アンケートの結果を見て、一応こちらのルートを先に書きました。
少女と向き合うことを決意した男は、いったいどんな目に合うのでしょうね?
読者の皆様が、このお話を楽しめることを祈っています。
男は決断をした。
彼女の善性を信じてみようと思った。
彼女は人ではない。しかし、怪物と断じるほど狂暴でも、残酷でもない。
むしろ、普通の人よりも幾分も優しく、献身的で。
心の透き通った【人間】だと感じたから。
故に男は今までの行動を改めて、もう一度だけ、一からやり直す決断をした。
フェイタルが求めるものを、出来るだけ。自分が返せるだけ返してあげようと。
そう決心したのだった。
男は自分の体を抱きしめながら、ぽつりぽつりと涙を流す少女の体を抱きしめ返す。
少女は何も言わなかったが、抱きしめる力が強くなったことだけは男にも感じることが出来た。
男は、少女に向かって言葉を紡ぐ。
お前は人類ではないかもしれないが、それでも心は人であり。
他の人の様に生きる権利があるのだと。
他の誰も信じないとしても、自分だけは信じることにしよう。
いままでごめんな。
そして、これからは。
お前を信じて、一緒に生きていこう。
そんな事をフェイタルに伝える。
フェイタルはその言葉を聞くと、顔を持ち上げる。
その顔は、涙でぐしゃぐしゃだった。
『ありがとう…ございます』
『本当に…ありがとう』
涙袋に大きく涙を貯めこみ、感極まった様子の少女は。
男からの言葉を聞くと、ただそれだけの言葉を言った。
―かと思ったら。持ち上げた顔を、勢いよく男の胸に埋める。
ウっ、男は胸に加わった衝撃でえずきそうになる。
しかし、ここでそんなことを言うと、全く恰好つかないので黙っておく。
そして、そのまま話し始める。
『…うぅ…!よかった~!!!』
『ずっと、ずっと!あなたが受け入れてくれるのを待ってたから!』
『貴方が、私を見てくれるこの日を!』
『良かった…本当に…』
『ありがとう、お兄さん!私を信じてくれて、私を…』
『認めてくれて!』
『本当に!本当に…!』
『ありがとう!』
自分の胸に顔を埋めながら同じような言葉を繰り返し言う少女に、男は少々驚いてしまう。
どうやら、男が思っていた以上にフェイタルは思い詰めていたらしい。
まぁ…いい機会だ。今ここで自分の過ちの清算や、彼女のストレス発散をさせておこう。
これから先、きっと二人で生きていくのだ。
今までの事に対する清算はさっさとしてしまった方が良い。
男にも、今までの仕打ちを申し訳なく思う気持ちくらいはあった。
自分なりには譲歩していたつもりだったが、それでも彼女の心や想いを踏みにじっていた自覚はある。
故に、男は目の前の少女からの文句を一身に受けることにした。
今まで彼女にしてきた分、彼女からの批判を受けるべきだろうと考えて。
男はハグをしたまま、少女の頭を撫でながら、こんなことを言う。
今まで…その…いろいろと悪かったな
こういっては何だが…無礼講というか、清算するというか
取り敢えず、色々と言いたい事があれば今、言って欲しい
これからは、真の意味で真正面から向き合うから
だから今までの事で文句があれば、ぜひ言ってくれ
これからは、正直に向き合うつもりだから。お前も素の自分を曝け出していい
男は禊を済ませるつもりで、少女にそう言う。
それを聞いた少女は、涙を拭うとこう言った。
『…私は、貴方に受け入れてもらった事実だけで、全てを許せますよ?』
『だって、これからは…私と一緒に生きてくれるのなら』
『今までの貴方の悪い事は、ぜ~んぶ忘れてあげますよ』
にこやかに少女は笑い、男は毒気を抜かれてしまう。
しかし、それではだめなのだ。
男はフェイタルと向き合うと決めた。
ならば、ちゃんと彼女の言葉に耳を傾け、この子の本心と向き合うべきなのだ。
そう思い、男はそれではだめだと少女に言う。
お互いのためにならないと。
少女は首を傾げ、男に問う。
『ええと…いいんですか?』
『そこまで言うのなら、私も思ったこととか、文句…いろいろ言っちゃいますけど』
『…私の本心を、ぶつけちゃいますよ?』
『聞いておいて、突っぱねるのはナシですからね?』
もちろん。
男はフェイタルを抱きかかえながら、彼女に肯定の返事を返す。
特に何も考えずに。
それを聞いた少女が、少し思案した後に言葉を紡ぎ始める。
『それじゃあ…』
『最初に。貴方、私とあった時から今に至るまで、ずっと私の事を気味悪い物を見るみたいな目で見てましたよね?』
『結構気にしてましたんですよ?貴方から嫌われてるんじゃないかって…私、ずっと不安だったんです』
『それについて、貴方の今の意見を聞かせていただけますか?』
まぁ、男だってこの言葉を言われるのは分かっていた。
誠心誠意、フェイタルに対して謝罪をする。
あの時はすいませんでした、今はお前を信じているから…
男が謝罪をすると、少女はにんまりと微笑む。
その表情からは、優越感などの好意的な感情が見て取れた。
『…ふふ、なんだかいい気分ですね。こうして、貴方が私の目を見て謝罪をするなんて』
『ようやく、私をしっかりと見てくれた、って感じがします』
…ずいぶんと趣味の悪い事で。
男はそう思うが、さすがに口には出さない。男が望んだことだ。
流石にこれでフェイタルに文句を言うのはお門違いだろう。
『じゃあ、次はですね…』
『そうだ…お兄さん、少し前に私の事を山に置き去りにしようとしましたね?』
『ねぇ…しましたよね?』
『ほら、目を逸らさないで、私と向き合ってくれるんですよね?』
『私、しっかり覚えてますよ?あの時の事』
『言うべきことがあるんじゃないですか?ねぇ…ねぇ?』
…
いや、違うんすよ。あの時はぁ…
男は無意識的に目を逸らしてしまう。
しょうがないだろう。怖かったんだもん。
あの時は、フェイタルに対して恐れの感情しかなかったし。
それ以上に、何とかして引き剥がしたいという想いが強かったのだ。
だからこそ、こいつを山に置いて家に帰ろうとしていたのだが。
けれど、人として見ると最悪な行いなことには違いなく。
咎められると何も言えない。
すいませんでした
男は素直に謝ることにした。
これに関しては何も言うことはない。何を言っても言い訳にしかならないだろうし。
ただ謝罪しかできない。
『…ふ、ふふ…』
『面白いですね…なんだか、ゾクゾクしちゃいます』
『大好きな人が、私に対して平伏しているの、いい気分ですね』
そうですか。
こっちは古傷を抉られてる感覚ですよ。
男は内心、そんなことを思う。
しかし、それは口には出さない。
フェイタルが満足するなら何でもよい。
男はそう思い、少女からの追求を一身に受ける。
そもそも男が希望したのが事の発端なのだが。
『それじゃあ、次は…』
フェイタルは次々に、男との生活で思ったことを述べていく。
そこには、男が一切記憶にない事なんかも含まれていて。
改めて、目の前の少女の記憶力の異常性を垣間見た気がした。
このままでは永遠に終わらない。そう思った男は、目の前の少女に終わりを切り出すことにした。
『次は…』
あー…フェイタル
そろそろ終わりにしてくれないか?
ずっと足に乗られていたから、膝が…
男がそう言うと、目の前の少女は少しだけ不満そうな顔をした後。
『…まぁ、ならしょうがないですね』
『この話題で最後にしましょうか』
そう言う。
膝からは降りてくれなかった。
『少し前、お兄さんが私を置いて、女性と二人で泊まりをしたことがありましたね』
『それについて、聞いてもいいですか?』
フェイタルがにこやかに男に問う。
顔が笑ってるのに目は笑ってない。
怖い。
ここまで触れられないから安心してたのに。
案の定、目の前の少女は忘れていなかったようだ。
勿論男は肯定の返事を返す。
禊を済ませるためとはいえ、男は内心これを始めたことを後悔していた。
『お兄さん、別に私はあの時に嘘をついたこと自体はもう怒っていませんよ』
『この質問は、あの時聞かなかったものについてです』
『あの時、泊りがけで何をしていたんですか?』
男は思ってもいなかった質問に、少しだけ驚いてしまう。
…何をしていたか…ねぇ?
別に悪い事はしていない。二人で本を読み、二人でご飯を作り、二人で風呂に入っただけ。
あとは隣同士で寝ただけだ。
それ以上でも、それ以下でもない。
しかし…しかしだ。
なんか、言わない方がいい気がする。
男はフェイタルが自分に向けるほの暗い熱情に、薄々気が付いている。
そんなこの子に、あの友人の話をしてもいいものだろうか?
そんな事を思っていると、男の腕からなんだか冷ややかな感触がした。
うん?
男が自分の腕を見ると、透明な触手が巻き付いていた。
…フェイタルの方をチラリとみる。
彼女は柔らかな笑みを湛えている。
男は一応少女に言う。
…あの、触手外してもらってもいいですかね
少女はその発言に対し、こう返す。
『先に私の質問に答えてもらっていいですか?』
『物事には順序がありますよね?』
少女は男の言うことを聞くつもりはないようだ。
こうなった彼女は、梃子でも意見を変えないだろう。
うっすらと嫌な予感がしながらも、男は大人しく、友人との事を話すことにした。
話せば話すほど、目の前の少女の顔に影が差す。
笑っていることには変わりないのだが、どんどんと黒い物が差し込んでいるような気が…。
『へぇ…それで…?』
『お兄さんは、女性と一緒に料理をして、一緒に食事を摂って…一緒にお風呂に入ったと?』
『と~っても仲が良いんですね?』
言葉遣いと見せてくる顔はお淑やかだが、その口調は一切優しくない。
少女は非常に興奮しており、何をしでかすか分からない危うさを醸し出している。
実際、その精神状態は彼女の肉体に如実に表れていて。
男の腕に巻き付いていたはずのその触手は、友人との話をすればするほど男の体を這ってきて。
最終的に、男の首筋にまで迫っていた。
…
なんか、様子がおかしくない?
さっきまであんなに感動的だったのに、なんか急にサイコスリラーみたいな雰囲気になってきたんだが。
男は寒気がして、少女を止めるために腕を上げようとする。
しかし、フェイタルの手が男の腕をガッチリと掴み、既に腕は上がりようがなくなっていた。
『ねぇ…お兄さん』
『私、色々と我慢してきましたよね?』
『少しくらい、欲張ってもいいと思いませんか?』
少女は陶酔したような表情で、男にそう問いかけてくる。
男は何が起きているのかはよく分からなかったが。
ただ、自分がとんでもない状況に追いやられていることだけは分かった。
お…落ち着け
取り敢えず、この首のこれを…外してくれないかな?
男はフェイタルにそう言ってみるものの。
『…ふ、ふふっ…』
『いいじゃないですか、別に。家族のちょっとしたスキンシップですよ』
『それに、貴方。私と向き合ってくれるんですよね?』
『私の本心を、受け止めてくれるんでしょう?』
『だったら、今くらい。私の言うことを聞いていて?』
そんな風に、一蹴されてしまう。
…これさぁ。
もしかしなくてもヤバくない?
黙るしかない男の脳裏に、そんな考えが浮かぶ。
男が考えている間にも、少女の話は続いていく。
『私は…自分で思っているよりも、自制の効かない生き物なのかもしませんね?』
『貴方と友人さんの話を、聞いていると』
『心の底から、煮え滾るような感覚に支配されます』
男の悪寒は加速する。
事態が、凄まじい速度で悪い方向に向かい始める。
『ねぇ、お兄さん』
『私…貴方の事が大好きですよ』
『今まで、ずぅ~っと、秘めていましたけど』
『貴方が認めてくれた今なら、貴方にぶつけてもいいですよね?』
よくないです
男は本能的に目の前の子が恐ろしくなってきた。
誰かが自分の事を、手のひらクルクル野郎と揶揄するかもしれないが。
こんなことになるとは思っていなかったのだ、許してほしい。
和解できると思っていたが、なんかそんな雰囲気じゃなくなってきた。
歩み寄ったら、相手が爆速で距離を詰めてきた。
進みだした暴走列車は止まらない。
男は自分の膝の上に乗った少女を止める術を持っていない。
『ねぇ、お兄さん』
『私は貴方の事が大好きです。どうしようもないくらいに愛しています』
『貴方の事で頭がいっぱいです、私に全てを与えてくれた貴方の事が愛しくて堪りません』
『でも、貴方はどうでしょう?』
『貴方が私に向ける感情は…』
『親愛でしかなくて…家族としての情でしかないのですか?』
膝の上に乗った、少女のような見た目をした何かが捲し立ててくる。
そんなことを言われても、現在進行形で自分の首に触手絡めてくる奴を異性として見れるわけないだろボケ。
しかし、今のこの子にそんなことは言えない。
さっき泣いていた時よりも危険な状態なのは明らかだった。
男が自分で、フェイタルに全てを曝け出してもいいといった手前、拒絶なんて出来るはずもない。
いや、しょうがなくない?
確かに何か熱情を抱いているのは分かっていた。分かっていたが…。
心のヴェールを剥いで、出てくるのがこれなんて想像できないって。
取り敢えず、当たり障りのない返答をしておこう。
まぁ…そうだな
男は、小さな声でそんな適当な事しか言えなかった。
だって怖いもん。どうしろってんだこんなの。
しかし、そんな風に適当に返したのが裏目に出た。
目の前の少女は、男の言葉を聞いて。
男の顔に、ぐっと自らの顔を近づけた。
『それって…』
『とっても不公平ですよね?』
『だって、私はこんなにも好きなのに』
『私には、貴方しかいないのに』
『貴方には友人がいて、多くの関わりがあって』
『それでいて、私が向ける感情よりも貴方が向ける感情の方が小さいだなんて』
『不公平です』
『妬ましいじゃないですか、羨ましいじゃないですか』
『貴方に愛してもらえる人が、貴方と対等でいられる人が』
『その分、私が優遇されたっていいじゃないですか』
『こんなに苦しんだんですから、少しは私が良い目を見てもいいじゃないですか』
目の前の人もどきは、そんな道理の通らない、奇妙な言動をし始める。
男が彼女を解き放ったことで、彼女が自らにかけていたタガが完全に外れてしまったらしい。
どうにかしたい、どうにかしたいがどうにもできない。
誰か助けて
音は膝の上で暴走するフェイタルを見ていることしかできない。
そして、少女の慟哭の矛先は男に向けられる。
『私を見てください。目を逸らさないで』
『私と向き合ってくれるんですよね?私の本心を聞いてくれるんですよね?』
『だったら、そんな風に見えないふりをしないで』
『貴方がこんな風にしたんです。貴方が創り上げたんです』
『この沸き立つ熱情を、この悍ましいものを』
『貴方が救ってください。貴方以外に救える人がいないんです』
光のない、欲望に満ちた目が男に向けられる。
男の腕は触手に押さえつけられ、少女の手が男の頭を掴む。
無理やり、男の視線がフェイタルに向けさせられる。
その時には、男が少女を見る目は、親愛から恐怖に変わっていた。
それをフェイタルが見逃すはずもなくて。
彼女の精神を悪い方向に刺激する。
『あぁ…その目、やめてください』
『不愉快です。私の事を、そんな目で見ないでください』
『その、とんでもないものを見る眼で、私を見ないでください』
『それじゃあ、昔と変わりません…』
『数日前の貴方と何も変わらない』
『貴方が言ったんじゃないですか。私と向き合ってくれると』
『貴方が、私の素を見つめてくれると言ったのに』
『だから、ここまで曝け出したのに』
『結局、その眼を向けるんですか?』
『何も変わらないんですか?私は…貴方にとって怪物のままなのですか?』
『それではダメ。ダメなんです。私は…』
『貴方に愛されたい。貴方に対等に見てほしい』
『だから、その恐怖と畏れが詰まった目で見ないで…』
そう言われても男にはどうしようもできない。
本能的に感じる恐怖を打ち消す手段を持っていない。
悍ましいものに対して、恐怖を抱かずにはいられない。
『あぁ…そうです。いい事を思いつきました』
『私たちって。もう認め合いましたよね?家族になりましたよね?』
『なら、もう躊躇う必要はありませんよね?』
『貴方自身が、私への怖れが止められないというのなら』
『私が、貴方を矯正してあげます』
『貴方の抱く恐れを、私が取り除いてあげます』
『これも一つの、愛のカタチですよね?』
『大事な人を、治療してあげるのも、一つの愛ですよね?』
もう誰にも止められない。
目の前の少女は、完全にタガが外れてしまっている。
男は必死に藻掻き、助けを乞う。
このままでは、取り返しのつかないことになるから。
けれど、一人でできることなんて高が知れている。
いくら藻掻き、叫ぼうとも結果が変わるはずもない。
『…暴れないで、五月蠅い口も塞いで…』
『大丈夫ですよ…そんなに急がなくても、私があなたを助けてあげます』
『麻酔もかけてあげますから…安心して眠ってください』
『次に起きた時には、生まれ変わっているはずです』
『全て、うまくいきますから』
少女の触手が開き、中から針のようなものが出てくる。
どう考えてもそれは安全なものではなくて。
まさしく、エイリアンのような。
むごーむごごっご!
口を塞がれた男が必死に伝える。
助けてほしいと、やめてほしいと。
しかし、その要求も空しく。
男の首に何かが突き刺さるような感覚と共に、男は微睡みに呑まれていった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
そして、男は朝日に照らされて目を醒ます。
自分の布団で、真横でぐっすりと眠るフェイタルを尻目に。
そうして、目覚めた男だったが。
…う~ん?
何か、大事なことを忘れているような気がする。
奇妙なことに、男は昨日の一部の記憶を完全に忘れてしまっていた。
具体的に言うと、フェイタルと向き合うと決めたあたりからの記憶がない。
何か…とんでもないことがあったような気がするのだが。
まぁ、忘れるってことはどうでもいい事なのだろう。
思い出そうとすると悪寒が走るし、気にしない方が身のためだ。
そんな思い出せないことに拘るよりも、これからの事を考えないといけない。
軍からも追われているし、今のままではまずいことくらい、男にだって分かっている。
情けない事この上ないが、友人や親友を頼る事も視野に入れる必要があるかもしれない。
まぁ…取り敢えず。
この子を起こして、朝食をとるとしよう。
男がフェイタルを揺らす。
いつも目覚めが良いこの子が、男よりも起きるのが遅いのは珍しい事だった。
『…むぅ…んん…』
『あぁ、お兄さん。おはようございます…』
『どうですか、体の調子は…?』
そんなよく分からないことを、フェイタルが聞いてくる。
どうもなにも、男は普段と変わらない。
いつも通り、元気だが
男がそう返すと、少女は嬉しそうに笑った。
『なら…良かった…』
『それじゃ…朝食を作ってきますね』
『その後に…軍からどうやって逃げるかを一緒に考えましょ…』
フェイタルは眠そうに目を擦りながら、キッチンに歩いていく。
あれ、俺…軍の話あの子にしてたっけ?
男はそう思うが、彼女に直接聞くのはやめておいた。
どちらにしろ、後で話すことだ。説明の手間が省けたと思うことにしよう。
さて、これから忙しくなる。
このまま、うまく逃げられるだろうか?
もしかしたら、一緒に逃げることが失敗して。
二人して捕まってしまうかもしれない。
二人とも殺されてしまうかもしれない。
…そんな悲観的な妄想が男の頭を過る。
しかし、男はかぶりを振って、その妄想を打ち消す。
やめだやめだ。そんな事を考えてもいい事なんてない。
フェイタルがいるし、自分には頼れる知り合いもいる。
きっと、うまく行くだろう。
男はキッチンで欠伸をしながら料理を作るフェイタルを、優しい目で見つめて。
これからの未来に、思いを馳せるのだった。
首に、仄かな鈍痛を感じながら。
はい。終わりでございます。
迷走に迷走を重ね、こんな訳の分からないものが出来上がってしまいました。
終わりよければ、すべて良しと言いますが。
これ、むしろ全体の出来を悪化させているような気が…。
迷走を続け、続編を示唆するホラー映画のオチみたいになってしましたが。
一応このお話は、これで終わりです。
あぁ、待って!石を投げる前に、ちょっと言い訳を聞いてくださいな…。
軍から逃げ切るまでの下りを書いてもよかったんですけど…。
ジャンルが変わっちゃうので…書かなくていいかなって。
この後の二人や、友人たちがどうなったのかは、おまけの方に書かせていただきますので…。
もしも興味があったら、おまけを見ていただけると狂喜乱舞します。
はい、石投げていいです。大変ごめんなさいでした。
それでは、ここまでのご閲覧。
大変、ありがとうございました!