梢「おつかれさま、日野下さん。必殺技も形になってきたようね」
花帆「え、えへへ…そうですね」
あれから必殺技含めて、様々な練習をこなしてきた花帆達。いよいよ大会の前日となった。
梢「正直なところ、初日のあなたが500メートルもいかないうちから『もう無理です走れません〜』って音を上げたときには、ちゃんと最後までがんばり通してくれるとは、思いも寄らなかったわ」
花帆「あはは…あたしもです。っていうかあたし…自分がこんなにちゃんと努力出来るなんて、知りませんでした。受験の時も確かにがんばってはいたんですけど…あのときは結局、なんだかんだ理由をつけてサボったりしちゃってましたし…」
梢「それは、厳しい先輩がいなかったからね」
花帆「そうですね!」
やり取りの後にお互いに「あはは」と笑い合う。その後、花帆は少し遠慮ぎみに梢に話す。
花帆「…ちょーっと、あたしのこと、話してもいいですか?」
梢「ええ。聞きたいわ」
花帆「あたしのおうち、けっこう過保護なんですけど…それって、元はというとあたしの責任だったりして」
梢「あなたの?」
梢は花帆の話したいことに興味を持つ。花帆は自身の過去を語り出すのであった…
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花帆がまだ小学生の頃の話…少女はベッドに寝たきりでいた…
花帆「ねえ、お母さん。きょうはお外に遊びに行ってもいい…?」
花帆母「まだ、だーめ。お熱、下がっていないでしょ?」
花帆「うん…。ケホッ、ケホッ!」
外に出たい花帆。しかし見ての通りせき込んでおり、とてもそんなことは出来ずに燻っているようだった…
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花帆「子供の頃、ちょっと身体が弱くて…何度か、入院したこともあったんです。あ、中学校にあがったくらいからはぜんぜん大丈夫になったんですけど!」
花帆「大丈夫になったんですけど…お父さんとお母さんにとっては、あたしは小さい頃のまんまみたいで。あたしはあれもやりたい、これもやりたいって思ってても、結局できなくって。無茶してまた熱出したりしたら、両親が心配しちゃうからって」
梢「そうだったの」
どうやら花帆は昔身体が弱く、その影響で高校に入るまでやりたいと思ったことが出来なかったようだ。自分が楽しいと思ったことに人一倍熱中してしまうのにはこの背景があったのだ。
花帆「うち、お花を作ってるんです。ラナンキュラスって言うんですけど、すっごくきれいなんですよ。春になると、パステルカラーみたいな淡い色合いが、ばーっと咲き誇って!」
両腕を拡げて咲き誇る花を表現しながら、花帆は語る。
花帆「あたしの花帆って名前も、そのお花からイメージしてつけてくれたんです。窓から眺めるお花が、とってもきれいで…だけど、昔のあたしは、その景色があんまり好きじゃなくって」
梢「…それは、どうして?」
花帆「育てられたお花って規則正しく咲いているじゃないですか。でも、あたしって病気がちだったから、学校でも遊びに入れてもらえないことがあって…自分は、あんな風にキレイには咲けないような気がしていたんです」
先程とは一転して暗い顔で語る花帆。あれほど花咲きたいと言っていた彼女も、昔はそんなことは出来ないと思っていたようだ。
花帆「自分の名前も…なんか、正しく育つように、って期待されているみたいで、ちょっとニガテでした」
梢「そんなあなたが、変わったきっかけがあったのね」
花帆「はい!」
花帆は梢の問いに笑顔でうなずく。そして、そのきっかけとなった過去を具体的に話し始めた…
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みのり「ねえねえ、お姉ちゃんお姉ちゃん! ちょっとお散歩しようよ!」
花帆「えー。どうしたの、急に」
ふたば「ね、ちょっとそこまでだから、お姉ちゃん」
花帆「もう、ふたばまで。勝手に山に入ったーって、怒られても知らないんだからね」
ふたば「あとちょっと」
みのり「ねえねえ、早く早く!」
花帆「なに、もー」
2人の妹に誘われて、山に散歩に行っていた花帆。気が進まないからか、子どもだけで山に入るのは危ないからか、上機嫌とは言えない表情だが、それでもちゃんと妹2人について来ている。そして、その先である景色を目の当たりにする。
花帆「お花畑だ…」
妹たちが案内してくれたのは、山の中のお花畑。自然の中のお花畑であるためか、様々な色と種類のお花が辺り一面に咲いている。
ふたば「お姉ちゃん、見て見て」
みのり「ほら!」
妹たちがとある花を摘んで、花帆に見せる。
花帆「これって…ラナンキュラス? でも、どうして。ふたりが、育てたの?」
ふたば「ううん」
みのり「きっと、種から育ったんだよ! この一輪だけ!」
花帆「こんなことってあるんだ…すごい…きれい…」
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花帆「ラナンキュラスって普通は温室で育てるから、自生していることなんて滅多にないんですよ。なのに、咲き誇っていたんです。まるで、『あたしはここだよ』って言うみたいに。ただ自分のために、あんなにきれいに…」
花帆「それを見てあたし、思ったんです。大事なのは、ちゃんと『花咲くこと』なんだって。右に習えで咲くことでもなく、みんなと同じように咲くことでもなくて。ちゃんと花咲くことが、いちばんすごかったんだ」
花帆「だから、山で育ったあの一輪の花だって、温室で育てられた花だって、みんなみんな、すごいんです。あたしも、花咲きたい。トクベツじゃなくたって、あたしだけの色で、あたしだけのお花を」
これが花帆の『花咲きたい』という想いを持たせる出来事であった。正しく育つだけが花ではなく、どんな形でも力強く、自分だけの花を咲かせると知ったことで…
花帆「す、すみません! なんだか、たっぷり喋っちゃって!」
梢「ううん。よかったわ。あなたの想いが知れて、嬉しかった。ありがとうね、日野下さん」
花帆「え、えへへ…あたしも、梢センパイに聞いてもらえて、嬉しかったです…」
歩夢「あ、あの~…花帆ちゃん…」
花帆「わ! 歩夢ちゃん! それに四季ちゃんも! いつの間にいたんだ!」
花帆が梢と2人で話していたところで、歩夢と四季がやって来ていた。梢曰く、ラナンキュラスのことを話していたあたりからいたらしい。
歩夢「花帆ちゃんの話、聞き入っちゃって…あ、いや、盗み聞きしちゃってごめんね…」
花帆「大丈夫だよ。歩夢ちゃんや四季ちゃんにも、サッカー部のみんなにも話せたらな~って、思ってたから!」
歩夢「あ、ありがと…」
四季「最近はみんなで集まることが減った気がする…」
梢「ごめんなさい。花帆さんと伝統の必殺技をやりたくて…上原さん達は練習をとてもがんばっていたから、各々に任せても大丈夫と感じたの」
花帆「特に海未ちゃんとレアンちゃんと果林センパイはとーーってもがんばってて、あたしももっとがんばらないとって思ったよ!」
この数日間、試合が出来ないため各々で練習を積み重ねていた。その結果サッカー部のみんなで集まる機会が減ったらしい。
梢「明日、大会でみんなの練習の成果を見せるのが楽しみね」
歩夢「はい! 楽しい試合にしましょうね! 伝統の必殺技っていうのも気になるし…」
四季「me too」
花帆「もちろん! そのために、朝練もいっぱいいっぱいがんばったんですから!」
梢「ふふ、そうね。一日も遅刻せず、本当によくがんばったわね」
翌日にはいよいよ大会本番。それぞれがどんな練習の成果を見せるのか、全員ワクワクしている。
梢「それじゃあきょうの練習はここまでにしましょう。後は、体を休めるのよ」
花帆「えっ、でもまだ練習メニューが!」
梢「疲れを取るのだって、立派な練習。聞き分けて頂戴。さ、また明日」
花帆「梢センパイ…」
歩夢「花帆ちゃん、一緒に部屋に戻ろ」
四季「私達もちゃんと休むから…」
花帆「うん…」
まだ練習が足りないと思っている花帆を、何とか説得する3人。結局歩夢と四季と花帆で仲良く歩いて去っていった。
梢「後輩って、手がかかるけれど…かわいいのね」
3人の背中を見て、そう呟く梢であった…
―花帆の部屋―
あれから歩夢や四季と話しながら部屋に帰った花帆。その話の中でさやかからマッサージしてもらえる話を聞いたので、お風呂上がりに早速やってもらうことに。
花帆「あ゛~~~…きもちいいよ、さやかちゃん~~…」
さやか「花帆さんどこも、かなり凝ってますねっ。少しでも疲れが、取れるといいんですがっ」
話を聞いた通りさやかのマッサージの腕前は良く、花帆は完全にリラックスしている。一方でさやかはどこか心配そうな顔をしている…
花帆「ありがとうねえ、さやかちゃん。お風呂上がりにマッサージなんて、極楽だよぉ」
さやか「それは、よかったですっ。それでは、ここからは私のとっておきの足つぼを…」
花帆「えっ!? そ、それ痛いやつじゃない!? 大丈夫!?」
花帆の足に指を置くさやか。足つぼといったらかなり痛いことで有名。花帆は焦ってさやかに問う。
さやか「いえ、これがいちばん疲れに効くんです。少し我慢してくださいね、それではいきますよ!」
花帆「お、お手柔らかに、おてやわ、おて――」
花帆「ぴぎゃーーーーーーー!!!」
花帆の悲鳴が夜空にこだまする。痛みに関してはお察しである。
花帆「うう…あたしはドリンクは甘いのが好きで、マッサージも気持ちいいだけのがいいです…」
滅茶苦茶痛かったのか、やられていないはずの頭を抱える花帆。たまらず泣き言を言ってしまう。
さやか「ドリンク? なんの話ですか?」
花帆「なんでもない…あ、でも疲れカンペキに取れたかも!」
さやか「そんなわけありません。今の足つぼが痛いってことは、相当な無理をしていますよ。実際、歩夢さんや四季さんは痛がっていませんでしたからね」
疲れが取れたと思い込んでいる花帆。もちろん足つぼ一回でそうなるわけがないので、さやかは注意する。
さやか「今夜一晩は大人しくしてください」
花帆「でも、大会ももう明日だし、ちょっとぐらいだったら」
さやか「だめです!」
花帆「ひん。なんか、さやかちゃんって、ちょっと梢センパイに似てるカモ…」
さやか「どういう意味ですか」
花帆「あ、ううん! 良い意味で! 自分にも人にも厳しそうなところとか! 自分の考えをしっかりもってるのも、似てるかもかも!」
さやか「そう言われて、悪い気はしませんが…私はまだまだですよ」
さやかは謙遜気味に下を向いてそう言った。自分が先輩と並んでいるとは思っていないらしい。
花帆「あたし、サッカー部に入って、よかったなあ。今までね、楽しいことって、あたしだけのことだと思っていたから。でも今は、梢センパイにトレーニングしてもらったり、歩夢ちゃんや四季ちゃん達にも励ましてもらったりして、楽しさが広がっていって、あたしだけじゃないんだよ」
花帆「そのことが、今が、すっごく楽しくて。なんだか、ただ寝るのがもったいなくなっちゃうの。さやかちゃんは?」
自分の楽しさを伝える花帆。さやかにもサッカーをしていてどう思っているのか聞く。
さやか「わたしも…もちろん、毎日が楽しいですよ。その、夕霧先輩にご指導いただいていますし」
花帆「そっか。ふふ、やっぱり、おんなじだね」
さやか「…ただ、先輩はどう思っているのか、わかりませんが…」
そう言って不安そうに顔を落とすさやか。しかし、基本的には花帆と同じくサッカーは楽しいようだ。
花帆「でもね、ほんとはちょっぴり不安な気持ちもあって」
さやか「花帆さんが、ですか?」
花帆「うん、おっきな大会だもん。蓮ノ空ってもともとすごい学校みたいだし。きっとたくさんの人が期待してくれていると思うし!」
花帆「それに、梢センパイに、迷惑かけたくないし…」
花帆は胸に手を当てて不安な気持ちを伝える。明日の大会は学校を代表して出場する。観客の応援も受けながらの試合は、練習用対戦ルートや『ハーデスト』との試合とは全く違うものだろう。
さやか「大丈夫ですよ」
花帆「でも朝練だって、あたし、真面目に取り組んだのつい最近だし!」
さやか「だいじょうぶですよ。花帆さん」
花帆「うう、そうかなあ」
花帆が不安に思っている中、落ち着いた笑顔で「だいじょうぶ」と返すさやか。
さやか「花帆さんのがんばりをいちばん近くで見ていたのが、乙宗先輩なんですから。それに、もし花帆さんが失敗しても、乙宗先輩なら、皆さんと一緒にばっちりとフォローしてくれますよ」
花帆「その慰めは、あたしが失敗すること前提だから、ちょっとどうかと思うけど!」
さやか「す、すみません。あの、でも…失敗は、誰だってするものです。わたしだって、たくさん失敗してきました」
さやか「だから、失敗とか成功とか気にせず、明日の試合を思いっきり楽しんできてください。わたしも楽しんできますから…」
さやかは笑顔でそう励ました。それを聞いて花帆も再び笑顔に。
花帆「うん…ありがとう、さやかちゃん」
さやか「それでは、そろそろ消灯の時間ですね。花帆さんも、あんまり緊張しないで、明日に備えてくださいね」
花帆「うん。おやすみ」
寝る時の挨拶をして、さやかは自分の部屋に戻る。当然彼女も明日の大会に出場するので、しっかり身体を休めるぞ。
花帆「…うん。迷惑、かけないようにしなくっちゃ!」
―さやかの部屋―
さやか「今、外に誰か…? あれは、花帆さん?」
誓いを守るべく徹夜して投稿してるから、梢センパイの言葉が本当に耳が痛い…
次回から試合です。
これからの作者の創作、どれが一番楽しみ?
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