし彼女たちは気にせずに走った。普段であれば、敵の動きが活発になるため慎重に動かざるを得ないが、今回は先生がいる。彼がすべての敵の場所を教えてくれるので、変に警戒する必要が無い。

 残念ながら建物を経由して管理室にたどり着くことはできなかった。管理室は独立しており否が応でも外に出る必要がある。

 出口の前で三人は一度止まり、荒くなった息を整えながら先生に情報を求めた。

「そこから出たすぐのところに便利屋のメンバーが三人とPMC兵が十人ぐらいる。スナイパーのアルだけ、建物の二階にとどまってるみたい。南東側の建物だよ。多分検問所の方を見てるんだけど、すぐにミヤコ達の方面に向ける位置にはいる。それとまだ距離はあるけどミヤコ達の後ろからも敵が追って来てる。行動するならすぐの方がいいかも」

「分かりました。管理室はここから近いですか」

「うん。数十メートル。そこから出て北を向けば分かるはず」

「分かりました」

 ミヤコはそっと出口を開けた。先生の言う通り多くのPMC兵が見える。彼女よりも南側にいるのがほとんどで、二人だけ北側にいる。

「RABBIT2、スモークグレネードの残りは」

「あと三つだ」

「では、あのPMCとあのPMCの間に投げて下さい。煙幕放出後、あそこにいる二人を片付けて管理室まで直行します。RABBIT3も了解でしょうか」

「うん」

「RABBIT2お願いします」

 ミヤコとサキは位置を入れ替わりサキはスモークグレネードのピンを抜いた。一つを転がすと、すかさずもう一つ投げた。数秒後煙幕が張られ始めた。

「行きます!」

 ミヤコの合図で扉が開け放たれると、分断された二人のPMC兵と目が合った。三人は同時に発砲しPMC兵を片付けると管理室に向かって走り出した。

「社長! こっちにいた!」

 聞き慣れない言葉が聞こえた。いるはずのない女性の声、恐らく便利屋の誰かだ。

「気を付けて。アルが移動した。すぐに狙撃が始まる。南東側の建物、左から四つ目の窓だ」

 それを聞いてミヤコはちらりと後ろを向いたが、すでに煙幕の向うから弾幕が飛んでいる。確認する暇は無かった。幸い管理室と思われる建物前には何台か車が停まっていた。

「RABBIT2とRABBIT4はあの車で応戦を。データの確保は私が行きます。RABBIT4は便利屋のスナイパーの処理を優先してください。指揮権を一時的にRABBIT2に譲渡します。応戦は任せました」

「了解した」

「りょ、了解」

 サキは途中でグレネードを手に取り、煙幕の向う側に投げた。数秒後に爆発し、弾幕の勢いが少し収まった。そうして管理室の前に着くと、サキとミユは車の陰に滑り込み、ミユは体を縮めて窓ガラスに突っ込んだ。ガラスは簡単に破れ、ミヤコは単身中に入っていった。

 車に滑り込んだミユはすぐに先生の情報を頼りに南東にある建物の、左から四つ目の窓を見た。誰かがスコープを覗いているのが見えた。彼女はアルという生徒の姿を知らなかったが、その特徴的な外見とヘイローからアレがアルだと断定した。彼女はミユの存在に気付いているのか、否気づいていない。銃口はミユに向けられていない。ミユは即座にアルの頭部に照準を定めて引き金を引いた。弾丸はまっすぐ飛んでいき、アルの頭部にヒットした。アルは後ろへのけ反り、両手を突き出したながら倒れた。数秒間見ていたが、彼女が起きだす気配はない。

「RABBIT4敵スナイパーを制圧」

「よくやった。RABBIT1が仕事を終えるまで耐えるぞ」

 サキは車の陰から煙幕に向かって制圧射撃をしながら言った。ミユも車に隠れながらライフルでは効果が薄いだろうが応戦した。

 やがて煙幕が晴れてこようかというころ、一つの人影が煙幕を突き抜けてこちらに走って来た。

「ハルカ!」

「ハルカちゃん!?」

「よ、よくもアル様を……許せません許せません許せません許せません!」

「な、なんだあいつ一人で突っ込んできやがった!?」

 サキは狙いをその飛び出してきた一人の生徒に変えた。ハルカと呼ばれた彼女は恨みの言葉を叫びながら、サキの射撃に臆することなくショットガンをこちらに向けて走ってくる。何発か被弾しても決して足を止めることは無い。

「くっ」

 サキは車から体を乗り出したが、そこに大量の弾丸が飛んできた。間一髪隠れることが出来たがそれ以降少しでも顔を出そうものなら再び銃弾の嵐が襲ってくるようになった。

「駄目だ! RABBIT4代わりに対処してくれ!」

「りょ、了解!」

 ミユが体を乗り出した。彼女の影の薄さは異常だ。たとえ真後ろにいても気づかれることはできない。正面にいたとしても、気づかれるまでには時間がかかる。それに工場内には明かりがついているとはいえ、多少影になるところもある。余計に見つかりずらいだろう。

 ミユは走りながらショットガンを連射するハルカに狙いを定めて引き金を引いた。銃弾はハルカの頭部に当たり、彼女はひっくり返った。

「は、ハルカちゃん!?」

 機関銃を持っていた生徒が驚愕するのが見えた。

「スナイパーがいる。社長も同じのにやられた」

「でも姿が見えないよ」

「だから気を付けて。とりあえず射線を切ろう。敵はただものじゃないみたい」

 便利屋の二人はその場から退いた。おかげでサキも頭を出せるようになった。が、依然としてPMC兵は健在である。建物に残っていたであろう奴らも出てきて、今目の前にいるのは恐らく工場内にいる全兵力だ。

「ふう、助かった。便利屋は後二人か」

「うん。で、でも隠れちゃった」

「先生、位置は分かるか」

「えっと、そんなに遠くには行ってないね。東側の建物に避難したみたいだ。射線は多分お互いに通ってないかも」

「分かった。RABBIT1、記録はまだ集めきってないのか」

「もう少しで終わります。あと数分以内には完了するかと」

「くそ……思ったより袋の鼠だな。便利屋も想定より戦力が高い……癪だがしょうがないか。RABBIT3、聞こえるか」

「はいはい、ばっちり聞こえてるよ?」

「支援を要請する。RABBIT1がデータ収集を終わらせたらこのまま入口まで全力疾走する。だから目の前にいる敵を一掃してもらいたい」

「ほうほうほう! いいねえいいねえ、私好みの支援だよ。いやぁ、今日はずっと空で待機する羽目になるかと」

「いいからさっさと来い!」

「はいはい。あ、回収地点はどうする? 当初の予定だとリリースポイントと同じ場所だったけど。一掃するならそこまで遠くなくてもいいと思うんだけど」

「あーちょっと待ってくれ。RABBIT1、回収地点はどうする変更するか?」

「途中で制圧した検問所にしましょう。当初の予定より敵の数を減らせそうですし、追手も少ないでしょう」

「了解した。それじゃなるべく急いでくれ」

「りょうか~い。先生しっかり掴まっててね」

「う、うん」

 ミユとサキはミヤコとモエを待ちながらPMC兵を相手にした。とはいえ、いい加減車もボロボロになり、弾を貫通しだした。適当に撃っているのか、時折ミユのところまで飛んでくる。ミユは一人一人、丁寧に処理したが中々追い付かない。

「お待たせしました」

 ミヤコがドアから出てきて、サキの側に走って来た。それと同時に、工場の入り口側から一機のヘリが近づいて来た。そのヘリは工場の上空で止まると、集まっているPMC兵たちに向かって抱えていたミサイルを撃った。たちまち轟音が鳴り響き、大量の粉塵と煙が舞い上がった。

「PMC兵が全員倒れた。便利屋がまだ隠れてるけど今のうちに移動すれば多分問題ないよ」

 まだ煙が晴れないうちに先生がそう告げたので、ミヤコ達三人はその場から移動を開始した。伸びているハルカを避け、もはや原形をとどめておらず、地面の瓦礫と混ざってしまったPMC兵たちを飛びのけ工場を後にした。

 工場から離れると途端に静かになった。先ほどまでの喧騒が嘘の様だ。行きは騒がしく聞こえていた自身の走る音がまるで無音のように錯覚する。暗闇に戻り、街灯のない道をアスファルトとその横に生える樹木を頼りに南下した。

 追手は来なかった。それよりも工場襲撃を受け、別の場所から増援が来ることが懸念された。三人は走り続けやがて検問所にたどり着いた。そこには既に戻っていたヘリから下ろされた三つのホイスト装置があった。三人は各々で自身の体と装置を繋げ、ヘリに上がっていった。三人を回収したモエは足早にその場を立ち去った。

 生産ラインの破壊は出来なかったものの、主目標である卸先の記録を持ち帰ることが出来た。子ウサギ公園に戻った後、先生は報酬であった五日間、四人分の弁当を渡した。


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