翌日…サッカー部では朝練が始まり、歩夢達は眠気が少し混じりながらも朝練に向かう。
―グラウンド―
さやか「あ、花帆さん。マネージャーがんばってくださいね」
花帆「さやかちゃん達こそ、練習がんば!」
さやか「はいっ」
歩夢「うんっ」
花帆もマネージャーとして練習に参加。友達を励ました後に、早速梢のところに向かった。
圭助「それで、『ハーデスト』と試合をする羽目になってしまって…」
梢「そうなのですね…いずれは彼らの存在をみんなも知ることになるでしょうけど、まさか最初から戦うことになるなんて…」
花帆「おはよーございま…―すー…」
花帆が梢のところにいくと、そこには竜星学園が『ハーデスト』に乗っ取られた話をキャプテンの梢にも報告しておく圭助の姿が。
圭助「あ…マネージャーさんが来たみたいだ」
梢「あら、来ていたの?ごめんなさい、気づかなくて」
花帆「い、いえ!」
伝えるべきことも伝え終わったので、花帆に譲る形で話を終える圭助。梢は花帆の方を向く。
花帆「あ、あの、何か大切な話をしてたんじゃないんですか!?」
圭助「大丈夫。ちょっとした世間話さ」
花帆「世間話…?」
梢「ええ。世の中良い人ばかりじゃないわねって、そんな話よ」
花帆「なんだか大変そう…」
あながち間違いではないことを言って違和感のないようにごまかす梢。普通の女子高生にサッカーで悪事をする者達のことを聞かせたくはない。
圭助「さて、そろそろ練習に移ろうか…」
梢「はい。日野下さん、今日は上原さんも加えてチーム全体で試合を想定した練習をしたいのだけど、その時に私がゲームメイクを担当するの」
花帆「ゲームメイク…ゲームメイクって!梢センパイって、サッカーの他にもゲームも作れるんですか!?すごい!」
圭助「た、多分日野下さんが思ってるのと違うんじゃないかな…?さすがに1週間でピコピコゲームは作れないよ…」
梢「ゲームメイクっていうのは、チームのみんなが上手く動けるように戦術を考えたり、指揮を執ったりする事よ」
圭助「ゲームメイカーがいないのは、地図もリーダーもなしに複数人で旅行に行くようなものだ」
花帆「そんなことしたら迷子になっちゃいますよ~~!」
梢「そうよ。それで、蓮ノ空サッカー部が迷子になってしまわないようにみんなを引っ張るのが私なの。実際にこのチームでゲームメイクをやってみるのだけど、それでなにか気になるところがあったら、指摘してもらいたいの」
花帆「そうですか!えっ、むりですね!?」
圭助「即答…」
梢の頼みを勢いよく断ってしまう花帆。みんなを指揮するのはスキルが必要なので、サッカー素人では荷が重いのが直感的に分かってしまう。
梢「そんな元気いっぱいに断らないで。ね、いいチームにしたいのよ。お願い、マネージャーさん」
花帆「うっ…そんな業務があるなんて知りませんでしたけどー…」
梢「今、付け加えました。貴女のために、素晴らしいチームにするから、ね?」
花帆「うう、ずるいですよそんな言い方…わかりましたよぉー…」
梢「ありがとう」
自分のためにやってくれると聞くとさすがに断れない花帆。ゲームメイクの様子を分析するのは少し大変だが、やってみることに。
梢「みんな!今日から上原さんや園田さんも入れて、チーム全体で練習するわ」
歩夢「一緒にやれて良かった…」
さやか「先にここで練習しておいて良かったですね!」
歩夢「うん!」
歩夢は梢達が来る前にさやか、四季と一緒に基礎練習をしていた模様。なんとかボールを操れるようになったようだ。
梢「それで…練習試合に向けて、この11人でどう動くかを実際にやってみたいの。早速、フォーメーションを組んでボールをまわしてみましょう」
海未「分かりました。…ところで、私と歩夢は初心者ですが、どこのポジションにつけばよろしいでしょうか」
梢「そうね…今いるメンバーを確認したら、FWが足りないの。どちらかはFWになってくれたら嬉しいわ」
歩夢「FWって…」
さやか「えっ?」
歩夢はさやかの方を見る。あの光景の印象が強く、さやかをFWだと思っている《真蹴球戦士》達…
さやか「わたし…DFですよ?」
歩夢「あっ…うん、そうだったよね。ごめん」
四季(あれでDF…?いや、そんなわけ…)
ひとまず謝る歩夢。今はこの話は止めておき、FWに入ることにした。
FW 果林 歩夢
OMF レアン 梢 絵里
DMF 恋 海未
DF 綴理 さやか 塔子
GK 四季
梢はこのようにフォーメーションを組む。そして、コーンを11個相手側のフィールドに置いて少しでも試合を想定した感じにしてみる。
梢「今回はパス回し中心で動きましょう。チームワークがどれくらい取れるかを確認するのが目的だし、コーンにドリブルを仕掛けても仕方がないもの」
海未「やはり止まっている相手と動く相手では勝手が違いすぎますからね」
梢「その通りよ。それじゃあ、やりましょう」
全員ポジションにつき、梢がボールを自分の足元に置く。これでいよいよ練習開始だ。
花帆「ああは言ったけど…あたしに出来るかなぁ?」
圭助「難しいことは俺が見るから大丈夫。要はキミの友達が他の友達や先輩と仲良くサッカー出来てるか…それはキミの方が分かると思うよ」
一方でマネージャーの花帆と監督の圭助はどう選手たちが動くのかを見ることに。
梢「…」パスっ!
梢がボールを蹴り出す。最初は海未にボールがまわる。そしてOMFとFWはコーンをかわしつつ一斉に前に出る。
海未「頼みます!」パスっ
海未は最初のコーンがあるところまでドリブルしたところで後ろにボールを蹴る。
さやか「塔子さん!」パスっ!
塔子「よし…!夕霧先輩!」パスっ!
ここでボールをもらったさやかから塔子を中継して逆サイドにボールを蹴り込む。
綴理「れん…!」パスっ!
恋「レアンさん!」パスっ
そして綴理から前にボールを蹴り出す。そして中盤にいた恋を中継してOMFのレアンにボールをまわす。
レアン「…!」ヒョイっ
まずはドリブルでコーンの1つを抜き去る。その後、梢より少し前にボールを蹴る。
梢「良いわよ…綾瀬さん!」パスっ!
梢は走ってこのボールに追いつく。そして絵里にパス。
絵里「上原さん!」パスっ
ここで絵里は前のライン際にボールを蹴る。そこには歩夢がいた。
果林「こっちにお願い!」
歩夢「はいっ!」パスっ
そしてゴール正面に走り込んだ果林。歩夢はそこにボールを蹴って果林にセンタリングだ。
果林「はあっ!」ドンっ!
果林は飛んできたボールを蹴り上げる。そしてボールは彗星のように輝くエネルギーを纏い、果林はそのボールにボレーを放った。
果林「彗星シュート!」
ドガァ!果林がボールを蹴ると、シュートは勢い良くゴールに向かう。そして置いてあるコーンを弾き飛ばし…
バシュウゥゥン!
果林「やったわ!」
絵里「良い感じにボールをまわせていたんじゃないかしら」
梢「そうね…花帆さんと監督に感想を聞いてみましょう」
ひとまず一通り連携をしてみた。梢は花帆と圭助の所に行って今の連携に関して聞いてみる。
梢「どう、だったかしら…って」
パチパチパチパチパチ!梢が感想を聞く前にもう拍手喝采の花帆。
花帆「すごい、すごいです!梢センパイ、パスがきれい!みんなが仲良くボールをまわしてて、すらすらとシュート出来て、もう、世界一上手でした!体育のテストだったら満点通り越して120点のお手本です!」
梢「あ、ありがとうね。なんだか照れるわねえ…ここまで力いっぱい褒められることは、あんまりないから…」
花帆「ええー!?こんなの大会で披露したら、感動の涙で蓮ノ空が湖に沈んじゃいますよ!」
圭助「えぇー…すっごい」
花帆「ほんっとにすてきでした!花帆の花丸印、あげちゃいます!」
梢「気になるところとか――」
花帆「ありません!パーフェクトです!」
梢「ふふ、本当の本当に本気で思ってくれているのね。そこまで言ってもらえると、自身がわいてきちゃうわ」
過剰なくらいプレーを褒める花帆。決してお世辞や嫌味などではなく、花帆から見れば本当にそれくらい上手に見えたのだ。
花帆「はい!梢センパイ率いる蓮ノ空サッカーで、みんなの笑顔をいーっぱい花咲かせちゃいましょう!」
梢「いいわね、それ。じゃあもっとがんばったら、うちのマネージャーさんの笑顔も、花咲いてくれるかしら?」
花帆「そ、それは…それも、たぶん、はい…」
梢「うふふ。だったら…やっぱり、がんばらなくっちゃ」
梢の問いに元気いっぱいの表情が一転、少ししゅんとした顔になってしまう花帆。対照的に梢はやる気満々の表情だった。
圭助「あ、あのー…これ俺が何か言ったら場違いかな」
花帆「ふぇっ!?いや、そんなことないですよー!」
梢「監督からも、さっきのプレーで気になったところがあったら、ご意見お願いします」
すっかり監督からのフィードバックを忘れかけていた花帆。むしろこちらをちゃんと聞いておきたいところだ。
圭助「えーと…とりあえず日野下さんの言う通り、特にチーム内で不和が生まれてる様子もなかったし、初めてにしてはちゃんとパス回し出来てシュートまで持っていけてたと思う」
梢「ありがとうございます」
圭助「実際の試合だと相手選手もいるから色々複雑な動きをすることになるけど…そこは実際に相手選手とプレーしないと何とも言えないから、午後にそういった練習を出来るように考えておく」
ひとまず圭助に言えることはこんなところ。その後ミーティングをして朝練は終了となった…
―廊下―
朝練を終えた後は授業。それも終えて放課後を迎え、梢と花帆は2人で書類を運んでいた。
花帆「梢センパイ!次はどこにいくんですかー!?」
梢「うふふ、ごめんなさい。今年から、新入生歓迎会の実行委員も拝命しちゃって、やらなきゃいけないことが多いのよねえ。あ、これも持ってもらってもいいかしら」
花帆「うぐぇ」
梢は手に持っている書類の山を花帆に移す。花帆の負担が増えたぞ。
梢「さ、焦らずゆっくり急ぎましょう。一時間以内に終わらせて、チームプレーもさらに磨かなきゃ」
花帆「ええっ!?この後またグラウンドに行くんですかぁ!?」
梢「ええ。朝に朝香さんが見せてくれたような…必殺技だって作っている途中なんだもの」
今の梢にはとにかくやることが多い。花帆に手伝ってもらわないと回らないくらいには忙しいようだ。
梢「大丈夫よ、日野下さん。上に積み重なっているものをひとつひとつ取り除いていけば、いつかは机の天板が見えてくるものよ」
花帆「積みあがっていくスピードのほうが早かったら、いつまでも見えませんよねー!?」
梢「そうよ、いいところに気づいたわねえ。つまり、焦らずゆっくりと急がなくっちゃ、だめってこと」
花帆「一日が、一日があっという間に過ぎてゆくんですけど~!」
休まる暇のないやる事の多さに、花帆の悲鳴がこだまするのであった…
―グラウンド―
悲鳴を上げながらもなんとか一時間以内に書類を運んで、梢と一緒にグラウンドに来た花帆。既に他のメンバーは練習に入っていた。
歩夢「あっ、花帆ちゃんに梢先輩!」
梢「遅くなってごめんなさい。午後の練習は私がいないと成立しないというのに…」
圭助「だがこれくらいの時間なら他の練習が出来たから大丈夫さ。早速5vs6で攻撃と守備練習をやってみよう」
花帆「5vs6で攻撃と守備練習…?」
梢「朝に見せたあのパス回しはね、相手がいないからきれいにつなげられたの。実際の試合だと相手がボールを取ろうとしてくるから、なかなかこんな風にはいかないのよ」
圭助「というわけで…相手がいることを想定した動きをするために、チーム分けをするってことだ」
梢「11人で攻めたり守ったりすることはまずないから、実際の試合に近いサッカーが出来るって事よ」
花帆「ほえー」
午後に行うのは攻めが5人、守りがキーパー含めて6人で攻守の練習。梢達がフィールドに入る中、花帆は次にどんなサッカーになるのか楽しみにしながら朝と同じく監督と一緒に梢達のサッカーを眺めるのであった…