…と言うにはもう遅すぎますね。さやかちゃん、お誕生日おめでとうございますの方が適当ですな。
大倉庫に迷い込んでしまった花帆。このままではシャレにならないと助けを呼んだところ、また別の小柄な蓮ノ空の生徒に出会う。
「あ、キミって、サッカー部の子じゃーん!」
花帆「え?あ…え!? 生徒会長!?」
花帆の前に現れたのは、現在蓮ノ空で生徒会長を務めている、「大賀美沙知」という少女だった。花帆の戸惑いが収まらない中、沙知は花帆に問う。
沙知「それで、どうしてこんなとこに?」
花帆「生徒会長は、どうして…」
沙知「あたし? あたしは、見回り兼荷物整理ってところかな。ここ、蓮ノ空の伝統がぜーんぶ詰め込まれてるから、めちゃくちゃ広いしょ? 毎年、大倉庫に迷い込んで骨になる一年生が、ひとりや百人はいるからねぃ」
花帆「山だけじゃなくて、ここでも百人遭難してるんですか!?」
沙知の怖い話に思わず焦ってしまう花帆。そんなことが起これば廃校モノの大問題になるので、もちろんウソである。
花帆「あ、あたしは、出口がわかんなくなっちゃって…って、そうじゃなくって!」
沙知「んんー?」
花帆「あの、梢センパイ…じゃなくて、サッカー部の、乙宗梢さんを見ませんでしたか!? もしかしたらこの中にいるかもしれないんですけど!」
沙知「ああ、梢ちゃん? んー。いるとしたら、それはきっと――」
冗談をよそに、要件を話す。沙知は梢の居場所に心当たりがあるらしく…
7分後…
花帆「ここが…サッカー部の…?」
沙知に案内してもらい、サッカー部に関する伝統や備品が敷き詰められているブロックにたどり着いた花帆。
花帆「あの、案内してくださって、ありがとうございま――い、いない…!? まさか本当に、大倉庫の妖精…!? そんなわけ…あ」
幻のように消えてしまった沙知。本当に妖精の類なのではないかと思っているところ、上に目線を向けてとある物を見つける。
花帆「え、これって…」
梢「それは『フットボールフロンティア』で優勝したときの写真よ。蓮ノ空の先輩たちが、高校サッカーの頂点に立った。その瞬間を写したものね」
花帆「梢センパイ…」
かつての蓮ノ空の栄光を見上げていたところで、探していたセンパイに話しかけられる。ようやく梢を見つけることができた。
梢「綴理から聞いたわ。あなたがここに向かったかもしれないって。それにしても、よくここまでたどり着けたわね」
花帆「あ、それは、案内してくれた人がいて…」
案内してくれた人のことを話したいが、もうこの場にいないため少し気まずくなってしまう。そんな中で、梢は花帆の手元を見て話す。
梢「そのノートは」
花帆「えっ、あっ、すみません。部室にあったのを、持ってきちゃって…」
梢「少し恥ずかしいけれど…いいのよ、これはサッカー部みんなのものなんだから」
梢「迷ったり、考えを整理したくなった時にね、ノートを広げるの。このノートに触れていると、なんだか安心して」
花帆「安心…?」
梢「どうすればもっと、うまくできるのかな、って悩んでいるときでもね。私が憧れたサッカー部の先輩方も、こんな風に毎日悩んで、がんばっていたんだ、ってわかるから」
花帆「…梢センパイでも、そんな風に、悩むことがあるんですか?」
梢がうまく出来るかどうか悩んでいることに疑問を抱く花帆。全然未熟な自分はともかく、自分よりずっとうまくて経験もある梢が、自分のように悩んでいることが不思議だった。
梢「いっつもよ。だから背筋を伸ばして、後輩の前ではせめて格好つけようと、前を向いているの。私が先輩からしてもらったことを、今度はちゃんと後輩にお返しできるように。未来の新入生に、憧れだって、そう言ってもらえるように」
花帆「…」
それに対し、梢は自分も悩んでいると答える。そして、その上で自分がどうしているか、何のためにそれをするかを語った…
花帆「あの、あたし…ノート、ちょっと読みました。たくさんの弱音だったり、お互い励まし合ったりして…あたしもなんだか、胸に響きました」
自分もノートに触れた感想を語る。そして…花帆は本当に梢に伝えるべきことを話し始める。
花帆「センパイ。あたし、センパイがせっかく作ってくれたメニューをはみ出して、無茶していました。だから! あたしのこと、ちゃんと叱ってください!」
梢「日野下さん…?」
花帆「だって、センパイはあたしのこと、信じてくれていたのに…あたしが勝手に練習していたのは、センパイの言葉を信じられなかったってことですもん! そんなの、だめじゃないですか!」
花帆「だから、梢センパイ。あたし、これからもセンパイと一緒にサッカーを続けていきたいですから。ここでちゃんと、叱ってください!」
頭を下げる花帆。冷静になって自分の行動を振り返っても、やはり花帆の行動が悪かったことに変わりはない。悪い事をしてしまった以上、それ相応の注意を受けるべきだと感じていた。
梢「…そうね」
どこか遠慮気味になってしまう梢。しかし、花帆にお願いされた以上遠慮し続けるわけにはいかない。険しい顔になって花帆を注意することに。
梢「わかったわ、日野下さん。あなたがしたのは、よくないことよ。あなたが怪我をしたら、私が悲しいわ。次からは、もうしないで」
花帆「…はい」
梢に自分の反省すべき点を叱ってもらった花帆。その後、すぐに梢はもとの微笑ましい表情に戻り…
梢「それじゃあ、次は私の番。私も、あなたに叱ってもらわなくっちゃ」
花帆「え?」
梢「大会の日取りを、強引に決めてしまったでしょう。そのせいで、あなたは無茶をしてしまった。もっとあなたの不安と向き合って、しっかりと話し合うべきだったわ」
花帆「それは、でも、叱られるようなことじゃ」
梢「あなたが誤ってしまったように、私も完璧な先輩ではなかった。どうかしら。だから、あなたと私でこれから…手を取り合って、一緒に歩いていくというのは」
花帆「あ…」
自分もまた過ちを犯したと語り、だからこそお互いに手を取り合っていきたいと梢は言う。その提案に、花帆はしばらく固まっていた。
梢「ねえ、日野下さん。もし、あなたが良ければ、なのだけれど。私は不器用で、思い込みが激しく、融通の利かない先輩かもしれないけれど…改めて、私と一緒にサッカーをしてもらえないかしら。私とあなたで、そのノートにある必殺技もやって」
花帆「でも…あたしに、その技をやる資格は…」
梢「お願い、花帆さん。私ともう一度、コンビを組んで。がんばるあなたの、その隣に立っていたいの」
花帆「そんなの、あたしこそ! 朝練だってこないだ始めたばっかりで、体力もなくて、身体もテクニックもまだまだですけど!」
花帆「でも、センパイとこれからもサッカーしたいです!」
梢「わ」
自分の弱さをお互いに言い合い、それでもサッカーを一緒にやりたいと訴えかける。言葉共に花帆がいきなり距離を縮め、梢が驚くが、花帆はさらに続ける。
花帆「梢センパイ! あたし、がんばればひとりでも花咲けるって思っていました。でも、今はサッカー選手として、梢センパイと一緒に花咲きたいんです。センパイ、どうかお願いします!」
花帆「私と一緒に、サッカーしてください!」
梢「花帆さん」
梢「…ええ、もちろん。そして、ありがとう」
花帆「センパイ…!」
梢「私とあなたで、フィールドに、満開の花を咲かせましょう」
花帆「はい!」
花帆のお願いに、静かながらも力強く応える梢。これで、花帆と梢は改めて一緒にサッカーをやる決意が固まった。
歩夢「花帆ちゃん! 梢先輩!」
花帆「! 歩夢ちゃん!」
梢「あら、上原さん…もしかして、花帆さんとはぐれてしまったのかしら…?」
歩夢「はい…でも、ここを見回ってる先輩が来てくれて、梢先輩が絶対いる所に案内するよって言ってくれて…あれ?」
ここで花帆とはぐれていた歩夢が合流。花帆と同じく沙知に案内されていたようだが、その沙知はまたしてもすぐに姿を消してしまう。
花帆「ほ、ホントに妖精さん…? じゃなくて…歩夢ちゃん、はぐれちゃったのに探しに行けなくてごめんね…」
歩夢「ううん、大丈夫だよ。私のこと探しに行っちゃったら、余計に迷ったと思うし…」
沙知と出会った時に歩夢を先に探すべきだったと後悔する花帆。しかしあの時点で歩夢はどこにいるのか見当もつかないので、それなら梢のいるところで落ち合った方が良いと、歩夢自身は感じていた。
梢「上原さんもよく来てくれたわね。あなたも、花帆さんと同じかしら…?」
歩夢「はい。あの、ひょっとして話の最中だったり…」
梢「大丈夫、今話し終わったところよ。ね、花帆さん」
花帆「はいっ!」
梢と花帆が何らかの話をしていたことは歩夢にも分かっていた。妨害しては申し訳ないと考えていたが、それは杞憂だったようだ。
歩夢「私…自分がうまくなりさえすれば花帆ちゃんのことを助けられると思って、花帆ちゃんの自身のことを全然見なくなったんです…私がもっと花帆ちゃんのことを見ていれば、無理していることにも気づけたかもしれないのに…」
花帆「…」
歩夢「花帆ちゃんをケガさせて、梢先輩にまで迷惑をかけることになってしまって…本当にごめんなさい…」
頭を下げる歩夢。彼女もまた、自分のせいで今回の事態を招いてしまったと考えている。梢は謝罪を聞き入れ…
梢「分かったわ。これからどうするべきかは、上原さんももう分かっているでしょう。次からは気をつけましょう」
歩夢「はい…」
花帆「えっと…それはどういう…」
梢「上原さん達は、もう叱ってもらっているの。聞いたわよ。私が怪我を見てもらっている間、監督たちとみんなで反省会をしていたってね」
歩夢「え…? あ、はい」
反省会をしていたことが梢に既に伝わっていたことに戸惑ってしまう歩夢。しかしすぐに返事をして、梢の話を聞き続ける。梢は花帆に話した時と同様、自分にも非があったこと、そして自分が完璧な先輩ではないことを話す。そして…
梢「上原さんにも、お願いがあるの。」
歩夢「お願い…?」
梢「私と花帆さんは、手を取り合って一緒に歩いていくことにしたの。上原さんとも、蓮ノ空サッカー部の仲間として、一緒に歩いて行って欲しいの」
花帆「おねがい! あたし、歩夢ちゃんとも一緒にサッカーしていたいよ!」
歩夢「…」
ここも花帆に言った時と同じように、改めて手を取り合おうというお願いだった。もちろん、歩夢の答えは既に決まっている。
歩夢「もちろんです! そのために蓮ノ空に来たんですから!」
梢「歩夢さん…ふふっ、そこまで言ってくれるなんて、本当に嬉しいわ」
花帆「いつか、歩夢ちゃんともコンビを…って、歩夢ちゃん!?」
歩夢の答えに喜ぶ2人。しかし、当の歩夢は顔を赤くして固まっていた。
歩夢(これ、私がこの世界の人間じゃないってバレちゃうんじゃ…勢いで言っちゃったよ…)
ウソは言っていないが、冷静に考えるとかなり不自然なことを言ってしまった。梢が既に反省会の事を聞いているのもあって、ますます自分が異世界の人間であることがバレるのではないかという不安が出てしまう…
梢「と、とりあえずここを出ましょう…」
―校舎前―
たくさんの木が生えているものの、外であるからか大倉庫よりもとても開放的に感じる場所へ。移動していく中で、歩夢もなんとか落ち着いたようだ。
花帆「センパイ、足、大丈夫ですか…?」
梢「これぐらいじゃ、なんともないわ」
花帆「ほんとですか…?」
梢の怪我を心配する花帆。花帆が自分を許せるようになったとしても、センパイの怪我が心配であることに変わりはない。
梢「数日はしっかり休みなさいって言われちゃったけれどね。でもそれぐらいなら、練習してすぐに取り戻せるもの」
花帆「それは、ほんとによかったです。…歩夢ちゃん、恋センパイの方は、どうなってるの?」
歩夢「恋先輩も、数日しっかり休めば大丈夫なんだって」
梢も恋も、大怪我につながってはいないようで安堵する花帆。その後、怪我を心配していた最中に出会った人の話に。
花帆「そういえば、きれいな人がお見舞いに来ていましたね! 同級生の方ですか?」
梢「…ええ、そうよ」
歩夢「…?」
歩夢は梢の反応に違和感を覚えた。梢は優しく応えながらも、重苦しい表情を隠せていなかったのである。
梢「でも、また新しいイベントを申し込まなければならないわね。日程を取り直さなきゃ。あんなに練習をしたんだから」
歩夢「あの…それが、そうもいかないみたいなんです。実は…」
歩夢は梢が医務室に運ばれていた間に『ハーデスト』に告げられたことを語った。準備が整い次第、蓮ノ空に攻めてくることを…
梢「そう…今日のプレーと私と葉月さんの怪我を見て、今なら確実に勝てると踏んだみたいね」
花帆「そうだったぁ! まず『ハーデスト』をどうにかしないと…いや、そうだ!」
自分も『ハーデスト』に攻められることを聞かされていたのを思い出し、焦りかける。しかし、すぐにいい方法がひらめいた。
花帆「『ハーデスト』に、あたし達がやりたいサッカーを思いっきりぶつけましょう!」
梢「そうね…『ハーデスト』がここに来るなら、そうするしかないものね」
歩夢「今度は、本当の意味でみんなのサッカーを…!」
花帆「うん! 梢センパイや歩夢ちゃん、さやかちゃん達みんなでそんなサッカーが出来れば、どんな相手にも届くよ。絶対に!」
自分達が今後どうするべきか分かった以上、それを『ハーデスト』にぶつける絶好の機会だ。大会では出来なかったサッカーを、その時にやろうと決意したのであった。
梢「一緒に素敵な試合をしましょう、花帆さん、歩夢さん」
推しの誕生日なのに少しも登場しない…
こんな前途多難な状態ですが、今年もよろしくお願いします…
今年の目標はめぐちゃんを仲間にすることです。
これからの作者の創作、どれが一番楽しみ?
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