四季がシュートを止めた後も梢達は観客たちの関心を引き続け、ある程度プレーしたところで一旦プレーが中断される。
梢「みんな、ここでもう一人の去年からのサッカー部のメンバー、夕霧綴理が出場するわ。最後まで楽しんでいって」
ここで選手交代。梢から綴理にプレーヤーが切り替わる。
恋「では…いきましょう!」パスッ
今度はBチームのボールでスタート。恋がボールを蹴って綴理にまわした。
綴理「…」
果林「勝負よ!」
綴理がドリブルしているところに果林が向かってくる。まずはこの2人のマッチアップだ。
果林「っ!」バッ!
綴理「…!」ポンっ
果林は右足を出してボールに触れようとする。そこで綴理はまず左足でボールをタッチして、その後右足でボールを前に蹴り出し、自分も一緒に前に出て突破した。
綴理「…」ギュンっ!
果林「うっ…」
いわゆるダブルタッチ。初心者には難しいテクニックを披露して果林を抜き去った。
塔子「今度はあたしが!」
綴理「思いっきり来て…!」ボオォッ!!
レアン「あれは…!」
綴理は自身に炎を纏う。この完全に見覚えのある動きにレアンも反応する。
綴理「極・ヒートタックル…!」
塔子「…!」
ダッ!綴理はレアンより強い炎を纏って塔子に突撃。一方で塔子は先ほどと同じ構えをして塔の上で綴理を迎え撃つ。
塔子「ザ・タワー!」
綴理「…!!」
ボッゴオォォンッ!!
塔子「きゃっ!?」
綴理はザ・タワーに怯むことなくそのまま突っ切る。技の威力は強く、塔をぶち破って塔子を突破。
四季「くる…!」
綴理「しき…いくよ」
GKと1vs1に。綴理はボールに青いオーラを纏わせ、そこに思いっきり右足を振りかぶった!
綴理「極・グレネードショット…!」ドォォンっ!!
綴理も必殺シュートを持っていた。青いオーラを纏ったグレネードのようなシュートが、カーブをかけてゴールに迫る。
四季「シュートポケット…!」
ドンっ!四季はゴールと自分をバリアで包んでグレネードショットを受け止める。先程と同じようにオーラを消し去って威力を殺すが…
…ビュン!!
四季「うっ!?」
バシュウゥゥンッ!
しかしシュートの威力が復活し、勢いよくバリアを突き抜ける。そのままシュートはゴールへ入った。
レアン(あの人…私と同じ技を?これくらいの技なら確かに使う人も多いだろうけど…質が全然違う)
レアンは経験者として綴理のプレーに興味を持っていた。特に技の練度の違いに関しては気になる点があったようだ。
さやか「ああ、やっぱりすごいです、この人は…!」
そして、さやかは綴理のプレーを見て感動していた。彼女にとって、綴理のプレーは何かときめくものがあったようだ…
歩夢「みんなとっても楽しそう…!」
歩夢(そうだ…サッカーって、楽しいものなんだ…私、あそこにいるみんなとサッカーがしたい!)
歩夢は昨日出会った同級生や先輩のサッカーを見てそう感じる。『ハーデスト』と戦うことばかり考えていたが、そうではない。サッカーはみんなと純粋にプレーして、楽しむことが出来ると感じたのだ。
花帆「…」
花帆は、何も言わずサッカーが行われているグラウンドを見つめていたのであった…
そして、サッカーが終わった後に梢が花帆達3人の前に。
梢「どうだったかしら」
花帆「あ、梢センパイ…えと、あの、なんだか、すごくて…」
梢にサッカーを見た感想を聞かれる花帆。綴理や他のメンバー含めて花帆には見たことのないすごいサッカーであったため、言葉を失ったかのような返事になってしまう。
綴理「楽しんでもらえたら、良かったよ」
四季「…」
四季と綴理も花帆達の前に現れる。2人ともそれぞれ用のあるメンバーがいるようだ。
花帆「四季ちゃん!…と、えと」
綴理「ボクは夕霧綴理。こずと同じ、サッカー部の二年生だ。ちなみに好きな教科は数学だよ。答えが決まってるっていいね」
花帆「あっ、はい、えっ?」
見たことのない先輩に戸惑う花帆。自己紹介してくれたがやっぱり戸惑っていた。
梢「ごめんなさい。この子距離感がちょっと独特でしょう。でも、フィールドの上でのプレーは、とてもすばらしいのよ」
花帆「あっ、はい、それはもう――」
さやか「あの…!」
花帆「わっ」
花帆が綴理に関して何か言おうとしたところにさやかが遮ってきた。どうやら綴理に言いたいことがあるようだ。
さやか「お誘いいただいて、ありがとうございました!夕霧先輩のサッカー、本当に理想的で…!」
綴理「ありがとう。褒められてうれしい。うん。ここまでとは思わなかったけど」
さやかは綴理のプレーに本当に感動したようで、深くお辞儀をして感謝していた。
綴理「…じゃあ、例の件は、考えてくれた?」
さやか「はい。わたし…夕霧先輩にご指導お願いしたいです。どうか、サッカー部に入れてください!!」
四季「っ…!」
花帆「ええええええっ!?そうなの!?さやかちゃん!」
さやかはサッカー部に入ることを希望する。それに対して四季と花帆の顔色が変わる。
歩夢「四季ちゃん…どうしたの?」
四季「歩夢…私、あの人を信用できない」
四季はさやかに不信感を抱いていた。この世界に呼び出された際に、さやかは蓮ノ空のみんなを敵として叩き潰していた。そんな危険な存在をこのままサッカーさせて良いのか…という不安があるのは当然である。
歩夢「四季ちゃん…私、さやかちゃんと関わってみたけど、悪い人じゃないと思う…四季ちゃんだって、バスの中や教室でさやかちゃんを見たでしょ…」
四季「その前から見てる」
歩夢「え…?いや、あれじゃなくて…」
四季「それより前に…あの人が私の親友を連れて行った」
歩夢「…!?」
最初に呼び出された時…よりも前に、さやかが四季の親友であるメイを攫った…彼女はそう言っているのだ。その事実に歩夢は口を閉じてしまう。
四季「だから私はアイツが…さやかが許せない」
歩夢「ごめん…」
怒りのこもった四季の声に歩夢は謝罪の言葉を口にしてしまう。四季の気持ちは歩夢にも多少なりとも理解できるからである。
歩夢「私も親友と離れ離れになってここに来たんだ…それがさらわれて、しかも目の前にいたら、許せないよね…」
歩夢は下を向きながら落ち込む。ちょっと人と関わっただけで、何も知らず軽率なことを言ってしまった。罪悪感が彼女を包む。
ポンッ!
歩夢「ふぐぅっ!?」
…と、落ち込んでいたところに後ろから両肩に触れられる。いきなりすぎて変な声を出してしまった。
果林「昨日ぶりね。歩夢さんっ」
歩夢「果林先輩…ですっけ?」
肩に触れたのは果林。歩夢の質問に静かにうなずいた。
歩夢「ど、どうしたん…ですか」
果林「今日も昨日みたいに私達で集まるみたいだけど…あなたはどうするか聞きたかったのよ」
今日も《真蹴球戦士》の集まりがあるみたいだ。しかし歩夢は唯一サッカー部に入らなかった。そのためこの集まりにも参加するか不明だったので聞かれたというわけだ。
歩夢「参加したい…だって、さっきのサッカーを見て、私もサッカーやりたいって思ったから…!」
果林「あら…」
四季「歩夢…」
ここで歩夢はサッカー部に入りたい意志を見せた。彼女もさやかと同じようにここでのプレーを見てサッカーをやりたいと思ったのである。
歩夢「四季ちゃん、さっきはごめん。ダメかな…?」
四季「大丈夫。歩夢は優しいから。むしろ、私達がきっかけで一緒にサッカーしてくれるなんて嬉しい」
四季も歩夢がさやかを信用しているのには理解を示している様だ。それに怒りを示すことはなく歩夢を迎え入れるのであった。
一方で、当のさやかは綴理に快く迎えてもらっていた。そして、花帆は梢からとあるお誘いを受けていた。
梢「ねえ、日野下さん。あなたがもしよかったらなんだけど」
花帆「えっ、あっ、あの、はい」
梢「さやかさんに加えて歩夢さんも入部を決めてくれて…試合に必要な人数も揃ったことだし、来週に練習試合を組むことにしたの。また色々忙しくなるから、よければ、手伝ってくれないかしら」
梢は花帆に再びお手伝いを申請する。練習試合にあたり、チームの調整などをする必要がある。少しでもチームメイトの負担を減らしたいところだ。
花帆「あ…はい。それぐらいなら、あたしでよかったら」
梢「そう、嬉しいわ」
花帆「あの!」
梢「?」
梢の頼みを引き受ける花帆。その後に梢に自分の言いたいことを言ってみる。
花帆「さ、サッカー…素敵、でした。それだけは、言いたくて!それじゃあ、さようならー!」
そう言って花帆は走り去ってしまう。どこか恥ずかしそうに…
―花帆の部屋―
花帆(センパイ…すっごく輝いてた…それに比べて、あたしは…)
花帆「ううん、あたしだってぜったい、あたしの花を咲かせてみせるんだ。だから、そのために…!」
花帆は先輩と比べて何も出来ていない、そんな自分の恥ずかしい気持ちを抑え、それを打開するために机の上の書類を見つめる。他の学校の書類を…
―サッカー部部室―
圭助「みんな、今日も集まってくれてありがとう」
昨日に引き続き《真蹴球戦士》の集まりが行われる。早速圭助が口を開く。
圭助「今回は今日サッカー部に入ってきてくれた村野さやかに関して話したい」
歩夢「さやかちゃん…」
四季「…」
さやかの話題にみんなの顔が険しくなる。彼女に関しては最初に呼び出されたこと関連で、思うところがあるメンバーが多いようだ。
圭助「やはり彼女がここに入ることに関しては、みんなは反対したいか」
恋「はい。あんなことになると分かっていて、何故…」
レアン「いや、私は反対しないわ」
海未「レアンさん…?」
ここでレアンはさやかが入ることに関して賛成の意を示す。皆が驚く中、レアンは言葉を続ける。
レアン「もしあれより強いヤツが敵として出てきたら、どうするのよ」
果林「確かに…あの子が一番強い、という保証はないものね」
圭助「俺が言いたいことの1つを言ってくれて助かる。『ハーデスト』の戦力はあれだけじゃない。さやかからサッカーを奪って彼女一人封じ込めても、何の解決にもならない可能性が高い」
そう、『ハーデスト』はさやかだけで出来ているわけじゃないのだ。彼女一人を封じ込めれば良いという訳ではない。『ハーデスト』全体に勝利しなければこの世界のサッカーを救ったことにはならない。
そして、反対するべきではない理由は他にもある。
塔子「せっかくサッカーやりたがってるのにやらせないなんて、そんなのあんまりだよ!そんな人達がサッカーを守るなんて、本当に出来るの!?」
四季「それは…」
続いて塔子が、サッカーが大好きな人間として意見する。個人とはいえサッカーを奪って世界を守る…そんなやり方はサッカー選手としてダメだと。
歩夢「私もそう思う。それに…さやかちゃん、短いけど私や花帆ちゃんと一緒にいて、仲良くしてくれたり、困ってる花帆ちゃんに助言したりしてくれて…本当に悪い人には見えなくて…だから、友達として、やりたいことをやらせてあげたい」
歩夢もそれに続いて意見を言う。短いながら花帆を通じてさやかと関わってきた彼女にとって、さやかが悪い事をする人間とは思えないことをみんなに伝える。
歩夢「あの…!さやかちゃん、『ハーデスト』に操られてああなったんですよね!」
圭助「すまない…どうしてああなったのか、具体的な経緯までは分からないんだ…」
神の使いである圭助もあの状況の詳細は分かっていなかった。私達が歴史上の出来事で、誰が、どういう心境で事を起こしたのかが分からないのと同じである。
圭助「だけど、この世界で『ハーデスト』と戦うにあたって、心得て欲しいことがある。それが、村野さやかがサッカーを出来て、かつああなってしまうことを阻止する最も効果的な方法だと考えている」
恋「心得…」
圭助「それは、キミ達には『ヒーロー』ではなく、『仲間』としてこのサッカー部のみんなといて欲しいんだ」
海未「仲間…ですか」
圭助「常人とは比較にならない力で悪の組織と戦う…こう言えばテレビに出てくるようなヒーローみたいだろう。でもサッカーを、そして蓮ノ空のみんなを救うなら、彼女たちをただ守る存在ではなく、一緒に戦う仲間でいる必要があるんだ」
絵里「一緒にサッカーやるんだから、あたし達がなんでもやってあげたり、サッカーやりたい人を戦わせなかったりするというのは違うわよね」
圭助「そういうことだ。そしてさっきのさやかが敵になってしまうことに関しても、キミ達が仲間として止めて欲しいんだ。彼女がああなってしまう要因として考えられるのは、『ハーデスト』に洗脳されるか、何らかの要因で考えが変わってしまうか…」
歩夢「もし本当に何かあって考えが変わってしまうなら…その時に仲間として私達で止めるんですね…!」
圭助「そうだ。もちろん、どちらにせよ未然に防げるよう俺も努力する。しかしそれでも相手が一枚上手とかで、だめだった場合…その時に備えて《真蹴球戦士》として戦えるように今日から蓮ノ空のみんなと一緒にサッカーをするんだ」
果林「そうね…よく考えたら、さやかからサッカーを奪って済ますなら、私達が呼ばれた意味がないじゃない」
海未「それもそうですね…やりましょう。ここで純粋にサッカーをする全ての人たちを守るためにも…!」
こうしてその日の集会は終わった。いずれ敵になるさやかを封じ込めるのではなく、仲間として一緒にサッカーをして、その上でサッカーを救う…そう決意して。
次回、原作からかなりカットが入ります。
理由は尺問題と、そこから色々考えて必須なシーンではないと考えましたので…
キャラのセリフは一言一句、漢字まで再現しないと気が済まないタイプなんですけどね…