サッカー描写が結構苦戦しちゃいますな
梢「まずはこのメンバーでやってみましょう」
5vs6の練習を始める。攻撃側は梢・レアン・果林・絵里・歩夢。守備側は綴理・さやか・恋・海未・塔子、そしてキーパー固定で四季だ。
圭助「…」ピー!
梢「いきましょう…!」
圭助が笛を吹いて開始の合図。攻撃側がボールを持って梢からボールをまわす。
絵里「勝負!って…」
ボールを受け取ったのは絵里。早速守備側と勝負、といきたいところだが…
塔子「みんな!レアンと梢センパイをマークだよ!」
さやか「はい!夕霧先輩!ダブルマークです!」
綴理「うん」
レアン「くっ!」
守備側の司令塔を担当することになった塔子。彼女の指示で守備側はレアンと梢を特に警戒して、2人に張り付く。ボールを持っている絵里には向かってくる選手がいない。
絵里「えーと、これはどういうことかしら…?」
梢「マークよ。特に実力の高い選手はボールを持たせないようにするの。そうすれば相手チームの長所を活かしにくくすることが出来るのよ」
絵里「そうなのね…でも、それじゃいつまで経ってもボールは奪えないわよ!」
さやか「ゴールも奪えませんけどね」
絵里「つまり…私達、いつまで経っても勝てないということ!?」
海未「その通りです。得点しなければいくらボールを持っていようと勝てません」
レアン「だからどうにかして抜け出したいけど…!」
綴理「ストップだよ」
マークを抜け出そうとするレアンだが、さやかと綴理が彼女の動きに合わせて動いて離れない。梢も塔子と海未に同じことをされており、攻撃に参加するのは厳しそうだ。
恋「油断しましたね!」ダっ!
絵里「まずい!」パスっ!
絵里が気づかないところから恋がボールを奪いに行っていた。絵里は咄嗟にボールを前に蹴り出す。
果林「大丈夫よ…!」
絵里の蹴り出したボールは果林がトラップ。
果林「これって…私達でシュートを決めればいいのかしら?」
梢「正解よ。マークされている選手は動けなくて活躍出来ないけれど、その分他の選手が動けるようになって活躍できるわ」
歩夢「ということは私と絵里さんと果林さんで四季ちゃんからゴールを取れば…?」
梢「ええ。特に上原さんと朝香さんはFWになったのだから、積極的にゴールを狙って欲しいわ」
果林「分かったわ…!」
マークされていないメンバーで四季からゴールを奪うことに。果林がゴールまでボールを運んでシュート体勢に。
果林「はあっ!」ドンっ!
果林は飛んできたボールを蹴り上げる。そしてボールは彗星のように輝くエネルギーを纏い、果林はそのボールにボレーを放った。
果林「彗星シュート!」
ドガァ!果林がボールを蹴ると、シュートは勢い良く四季に向かう。
四季「シュートポケット・Ⅴ2!」
ドンっ!四季の周りを前に見た時より少し強力なバリアが包む。シュートはバリアの中にいい音を立てながら入り込むが、勢いが殺されていき…
バシィ!
四季「よし…!」
四季が右腕でボールをキャッチ。果林との必殺技勝負に勝つ。
歩夢「止められちゃった…」
果林「まだ梢や綴理のようにはいかないわね…」
梢「綴理はね、とてもすごいのよ。身体もとても強いし、一度見た技を自分のもののように使えちゃうの」
さやか「夕霧先輩に、そんな力があるなんて…!絶対にわたしも身に付けたいです!」
綴理「さや…こずだって、とっても強いよ。いつも色んなものを使って鍛えてて、ボクより身体が強いんだ」
梢「綴理ったら、私は趣味で筋トレしているだけよ」
歩夢「す、すごいー…」
梢が綴理の、綴理が梢の良い所を言い合う。お互い他とは一線を画す明確な理由があるらしい。
果林(あれだけの実力に追いつかなきゃ…いえ、それよりもっと上にいかなきゃいけないのよね…)
果林は話を聞きながらそう考えていたのであった。ここに呼ばれた自身の役目を果たすためにやらなくてはならないことを…
花帆「四季ちゃん、すごいなぁ…」
圭助「ああ。キーパーがこれだけの実力をもっていると、安心感も出てくるな」
組み合わせを変えながら練習するところを見ていた2人は四季の実力に感心していた。そんな中、一度プレーを終えた梢が花帆のもとへ。
梢「そうだ、日野下さん」
花帆「うっ、今度はなんでしょーか…」
梢「この練習に一緒に参加してもらっていいかしら。攻め側が一人多いケースや、逆に少ないケースの練習もやってみたいの」
花帆「あ、あたしがですか!?」
梢は花帆も練習に誘う。現在GK固定の四季を除くと、実質5vs5で戦っている。しかし梢としては別のケースを試してみたいようだ。
圭助「実際の試合では攻め手が一枚多かったり、逆に少なかったりするケースがあるからな。そういう状況も想定した練習は良いと思う」
梢「今いるメンバーで1人移すと2人差が出てしまってさすがに不公平なの。大丈夫、少しだけ上原さん達と一緒にボールを蹴るだけよ。私もゲームメイクで手伝うから」
花帆「ううー。どうせ断っても押し切られるのがわかってるので、やりますけどぉ…」
梢「物わかりがよくって、本当に助かるわ、マネージャーさん」
マネージャーにしてはがっつりサッカーしている気がする。しかし手伝うと決めた以上、ちゃんとやることにした。
さやか「花帆さん、一緒に頑張りましょう!」
花帆「うん、足引っ張っちゃったら、ごめんね」
歩夢「大丈夫だよ!私もほぼ同じところにいるし」
フィールドに入った花帆。今度は梢・花帆・さやか・歩夢・レアン・恋が攻撃側、綴理・塔子・絵里・果林・海未、そしてキーパーの四季だ。
花帆「あのー、あんまり組み合わせが変わらない気が…?」
梢「私があっちに行ってしまうと攻撃の指揮をする人がいなくなってしまうから。財前さんがこっちにこないのも同じ理由よ」
花帆「さやかちゃん達が迷子になっちゃいますからね」
梢「そうよ。そして、経験者がどちらかに偏り過ぎても不公平だから…さやかさんやレアンさん、綴理をどう分けるかも考える必要があるの」
どちらか片方が強すぎると簡単に勝負がついてしまい、良い練習とは言えなくなる。こういうパワーバランスも考慮した結果、初心者組を少し動かす程度にとどまっている。
梢「…」パスっ!
再び攻撃側がボールを蹴り出して練習開始。ボールはレアンにまわる。
綴理「勝負だよ…!」
レアン「来た…!」
ドリブルするレアンに綴理が向かってくる。2人のマッチアップだ。
さやか「レアンさん!こっちです!」
レアン「ええ…」パスっ!
しかしレアンはボールを後ろに戻す。さやかが事前にその地点に走り込んでいたのだ。
さやか「いきます…!」ダッ!
果林「うっ!?…速いわね」
続いてレアンとは逆サイドに走り込む。果林が止めようとするが、さやかはあっという間に振り切ってしまう。
さやか「恋先輩!」パスっ!
恋「は、はい!」
その後さやかがパスを出して恋にボールを渡す。そしてすぐにまた走り込む。
海未「勝負です!」
恋「…ここです」パスっ
海未が恋に向かってくるが、マッチアップの前に恋は走り込んださやかのもとにボールを逃がす。
海未「なっ!?」
さやか「ありがとうございます!」
海未が足を伸ばしてもボールに届かず、さやかにボールが渡る。いわゆるワンツーでかわしたのだ。
塔子「さやか!あたしがボールを取るよ!」
さやか「!…乙宗先輩!」パスっ!
塔子がさやかに向かってくるが、さやかはパスを出してかわす。ボールは梢にまわる。
梢「若菜さん、今度こそ決めるわよ…!」
綴理「こず、止めるよ…!」
梢がメロディショットを放とうとするが、そこに綴理が向かって止めにかかる。
梢「日野下さん!」パスっ!
花帆「あたし!?」
梢はシュートを諦め花帆にパス。花帆は驚くが…
梢「日野下さん、シュートよ!思いっきり足を振りかぶってみて!」
花帆「わ、分かりました!やあぁー!!」
ドガアァっ!!花帆は言われた通り右足を振りかぶってボールをゴールに向けて蹴ってみる。
四季「はやい…!?」
花帆のシュートはパワーとスピードがかなりあった。梢のパスがフェイントになったのもあり、反応できない四季。
花帆「あーーーーっ!?ゴールの外に飛んでっちゃった~!」
四季「やっぱり外れた」
反応できなかったのではなく、枠外に逸れることを想定していたようだ。想定通り花帆のシュートは枠外に逸れて飛んで行ってしまう。
花帆「ぼ、ボール取ってこなきゃ~!」
フィールドの外に飛んで行ったボールをそのままに出来ないのですぐに走って取りに行った花帆であった…
梢「日野下さん、右足でシュートを撃つ時は左足をボールの真横か少し後ろに置いて安定させるのよ。左足の指先まで針金が通っているイメージでね」
花帆「そ、そうなんですね…」
梢「でもパワーもスピードもいい感じよ。もっとトレーニングすればきっとすごいことになるわ」
花帆「え、えへへ…」
花帆が戻ってきた後、シュートを正確に蹴る方法を教えつつ花帆を褒める梢。実際パワーもスピードも良いものであったらしい。
さやか(花帆さん、初めてのシュートなのにすごい…もしかして)
―花帆の部屋―
花帆「なんだかんだ、楽しく過ごしちゃってる、なあ…」
あれから数日。サッカー部の様々な練習をお手伝いして、その後自分の部屋に戻ってきた花帆。サッカー部に関わってから、自分がやったことについて色々考えていた。
花帆(お願いされて、また梢センパイやさやかちゃん達一緒にサッカーすることになっちゃったり…別の日には、ワンツー…というのをやるために一緒にパスをまわし合ったり…歩夢ちゃんや果林センパイ、四季ちゃんと残って、シュート練習したりとか…)
どうやらサッカー部の練習を自分も行うことがかなり多かった。時には居残り練習までして、本当にマネージャーとは言えないところまで来ているのだが…
花帆(…なんでだろ。虫の鳴き声しか聞こえないような、そんな山奥の学校なのに。こんなの、あたしが夢見てた世界とまったく違っているのに…)
花帆「はぁ…」
花帆はため息を漏らす。今自分がやっていることは、『花咲きたい』という自分の望みとは全く異なるものであった。しかし、それを楽しいと思えている。そんな矛盾に近い何かについて考えるが、その答えはまるで出ない。
花帆「転入手続きの締め切りまで…あとちょっとしかないや。練習試合と、ちょうど、同じ日…それまでに決めなくっちゃ、だよね」
花帆「でも、あたしは……きっと、花咲くんだ。そのために、ずっとガマンしてきたんだもん…」
今でも他の学校への転入は考え中の花帆。確かにサッカー部での出会いは良いものだったが、それでも蓮ノ空が規則ガチガチで窓に鉄格子まである牢獄のような学校であることに変わりはない。人生で一度の高校生活を捧げるかどうかは、当然彼女にとっては要検討になる。
ブーっ!ブーっ!考えている最中、花帆のスマホが振動する。母親から電話が来ていたようだ。
花帆「あ、もしもし…うん、あたし」
花帆母「ああ、花帆ちゃん。どう?そっちはうまくやっている?」
花帆「ぜんぜん平気だよ。なんの用?」
花帆母「ちょっと声を聞きたくなっちゃって。元気でやっているかなー?とか」
花帆「用もないのに電話してくるなんて、過保護だぁ…」
花帆母「これはそうでもないでしょう」
そう言って花帆は困り顔になる。いかにも久しぶりに声を聞きたい…的な電話だが、実際は花帆が実家を出てから1週間くらいしか経っていない。
花帆「っていうか!そうだ!ぜんぜん違うじゃん、蓮ノ空!」
花帆母「あれ、そうだったかしら?」
花帆「駅前にあって、ピッカピカの校舎で、なんだってできる自由な学び舎だって!ぜんぜん合ってないよ!なんにもできない不自由な牢獄みたいだよ!」
思い出したかのように母親に不満をぶつける花帆。どうやら母におすすめされて蓮ノ空に入ったらしい。
花帆母「いくらなんでも、そこまでは言ってないけど…お母さんが通っていた頃の思い出話を、したぐらいで」
花帆「ええっ!?じゃあ、あたしが勝手に思い込んでただけ…!?」
しかし実際は母の話を花帆が都合よく解釈してしまったらしい。気が動転している花帆だが、母はさらに言葉を紡ぐ。
花帆母「ねえ、花帆ちゃん。蓮ノ空はいい学校よ。きっと、あなたがやりたいことだって、見つかるはずだわ」
花帆「…」
花帆母「ね、いい出会いはあった?」
花帆「それは…」
迷いを抱えたような表情をして母の言葉を聞く。母の質問には、思い当たる節があり過ぎる。
花帆「ともかく!そっちがその気なら、こっちだって考えがあるんだから!お母さんやお父さんの言うとおりになんてならない!あたしはあたしの力で花咲いてみせるから!」
しかしそんな迷いを誤魔化そうとするように口調を荒げてしまう花帆。自分がスローガンにしている言葉を宣言して電話を切ってしまう。
花帆「そうだよ、こっちにだって考えがあるんだから…」
花帆「あるんだから!」
蓮ノ空の夜空に、決意しようとするもどこか迷っている、そんな花帆の声がこだまするのであった…