―グラウンド―
試合から数日。放課後に選手たちは再び集まって、圭助は機械を作動させていた。
花帆「監督!今日も試合、お願いします!」
圭助「ほいきた。じゃあ今日は立浪ってところと勝負だ」
四季「立浪…?」
歩夢「昨日は秋田ってところとサッカーしたけど、今度はどこの高校なんだろう…?」
塔子「大阪の高校じゃない?友達から聞いたことあるんだ」
梢「…」
浦の星戦以降も一日一回試合をして、今日も試合をするつもりの蓮ノ空。花帆の言う通り、本当に1週間試合をするつもりだ。
梢(試合が『いっぱいやりたい』って言うのは、とにかくいっぱいやりたいって、そのままの意味だったのね…でも。学校をやめるかもしれないだなんて言っていたあなたにとって、夢中になれるものが見つかったのなら、それはいいことだわ)
花帆「ボールを蹴ってシュートを決めるって、きもちいいねー!」
歩夢「うん。今日もどんどん決めよっ」
1週間試合をする気の花帆を見て、戸惑いながらも安堵する梢。蓮ノ空の環境に希望を持てていなかったことを考えると、確かに良い方向に進んだと言える。
梢(…いいことなのかしら)
しかし冷静に考えると、1週間続けて試合をするのは異常。このまま突き進んでいいのか、悩ましい梢であった…
その後、試合は蓮ノ空の勝利で終わった。以前より厄介な選手も少なく、特に苦労することなく勝てたようだ。
カナリアさん「ぽ、ぽ、ぽ」
花帆「わ!…白鳥?」
歩夢「あ、カナリアさん」
圭助「おっ、どうしたどうした」
試合の振り返りが終わったところでカナリアさんが飛んでくる。バサバサと羽を広げて、何かを伝えたげだ。
梢「ここでは見ない鳥さんね…監督が飼っているのかしら?」
圭助「ああ、そんなところさ。ちょっと世話してくる!」
梢「あっ…」
カナリアさんを持ってすぐに走り去ってしまう圭助。
梢「行ってしまったわね…私達だけで振り返りをしましょう」
花帆「はいっ!歩夢ちゃんも果林センパイもあのすごそうなキーパーから簡単にゴール出来て、すごかったな~って思いました!」
果林「必殺技はなかったけど、浦の星のキーパーより強かった気がしたわね」
歩夢「最初は得点できるか不安だったけど、遠くからでも得点出来て良かった…!」
梢「ええ。2人ともここに来た時より身体が強くなっているわ」
歩夢「ちょっと危ないディフェンスしてくる相手がいたけど、それでも花帆ちゃんは気にせず突き進めてすごいなって思ったよ」
梢「それに関しては驚いたわ。最初の試合のときもそうだったけど、あなたは本当に物怖じしないのね」
花帆「えへへ、そうなんです。あたし楽しいと思ったことはなんでもできちゃうんです。それ以外はなんにもできないんですけど!」
梢「そ、そう。なるほど、モチベーションの管理が、いちばん大事なのね…」
花帆「センパイ?」
花帆は心配する。梢はどこか悩んでいるような声色で話していたのだ。
梢「いえ、こちらの話。ところで、最初の試合の時に成り行きでFWにしてしまったのだけれど、日野下さんはFWが向いてそうだわ」
花帆「えーへへ。そうかもしれません!あたし、FW向いているかも!」
一方で、物陰に移動した圭助とカナリアさん。カナリアさんは報告のために人語を使うので、鳥が喋っているところを見られないようにしたのだ。
圭助「どうした、何があったんだ」
カナリアさん「大変です。『ハーデスト』が強力な選手を集めてこちらに向かっているようです」
圭助「なんだって…!具体的な情報は分かるか」
カナリアさん「はい。前に来たものより強力なアナザーミキシマックス使いのストライカー…そして様々な“乳業高校特戦隊”と言われる、5人のエリート選手がいるようです。前とは比較にならない程選手層が厚いです」
圭助「分かった…みんなには明日の朝、報告させてもらう。後で“乳業高校特戦隊”とやらの選手がどんなことをしてくるかも教えてもらえるか?」
カナリアさん「もちろんです。知っている限りのことは話します」
『ハーデスト』が本格的な戦力で蓮ノ空に向かってくると伝えられた圭助。出来る限り情報を集めて、明日の朝に梢達に伝えることにしたのだが…
~翌日…~
歩夢「花帆ちゃん、今日も朝練来ないね」
圭助「やっぱりこうなるか…」
翌日の朝練、基礎能力トレーニングに励む蓮ノ空。しかしあれほどサッカーを楽しみにしている花帆は朝練には毎日来ていないらしい。
圭助「おそらく彼女にとって、サッカーは『楽しいもの』でしかないようだな」
歩夢「えっと…それってつまり、花帆ちゃんはサッカーがしたいだけで、きつい練習とかそういうのはやりたくないってこと…?」
圭助「そういうこと。まあ、朝は出来る限り寝ていたい気持ちは本当に分かる。俺もここに来る前は11時起きだったから朝起きるのめっちゃだるい」
歩夢「えぇ~…」
圭助の以前の生活を聞いて若干引く歩夢。神様だったのに生活リズムが酷い…とここでは言えないツッコミを心の中でするのであった。
圭助「こればっかりは部活動だから仕方ない点ではあるよ。とりあえず自分のペースで、練習を続けていてくれ」
歩夢「…」
花帆が朝練に来ないことで心配していた歩夢だったが、花帆自身は特に問題を抱えることもない状態で元気よく振舞っている。心配し過ぎることもないと感じ、いつも通り朝練に取り組むことに。
歩夢「ふぐぅぅーー…!」
梢「良い調子よ、上原さん。3セットやるのもきつくなくなってきているんじゃないかしら」
歩夢は朝の運動として上体起こしを10回3セット行っていた。朝に行うと体幹が目覚めるようだ。
さやか「最初に試合をした日から、身体がかなり強くなっていると思います」
歩夢「ありがとう!サッカー部の活動が終わった後にも、四季ちゃんと一緒にトレーニングしてたんだ!寝る前に頑張ったら怒られちゃったけど…」
さやか「寝る前に基礎トレーニングをやり過ぎると、眠れなくなってしまいますからね。寝る前は少しストレッチをしてリラックスするくらいがいいですよ」
梢「基礎トレーニングはどこでも出来るから、ついやりたくなってしまうわね。でも、休まないと筋肉が育たないから、しっかり休むのよ」
快眠や良い目覚めが出来るストレッチも織り交ぜ、効率良く基礎トレーニングを行う歩夢。他のメンバーもほぼ同じ手法でフィジカルをどんどん鍛えている。
果林「ふっ!」ドガァっ!!
基礎トレーニングの後はボールを使って練習を始める。今回はシュート練習。果林のシュートがゴールネットを思いっきり揺らす。
梢「最初の試合と比べて、明らかにボールの勢いが違うわ。ちゃんと身体が強くなっている証拠よ」
果林「そう…上達したって実感が湧くと、さらに上に行きたくなるわね。今度はもっと強い必殺シュートを編み出してみようかしら」
梢「良いと思うわ。今の朝香さんの足でそれが出来れば、FWとしてとっても心強くなること間違いなしよ」
ひとまず基礎能力が十分備わった果林は、より強力な必殺シュートを覚えることに。他の選手も自分のポジションに合った強力な技や、足りないところを補う技の習得に勤しむことに。
梢(上原さんも朝香さんも葉月さんも、あっという間に上達していく…私の日野下さんへの指導は、このままでいいのかしら…)
初心者だった歩夢たちも、練習を重ねることで経験者と遜色ないレベルになってきている。梢は花帆を心配しながら、そんな歩夢達を眺めていた。
梢「…綴理、後で少し話があるのだけれど、いいかしら」
綴理「?いいけど…あんまり、怒らないであげてほしい」
梢「怒るだなんてそんな。少し私が、迷っているだけ。相談したいことがあるの」
綴理「そっかよかった。ボク、こずに怒られるの、苦手だから」
梢「あなたの話ではなくて、日野下さんの話だけれどね」
梢は果林や絵里が入ってくる前から仲間である綴理に悩みを相談してみることに。綴理は怒られることを警戒しながらも快く引き受けてくれた。
―サッカー部部室―
梢「ふぅ…」
綴理「やぁ、こず。そういえば、話って?」
放課後の練習の時間。他のみんなはグラウンドに向かったが、梢と綴理は事前に監督に連絡して部室で話し合いをする。
梢「…正直に話すと、日野下さんの指導方針に少し迷っていて」
綴理「うん」
梢「彼女のサッカー、見てくれたでしょう?」
綴理「よかったよ。とっても楽しそうだった」
梢「それは分かっているわ。でも、むしろそれが問題っていうか…」
綴理「こず?」
梢「…ああもう」
花帆の指導方針で悩む梢。しかし綴理自身は花帆を絶賛しており、梢自身悩みを上手く言語化出来ず少しイライラしてしまう。
梢「日野下さんね、サッカーを始めたばかりで、すぐに試合をたくさんやったり、必殺タクティクスにも手を出そうとしたり…楽しそうだからって、まだ身体も出来上がってない段階であんなにいっぱいいろんな事をして、大丈夫なのかしら…!」
綴理「えっと」
梢「ねえ、綴理!村野さんも上原さんも、他のみんなは堅実に基礎トレーニングを積み重ねているわよね!?」
綴理「う、うん」
梢「私も、そういうタイプだったから、わかるの!ひとつの目標を定めて、そこに向かって一歩一歩と歩を進めていくその感じよね!納得できるし、今まで歩んできた自分の軌跡を振り返れば、安心するの…!」
梢「でもね、世の中には綴理みたいに感性だけで急になんでもできちゃう人がいるじゃない!?日野下さんがもしそうだったら、型にはめた指導をするのも彼女の良さを消しちゃわないかしら!」
綴理「ええと」
梢「つまり。すごく…モヤモヤしてるの…日野下さんを見守るしかない、この状況に…私は、どうすればいいかしら…」
花帆の今のサッカー、巧くなるにはお世辞にも良い方法とは言えない。しかし、それを矯正したり、自分がやってきたように堅実に進めたりするのは、試合をして楽しんでいる花帆から良さを奪ったり、最悪サッカーをする楽しさがなくなってしまったりすることになる。どうすればいいのか分からないのだ。
綴理「本人に聞いてみたら、どうかな。どうしたらいい?って」
梢「…それは。手っ取り早いとは、思うけれど…でも、だめなの」
綴理「どうして?」
梢「考えすぎかもしれないけれど…私が心配していることを、知られてしまったら…あの子の楽しみに水を差すことになりそうで…あの子、私達とのサッカーをとっても気に入ってくれてたでしょう。それから1週間もずっと試合をしたくなるぐらい」
梢「きっとまだ、真っ白なのよ。どんな風に色づくのか。私にもその責任の一端があるのだから、考えても考えすぎるってことはないわ」
綴理「…こずは、いい先輩なんだね」
梢「結果的に、なにもしていないのだけれどね!」
梢の考え方に感心する綴理。しかし梢としては何も出来ていないので、苦笑いしてしまう。
綴理「ふふっ、いいんじゃないかな」
梢「ちょっと綴理。私は、真剣に…」
綴理「ただ立ち止まってるだけじゃなくて、かほのこと考えてそうしているんだよね。だったら、いいんじゃないかな。困ったときには、すぐに手を差し伸べてあげるってことで」
梢「それは、だけど…」
綴理「たぶんだけど。夢中で遊んでる本人は、外からの声なんて聞こえないと思うんだ。だから、今はなにを言っても意味ないかも…みたいな?」
梢「あなたがそう言うと、妙に、説得力があるわ」
綴理「そうかな?説得力、いつの間についたんだろ。二年生になったから?」
梢の事情を聞いたうえで、今の梢のやり方を肯定する綴理。梢は綴理と一年間一緒にいた経験からか、綴理に共感している。
圭助「おーい!そろそろ大丈夫かい?日野下さんが待ってるぞー!」
梢「あ、はい。綴理、行きましょう」
綴理「うん」
ここで圭助が呼び出しに入ってきた。今の蓮ノ空は12人なので、2人がいないと試合が始められないので、グラウンドに向かうことに。
綴理「こず。ムリしないでね。ボクたちは先輩だけど、先輩としてはまだ、一年生なんだから」
梢「…まさかあなたに話を聞いてもらう日が来るなんてね。ありがとう、綴理」
綴理「ん」
梢の感謝の言葉に相槌を打って、綴理は先に部室から去っていった。
梢「…でも、そうよね。楽しいままで続けられるのなら、それがきっと一番なのよね…ただ、私にはできなかった、っていうだけで」
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