しかもこんなギリギリなんで目も当てられませんね
―サッカー部部室―
圭助「よし、みんな集まったな」
涼太「……」
練習を終えた夜。異世界から来た涼太と共に不定期でやっている真蹴球戦士の集まりを行うことに。
涼太「あの、梢さんや花帆さんがいませんけど?」
圭助「実はな。俺達もこの世界の人間じゃないんだ」
果林「『ハーデスト』と戦うために、他の世界からここに呼ばれてきたのよ」
涼太「なるほど……どおりでメンバーが違い過ぎるわけだ。……それと、こうして隠れて集まってるって事は、梢さん達4人には自分たちが異世界の人間だって明かしてないって事でしょう?」
圭助「ああ。いらぬ混乱とかは招きたくないからな……」
涼太「いずれは明かしておいた方が良い。こんなの、いつまでも誤魔化し効かないと思いますよ」
圭助「そうだよな……どこか、良い機会を見計らわないとな」
涼太「それがいい。これからチームが一つになるためにもな」
歩夢「確かに、花帆ちゃんに隠し事してるままなんて、ダメだよね……」
自分達が異世界の人間であるとまだ梢達に明かしていないことに、難色を示す涼太。これを解決しないと、チームが本当の意味で一つになれないと考えているのである。
圭助「さて、本題に入ろう。実は涼太くんを元の世界に返すための方法を編み出してきたぞ」
涼太「本当ですか!?」
圭助「本当だ。今日君たちが練習している間に、他の世界に連絡できる機能を持った、ビデオ通話に特化したパソコンを取り寄せてきた」
四季「ビデオ通話特化のパソコン……」
涼太「じゃあ、それでアルノ博士って人に連絡してください。俺達の時代から200年近く後の科学者でタイムマシンとかも持ってるので」
圭助「了解した。早速連絡しよう」
圭助(これを機にアルノ博士とパイプを築いておけば、他の時代や世界で特訓なんてことも出来そうだな)
涼太を元の時代に戻すために、早速デバイスを操作して番号を打ち込む圭助。『H―MRN・232221+200y・D.ARN』と入力し、アルノ博士への連絡を試みる。
機械音声『エラー。ただいま、この番号は使用中です。時間をおいて、またおかけください』
圭助「取り込み中みたいだな」
涼太「マジか……留守番電話とかないんですか?」
圭助「ない。ビデオ通話特化だからな」
圭那「涼太さん、ごめんなさい」
涼太「大丈夫だよ圭那ちゃん。……正直言うと、もうちょっとだけあなた達とサッカーしたいですし」
果林「あら、それは嬉しいわね」
四季「本当に? 私達、あなたにとっては取るに足らないような実力っぽいし、あなたのためにならないんじゃ……」
涼太「そんなことはないよ。少なくとも、一緒にサッカーしてて何も得られないなんてことはない。あなた達には、俺の世界の選手に負けない強さが間違いなくあるはずなんだからさ」
恋「どうして、そう感じるのですか? 昨日の試合で、私達が強い所を涼太さんに見せられた気がしないのですが……」
元の世界に帰るまでの時間が延びてしまったが、むしろ涼太としてはそれでよかった模様。【真蹴球戦士】のみんなにとっては今の状況が涼太のためになっていないと思ってしまうが、それは違うと涼太はさらに言葉を続ける。
涼太「才能あるあなた達に、サッカーを教えられるのが嬉しいんだ。ここに来た時の話を聞く限り、あなた達には世界線単位で探しても類稀な才能があるはずだ。そうじゃなきゃ、わざわざ他の世界から呼ばれたりしないでしょう?」
圭助「ああ。圭那を除いて、ここにいるのは神に見出された【真蹴球戦士】。才能を覚醒させることで文字通り超次元の力を引き出せるんだ」
圭那「ちなみに私と圭助さんは、サッカーが好きなだけの元神様。だから、最終的には私より歩夢ちゃん達の方がうまくなるよ」
涼太「あんたたちもすごい経歴だな……それはともかく、もう1つ、俺達にだって負けていない理由はある」
圭助と圭那の経歴に驚きつつも、歩夢達の強さを信じている理由を語る涼太。彼女たちが【真蹴球戦士】であること以外に、もう一つ信じる理由があった。
涼太「昨日俺の世界にも塔子さんや海未さん、果林さんが俺よりも上の世代の人間としてサッカーをしていることを話したけど……みんなプレーやサッカーに向き合う姿勢を参考されたり、憧れられたりするようなサッカー選手だったんだ。だから、仮にすごい力を持ってなかったとしても、違う世界でも、同じ果林さん達なら確かな強さがあると思ったんです」
海未「あなたの世界の私達がすごいから、こちらの私達にも期待されている……ということですね?」
涼太「はい。俺自身、こっちの世界の果林さん達は憧れですし」
果林「そう……私にとっては、あなたが憧れなのだけれどね」
涼太「うえぇっ!? そ、そうなんですか!?」
絵里「ど、どうしたのよ、そんなに驚いて」
涼太「あ、いや、だって、果林さんに憧れられるなんて……その……俺からしたら、本当に……」
今まで冷静そうだった涼太が、急に初めてこの世界に来た時以上に狼狽え始める。何か説明しようとしているが、しどろもどろだ。
ピピピピっ!
涼太「うおっ」
レアン「な、なに!?」
圭助「ん? 上神からだ。悪い、出る」
絵里「上神……上司ってことかしら?」
圭那「うん……」
先ほど用意したビデオ通話向けのパソコンが反応し、涼太を落ち着かせる。圭助の上司ならぬ上神からの通話であるようで、圭助はすぐにボタンを押して通話に応じる。
上神『よく出てくれたなケイスケ。人間としての生活は不自由してないか?』
圭助「まぁ、はい。上神様が神の世界から便利な備品を贈ってくださりますので」
上神『当然のことだ。お前の担当はハーデスの勢力拡大を食い止める役割があるから、責任重大だ。だからそれ相応のサポートはさせてもらうぞ!』
圭助「はい……」
元神様である圭助が人間になった苦労を労う上神。しかし、もちろんそんな世間話だけで通話をしに来たわけではない。
上神『では本題だ! 実は、君が今いる世界の人間が"不良転生"をしてしまったとの報告が入った』
圭助「なんですって、不良転生!?」
上神『そうだ。しかも厄介なことにその不良転生者の影響で、スクールアイドルの世界なのに、超次元サッカーの歴史がどんどん引き寄せられていっている! このままでは転生先の世界の歴史が変わってしまう!』
圭助「それは厄介ですね……それを私がどうにかするというわけですね」
上神『話が早くて助かるぞ。サッカーにはサッカーをぶつける。キミのチームの選手を派遣し、現地の人間と協力して不良転生者の魂を回収もしくは消滅させてくれ』
圭助「了解しました」
不良転生という歩夢達には聞き覚えのない言葉を交え、おそらく何かしらの依頼をされる圭助。圭助はそれを二つ返事で受け入れ、上神は「うむ、頼むぞ」と言いながら通話を切る。
恋「あの、今の電話は……」
圭助「キミ達への仕事の依頼だ。今からキミ達から3人選抜して、転生先の世界に行ってもらおうと思う。寮には外出という形で許可をとっておくぞ」
歩夢「じゃあその3人は涼太さんの特訓受けられないってことに……」
涼太「そうなってしまいますね。まぁ、特訓の方法は教えてますし、何よりまた別の世界で得られるものもあるかもしれません」
圭助「そうだな。……とりあえず圭那は行ってもらうとして、あと二人、誰を行かせようか……」
不良転生という明らかに勝手の分からないものを相手にするので、その辺に詳しい元神様の圭那は確実に選抜。あと二人を誰にするか迷う。
絵里「あの、サッカー部って今13人でしょう? 3人向こうに行かせたらその間試合とか出来ないんじゃ……」
圭助「あ、そっかぁ。でも圭那だけ行かせるのは不安が残るんだよな」
恋「……スクールアイドルの世界、だからでしょうか」
圭那「うん。簡単に言うと、その世界のサッカーには化身どころか必殺技もなくて、テクニックやフィジカルもそこまで高いわけじゃないんだ」
涼太「必殺技がないってマジか……。とにかく、通話では現地の人と協力してとか言ってたけど、そうなるとその人達はほとんど太刀打ち出来ないんじゃないんですか?」
圭那「まさにその通り……! 私達や涼太さんが戦ってるような相手なんて来たら、現地の人は大怪我間違いなしだよ!」
圭助「上神は超次元サッカーの世界の歴史がどんどん引き寄せられていると言っていたからな……不良転生者と戦うにあたり、必殺技を使った戦いは避けられないだろう」
海未「では、圭那だけに任せるわけにはいきませんね」
圭那「そうだね。昨日戦った感じのチームが来たら、さすがに私一人じゃどうしようもないよ……」
これから行く世界のサッカーには必殺技が存在せず、フィジカルやテクニックも高くないため、とてもではないが現地人は戦力にならない模様。圭那だけではなく、最低でも2人は向こうへ派遣しなければならないわけである。
圭助「涼太くん、圭那達が向こうに行っている間、試合の時に一緒にフィールドに立ってくれないか」
涼太「いいですよ。俺も、元の世界に帰るまでにサッカーサボるわけにはいきませんし。何より、皆さんと同じフィールドに立てるのは嬉しい」
圭助「ありがとう。……それと、出来れば向こうに行くメンバーを提案してくれたら助かるのだが……」
涼太「監督がいるのに、本来ならチームにいない俺が口出しして大丈夫なんですか?」
圭助「悪いな。俺は監督としてはまだ未熟なもので……よりサッカーIQやチームをまとめる技術に長けている人間の意見は伺いたい」
名監督とはお世辞にも言えない圭助。よりサッカーへの知識を持つ涼太の意見を聞くことにする。涼太は【真蹴球戦士】のみんなを見ながら一考した後、口を開く。
涼太「塔子さんと歩夢さんが良いと思いますね」
塔子「あたしと歩夢か」
涼太「はい。まず、塔子さんは守備の司令塔を担当してる。その塔子さんにディフェンスの指示を出してもらえば、必殺技を持たない人達でもそれなりに戦力になると思います」
圭那「なるほど、現地の人達も腐らせずに活かすつもりなんだね」
塔子「サッカーはみんなでやるもんだからな」
涼太「その通りです。そして、塔子さんが抜けることでこちらのメンバーにとってプラスになる面もあります」
果林「どういうことかしら? 塔子が今の私達にとって足手まとい……というわけではないんでしょう?」
涼太「もちろんです。では果林さんにクイズ。今の蓮ノ空から敢えて塔子さんを外す狙いを考えて、ここのみんなに説明してみて下さい。ヒントは今日見せた試合にあります」
果林「突然ね……。まぁ、いいわよ。今日の試合……」
涼太にクイズを持ちかけられる果林。突然のリクエストにも文句を言わず、今日の練習を活かして回答を考える。……そして、すぐに答えは出た。
果林「海未や綴理、さやかちゃんに自分で考えて最適なプレーが出来るようにしてもらうためかしら。だから敢えて司令塔の塔子を外して、どう動けばいいか海未達自身に考えてもらうと」
涼太「正解です」
海未「自分で考えて……ですか。確かに、今の私は塔子の指示を聞いて守備に当たっていますね」
果林「実はね、今日見た試合だと、DF一人一人が自分で考えて動いて、その上で連携してボールを奪っていたのよ。あれが出来れば、だいぶレベルが上がりそうだわ」
涼太「そうですね。まぁ、あのレベルの連携はさすがに難しいし運も絡むので、とりあえず自分で考えるクセをつけるのを目標にしてもらえれば」
ディフェンスの司令塔である塔子がいなくなることで、蓮ノ空DF陣は自分で考えてディフェンスをしなければならない。この自分で考える行為こそが、より強固な連携を築くのにむしろ必要なようだ。
涼太「そして次は歩夢さん。向こうの世界に行くのは今の課題を克服することになると思いますよ」
歩夢「それって……」
涼太「現地の人の実力は先ほども聞いた通りですよね。つまり、歩夢さんが積極的にならないと点を取るのが不可能な状況になる可能性が高い。嫌でも自分で点を取らなきゃいけないでしょうね」
圭那「待って。そういう目的なら反対かな……」
圭助「ああ。これは練習じゃない。失敗したらその世界だけではなく、他の世界も無事では済まないんだぞ!?」
歩夢「そ、そんなに危ないの!? じゃあ、私が行ったら足を引っ張っちゃうよ。だって……」
歩夢は練習を通して起きた自分の悩みを話す。積極的になろうとしても、引っ込み思案故にどうしても肝心なところでどうしても他の選手にまわしてしまう事。そのため、涼太の想定するやり方で自分を行かせるのは危険だという事を。
涼太「……なるほど。じゃあ一つ聞きますね」
歩夢「……うん」
涼太「もし花帆さんや果林さんが倒れてしまった時、歩夢さんはどうするつもりですか? サッカーなんですから、ケガとかでそうなる可能性はいくらでもあるんです。そうなった時に、今みたいな心構えで本当に戦えますか?」
歩夢「そ、それは……いきなりは、無理だよね……」
涼太「無理ですね。でも、そんな状況はいつ訪れてもおかしくないんです。圭助さんから聞きましたけど、あなたは『ハーデスト』っていうサッカーで悪いことする奴らと戦っているんでしょう。だったら、猶更周りに頼れない状況に慣れとかないと」
普段から備えていないのに、いざその状況が来たらいきなり理想的な動きなんて出来はしない。涼太はそれも踏まえて、周りに頼ることが出来ない状況に身を置くことを勧めているのだ。
涼太「自分で行動を起こす時を見誤らないでください。もしも時を見誤れば、大切なものを失う事だってあるんです。そして、見誤らないようにするには、自分で行動を起こすクセを普段からつけるしかないんです」
歩夢「大切なものを、失う……それは絶対に嫌だ」
圭那「歩夢ちゃん……どうしても無理そうなら、私もサポートするね」
塔子「あたしも! どんな相手かは分かんないけどさ、簡単に点はあげないから!」
歩夢「ありがと。でも、私も、いや、私自身が積極的に頑張ろうと思う。そうしないと、私は何も守れないと思うから……!」
涼太の言葉を聞いて、脳内に何かを思い浮かべた歩夢。大切なものを失うなんて、もうそんな思いはしたくないし、させたくない。そう感じた歩夢は向こうの世界に行く決意を固める。
圭助「……分かった。じゃあ、不良転生の対処にあたる3人には、後で詳しい説明をしておくから残っておいてくれ」
圭那 塔子 歩夢「はい!」
涼太「ご武運祈ってます。歩夢さん達がいない間、俺が蓮ノ空の11人目になりますから」
歩夢「うん。お願い」
塔子「お互い、また会えた時にあっと驚くほど強くなってたらいいな」
果林「ええ。こっちも練習張り切るわ」
海未「あなた達がいない間に『ハーデスト』が来ても、必ず守り通します」
不良転生の対処にあたるメンバーも決まった。涼太と残った【真蹴球戦士】達は目標や決意を胸に3人を送り出すのであった……
なんでこんなに時間かかるのかというと、設定よりセリフ回しがめちゃくちゃ難産だからです。
今回の話も歩夢関連が自分でも違和感が拭えなくて……
この創作にいきづらい部のメンバーを追加するなら、麻生麻衣ちゃんと誰がいい?
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