―サッカー部部室―
『ハーデスト』を退けた翌日。サッカー部はいつも通り練習が行われ、現在は一年生と圭助が集まっていた。試合で救出した、昨日までの敵と共に…
花帆「え…サッカー、やめちゃうの?」
論前「うん…学校帰ってもミスばっかりして毎回チームのみんなに罵倒されるし、そのみんなは平気で『ハーデスト』と手を結ぶし、もうサッカーやってられないよ…」
美野良高校のキーパー、論前堂馬。美野良での今までのサッカーを通して、サッカーをやっていても自分にとって害悪にしかならないという結論になってしまったようだ。
花帆「梢センパイみたいな人が、いたらいいのに…」
さやか「あの、よろしければ、わたしが通っていたサッカークラブを紹介しましょうか? かなりレベルの高いクラブですが、あなたの実力なら、きっと大丈夫ですよ」
そう言うとさやかはスマホを花帆に見せる。そこにはインターネットで論前に関する情報がまとめられていた。
花帆「なにこれ!? 『異次元の石川キーパー』とか、『魔神のように勝利を叶えるダイヤモンド守護神』とか、いっぱい褒められてる!?」
さやか「アナザーミキシマックス…というのも考慮しても、相当実力のある方とお見受けしましたので。論前さんのことを調べてみたら、地元のメディアとはいえ記事が複数見つかったんです」
論前「俺…こんなに評価されてたんだ…チームメイトも母ちゃんも、みんな俺が失点するから負けるんだって、言ってたんだ…」
さやか「ありえませんね。基本的に無失点か1失点で押さえてる試合が多いみたいですし、2失点しているのは中学の時のデータを含めても、わずか3試合だけ…」
レアン「あの学校、攻撃陣が『ハーデスト』からの助っ人しかいなかったし、よっぽど攻撃面が甘いみたいね」
海未「つまり、あなたはちゃんと実力あるキーパーということです。チームメイトがどう言おうと、あなたを認めて下さる人はちゃんといるのですよ」
論前「そうなのか…じゃあ、ちゃんとしたクラブに行って、サッカー続けようかな」
さやか「それが良いですよ。一緒にサッカーを楽しめるチームメイトがいますし、『ハーデスト』に協力するようなクラブではないことは私が保証しますから」
実力を高く評価したさやか。自分がもといたサッカークラブに論前を推薦することで、彼のサッカーはまだまだ続きそうだ。
論前「でも、あなたたちも本当に実力があると思うよ。自分の意志でないとはいえドーピングまがいのことをしたのに、昨日俺はあなたたちに4点取られた。特にあなたは、後半からとんでもない強さだった…!」
花帆「そうなの!? あの時のあたし、確かにすっごく力が出せた気がするけど!」
論前「うん。あの時のあなたは、今まで俺が見た中で一番強かったって、自信を持って言える…! 良い形ではなかったけど、あなたのシュートを受けることが出来て光栄だよ」
花帆「やった~! 異次元のダイヤモンド魔神石川守護神さんに、褒められちゃった!」
歩夢「花帆ちゃん…名前がめちゃくちゃになってるよ…」
先程大変実力があると言われた論前。その彼に褒めてもらい、まんざらでもない様子の花帆。
梢「ほんとうに、よくがんばったわね、花帆さん! あなたのがんばりが認められて、私も嬉しいわ!」
花帆「わわっ、梢センパイ! えへへー! そうなんですよー!」
喜んでいる花帆の後ろに、同じく喜んでいる梢の姿が。2年生も授業を終え、部室に来始めたようだ。
梢「ところで。きょうの朝練は、どうして来なかったのかしら?」
花帆「え゛!?」
梢は今日の朝練に花帆が来なかったことを問い詰める。表情は笑顔のはずだが、どこか威圧感を感じる…
花帆「い、いやあ、最高の試合ができたし、そこで色々身についてすっごく強くなったので、しばらくはたっぷり寝てもいいかなあ、って…」
圭助「あー…それ《光の力》で一時的に覚醒しただけだから、ちゃんと特訓しないと使えないぞ」
花帆「え!? ちょっ、ちょっと確認させてください!」
そう言って化身を出す花帆。昨日のように化身アームドをやろうとするが…
パシュゥゥゥン…
花帆「で、できない! それに、昨日すごいシュート撃てたけど、それもできる感覚がない…」
化身アームドは失敗。グロリオーサバスターも身体から抜け落ちてしまったように、使い方を忘れてしまったようだ…
梢「そう、なるほどね」
花帆「えーへーへー…………」
苦笑いをしてしまう花帆。そんな花帆に対して、梢は一応優しく諭す。
梢「でも、最高の試合ができたのなら、次はそれを上回る試合をしなければ、ならないわね」
花帆「そ、そんな! どこまでもハードルが上がっていくんですか!?」
論前「『ハーデスト』と戦うつもりなら、そうなるよ。俺のセンパイの一人は『ハーデスト』に身を置いてるけど、俺とは比べ物にならないくらいキーパーとしての実力が高いんだ」
果林「FWの方も、いずれはあの千砂都って人を上回る選手が出てきそうね」
梢「そうね…本当は『ハーデスト』と積極的に戦うつもりはないのだけれど、向こうの方から来るものね…」
『ハーデスト』は今回強力な選手を数多く引っ提げてきたが、それでも最高の戦力ではない。これからも『ハーデスト』から蓮ノ空を守るなら、昨日の試合を上回る程の実力をつけることは必須だ。
梢「というわけで、放課後の練習メニューは、朝練の分もきっちりと足しておくわ」
花帆「ええええええ!? そ、それはオーバーワークじゃないですかぁ!? ちゃんと休むようにって、梢センパイも言ってましたよね!? ねえ!?」
梢「そうね、一週間前だったら、そうだったかもしれないわ。でもあなたも、みんなも、体力がついてきたみたいだから、これぐらいは大丈夫。ああ、だったら明日からはもう少しメニューを増やしても…」
花帆「あたし、厳しくしてくださいとは言いましたけど、ちょっとやりすぎかなーって! 助けて! 歩夢ちゃん! さやかちゃん! って――」
歩夢「…」
助けを求める花帆。しかし、名前を呼ばれた少女の一人は、難しい顔をして考え込んでいた。
歩夢(サッカーを実際にやってきて、少しだけだけど他にサッカーをやってる人のすごさが、見ただけでも分かるようになってきた…)
さやか「歩夢さん?」
歩夢(今ならなんとなくわかる…ここに来る前に見たあのさやかちゃんは、今の私達じゃ全く敵わない…そもそも、あのさやかちゃんは…)
花帆「歩夢ちゃん!!」
歩夢「わっ!」
花帆に強く呼びかけられて、びっくりして我に返る歩夢。さやかと花帆が、心配そうに歩夢の事を見つめていた。
さやか「歩夢さん。わたしの方をずっと見つめてましたけど、どうしたんですか?」
歩夢「あ…いや、なんでもないよ…あはは…」
さやか「…?」
思ったことをバカ正直に言う訳にはいかず、愛想笑いをしてしまう歩夢。それを見たさやかは違和感が拭えない表情をしており、このままではよくないと感じた花帆が機転を利かせる。
花帆「ねえ、歩夢ちゃん! さやかちゃん! 明日からの練習、もっとメニューが増えて、しかもどんどんハードルが上がっていくんだって! 助けてよ~~!」
梢「昨日は最高の試合ができたけれど、次はそれを上回る試合をしたいの。そしてその次には、もっと最高の試合を…歩夢さんにも、ぜひこれからもっと練習をがんばってもらいたいのだけれど…」
歩夢「練習を、もっと…はい。花帆ちゃん、花咲くためにも、これからも一緒にがんばろうね!」
花帆「やだ~~~!!! 楽しいことだけしていたいよ~~~!!!」
歩夢は梢の提案に乗り、どこまでもハードルが上がり続ける練習に足を踏み入れてしまう。花帆だけやらないわけにはいかず、これからも厳しい練習が続いてしまう事に、大きな悲鳴を上げてしまうのであった…
歩夢(ごめんね…でも、今のままじゃ花咲くどころか、庭ごと消えてなくなっちゃうから…)
―四季の部屋―
四季「はぁ…」
その日の練習を終え、自分の部屋に戻ってきてため息をつく四季。その表情はただ疲れているだけというにはあまりにも暗いものであった…
四季(昨日の試合で、『ハーデスト』のシュートを取れないだけじゃなくて、真っ先に折れてしまった…こんなの、キーパーとして絶対にありえない…)
本来であればチームを守る中心となるゴールキーパー。しかし、昨日はシュートが止められないことで真っ先に心を折ってしまい、チームメイトに心配をかけてしまった。そのことにどうしても負い目を感じてしまう。
コン! コン!
四季「…?」
考え込んでいる内に、珍しく部屋のドアがノックされる。歩夢か花帆あたりが来たかと思い、ドアを開けると…
「ハロめぐー!」
四季「え…!?」
そこには四季と全く面識のない人影が。グリーンブラウンの髪色で、梢や綴理と同じ色のリボンを付けた少女が立っていた。
四季「あなたは…」
慈「藤島慈。全国五千万人の蓮ノ空サッカー部のファンの一人だよ」
四季「蓮ノ空サッカー部に、そんな数のファンが…」
慈「あはは、冗談だよ! …まあ、実際それくらいいてくれたら、とっても嬉しいよね」
四季「は、はあ…」
四季の前に現れたのは、藤島慈という名前の少女だった。軽い冗談に戸惑う中、慈はサッカー部の話題を続ける。
慈「あなたのサッカー、ずっと見てたよ。蓮ノ空の新しい守護神さんっ」
四季「守護神…私は、そんなにすごいキーパーじゃない…」
慈「まぁまぁ。花帆ちゃんやさやかちゃんと一緒に、サッカーがんばってること知ってるんだからね。…どうしても失点しちゃうのは…相手が強すぎるっていうか…いわゆる、オーバー…ぱっつん…ってやつ?」
四季「えっと…もしかしてオーパーツってこと…です?」
慈「あ、うん! それそれ! 日本どころか世界でも明らかにおかしいって感じの選手ばっかりだよ。あの『ハーデスト』は!」
その時代の技術では明らかに存在しえない高度な技術を指す、オーパーツ。実際『ハーデスト』の中には他の世界の選手もいるので、この言葉はこれ以上なくぴったりだと言える。
四季「でも、相手がどうだったとしても、私に力が足りないのは変わらない…もっと、力をつけないと…!」
慈「う~ん…じゃあ、キーパーにとっていい感じの特訓スポットがあるから、今から紹介してみるね」
四季「特訓…スポット…?」
慈「そうそう! 蓮ノ空サッカーファンの中では有名なスポットだよ!」
そう言うと慈は四季をその特訓スポットに誘う。四季は言われるがままに、慈について行く…
―特訓スポット―
四季と慈は蓮ノ空の敷地内の山に入る。そこから山道を少し歩くと、部屋一つ分のスペースが発見される。
慈「ついた! ここが特訓スポット。昔、サッカー大好きな先輩が蓮ノ空の自然を活かして作ったんだって」
四季「これは…タイヤ?」
山中であることから木々に囲まれたこの特訓スポット。枝にタイヤがロープで吊るされている木が目を引く。
慈「このタイヤを押し飛ばして、返ってきたところを受け止める! …これですっごくキーパー力がつくらしいよ」
四季「…」
特訓方法を解説され、早速やってみることに。力任せにタイヤを押し飛ばし、そのタイヤを両手で受け止めた…
ズシンっ!!
四季「っ! …確かに、押し飛ばすにも力がいるし、受け止めたらすっごく重い…」
慈「そういうこと。繰り返しやったらどんどん遠くに押し飛ばせるし、もっと強いタイヤを受け止められるようになるから、やってて楽しいってわけ。…そして、今ならめぐちゃんから必殺技もプレゼントだよ!」
そう言うと慈はキーパー技のアイデアとその使い方をまとめた資料を四季に手渡す。
四季「ありがとう…ございます…必殺技も、ここも大切に使う…」
慈「うんうん。あ、でもここは使い過ぎちゃダメだぞっ。…他にここを使う人もいるし、何よりケガしたら大変だからね」
四季「…?」
慈の言葉に疑問を感じる四季。ここはキーパーのための特訓スポット。自分以外に蓮ノ空のキーパーはいないはず…そう考えているうちに、あの出来事を思い出す。
四季(この人…最初にこの世界に来た時に、さやかにボロボロにされていたキーパーだ…)
四季「もしかして、あなたは蓮ノ空の本来のキーパー…」
慈「う、ううん。私はただのサッカーファンだよ! 今の蓮ノ空のキーパーはあなたなんだから、これからも蓮ノ空の守護神としてがんばってね。…仲間にも恵まれているんだからさ」
四季「は、はい…」
最初に見たあの光景から、本来の蓮ノ空のキーパーが慈であることを察する四季。しかし当の本人は話をそらし、夕日が落ちて暗くなる中でそれを否定していた…
慈「わっ、もう日が暮れちゃう! 言いたいことも言えたし、きょうはここまで! バイめぐー!」
四季「あっ…」
足早に去っていく慈。四季はまだ心に疑問が残る中、走る慈の背中を見送ることしか出来なかった…
慈「きゅー。あの子、私がキーパーやってたってすぐ見抜くなんて…あれもパラレルワールドの人間の能力…ってわけじゃないか。そもそも、かわいいかわいい後輩であることには間違いないもんね」
山の入口まで走った慈。人気がない事を確認して独り言をつぶやき、その後自分の右足を手で押さえる…
慈「っ…。あーもう…むかつく」
右足を眺めながら声色を変えて暗そうにつぶやく。どうやら右足に何かしら不調があるらしい…
慈「それにしても、ヒヤヒヤしたなあ。梢も花帆ちゃんも、ほんっとに怪我だけには気をつけるんだよ。…誰かを悲しませちゃうからね」
慈「さて、花帆ちゃんは自分の道を見つけられたみたいだけど…次は、さやかちゃんの番だね。がんばってね、さやかちゃん。綴理は手強いよ。ふふっ」
三章はめっちゃ時間がかかってしまって、本当に猛省です。
定期的に投稿しているつもりでも、あっという間に時間は経ってしまうみたいです。
時間を大切にして、4章はもっと早く完結できるようにがんばります。
この創作にいきづらい部のメンバーを追加するなら、麻生麻衣ちゃんと誰がいい?
-
高橋ポルカ
-
五桐玲
-
駒形花火
-
金澤奇跡
-
調布のりこ
-
春宮ゆくり
-
此花輝夜
-
山田真緑
-
佐々木翔音
-
追加メンバーは1人が良い
-
メンバーを追加するべきではない